妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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亡き二刀流と亡き少女

「おはよう、目が覚めた?」

「ああ……久しぶりだな、会いたかったぞわらし……」

「黙りなさい馬鹿」

 

 ──バキッ

 

「痛い!? お前ビンタはねぇだろ!? しかもビンタの音じゃなかった!?」

 

 コウヨウが目を覚ましたのは真っ暗闇……ではなく、あの第六層にある廃墟に似た一部屋。そこには微笑んでる少女がいるが、彼はそれを見たことある。というか忘れるわけがなかった。しかも近づいたら普通にビンタされた。コウヨウがツッコミながら少女を見ていると……

 

「主、お前の負けだ」

「あぁ……ごめんムサシ、わらし……キラメキを失ってしまった」

「はっ倒すわよ?」

「別にいい。私も主を守りきれなかったんだ」

「私は許さないけど?」

 

 刀のモンスターから人型になったムサシことツルギはコウヨウに謝るが、元テイムモンスターの幽霊少女屋敷わらしはコウヨウに怒った。

 

「せっかく私のスキルをあげたのに使わないで死ぬなんて馬鹿なの?」

「うっ……本当は【無詠唱】はミィさん達の時まで取っておくつもりだったんだが……」

「出して負けるのと出さないで負けるのとでは訳が違うでしょ」

「すみませんでした」

「はぁ……んで、驕りはそれだけ?」

「後は……そうだな……誰か1人でも残ってしまった場合、コレがミィさんに伝わってしまうから……」

「逆にそれを使ったら全員ぶっ殺すことを確定させなさいよ」

「お前本当……相変わらず容赦ねぇな……」

「好きな男にメロメロになるだけが女じゃないの。悪い事は悪い、正しい事は正しいって言えるのが最高の女よ」

「マジですみません」

 

 イベント中サリーに続いて今度はわらしに土下座したコウヨウ。女の子に土下座する最強は情けなかった。ムサシがわらしを止めてくれたおかげで、気を引き締めてコウヨウはこの後の話をわらしに聞く。

 

「俺はなんでここにいるんだ? 死んだからイベントから脱落なんじゃないか? もうレヴューは出来ないぞ?」

「私のコンティニュースキル忘れたの? それで復帰させるわ」

「忘れてた訳じゃないけどそれやっぱりイベントも有効なのかよ!?」

「ただし、条件があるわ」

 

 コンティニュースキルとは、わらしが渡した【冥界の施し】 だ。わらしを犠牲にしてコウヨウを復活させるスキルを今使えると彼女は言うが、その条件を指示する。

 

「今回はムサシを犠牲にしなさい」

「は? どういう……」

「私はもう貴方のテイムモンスターじゃないのよ。だから、私の代わりに別のテイムモンスターを殺す代わりに貴方が生き返るスキルになったの」

「ホイップ」

「つまり貴方は、ムサシを犠牲にして【楓の木】のコウヨウとして戦うか、あるいはここでスキルを使わずに死ぬか。二択よ」

「マホイップ」

「進化すんな」

 

 わらしの言葉の後に少し動きも言葉も止まるコウヨウ。どちらかを犠牲にするのは彼の1番嫌いで苦手な話題である。だが、コウヨウはわらしにハッキリと伝えた。

 

「OK、分かった。俺を生かせムサシ」

「無論だ主、行ってこい」

「いいの?」

「正直ムサシがいないと嫌だし、はっきり言ってわらしもいないと嫌だ。というか俺がわらしを殺したもんだから今すぐお前のことを抱きしめて泣きじゃくりたいし、イベントとか正直お前に会えたからクソ程どうでも良い」

「おい表でろやゴミマスター」

「でも、俺にこのゲームの楽しさやイベントの楽しみ方、キラメキやレヴューやスタァの存在。プレイヤーを斬るというか覚悟を作ってくれたのはムサシだけじゃない。【楓の木】と【炎帝の国】と【集う聖剣】だ」

「そいつらに貰ったNWOでの思い出は、俺の1000人斬り如きじゃ足りん。後、俺を殺したやつもう一回出てこい、呪い殺してやる」

「なるほど。お礼参りならちょうど良いわね」

「言い方ヤベェな」

「貴方もでしょ??」

 

 それじゃあといって、わらしはスキルを発動させる。

 

「マホミル、マホイップ、アブラカタブラ、キュアップキュップイ、ピピルピルピル、ザオリ君ー」

「え? このコンティニュースキルそんな呪文だったの??」

「うるさい、生きるのを諦めるな!!」

「呪文そんなんで良いの!?」

 

 わらしは必要も無い呪文を唱えてから念のためにとその時に注意点を彼に伝えた。

 

「因みにこれもう今回のイベントは二度と使えないから。条件は1日1回だけど今回はテイムモンスターもいないし」

「イベントが終わるまで私はわらし殿と一緒にいるつもりだ」

「復活アイテムもないしなぁ……分かった。まぁ、クロムさんと違って100%蘇生だし我慢するか」

「そういえば、デメリットがテイムモンスターの死亡にしても強すぎるのよね」

「てことは俺はアレか……このイベントは二度と敗北は許されないんだな」

「安心しなさい。【名状しがたい何か】と【無詠唱】は残しておいてあげるから」

 

 そっちの方がチートだろと心の中で突っ込んだコウヨウだが、ありがたく使わせてもらうことにした。因みに、生き返るのはちょっと不具合の関係上、イベント2日目近く……要は夕方くらいらしい。

 

「どこに戻される?」

「最初の陣営ね。因みに妹さんは貴方のライバルとドンパチやってるわ」

「そういえば、負けた人達の名簿も見てなかった……うげ!? ドレッドさんとドラグさん死んだのか!?」

「でも向こうもかなり痛手をくらってるらしいわよ。あの金髪巨乳聖女いなくなってるし」

「言い方……んじゃ……仕方ない。雑魚処理してから行くか」

「貴方の陣営も少し攻められてるから早く送るわね」

「主……」

「なんだ? ムサシ、俺は別に寂しくな……」

 

 

 寂しくはない。そう答えようとしたコウヨウにムサシは一言声をかける。彼は、少し笑いながら、涙を流して、そのまま背を向けた。タイミングを見てわらしはコウヨウをこの場から消し去ったのだった。

 

「素直じゃないな、わらしも。もう少し話したかったのではないか? 

「貴方に言われたくないわ。本当は主人と戦えなくて寂しいんでしょ?」

「ああ。でも……主には幸せになって欲しいからな。私は剣豪だから主の幸せとは程遠い……」

「難儀なものね、貴方も、私も……」

 

 ☆

 

「くっそ!! こいつらどこから来たんだ!?」

「きっと【楓の木】達が【炎帝の国】との戦い中に隙を見て攻めてきた奴らだ! 耐えろ!!」

「ペインさん達が勝つまで……ぐっ……防衛陣が……足りない!?」

 

 自軍の陣営で敵軍が攻めてきているのをコウヨウは見た。会話を不意に聞くと、メイプルやペインは【炎帝の国】とやり合っていると言う。

 

『俺にとって、最強はお前だ。コウヨウ様』

 

 ある剣豪の一言を思い返しながら、彼は駆け出して……

 

「復活のレヴュー開演だ」

「「「「「え?」」」」」

 

 プレイヤーを一瞬で5人斬った。突如現れた侍に味方でありながらも彼を訝しげに見た後、目を点にして驚いた。

 

「え……お前……死んだはずじゃ……」

「俺は、不死身の、コウヨ……」

「お前ら!! 大ニュースだ!! 最強の二刀流釣り師が生き返ったぞ!!」

「話聞けや、事実だけど」

 

 誰かの声に、今まで苦戦していた味方が驚きながらも歓声を上げた。そこまで持ち上げられるのはなんか違うと思うコウヨウだが、とりあえず落ち着いてくれと周りに言う。

 

「これは俺の奥の手です。もう二度と使えませんから敵にはバレたくないです」

「わ、分かった……確かにこれはやばい奥の手だな……」

「まぁ、今からイズさんにメッセージ打つんで味方全体にバレるんですけど」

「おい!?」

「とりあえず、防衛しましょうか……テメェら全員俺達の陣営から出ていけ、舞台にスタァは2人でいい。1人は俺でもう1人は俺の隣に来れたやつだ」

「全員二刀流釣り師を囲め! コイツを倒せば俺達の……」

「おい愚民ども、驕りと誇りはちげぇぞ」

 

 そう言ってコウヨウは冷静に刀を抜いて攻めてきた相手プレイヤーを一掃。5分も要らなかった。とりあえず出口近くまで行って敵襲に備えるかと考えていたが……

 

「待て、お前はここにいてはいけない」

「え? 俺クビ?」

「いやすまん。言葉が悪かった……お前は攻撃に回ってくれ」

「良いんですか?」

「構わない。寧ろお前に防衛させるくらいなら攻撃に回って、早く勝負を決めた方が早い気がする」

「分かりました。ただ……」

 

 コウヨウと一緒に戦った男はそう語る。彼の言う通り、コウヨウが攻撃に回った方が良い、というかその方が勝率は上がる。

 だが、このコウヨウからすればさっき防衛が危なかった事や、ムサシがいない以上移動手段が歩きくらいしか……

 

「まぁ、歩いて行ってもいいか。でも、防衛は?」

「さっきは油断しただけだ。だが、流石にうちの最高戦力に1人で行ってこいとは言えないな……よし、シャーレ!! いるか?」

「は、はい!? 何で……ってコウヨウさん!?」

「あれ? シャーレさん防衛側だったんですか?」

「2人とも知り合いか? シャーレは俺達【集う聖剣】のギルドメンバーでな。シャーレ、コウヨウさんが最前線に行く予定だ。サポーターとして一緒に行ってやれ」

「わ、私がですか!?」

「それならありがたいですわ」

「え? 誰!?」

「俺ですわ。この格好の方があまり知られてませんので」

 

 急に目の前の侍が美少女に変身したので彼は驚く。勿論装備変更していたシャーレも驚いたが……

 

「レリフル様!! なんてお美しい……」

「ありがとうございます。というかご存知でしたのね」

「大ファンなので!!」

「そ、そうか……シャーレにそんな一面が……まぁ、それならコウヨウさんもやりやすいだろう。シャーレはミザリーを目指した程の回復魔法使いだ。頼むぞ、2人とも」

「はい! 魔法使いですから、支援は任せてください! と言っても、ミザリーには勝てませんけど……」

「戦闘ならもう二度と負けませんのでお任せくださいまし」

「流石コウヨウさん……ですね」

「わたくしは大剣豪からお墨付きを頂きましたの、キラメキをもう一度取り戻すんですのよ」

「キラメキ???」

 

 こうして、異例のコンビが最前線に突っ込んでいくことが確定した。ただ、シャーレはコウヨウの……レリフルのAGIについて行けるか不安しか無い。彼の圧倒的なステータスは彼女どころか誰も超えられないのだから。

 

「あの……私……遅くても良いですか?」

「なら、ゆっくり行きましょう。急ぐ旅でもありませんわ……これでいいかしら?」

「え?」

 

 そう言ってレリフルは少し前に吸血鬼から貰ったボロマントを装備した。シャーレにも同じ装備を渡してそのまま前を歩く。

 

「これで荒野でも歩こうぜ。目立たないだろ?」

 

『ボロマント』

 ただの目立たないボロマント。ステータスは上がらないが【隠密Ⅱ】を使える。

 

「え? レリフルちゃんは……」

「目立ちそうなのでやめておきます。その代わり全員俺達の前から消してやるよ……かかってこいや」

「な、なんかコウヨウさん……キャラ違いませんか??」

「約束したんだ。絶対にスタァになるって」




 二刀流釣り師のレヴュー
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