妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「逃がした?」
「ごめん、コウヨウ。流石に無理だった」
「いいよぉ」
「軽いな」
サリーはコウヨウにベルベットとミィに逃げられたとコウヨウに伝えて謝るが、コウヨウは全く気にしない。
「まぁ、後で斬ればいい。あっちはもう火遊び女とアームドギア系女子の2人だ。かなりヤバいやつがいなければ、なんとかなるだろ」
「アームドギア系女子って何??」
「流石だなコウヨウ」
「ペインさん、お疲れ様です」
「ペインさん、お疲れ様です」
サリーと話していると、ペインがやってきたのでサリーに続いて挨拶をしたコウヨウ。向こうもかなり激戦だったらしくこちらに来るのが遅くなったらしい。コウヨウが声をかけると、ペインは少しばかり頭を下げた。
急な行動にコウヨウもサリーも慌てながら何をしたのかと聞いた。
「今回、俺はギルドマスターなのに、向こうの主戦力を削ることが出来なかったからな。サリーの策がなければ、なんならコウヨウがいなければ、向こうに大打撃を与えることは出来なかった。ありがとう。そして、申し訳ない」
「そんな! ペインさんだって何もしてないわけでは無いじゃないですか」
「そうですよ。というか、頭下げるのは終わってからで良いんじゃないですか」
「終わってからとは?」
「俺だって1回死んだんですから。本来ならこのメンバーの最初の脱落者は俺なはずです。謝るのは俺の方ですよ。イベントが終わって反省会した時にお互い頭下げましょう。ペインさんは悪いことして無いですけど」
わらしがいなければ本来は発動しないスキルはコウヨウの絶対的な助けになった。最強の相棒は犠牲になってしまったが、彼はそれもあるからこそ次は敗北しないとハッキリ伝えた。
「謝るくらいなら死ぬな……なんて、俺はもう言えませんけど、せっかく貰った命なら暴れ回って這いずり回って……それから死んでやります」
「だいぶ変わったな、コウヨウ」
「いや、これがコウヨウですよ。今凄く怒ってるので」
「そ、そうなのか??」
「とりあえず全員顔面殴ってから刺し殺す事にします。トップスタァになるのは俺です」
「な、なんの話だ……??」
「ポジションゼロ。My name is コウヨウ」
「なんかやっぱりコウヨウ変かも……」
いつものコウヨウらしからぬ言葉に動揺するペイン。サリーはサリーで全く気にする素振りもなく、これがコウヨウが本気で怒った時の態度だと言った。
「因みに、普段のコウヨウは私の事を殴らないですからね」
「それは……そうだろう?」
「最近フレデリカやらシンさんやらに私がコウヨウに殴られてないか確かめてくるので」
「サリーとメイプルは殴らん。2人に手を出したら殴るだけだ……因みに前の決闘の時に初撃でペインさん殴り飛ばしたのはメイプルの仇です」
「だから真っ先に狙われたのか……」
「ペインさんどころかミィさんも殴るとかそろそろヤバいよコウヨウ」
かなり暴力装置なコウヨウだが、頭の心の中ではサリーとメイプルを苦しめた人間は地獄を見せるという想いだけである。
「所で、何か報告でも?」
「あぁ、コウヨウと言うよりかはサリーにな」
「ほう……」
「コウヨウ一旦落ち着いて」
「俺は落ち着いてるぞ」
「ならまずはその刀に手を置くことをやめてくれないか?」
「まぁ、ペインさんの事なので万が一の話はされないと思いますが……どういう話ですか?」
「少しだけサリーを借り……」
「はっ殺(はぁ? 殺す!)」
「話を聞いてくれないか!?」
「コウヨウ落ち着け!? というか……なんで私なんですか?」
「サリーはそれよりも俺の首に刺さりかけてる刀をどうにかしてくれないか!?」
「すみません、私も今マジで速すぎて反応が遅れました……え……マジで……嘘でしょ……??」
「俺の、サリーに、何か?」
「俺がここまで恐怖したのはお前が初めてなんだが……」
コウヨウが本気で怒れば、味方にも容赦は無いそうだ。刀を首に近づけられたペインは落ち着いたフリをしまくって、準備運動がてら修練場でサリーと撃ち込みたいということだけ言った。
因みにサリーとペインの2人は本気で焦った。マジであの一瞬だけペインおろかサリーさえも見逃す一閃。ペインは冷や汗が止まらず恐怖して、サリーは自分が愛されてると感じた同時に万が一、億が一、浮気をしてしまった瞬間確実に殺されると感じた。自分か相手かは分からないが、マジで恐ろしかったみたいだ。
「コウヨウでもいいんだが……本気でやったら俺がガス欠しそうでな」
「しゃーなしですね……サリー、行ってこい」
「うん。そういう事なら……あれ? コウヨウは?」
「自分のスキルチェック。使えそうなものあれば使い切る事にする。後、メイプルに話聞いてくるわ」
そう言って、コウヨウは1人でメイプルの元に行った。2人きりになったサリーとペインは修練場まで歩く。
「良い顔だな」
「え?」
「あの時のサリーは……中身が死んでいた」
「あ……アハハ……まぁ、そうなりますよ」
ペインが言ったのは、コウヨウが死んだと聞いた時のサリーである。彼女が怒り狂ったのはメイプルだけでなくペインも見ていた。ユイやマイはともかくあそこまでキレるサリーは初めて見るし、そのまま何も無しに突っ込んでいくなんて、普段は絶対にしない。
「かくいう俺も動揺しかしてないからな」
「ペインさんもですか?」
「いや、今の一撃も動揺したが……」
「あれは私も予想はしてましたけど……確実に私に向けられたらダメージ入ってましたよ……」
「サリーがそこまでいうなんて……話を戻すとだ。トップギルドマスターである俺とミィ、メイプルの3人を相手にしてやっとあそこまでコウヨウを追い詰めた。1対1なら勝率は100%のコウヨウが、上位のギルドマスターといえども、今のアイツが4人しか相手してないのに負けるとは信じがたいからな」
別に、ウィルやリリィ、ヒナタにベルベットが弱いわけでは無い。それ以上に、コウヨウが最強すぎて負ける想像は一切付かなかったのだ。そんな時にコウヨウが死んだと言う話を聞いた時は、ペインも冷静にはなれなかった。
「正直俺は怖かったよ。コウヨウよりも強いやつがいたのかとね……でも、蓋を開ければ……うん。束になったからこそ勝てた相手だ」
1対1なら絶対に負ける相手では無いとペインは言う。現に、4人がかりでも1人は死んだのだ。結論言うと今回は彼らの戦略勝ちだとも伝えた。
それでもコウヨウはやはり化物である。訳の分からないスキルで生き返った挙句、リベンジマッチで3人目を斬り裂いて、脅威はデータさえ間違えてなければベルベットとミィだけになる。
「あの一閃含めてやっぱり、彼にはどれだけ挑んでも勝てる気はしないよ」
「それでも、私はコウヨウに勝ちたいです。仮に何度負けても」
例外的な試合とは言え、ダメージを食らうつもりだったサリー。その相手は昔からいつも一緒に遊んでいた幼馴染であり、恋人のコウヨウのみである。油断というか、そこまで本気で挑んだわけでは無かったのでサリーが悪いのだが、それでも攻撃が当たる可能性を生み出されるとは思わなかったのだ。
「そういえばメイプルから聞いたな……どうやって敗北を?」
「俺はサリーを斬りたくねぇよって言われて……身体を投げられました。ダメージは無かったので負けたとはシステム上出てませんが、テイムモンスターの朧はムサシに斬られました」
「もう突っ込む気もないよ……」
彼は誰よりも遅く来るのにも関わらず、誰よりも早く未知の領域に足を踏み込む。そんなコウヨウの脅威は昔からサリーも気がついていたが、ここまで自分を抜かすとは思っていなかったのである。
「あいつの強さの根源はなんなんだろうか?」
「わかりません……本人は攻撃を受け止めて見切る力と言ってますけど……それ以外が1番大きいと思うんです」
「サリーでもわからなければ俺が分かるわけないな」
「でも……多分誰かの為に動くからなんじゃないですかね、1人でも、複数でも、誰かの為に絶対負けないって自分を奮い立たせて、あの強さなんだと思います」
「お人好しが原動力ならアイツにピッタリだな。なんやかんや言っても、今はいないテイムモンスターや俺たちの為に刀を振ってくれてるのだから」
「あの愛情をもっと私だけに向けてくれないかなぁ……メイプルはともかく……ユイとマイと最近距離近いし……」
「万が一コウヨウが魔が指したら俺が止めてやろうか?」
「お願いします」
そんな会話をしながら、サリーとペインは互角に戦っていたのだった。
☆
「全く使えるスキルがねぇな……いやあるけど見切られて終わりか……」
一方でコウヨウはかなり悩みまくっている。奥の手は尽くせる限り尽くしてしまったからであった。残りの種は戦略的に取っておいたあと一回使える【無双転生】、もう一つは【無詠唱】である。わらしの【冥界の施し】は正直完全なラッキー予想外。悪運の強いコウヨウでも、イベントでも使えるのは驚いた。
それでも、万策は正直尽きた。次のベルベットとミィを倒す手段は、今までのスキルを使い切る事だが、一度見せたものが通用するかは謎である。
「【海皇】や【毒竜】を目の前まで迫って使うのも一つか……」
恐らくコウヨウが勝てる鍵は【無詠唱】。だが、どのスキルを【無詠唱】するかによって、勝率は変わる。
「【雷加速】は見せたから……恐らく構えで読まれるか……刀のスキルも【呪斬】がノーモーションくらい……サリーなら避ける……」
そこまで言ってコウヨウはハッとする。少し笑いながらいつも考えることはサリーかと自分が彼女にどれだけ惚れているのかが分かった。
「今はサリーが相手では無いが……あいつが万が一敵になるなら……これの応用しかねぇよな」
「ムサシ……お前が俺を最強だと言ってくれるなら、お前達の強さも背負って、いつか全員ぶった斬ってやるぜ」
そう言いながら、彼はメイプルの元に歩いて行ったのだった。
『大丈夫かしら、彼』
『さぁな。でも、今は大丈夫だろう。問題はこの先だがな……』
『信じて待つしか無いのよね』
別の場所でモニターを見ながら、寝転がってお菓子を食べる彼のテイムモンスター達はその姿に似つかず心配していたという。