妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
2日目の夜のことである。コウヨウの敵であるプレイヤー、即ち【炎帝の国】などの多くの敵ギルドメンバーは森の中で休みながらも噂話を口にした。
「最強の二刀流がベルベット達に倒されたそうだな」
「あぁ、あのプレイヤーとNPC合わせて1000ほど斬ったやつだろ?」
「そもそも事実なのか? ポップアップは出ていたが、俺にはどうにも信じられないね、チートかなんかだろ? そもそもウィルやリリィ、ベルベットやヒナタのトップギルドメンバーがいるのにそんな非常識なプレイヤーに負ける訳ないと思うが」
「まぁ、信じられないのは事実だな」
「チーター破れたりってやつだよ。正義は勝つんだ」
コウヨウを知らないプレイヤーはあまりいないが、彼が戦っているところを肉眼で見ていないのも事実。聞くだけ話に耳を傾けたところで彼の本気を知るものはいなかった。だからこそ嘘か真かに踊らされた哀れな魂は……
「貴方のハートにLOVE斬キュン」
「「え??」」
首を貫かれて粒子と化した。近くにいた10以上のNPCは彼が爆速で斬ったが、誰も気が付かなかった。
「て、敵襲だ!! 出会え、出会え!!」
「失礼な。宇宙No. 1剣豪アイドルだゾ☆」
レリフル装備ならともかくボロマント装備の刀使いがアイドルな訳は無く、ただの奇跡の殺戮者だった。敵は混乱しながらも交戦の構えをするが……
「【多重炎弾】!!」
「うわ!? 魔法使いもいるのかよ!?」
「シャーレさん攻撃魔法使えんのか」
「は、はい……本当は【ホーリーランス】を使いたかったんですけど……なんか似合わないかなって……」
「魔法使いに魔法の似合う似合わないは無いとおもうぞ」
「よそ見してんじゃねぇよ」
「してねぇよ」
クナイを持った相手がコウヨウを攻撃しようとしたが彼は刀一本を自分の目線以外の死角に振ってそのプレイヤーの攻撃を止めた。
「ほう……俺の【隠密Ⅹ】でも止めるか。只者ではないな」
「誰もが目を奪われてく、俺が完璧で究極の剣豪だ」
「コウヨウさんやっぱりなんかキャラが違う!?」
「考えるな、感じろという言葉があるという事はだ。その言葉が通じる時と場合があるからだろ? ならば今がその時」
「コウヨウ……? あのクソチーターは死んだはずだが?」
「なんで俺クソチート扱いされてんの?」
正直遺憾である。だが、無理もないなとは少し思った。ステータスは5桁越えというゲームシステムを崩壊させた中心人物である。真剣に考えて、恐らくメイプルにも自分にもアンチを唱える者は数少なくともいるだろう。
「貴様が本気であのコウヨウというのなら、今この場で俺を斬ってみろ」
「コウヨウ、二天」
「「え!?」」
スキルでボロマントから高速で侍装備に変えたコウヨウ。【青龍以下略】を分離させて、【隠密Ⅹ】の男に挑むことにした。わらしのスキルは確実に使える。【早着替え】を口に挟まず発動出来たから。
「その姿……なんで……まだ生きている!?」
「テメェがチートに祈ればいいだろ。もっとも、チートを信じていればの話だがな」
「くっ……【辻斬り】!!」
「判断が遅い」
【隠密Ⅹ】は発動済みのはずなのにも関わらずコウヨウはぶった斬った。シャーレは相手が確実に見えなくなったのを確認しているのだが、彼に取っては全く無意味だったようだ。
「がっ……ぐっ……な……なんで……【隠密】で隠れたはず……」
「俺の最強テイムモンスターが透明化しすぎてな。消えた相手でも気配が分かるんだよ」
「そ、そんな……それはもはやチートというより……」
「ぷ、プレイヤースキルが異常ですね……」
「ポジションゼロ」
結局その場で野宿をしていた陣営はたった2人の男女によって壊滅した。その報告を受けた相手サイドは、コウヨウ以外のプレイヤーを疑ったのだが、偵察隊がその後の光景を見て口を開けるしかなかったのである。
「シャーレさん。ゲームは勝つためじゃなくて楽しむためにあるんだぞ。好きなスキルで正面突破するのも醍醐味だ」
「は……はぁ……」
「とりあえず進むか。なんかここにいたら囲まれそうだし」
「あ、あの……コウヨウさん……」
「なんだ?」
「私は……ミザリーさんみたいになれますかね?」
「無理」
コウヨウの強さを見て改めて息を呑んだシャーレはコウヨウに問うた。だが、コウヨウはあっさりと否定して言葉を続ける。
「宮本武蔵曰く、神は祈るものであって頼るものではない。それと同じで憧れは人でも物でも、なるものでなく超えるものだ」
「ちょっと待ってください……それだと私が……」
「なるんじゃねぇ、ぶっ倒せ。俺もいつか斬りたい相手がいる」
コウヨウでも斬りたいと思う者がいる事に驚いたが、すぐにサリーやメイプルの事かと聞いてみた。
「サリーは……そうだな。先ずはあの野郎をぶっ倒してから挑む事にする」
「サリーさんだけでなく……ですか」
「俺の相棒だ。史上最強のテイムモンスター。奴は倒さねばならない」
「て、テイムモンスターをライバル視してるんですか!?」
「ライバルじゃねぇ。敵だ」
事の話は少女は知らない。だからこそありえないような目で彼を見つめるが、コウヨウは歩きながら真っ直ぐ伝えた。
「今のところムサシに勝てる奴はいない。メイプルだろうがサリーだろうが、ペインさんでも俺でも勝てない。そんな奴が、俺をこの一回だけ認めてくれたんだ」
「おい! 敵がいたぞ!!」
「命を燃やして大切なものを守り抜くことを、お前達は無駄とせせら笑ったか……!」
そうしてコウヨウはさっき着直したボロマントをやめて侍になる。その姿に驚いた者が数名、何も考えず突っ込んできたNPC数体、その者達は全て彼の前で散った。
「儂の前に来るものは全て斬る。それが戦というものよ」
コウヨウの少し威圧感がある言葉に対して彼女は呆気に取られて……爆速で斬り刻まれて死んだ敵を見ながらやがてすぐ項垂れた。
「私に……出来るんでしょうか……」
「やってみてから決めろ、俺が言えるのはそれだけだ。まずは【ホーリーランス】の一つでも覚えておけ」
「いたぞ! まだ二刀流使いは生きている!!」
「者どもかかれ!! ミィ様の負担になる前に!!」
「ま、また敵が……!?」
「安心しろ、俺が前にいる限り誰も負けねぇんだよ……コウヨウ、二天!!」
そうしてコウヨウはシャーレと助け合いながらも、一方的に歴戦を潜り抜けたのだった。
「ば、バカな……さっきの奴らと合わせて……五十は」
「いたねぇ……50人くらい。次は人間の歯だけで50人分かかってくれば、ダイアモンドより硬いから俺の刀通らないんじゃねぇの?」
「もはやそれは人じゃないですよね!?」
「とりあえずシャーレさんは落ち込んでないで顔あげて、I'm a キューティビューティープレイヤー」
「なんか歌詞が違う!?」
☆
「所で、メイプルとサリーはどこに行ったんだ? マップ覚えてねぇんだよな……」
「すみません、私も分かりません」
とりあえずコンティニュースキルで復活したコウヨウは【集う聖剣】のメンバーであるシャーレと【ボロマント】で姿を隠しながら、走って敵を斬り捨てていた。
シャーレはペインやドラグ達のようなトッププレイヤーではなく、良いも悪いも中堅程のプレイヤーだが、魔法使いとしてはかなり強い方である。
「そういえば……どうして私のAGIと同じスピードで走れるんですか?」
「調整」
「え?」
「昔からバカみたいなAGIに悩まされ続けてるから頑張って調整した。今なら誰のスピードでも同じように走れるぞ」
コウヨウのAGIは4桁という意味不明な数字であるので最初は本当にスピード慣れが大変だった。ただ、ユイやマイがAGI0なのもあり、何とか一緒に歩けるように特訓を重ねたのだ。
「だから安心して全力で走ってくれ、俺はシャーレさんスピードについていけるから」
「わ、分かりました……本当……噂に聞いてファンになりましたけど……化け物なんですね」
「化け物ではないです」
安心しろコウヨウ。お前は化け物だ。そんな訳で、コウヨウはシャーレのAGIで走れるスピードより、少し早めて先頭を走りながらこっそりとそこら辺のNPCとプレイヤーを斬り裂いて行くことにしたのだが……
「敵襲だ!! 囲め囲め!!」
「に、二刀流使い!? 生きていたのか!?」
「【隠密Ⅱ】ごときで隠れられると思うなよ!!」
「あらら……囲まれたらしいなぁ」
「何でそんな悠長なんですか!?」
「これ言うの4〜5回目だから。最高で増援合わせて100人くらい」
「私じゃ無理です!!」
早速囲まれた2人、装備があっても【隠密Ⅱ】くらいならいつかバレてもおかしくないとは思っていたが、かなりあっさりバレた。
「ど、どうします? 30人くらいいますけ……ど??」
「グハッ!?」
「ゴフゥ!?」
「ガァァ!!?」
「俺なら……そうねぇ……逃げるはダメ、殺す」
「物騒ですしもう10人斬ってますし!?」
そしてバレてから斬り捨てるまで5分もいらないのがコウヨウ真剣奥義である。シャーレはシャーレでツッコミを入れすぎて戦えてない。
「シャーレさん、俺の名前はコウヨウデックスって言うんだよ。ちょっとピンチだから、魔法使ってくれると嬉しいな」
「語呂悪いですね!? えっと……【多重……」
「そうじゃないだろ」
「え?」
【多重炎弾】を撃とうとするシャーレに対してコウヨウははっきりと伝えた。
──【ホーリーランス】使えるんだろ?
「え!? ど、どうして??」
「『使いたかった』とは言ったが『覚えなかった』とは言ってなかったからもしかしたらと思っただけだ。ミザリーさんに憧れてるなら最初は真似事でもいいさ。一発放ってくれよ」
「呑気にお喋りしてんじゃねぇよ!!」
「じゃあ早く攻めてこいや」
コウヨウはシャーレと話しながら茶々を入れて来た男をぶった斬った。もう既に半分は消えている仲間を呆然と見ながら他のプレイヤーも2人に挑んでいく。
「シャーレ、やれ。憧れるな、超えろ」
「ミザリーさんよりコントロール悪いんで……ど、どうなっても……知りませんよ……」
「【ホーリーランス】ならミザリーさんのを跳ね返したから任せろ」
コウヨウがそう言った瞬間、なる様になれとシャーレは【ホーリーランス】を唱える。その瞬間、無数の光の矢がコウヨウや他のプレイヤーを襲うように落下して来た。
「コウヨウさんのとこに飛んじゃった!? や、やっぱりコントロールミスして……」
「最高の絶好球ですけど?」
味方すらにも光の矢が向かっていったので絶望したシャーレだが、コウヨウはそれで良いと伝えながらホーリーランスを相手に向かって跳ね返した。
「な!? 上からだけじゃなく……横から!?」
「反射反射反射反射……ベクトル操作ァァ!!」
「最強でもそれは違う最強ですよね!?」
「やべぇ!? 上からならともかく横からも高速で……」
「避けられ……無理!?」
「なんだ、なんだよ、なんなんですか? 俺の刀の切れ味くらい見てからでも死ぬのは遅くねぇぞ?」
「いや切れ味も何も……一撃……」
コウヨウの【魔法反射】によって残りの部隊は全員光の矢に撃たれて粒子に変えられた。戦いが終わってからコウヨウはシャーレに対して労う。
「コントロールさえ良ければミザリーさんより矢の数多いから問題無いと思うぞ、命中率にスキルポイント振って、何回か撃てば当たるよ」
「あ、ありがとうございます……何だか師匠みたいですね……」
「一撃双子の師匠やってたんで」
「あ、お兄ちゃん……」
「ん? おう、お前かどうした?」
「え?」
コウヨウが声のする方を見ると、小さい男の子が立っていた。少し近寄って話しかけると、男の子は後ろを向いて指を刺した。
「久しぶり。あっちに、お兄ちゃんが会いたい人いるよ」
「お、本当か? あっちは確か味方陣営だな。メイプルもサリーも一回帰ったんだ。ありがとうな」
「あ、あの……コウヨウさん?」
「行こう、シャーレさん。一旦退却だ」
「いや、それは良いんですけど……」
──誰と話しているんですか??
「あぁ、やっぱり幽霊だったか」
「え? え? ええ!?」
「いや、なんかさっきの男の子第六層だかのホラーハウスで一緒に遊んだ記憶が……」
シャーレの言葉で振り向き直すと男の子の姿は無かった。多分俺を助けてくれたんだろうと言いながら、シャーレをおんぶして宙に浮きながらそのまま味方陣営に向かって行くのだった。
「こ、コウヨウさんって……幽霊見えるんですか?」
「見えるし好かれるし会話出来るし……俺は呪われてるかもしれん。もしかしたら実は俺自身がこの世にいない……前半以外冗談だから震えないでくれ」
「前半本当なんですね……怖い……」
コウヨウ君はゾンビとか目がいっぱいある化け物を見るとSAN値削られますが、人間の形した幽霊なら平気で話しかけます。サリーの恐怖の対象軍団ですね。