妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「決行は予定通りとする」
「はい、大丈夫です!」
ペインの声かけにメイプルは返事をする。【楓の木】と【集う聖剣】のメンバーが集まり、今度こそ均衡を破ると決意をしたのだ。
「私を信じて命を預けて、メイプル」
「なら、私もサリーの命貰おうかな!」
メイプルとサリーは作戦会議の後、2人でお互いを守る決意を固めた。それを見ながらコウヨウは少しだけ暗い顔をしながらもクロムと話していた。
「なんとかここまで来たが、やっぱり冷静に考えると本当に……笑えねぇな」
「コウヨウ? 何か言ったか?」
「いえ……何も……結局俺は強くなってスタァになっても1人か……」
「スタァ?? 1人??」
「1人でも、スタァみたいです」
対してクロムとコウヨウは久しぶりに男2人で肩を並べて話をする。コウヨウはサリーとメイプルを見ながら少し目を細めて意味不明な言葉を使うが、クロムはクロムで意味不明だと答えた。
「にしても、お前すごいよ本当に。俺たちじゃ真似出来ない」
「それはサリーとメイプルに言って下さい。俺はただ、2人が消えるのを見たくないだけです。だから亡霊のように生き返った……後はもう少し敵を減らして、邪魔者を刈り取れば……」
「いや、もう充分だろ」
それだけの理由でコンティニューしてもうすぐ2000キル達成をしそうな彼は、クロムからすればとてつもない事に変わりはない。それでも、クロムが見たコウヨウの表情はどこか浮かない。
「しかしながら正直奥の手は尽きました。サリーとメイプルがまだあるらしいですけど、俺はもう通用しないはずです」
「俺はとんでもないスキルだと思うがなぁ……仮に【無詠唱】ってやつが通用しない可能性がある相手だとしても、お前ならやれるだろ?」
「仮に今ミィさん達をやれても……結局サリーには勝てません」
「お前……本気でヤバいな……」
サリーに対しての愛なのか、別の何かなのかはクロムも言わなかったが、ある程度の意味は自分の言葉で理解したコウヨウ。
「なんででしょうね……昔は普通に可愛い幼馴染と妹がいたなぁくらいでしたけど、ここまで本気でサリーに追いつきたいなんで思ったのはゲームでは過去に無いです。現実も一切無いです。ただ、何故か今この段階では……味方でも倒したいです」
「幼馴染で負けたくない感情が出来たのは喜ぶ事だと思うが、ゲームくらいは譲ってやれ。サリー結構お前にライバル熱燃やしてるんだぞ? メイプルも勿論」
「意地と命があるなら登って、斬ってやりたい」
「譲れないのか」
「付き合っても、幼馴染でも……なんやかんやライバルになれるなら勝ちたいじゃないですか……人殺しはアレですが、やっぱり戦いを好む俺がいます……ポジションを掴み取る為に……あの星を、スタァを掴む為に……おかしいな。昔はみんなと一緒に仲良くゲームしたかったのに……」
「コウヨウ……」
コウヨウがこのイベントに参加した真意は最初自分でも謎だった。人殺しは嫌いだと言いながら、みんなに感化されて仕方なく参加したと本人は思っていたが、その心の中では、誰よりもプレイヤーキルを望んでいたらしい。
「俺は奇跡の殺戮者だぁ」
「まぁ……否定はしない」
「して下さい」
「まぁ、アレだな無理はするなよ」
「ホイップ(はい)。じゃがいも(じゃあもう)行きますね」「何ひとつ情報が入ってこないんだが」
そう言ってコウヨウは歩いて行く。クロムは死なないでくださいと伝えてくれた彼の背中を見つめながらつぶやいた。
「俺は意外にも、争うコウヨウが結構好きなんだけどなぁ……」
「クロム、今貴方コウヨウ君に好きって言ったの?」
「いや……違う!? 誤解だイズ!?」
「サリー!! 大変だ! クロムがコウヨウに告白した!!」
「カスミ何言ってんだ! そんな事してねぇ!!」
「クロムさん? 死にますか?」
「嫌なこった!!」
弄られるという意味で、クロムはこの後掲示板のセクシャル地獄を受ける事になったのは言うまでもなかった。
☆
「身を浅く思ひ、世を深く思ふ……ベルベットォォォォ!! テメェは俺がぶん殴る!!」
「なんか……恐ろしい言葉が聞こえるんですけど……」
「ベルベットさん! 奴がもう目の前に来てます!?」
「嘘!? ヤバいっす!?」
「Spaziergang!! 俺はSpaziergangするんだぁぁ!!」
「もはや何語なの!?」
「多分ドイツ語で散歩って言ってます!!」
「そろそろあの人本気で意味わかんないっす!?」
ベルベットは多くのプレイヤーを連れて攻めに来たのだが、誰を連れて行ってもドイツ語を話すコウヨウに蹴散らされた。挙げ句の果てにもう目の前まで来ていると言うのだが本気でやめてほしい。しかもぶん殴ると宣言されてである。
「殴らせろぉぉぉ!!」
まさかの刀ではなく拳でベルベットに立ち向かう気のコウヨウは他のプレイヤーを刀で斬り刻んで軍勢に攻め込む。
「くっ、だったらお相手させて貰うっす! ヒナタの仇は私が取るっすよ!!」
「絶対、諦めないんだ、戦うことからー♪♪」
「歌わないで下さいっす!?」
拳と刀がぶつかって、多数のプレイヤーが吹き飛ばされた。刀を装備したコウヨウはベルベットが瀕死になったら殴ってやろうと思ったので、刀で攻める事にした。
「今は届かねぇ星でも、約束のためなら……うらぁ!!」
「うわっ!? 【無詠唱】っすか!?」
コウヨウの不意打ちである【海皇】はスキル詠唱されずに発動された。無数の波がベルベットを襲うが、彼女も稲妻のスキルを発動させながら波を一つ一つ消して行く。
「【過剰蓄電】!!」
「避けて見せる!!」
とてつもない数の雷や電流を避けるコウヨウはまさに疾風迅雷。雷よりも速いとはどう言うことかとベルベットは苦笑いするが、事実なのだから仕方ない。それでもベルベットは諦めずに彼の尻尾を掴んだ。
「俺は、歌で、ぶん殴る!!」
「見切ったっすよ……」
「なっ!? 目の前に……?」
「動作がバレバレっす……焦りすぎっすね」
その瞬間……コウヨウの腹部に一撃。
「【雷神再臨】!!」
「ゴハァ!!?」
彼はベルベットに全力で殴り飛ばされる……予定だったが普通に彼は地面に足をつけてベルベットの拳を止めた。
「え!? 私の拳が赤黒い血に!!?? こんなのシステムには……」
「俺が……何の対策も無しにテメェに喧嘩売ったと思うか? 散れ!」
「ぐっ!?」
「ヒーローならキックだろ!!」
「ぐはっ!?」
彼女のスキルを【名状しがたい何か】で受け止め、血を流したように見せかけたコウヨウ。ゲームシステムにはこんなグロい演出は無いのでふいをつかれたベルベットはそのまま腹を殴り返されたあと、蹴りで飛ばされるのであった。
「俺は諦めない。数え切れないほどの、希望と意思と強さを背負って、俺はここにいる!!」
「登って来なさい、意地があるなら! 殴ってみろや、命かけて!!」