妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流とトドメ

「俺はメイプルみたいに他が0って訳じゃねぇんだよ」

「お前達の不意を突かねば勝てる相手では無いのは承知だ」

 

 コウヨウがベルベットの一撃を止めた。スキルでガードしたとはいえ多少ダメージは負ったが、侍装備ボーナスでVITが100程あったからこそHPを残せた。

 彼は殴った後同時に二刀を構える。だったらもう一度だとベルベットは全力で殴りに行くが……

 

「もう見切った」

「へぇ……流石最強っすね……」

 

 その拳は二本の刀で止められた。完全に防いだ。コウヨウは弾き返してからゆっくりと二刀をベルベットに向けるように彼女は感じた。

 

「より高く、より輝く。来いや」

「なら……もう一度本気の全力……え?」

 

 ベルベットはスキル発動の前にコウヨウの姿を見た。だが、そのコウヨウはそこには力無くだらけて、二刀を地面に向けながら正面だけを向いている。

 

「舐められてる?」

「安心しろ、本気だ、これがお前の最後だぜ」

「そんな構えで、私を止められる訳……無いっすよ!! トドメっすコウヨウさん【雷神再臨】!!」

「キラメキの在処はここにあるんだよ。スタァになるのはこの俺だ……」

 

 ガンドレッドをコウヨウに向けて走り出すベルベット。繋ぐ拳は腕のギアだと言い張るように、彼に斬られた仲間の分まで束ねてコイツにぶつけてやると。だが、コウヨウは動かない。

 いや、動いてはいるが、それは両腕だけ。まるで範囲を絞ってどこか一点を狙うような動き。そうして射程距離まで、即ち間合いまでベルベットが突っ込んで行った瞬間。

 

「取ったぞ」

「え……私の腕に刀??」

「本当に正面から突っ込んでくる馬鹿がいるかよ……」

 

 静かに彼はベルベットの拳から腕にかけてある装備を刀の刃で引っ掛けて……吠えた。

 

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「う、嘘!? 身体が宙に浮いて……!?」

 

 ものの見事に、ベルベットを二刀で上に釣り上げた。彼女のスキル発動もなんのその。彼は【無詠唱】で【豪傑にして英雄】を発動して、バフをかけたSTRを使い【吹っ飛ばし】でベルベットを宙に吹っ飛ばした。更に【魔法削除】でベルベットのエフェクトをかき消して宙まで持っていった。まさかのMPをほぼ全て使った4重スキル同時発動である。

 

「俺の原点は釣り師だよ。それを忘れんな」

 

 急に宙に浮いたベルベットは困惑の声を上げたが、時は既にコウヨウのターン。目の前に【浮遊】をした彼はベルベットを宙に飛ばした際に振り上げた刀を……

 

「どっっっせい!!」

「がっ……ぐっ!?」

 

 叩き落として、ぶった斬った。身体が消えかけながらもありえない目でこちらを見るベルベットに対して彼は伝える。

 

「俺はまだ最強の二刀流じゃない。最強を目指す二刀流釣り師だ……」

 

 こうして、彼は一度敗北した相手に対して二度の敗北をすることは無かったのだった。

 

「ポジションゼロ!! My name is コウヨウ!」

「とりあえず……サリーに頭撫でて貰おう。疲れた……マジもう無理……」

 

 代わりにSAN値が大幅に削られたコウヨウは幼児退行したのだが、そんな事はどうだっていい。重要なことじゃあない。

 

 

『【楓の木】コウヨウがNPCとプレイヤー含め2000人斬りを達成しました』

 

「敵はよそにいるってのによ、人類同士で何やってんだろうな。俺達」

 

 ☆

 

「うわぁぁぁぁ!! コウヨウがトップギルドのワンツーを4人斬りしやがった!!」

「後はミィ含めた【炎帝の国】だけだ!」

「これはもう勝負決まったなぁ」

「いや、ミィも強い。現にあのメイプル達相手に一歩も引いてないぞ」

 

 観戦エリアで誰かが叫ぶ。コウヨウがベルベットをまるで釣竿にかかった魚のように上に吹っ飛ばして、そのまま空中で叩き斬った。

 ベルベットがコウヨウを殴り飛ばした時にはやっとあの無敗の最強がこの観戦側に回ると信じたものが多数いたが、結局観戦エリアに回ったのはベルベットだった。

 

「ヒナタ……ごめん。コウヨウさんは強かったっす」

「ううん……あれは私にも想定外……まさかベルベットのスキルごと上空に吹っ飛ばすなんて……」

「その前にあの化け物の血みたいなエフェクトで不意を疲れたっす……」

「あそこでベルベットが突っ込んで行かなかったら良かったのに」

「うっ……ごめんなさい……熱くなりました」

 

 それを可能にしたのは、ベルベットの攻撃を受ける前に【無詠唱】を使い、【名状しがたい何か】で攻撃を受け止めてタイムロスなしでバフを自身にかけた事。それがSTR数字を大幅に底上げした挙句、【吹っ飛ばし】で彼女を吹き飛ばした事。

 完全に意表を突かれた化物の力技になす術は無かった。

 

「やっぱり1対1は最強っすね。あの人」

「また4人だったら……倒せてたかな?」

「いや……うん。多分今のコウヨウさんなら無理っすね」

 

 ウィルやリリィには申し訳ないが、今のコウヨウに敵うものは恐らくいない。例え話ではあるが、ペイン、メイプル、サリー、ベルベット、ヒナタ、リリィ、ウィルバード、ミィ。このくらいの人数と実力で挑まないと、恐らく彼には……

 

「最強を目指す二刀流釣り師っすか……あれ以上にまだ強くなるなら……もう、私だけじゃなす術ないっすね」

「なら、今度はみんなで勝とうね」

「そうっすね」

 

 NWO対人戦においてみんなが見る中での最強はコウヨウ。そんな彼はいつの間にかサリー達の元に行って、2000キル以上を達成していたのだった。

 

「すまない、マイ。負けてしまった……」

「いえ、私もそうですから気にしないでください。それよりも……ユイが心配です」

「お前の妹は強いから大丈夫だろう。確かにマイがいないと危ないところもあるが、アイツはメイプルやサリー……もっと言えば、あのコウヨウから多少なりとも鍛え上げられた身だからな……それにしても……」

「流石コウヨウさんですね……私じゃ絶対無理だなぁ……」

「安心しろマイ。アレは誰もが無理だぞ」

 

 そう言いながら、カスミは観戦エリアの中継に映る、コウヨウの無双を見ていた。とうとうNPCとプレイヤー合わせて2000以上斬ったかと苦笑いしながらも、マイと一緒にユイの無事を確認すると、席に座った。

 

「た、大変だ……おいみんな!! コウヨウがサリーをお姫様抱っこしながら他のプレイヤー叩き潰してるぞ!?」

「「「いやどういう事!!??」」」

「あのバカはまたサリーのことしか眼中にないみたいだな……」

「こ、コウヨウさんらしいです……でも、なんか様子おかしくないですか??」

「うん?」

 

 その時マイは不思議に思った。そもそもこんな大事な場面で、怪我もしてないサリーを抱き抱えてどこかに行くのかと。カスミも確かにとマイの言葉を考えながら、モニターを眺める事にしたのだった。

 

 ☆

 

「サリー!!」

「どうしたのコウヨウ!?」

「抱きしめてくれぇぇぇ!!!」

「本当に何言ってるの!?」

「戦いの途中でイチャつくな!!」

「黙れ小僧!!」

 

 サリーからしたら急に恋人が近くまで現れたと思ったら敵を斬りながらハグをねだって来たのもあり、顔を赤らめて突っ込みを入れる。

 敵も敵で嫉妬の炎が燃えてはいるが、コウヨウに斬られてその炎ごと姿を消した。その瞬間コウヨウはサリーをお姫様抱っこしてそのまま【救いの手】を発動。そこからサリーをしっかり抱きしめながら宙を舞ってこちらにくるプレイヤーを潰しまくる。

 

「コウヨウ!? 恥ずかしいから……というか今1番大事な局面だから!!」

「嫌……離さない……もう無理……疲れた……サリー頭撫でて……そのまま2人で帰って寝ようぜ……」

「本当にどうしたの!!?」

 

 正直このイベントで色々な葛藤やら嫉妬やら気合いやら一度の敗北やらが混ざりまくって心身共に完全に疲れ切ったコウヨウ。HPもMPも充分にあるが、精神的に死にかけてるのでイベントどころかゲームプレイをしたくない。

 敵を叩き潰して自軍を有利にしている彼だが、眼は虚でもう何もかもどうでも良いような作り笑顔でサリーに伝えた。

 サリーは顔を赤くしながらも、いつもとは違う彼を見ながら心配しかしなかった。

 

「好きぃ……サリー……置いてかないで……俺を1人にしないで……」

「分かったから! コウヨウ! 一旦メイプルのところに戻って!!」

「分かったー……メイプルー……俺とサリーは辞退しまーす……」

「しないからね!!?」

 

 そう言いながらコウヨウはメイプルの元に向かっていく。メイプルもメイプルで敵に囲まれていたのもあったので、コウヨウが問答無用で全員殺して妹に伝えた。

 

「メイプル……リタイアしたい……」

「どうしちゃったのお兄ちゃん!!?」

「多分、凄く疲れてるんだと思う……現実では私達より持久力とか集中力とかあるけど……今回のイベントはほとんどコウヨウがプレイヤーキルとかやってくれたし……」

「どうしよう……何もしてないのにまた涙が出て来た……」

「「ヤバくないそれ!?」」

 

 まるで心が壊れた人間が陥る負の連鎖のような状態になったコウヨウ。急に泣き出してメイプルに抱きつく姿をサリーは見ながら只事ではないことを確認して、1つ決断をした。

 

「メイプル、私達でやろう。しばらくコウヨウは休ませる。カスミが死んだけど……まだ戦えない訳じゃない」

「うん……お兄ちゃん、ありがとう。お疲れ様。少し休んでてね……誰か! お兄ちゃんを連れて後ろに下がってください!!」

「メイプルさん!! 私が師匠を運びます!!」

 

 そう言って手を上げたのはユイ。姉のマイは死んでしまったが、1人泣かずに頑張っていた。彼女はコウヨウがかなり弱っている姿を見て、自分が彼に対して出来ることを考えた結果、手を上げたのだ。

 

「師匠にはいつも助けてもらってますから……お姉ちゃんの分まで師匠や【楓の木】の助けになりたいです」

「「ええ子やなぁ……」」

 

 もはやこの言葉しか出なかったメイプルとサリー。急がないと敵が来てしまうので、早々にユイとコウヨウを退却させる。身長差は少しあるが、【楓の木】でコウヨウの次にSTRがあるのはそれに極振りしたユイとマイである。ユイは男であるコウヨウを躊躇いなしに持ち上げてそのまま運んで行った。

 

「師匠! 私が安全なところに運びます!」

「うん……ごめん……ユイ……」

「謝らないで下さい! むしろ私達が師匠に感謝するのが正しいんですから!!」

 

 ユイはコウヨウをある程度後ろまで運んでから、地面に座らせて、落ち着かせる。コウヨウよりは年下ではあるが、今回ばかりはユイの方が大人であった。

 ふと、コウヨウは何も考えずにユイを抱きしめる。慌てながら両手を振って驚いたユイだが、抱きしめられたコウヨウの口からは少しばかり啜り泣く声が聞こえてくる。

 

「ユイ……ごめん……少しこのままで頼む……」

「はい……あの……私で良ければ……お話聞きますよ? まだ、ここは比較的安全ですから」

 

 コウヨウは少しづつ、ユイに語り出す。何故彼が急に泣き出したのか。

 

「俺はさ……サリーの事愛してる……だけど、サリーの1番にはなれない」

「え?」

「俺はメイプルやサリーの中の親友ではなかったと言うことだよ」

 

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