妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
初めて2人に会った時は、すごく恥ずかしがり屋の少女と、落ち着いた少年だった事を覚えている。1人っ子の少女は恥ずかしがり屋の少女に挨拶をすると、少年に隠れて自己紹介した。
「ほ、ほんじょう……かえで……です」
「私はしろみねりさ!」
「ごめんね、りさちゃん。かえでは恥ずかしがり屋だから……」
「あなたはだぁれ?」
「俺はもみじだよ」
「葉っぱきょうだい??」
彼は少女に伝える。3人は出会った時から一緒に遊んでいた。おままごとやらコマ回しやら、アナログなゲームもやったし、理沙がゲーム好きなので基本デジタルゲームに手を出していた。
「紅葉弱いね」
「お兄ちゃん私より弱いね」
「ぐっ……理沙はともかく、楓は何で出来るんだよ……?」
「理沙といっぱい遊んでるからね!!」
「私達仲良いしね!!」
「俺は仲間外れかよ!?」
「冗談だって! ほら、もう一回やろう紅葉」
理沙や楓からすれば最初はただのサンドバッグが出来た程度ではあったが、紅葉は割と覚える事や、見切る事が得意だったようで……
「嘘!? また負けた!?」
「お兄ちゃん何したの!?」
「俺に10の敗北は無い。この9連敗で、2人の動きは見切ったぞ」
9連敗もすごい話だが、その後勝利した彼の言葉に理沙は本気で悔しがった。ゲームじゃなくても3人でお祭りに行ったりして、ご飯を食べたり遊んだりしていた事もある。
「お兄ちゃん……後ろにいて良い?」
「良いよ、理沙は……」
「紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉……」
「怖いよ!? ホラー苦手なら何で俺達誘って入ったんだよ!?」
「だって……みんな入ってるし……大した事ないって……ギャァァァァァァァァ!!?」
「うわっ!? 脅かすなよ!?」
「紅葉怖い助けて無理……」
「しゃーなしだな。2人とも俺の背中掴んで目でも閉じてろ。リタイアエリアまでは我慢してくれ」
「お兄ちゃん……」
「楓も怖いなら手繋いでおくか?」
「この子美味しそう……」
「ジャック・オ・ランタンじゃねぇか……食うなよ……」
『お兄ちゃん〜遊んでー』
「今忙しいから後でな」
「お兄ちゃん誰と喋ってるの??」
「え?」
理沙がお化け屋敷で見たのは紅葉の勇ましい姿と、お化けも食べようとしている楓の大喰らいの性格。この時からこの兄妹はやばいと思っていた。特に兄の方は幽霊と喋ってる。怖い。
「理沙、今日家誰もいないなら家来るか?」
家族ぐるみで付き合いもあったので、よくお互いの家に泊まる事はあった。理沙は頷いて彼らの家に遊びに来る。理沙が泊まる時や、その逆の時はいつも紅葉がご飯を作ってくれていた。
「何で紅葉の料理って美味しいの?」
「不味い方が良かったか?」
「いや、そうじゃないけど!?」
「お兄ちゃん、お母さんと何回も作ってたもんね」
「え? そうなの?」
「ま、まぁ……ほら、楓も作れるけど、妹にばかり作らせるのも……な?」
「なるほどね……いいなぁ。私も料理した方がいい?」
「した方がいいかはわからないけど、理沙の料理なら何でも食うぞ」
「それ不味くてもって余計な隠語が入ってない?」
「入ってない入ってない」
「お兄ちゃんも素直じゃないなぁ……」
「楓何か言った?」
「ううん、あのハンカチについて血……お兄ちゃんだったんだ。ちょっと勿体無いことしたなって」
「紅葉怪我したの!?」
「してない。最近楓がこのセリフにハマったのはお前のドラマCDのせいだぞ」
理沙がゲームやらアニメやらのカルチャーにどハマりしたせいで楓に別の意味で影響を与えてしまったと紅葉は言う。最近、理沙とゲームをした報告をするのは良いが、道に迷った事を迷いマイマイとか、格闘ゲームでパンチしながら大声で「だとしても!」なんて叫んで欲しくはなかった。
「ゲームは苦手だよ? 嫌いじゃないけど」
「楓が本気でハマったら大変なことになりそうだな」
「それは紅葉もじゃない??」
「はぁ? それはこっちのセリフだ。最近またゲーム大会で優勝したり、上位入賞してる事理沙のお母さんに聞いてるんだが?」
理沙はこの時期になると学生の部ではあるが、ゲーム大会で上位入賞する実力を持つほど凄い人になっていた。将来はプロゲーマーなのではと紅葉が揶揄い無しで言うくらいの強さはもはや楓も紅葉も到達は出来ない。
だが、理沙からすると、紅葉の隠れた実力や能力が自分よりも凄いと伝えた。
「実はそんな私に知り合いで唯一勝ってるのって紅葉くらいなんだけど?」
「幼馴染だからな。お前のやる事は見切っている」
「見切っただけで理沙に通用する話なのかな?」
「勇敢な瞳を光らせれば自ずと魂は進化していく」
「そんなテニスのミュージカル的なこと言われても……」
「理沙とお兄ちゃんなんの話してるの?」
「「有機と人参の話」」
理沙も楓も正直本気でゲームをしたら強いのは紅葉なのではと考える。彼はゲームは基本的にしない。楓や理沙に誘われる時以外はお弁当を作ったり、掃除したりして、男子学生とは程遠い家事男子をしている。
だが、ゲームだろうが勉強だろうが、一度始めたら楓や理沙がドン引きするほどの集中力で、核心を見つけるのが得意であった。
ゲームの実力は理沙や楓より下なのは確か。だが、彼の集中力は一度本気で始めたら誰かが声をかけるどころか、頭を強く叩かないと気づきもしないし、反応しない。
彼が理沙に勝てるのは幼馴染だからと言っていたが、それは違う。その集中力で理沙の行動パターンや画面以外に理沙の指先の動きすらも視界に入れて、攻撃タイミングを見計らい、何かを仕掛ける。
理沙が攻めの策を考えて行動する軍師なら、紅葉はそれをしっかりと受けた後、同じ攻撃を一切受けない兵士。それが、紅葉が理沙に勝てる理由。まぁ、全集中で本気出した時だけだが。
「まぁ、ゲームは嫌いじゃないけどさ。積極的にやったら……また理沙に叩かれるから嫌だ」
「そうでもしないと紅葉ご飯どころか飲み物も飲まないでしょ……」
「もっと言うとたまに雷の無呼吸」
「呼吸しないと死んじゃうよお兄ちゃん。ゲームに溺れて現実で死んじゃったら私理沙の家にあるゲーム全部燃やすよ?」
「紅葉、私のゲームのために死なないで!!」
「ゲームのためかい」
そんな会話で3人は笑うのがいつもの日常であるが、理沙と紅葉はこの時から既に、お互いに惹かれていたのは楓は知っていた。
「まぁ、いつか俺も理沙みたいにスタァになるよ」
「なんかスターのニュアンスおかしくなかった!?」
「お兄ちゃんたまに演劇見るの好きだよね」
「約束する。スタァは俺ともう1人だけだといつか言える日が来ることを」
☆
最近、自分の様子がおかしいことに理沙は気がついた。紅葉の事が頭から離れない。朝起きたらゲームよりも紅葉のお弁当を楽しみにしてしまうし、学校で彼に会うと凄く嬉しい。たまに風邪で休んだ時はこの世の終わりみたいな顔をしていると彼の妹に指摘されたりする。
「紅葉好き? 紅葉愛してる? 紅葉……紅葉? 紅葉ちゃん愛してる……うん。これだね!」
口に出したら何となくその疑問が解決すると思ったが、誰も返事をしない。少しだけ恥ずかしくなりながら、彼女はとりあえずインターネットでそう言った関係を調べることにしたのだが……
「うわぁ……恋人ってこんなことするんだ……へぇ……凄いなぁ」
変態末期の白峯理沙がここに完成したのは言うまでも無かった。一方で場所は変わって本条家では……
「お兄ちゃん理沙の事好きでしょ?」
「愛してる」
「誤魔化さないの!? しかも妹の前で恥ずかしくないんだ!?」
「恥ずかしいけど……やっぱり堂々とした方がいいじゃん」
「じゃあ好きって伝えればいいじゃん」
「仮にもゲーム界隈では有名人なんだから高みだろ」
「でも幼馴染じゃん」
「俺がスタァになってからな」
「前から思ってたけどスターのニュアンスおかしくない??」
「ポジションゼロを目指すわ」
「やめて、なんか意味分かったから」
紅葉が理沙の事を好きなのは楓も分かっていたので告白するかしないかで言い争っていた。
紅葉は理沙の事が好きだが、大会優勝者なのもあり、告白に少し躊躇いがある。対して楓はそんなの関係なしに幼馴染なんだから好きなら好きと言えと主張した。
「理沙は可愛いよな。アイツ実はめっちゃ歌上手いんだぞ」
「何の脈絡もなく理沙を褒め出したのならお兄ちゃんもう末期だよ。拗らせてるよ。確かにたまにバンドやってたって厨二病エピソード聞いてるし、本当に上手いけど」
「いつか……隣で並べそうになったら言うわ……ゲームとか」
「お兄ちゃんあんまりゲームしないじゃん。やったらめっちゃ強いけど」
「ははっ、ご冗談を」
呆れて物申すことしか出来ない楓である。翌日理沙と下校中に、楓は思い切って聞いてみた。
「ねえ理沙、お兄ちゃんの事どう思ってる?」
「紅葉ちゃん襲いたい」
「え??」
「え? ああ……頼れるお兄ちゃんかなぁ……」
「あぁ……そっかぁ……」
一瞬聞き捨てならない言葉が聞こえたが、後に発されたセリフを聞いて少し落ち込んだ楓。脈なしかなと思ったが念のため聞いてみた。
「お兄ちゃんの事好き?」
「まぁ、紅葉はめっちゃ好きだよ。急にどうしたの?」
「いやぁ……私達ずっといるからさ……えっと……ほら、倦怠期とかになってないかなって!!」
「まだ私、紅葉ちゃんと結婚してない」
「え?」
「え? あ、もしかして1人だけ男の子だからウザイとか思ってるって事?」
「う、うん。そう」
「無いね、絶対無い。紅葉はいつも私達に優しいから嫌いになるわけないよ」
「そ、そうだよね! 良かった……」
「そういえば私も楓に聞きたいんだけど……紅葉ちゃんって性欲ある?」
「もう誤魔化されないところまで来ちゃった!!? というかお兄ちゃんの事紅葉ちゃんって呼んでるの!?」
「いや、紅葉好きって口ずさんだら恥ずかしくなるからちゃん付けで誤魔化してるだけ」
楓が理沙に事情を聞くと、めちゃくちゃ顔が赤くなった……楓が。
「理沙は何を調べてるの!!?」
「いや、だって……ほら……女の子2人と男の子1人。何も起きない訳はなくってやつで……」
「私は妹なんだけどね!? ってか理沙そんなに興味あったんだ……」
「一度みたらハマっちゃって……」
「一応聞くけど……何に?」
「エロゲ」
「お願いだからその大会だけは出ないでね!?」
例えゲームの大会で優勝してもエロゲの大会とはなんなのか疑問すぎる楓である。
(とりあえずお兄ちゃんには黙っておこう。貞操の危機だし……ってか普通逆じゃない??)
☆
「サリー、好きだ。俺達付き合おう」
「こ、コウヨウちゃん……」
「俺は男なんだが……」
そう言われたのは時がかなり経ったNWOゲームの中である。ゲーム内では久しぶりにあった紅葉……ここではコウヨウだが、理沙は、サリーはその強さに驚きを隠せなかった。
大規模なギルドや大軍をたった1人で完膚なきまでに潰した挙句、訳の分からないスキルやステータスで完全一撃必殺の超攻撃特化プレイヤーと化した彼。
そんな彼を見ると、サリーが昔に予想した自分よりコウヨウの方がゲーム大会以前に脅威になりうる人間が事実になったのだ。
「付き合えたのは良いけど……コウヨウに追いつかないと……」
「やっと見つけた……私と対等に戦えるゲーム仲間……それが幼馴染で惚れた男の子なのは少し複雑だけど……」
「メイプルも強くなってるし……仮にメイプルと相打ちになったとしても、コウヨウには勝てる気がしない……絶対勝ってやる」
昔からゲーム以外では守られていたサリーは、せめてゲームの中では、コウヨウを守ろうと決意した。だからこそ、一度彼が死んだと言う話を受けた時、1番に涙を流しながらも信じられなかったのはサリーである。
「ねぇ……サリー……」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……」
「お、落ち着いて……サリー!」
「これが落ち着いてなんていられるか!!」
本気でキレたのはいつぶりだろうか。いや、そもそもここまで怒りに身を任せた事は無いはずである。ゲームの大会でも苛立ちはあったが、そこまで怒ることはなかった。
彼の妹であるメイプルがサリーを落ち着かせようとしても、ガン無視で怒りの矛先を敵プレイヤーに向けた。
「コウヨウが死んだ……? 一体誰が、私の恋人を……私の本気のライバルを殺したんだ!!」
「サリー待って!!」
メイプルはサリーの肩を全力で掴む。ゲームだとステータスの関係でサリーにすぐ抜けられて終わるのだが、メイプルは自分が持てる攻撃スキルで全力でサリーをとうせんぼする。
「メイプル! 邪魔しないで! コウヨウを殺した人は……絶対に許さない!!」
「コウヨウとメイプルを倒すのは私! 私以外に負けるなんて絶対許さない!!」
「だからって今突っ込んでサリーが死んじゃったら意味ないじゃん!!」
「どけろメイプル!!」
「絶対どけない!!」
「お前達なにやってるんだ!?」
最終的にはクロムが止めてくれて助かったのだが、あの時サリーが本気で向かって行ったら恐らくサリーまで死んでいた。彼女は大人に止められた事もあり、何も話はしなかったのだが、怒りは絶対に収まらない。
「私は……ゲームですらも……好きな人を守れないのか……くそっ!」
サリーはしばらく項垂れた。彼女の耳から聞こえるのは他の誰でもなく、彼の声。
『理沙、弁当作ったから食べてくれ』
『またゲームばっかやってんのか? たまには勉強もしろよ……いや、勉強はいいや。どうせお前しないし……そんな事よりも買い物付き合ってくれ』
『理沙、怖いのにゾンビゲームなんて買うから……全く。俺がプレイするからお前は背中にでも隠れてろよ』
『理沙、なんで俺はお前のベッドに押し倒され……ちょ!? 理沙何して……うわやめ……あ……』
『理沙……ちょっと恨むぞ……え? いや……その……気持ちは良かったけど……だけどあんな理沙が上の体勢なんて……あ……ごめんなさい謝るからこれ以上は……うわなにするバカやめ……あ……』
現実では大人しくて可愛い少女だが3人の中で1番泣き虫な楓と元気で活発な少女だがお化けだけは無理な理沙に対していつも優しく声をかけてくれたのは、親でも友達でも無く、他でもない本条紅葉である。
『お前とは戦いたくねぇよサリー!』
『俺はサリーと楽しくゲームがしたいから遊んでるのになんでお前と戦わんといけないんだ』
『サリー、俺を倒すんじゃなくて釣りでもしようぜ』
『サリー! 会いたかったですわ!!』
『メイプルとサリーを傷つけたら俺が殺す、人殺しは大嫌いだけどそれだけは絶対だ。分かったら潔く腹を切れ』
『俺はサリー愛してるぞ』
『わたくしはサリーを愛してますわよ』
それはゲームでも変わらず。だが、何故だろう、思い出してはいけないような記憶(特に紅葉が)も思い出してしまったが、それでもサリーは悲しみに暮れた。
だから、許して欲しい。これはサリーのじゃれ合いなのだと。頭を殴ったり、ダガーで味方を殺そうとしたりしたが、それを見ても彼には許して欲しいのだ。
「ちーすサリー、一度死んだが生き延びたぞ」
「コウヨウ……早く連絡よこせバカ!」
「ホイップ」
「ふざけんな!!」
「マホイップ」
「進化するな!!」
「紙コップ」
「原型とどめてないじゃん!!」
白峯理沙は総じて本条紅葉を本気で愛しているのだから。だから、もう二度と自分を悲しませないで欲しい。理沙の永遠のライバルで最高の仲間は楓ことメイプルと紅葉ことコウヨウなのだから。
「もう誰にも邪魔させねぇよ、俺だけの舞台だ」
「コウヨウ何する気??」
「これから真のオーディションしてくる。みんなも付き合え」
「もうお願いだから待機して!?」
「もう手の内バレたから無理だな。さぁて、今日も張り切って……」
「にっこにっこやー! パワー!」
「お兄ちゃんは色々謝って来て」