妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「しろみねりさです!」
彼が初めて白峯理沙と出会った時は元気な子だなと思った。妹の楓は少し大人しく、臆病な所もあったから新鮮だった。楓は少し紅葉の背中に隠れながら挨拶をしたので、自分も挨拶をした。
「何して遊ぶ? りさちゃん」
「ゲーム!!」
「げ、ゲーム?」
理沙が紅葉達と遊びたがってたのはTVゲームやらVRゲームだった。紅葉も楓もあまりやったことが無いので、理沙からやり方を聞いて遊んでいたが……
「もみじくん弱いね」
「ゲームなんてやったことないんだから……」
「でも、お兄ちゃん私より弱くない?」
「ゴフッ……」
普通に紅葉は弱すぎた。どんなゲームをしても理沙どころか、楓に負け続けた。これはいけないと紅葉は考えた。このままでは兄としての威厳もなくなるし、楓はともかく、折角会えた友達に相手をしてもらえなくなると。
だからこそ、彼はこっそりその手の攻略サイトなどをネットで検索して、幼い子にしてはかなり勉強した。その結果、理沙や楓にも勝てるようにはなった。それでも理沙にはあまり勝てることは少なかったが。
凄い凄いと褒める楓に対して、1番ライバル心を燃やしていたのは理沙である。その時から理沙は本気でゲームを極め出して、大会の上位入賞どころか、優勝してしまった。
「どう! 紅葉! 私ゲームで一番になったよ!」
「ああ、お母さんから聞いたよ。凄いな理沙は」
「紅葉! 今度また対戦して!」
「俺弱いけど?」
彼女はゲームやら学校であった事など、紅葉や楓に話してくれた。その時点で、彼は理沙が素直な性格である事に心は少し惹かれていた。そして、最終的に惚れたのは、紅葉の方である。それはお化け屋敷の時だった。
「紅葉……怖い……」
「理沙がお化け苦手だったとはな……」
「お兄ちゃん……私も後ろにいて良い?」
「誘っておいてお前もか……良いぞ」
お祭りの日に、3人で遊んでいた時、お化け屋敷を楓が行きたいと駄々を捏ねたのもあり、3人で向かったのだが、理沙の様子がかなりおかしかった。理由を聞くと、どうやらお化けの類が苦手らしいという事を聞いた。
仕方ないと紅葉は考えて楓と理沙に背中を掴ませてそのまま入った。大声で叫びながら彼の後ろで服を掴む理沙や、お化けはそこまで怖くないが、その声にビビる楓を連れて、紅葉はリタイアエリアまで一直線に向かっていったのだった。
「紅葉……」
「どうした理沙、お化けはもういないぞ?」
「守ってくれてありがとう……」
「お兄ちゃん、私もありがとう!」
大した事ではない。少なくとも、紅葉がやったことは別に自慢できる程のものではなかった。それでも、理沙や楓が笑顔で、特に理沙は涙を我慢してまでも、そう伝えるものだから、彼としては1番心に残った。
「理沙ってさ……めっちゃ可愛いよな」
「え……え!? いや……別に……そんな……」
「あ……ふぅん……お兄ちゃん……やられたかぁ」
慌てながら否定する理沙の頭を撫でながら、楓にも同じ事をした。この時からかわからないけれども、少なくとも紅葉の好きな人は理沙であったのは確実である。
「お兄ちゃんが料理してる……」
「おはよう楓。まぁ、良いだろ? 今お前の分も作ってやるからな」
「う、うん……ありがとう……? (多分理沙のためかな)」
その時からだろうか、紅葉が理沙のために覚醒したのは。料理を勉強して、髪も整えて、気づかれないようにと理沙や楓に1つ2つ笑い話で盛り上げる。そんな側から見たらみっともないような、あるいは誇らしいような行動を紅葉はし続けた。
「はあ!? なんで今の攻撃避けられるの!?」
「理沙の攻撃は見切った。楓、次はお前だ」
「お兄ちゃん怖いよ!?」
「というか紅葉が普通に強い」
「俺は普通ですぅ」
全力で彼女の好きなものに紅葉もついていく事にした。そんな様子を楓も見て、いつの間にか味方になってくれていた。
「お兄ちゃん理沙の事好きなの?」
「うん。大好きだけど……やっぱり変か?」
「2人して隠しもしない……ううん。確かに幼馴染を好きになるのは珍しい事だけど……でも、お兄ちゃんと理沙なら仲良く出来そう」
「そうかな? それだと良いんだが……」
「お兄ちゃんが働いて、家事やって、理沙が家の中でゲームするの」
「理沙がただのヒモじゃねぇかよ」
楓は紐というよりかはプロゲーマーとして収入を得るという意味で言ったのだが、紅葉は普通にヒモだと突っ込んだ。
「お兄ちゃん、理沙のゲーム邪魔したらダメだよ? 殴られるから」
「え? 俺理沙からDV受けるの?」
理沙は本気でゲームをすると人が変わったように、チッ、とか、くそっ、とか女の子らしくないワードを使いながら熱を燃やす。楓はそんな理沙の邪魔をすると、紅葉が殴られそうだと伝えたが、紅葉は、理沙は殴らないよと伝えておいた。
☆
「絶対面白いから! 楓もやって!」
そんなある日、理沙から薦められたNWOゲーム。紅葉はハードが無かった事もあり、楓や理沙とは遅れてゲームにログインした。そこから、彼の全ての考えどころか人生まるまる変わってしまったと言ってもおかしくない。
「はぁ? 楓が防御に極振りで攻撃受けてもダメージゼロ? それで理沙が回避盾で長年のPSがあるから攻撃を一切受けない? なんだこいつら……怖い」
本人2人の話を聞いたり、いざ噂を他のプレイヤーから聞いてみると、もはや紅葉では追いつく事が不可能な場所にまで行っていた幼馴染と妹。正直言って少し悔しかった。
「何だか……おいてかれた気分だなぁ。俺もやれやって話だけど……スタァになるなんて夢のまた夢か……」
釣りをしながら考える。女の子同士というのもあり、楓と理沙はまるで誰も寄せ付けないような、親友を超える関係にまで発展していたのは紅葉には分かっていた。2人の兄である紅葉はなんだか仲間外れにされた気分で面白くは無かったのは自分が子供だからだ。
「ベストフレンドか……俺にはいねぇな。友達も理沙と楓が可愛いからみんなそっち目当てだし……」
「キュルルルン?」
「お前が友達か? いや……流石に人間じゃないのはちょっと……」
「ワタシニンゲン」
「お前今しゃべった??」
それがゲームでも彼女達がサリー、メイプルになってからはお互いの命を預ける程に最高のベストパートナーになっていた事が、正直恋人の彼にとっては耐えられなかった。
本条紅葉は本条楓の兄ではある。白峯理沙の幼馴染で自分は2人より年上だ。それでも子供である事には間違いはない。男の子らしく、理沙達に負けたくないとか、仲間外れにしないで欲しいとか、多少の我儘はあった。
だけどそれは心に留めて、ずっと我慢していた。サリーと付き合ってからあるイベントの時も、サリーがゲームばかりで構ってくれないのを拗ねていた時期もあったが、基本的には彼は何も言わずにただその我儘を溜め込みすぎていた。
「強くなるのは良いけど、だからと言ってサリーやメイプル達と楽しくゲームをするしないは関係ない……んだなぁ」
「俺がしたかったのは1人で強くなって無双するとかこんなことじゃない。けどいつだってこのゲームで俺のやることは……1人で戦ってしまうだけだ」
「スタァは1人じゃねぇのにな……」
それが、この大事なイベントで決壊した。人殺しはしないと口では言っていた。ただ、サリーやメイプルのためとか言っておいて1人で戦っていた。でも本当は3人で協力して戦いたかったし、3人でお互いの命を預けるくらいの思いで、イベントを楽しみたかった。
だけど自分は兄としてでもあったが、そんな我儘でメイプルやサリーの頑張って考えた作戦を台無しにするわけにもいかない。第3回辺りのギルド対抗もそうだったが、今回はサリーやメイプル、【楓の木】達だけでなく、【集う聖剣】など、ゲームで知り合った知人の人も影響するイベントだから。
『メイプル、サリー、俺が2人を守るからさ、2人は俺を守って一緒に戦って欲しいんだ。妹として、親友として、恋人として、お願いしたいな』
素直にこう言えば何かが変わったのだろうか? 1人で戦って、負けて、サリーやメイプルを不安にさせるなんてなかったのだろうか? このゲームを3人で楽しく遊ぶ事が出来たのだろうか? 答えは、彼もわからなかった。
「もっと仲良くなりたいな……サリーやメイプルとみんなで楽しく遊びたいなぁ……なんで俺こんな事になったんだろう……?」
百合の間に挟まるなとはよく言うが、サリーの恋人は自分だし、メイプルに関しては妹もそうだがカナデという彼氏がいるのだ。
「分からないや……別に、孤独に慣れてるなんて馬鹿みたいなことは言わないけど……結局は……うん。俺は寂しがりやだったんだな……」
彼は理解した。自分が本当は楓や理沙よりも、もしかしたらNWOのプレイヤーの中で1番子供で1番弱い心を持っている事を……
☆
「結局、自分でも何を言いたいのか分からないけど……多分俺はサリーやメイプルと一緒の土台に立ちたいだけなんだ。強さとか友情とか……全部ひっくるめてさ……」
「もう同じ土台ですけど」
「まぁ、俺がただ嫉妬してなんも努力してないのが悪いんだけどな」
「もう同じ土台ですけど」
「俺ももっとサリーやメイプルとクエスト行って楽しみたい」
「もう同じ土台ですけど」
「botやめてねユイちゃん」
「結局努力も何もしないで寂しいとか我儘言ってるだけですよね。隣に立ちたいならもうちょっと頑張れば良いのに」
「すみませんでした」
「まぁ……師匠は頑張ってはいるんですかね? ただ、サリーさんとメイプルさんの3人で一緒ゲームしたりみんなで命預けたいなら最初からギルド入れば良かったのに」
「ユイちゃんその大槌で俺を殴ってくれ」
ユイはbot化しながらも話を聞いてくれていた。コウヨウからしたら難しい話だから混乱しているだけかと思ったのだが、まぁズバズバと事実を伝えてくるものだからコウヨウもダイレクトアタックくらっている。ふと、ユイもコウヨウに話をする。
「私も、師匠とは違う話しですけど……私って現実ではとっても非力なんですよ」
「そう言えば……STRに極振りした理由ってそれだっけか?」
「はい。それもありますけど……私は昔からお姉ちゃんに助けられてばかりだったんです。それが悔しいなぁって思ったことはありますよ。お姉ちゃんの助けになりたいなって、勿論もっと頼ってほしいです」
ユイも妹として姉であるマイによく助けられたという。自信満々に飛び出しながらも、転んだり、失敗したりして結局泣いてしまうのがユイだった。それでもマイは嫌な顔を1つせずに、笑顔でユイを抱きしめて、撫でてくれた。
「たまに怒られたりしましたけど……それでも私はお姉ちゃんの役に立ちたいんです。ゲームの中でも良いから……お姉ちゃんを助けたいんです」
「守りたいものを守れるように。私は、私のまま強くなりたい! コウヨウさんの言葉を借りるとスタァになりたいです」
「ユイ、お前……」
「だから……サリーさんの言葉を借りるなら『お前も頑張れよ』ってやつですね」
「ユイちゃんマジパネェっす」
「話は変わりますが、サリーさんやメイプルさんも、最近すごく仲良くなってます。ただ、別に師匠が嫌いとか、興味ないとかではなくて、きっと何度も師匠に助けてもらったから、2人で何か師匠の事を考えているんじゃないでしょうか?」
「考えてる?? というか俺が何をしたんだ?」
「恐らく、今までの行動が勝手に私達を救っていたということです」
「何そのラノベみたいなセリフ」
彼の言葉にユイはしっかりと答える。少なくとも、自分の大好きな人には喜んでもらいたいと。
「ほら……えっと……例えば、師匠の誕生日の日にサリーさんがクロムさんとか……ペインさんとか……師匠以外の男の人とデートみたいな事してたら、誰だって誤解しちゃいますよね?」
「まぁ……確かにな。事情は聞くけど……」
「でも、そういう時って割とサプライズパーティとかのオチがありませんか?」
「確かにな」
「それと多分……恐らく……1%同じです」
「確率論壊滅してるけど」
「サリーさんやメイプルさんが、最近仲がいいのはただ友情が深くなっただけじゃなくて、コウヨウさんに何かしようと画策してる可能性があると思いますよ」
その何かはなんなのか知らないが、とユイは伝えるが、ふと、考える。確かに、紅葉が誕生日の時にも理沙と楓はこそこそと2人で何かをして、結局プレゼントを考えてくれたなんてことはよくあった事である。
それでも、今回のケースは一体何なんだろうとコウヨウは考える。
「コウヨウさんに何かお返ししたいとか……多分2人でコウヨウさんを超えたいからこっそり特訓してるとかだと思います」
「俺を? なんで今更……」
「貴方が最強だからです。まごう事なきNWO世界一のプレイヤー。そんな貴方を倒したいから」
「本気でお前達はそう思ってんだなぁ……」
「隣の芝生理論です」
「今日なんかユイちゃん大人だね」
「コウヨウさんが駄々捏ねてるだけです」
ユイははっきりと彼の事を見て伝えた。本来なら茶化すなと言うコウヨウも自称自分の弟子やら妹やら恋人やら下手すれば赤の他人やらに言われ続けたらそろそろため息の1つを吐きたくなった。勿論悪い意味ではない。
「お前達は……そこまで俺を倒したいのか?」
「はい。貴方をぐっちゃぐちゃに蹂躙したいです」
「ひぇ……」
「そんな顔しないでください。そそりますよ?」
「ユイちゃんもしかして二重人格?」
「泣いても許してあげないです」
「ユイちゃん才能あるよ」
「師匠本人がそのつもりがなくても相手が覚えてます。師匠が強いってこと。私達だって、大きな蛇から助けてくれた事や、STR極振りで色んな人からフレンド断られたのに師匠がパーティ組んでくれた事凄く嬉しかったんです。でも、守られてばかりは悔しいです」
「嬉しい人が伝えるセリフじゃないんだけど。後、ユイマイに関しては俺と同じレベルだったからな……まぁ、強くなってるけど」
「化け物に言われたくありません」
「ユイちゃん辛辣すぎ」
「コウヨウ師匠は化け物です。変人です……このど変態」
「ユイちゃん誰にメスガキにされたの? 言ってごらん、斬り捨ててあげるから」
「多分その考えが、師匠とメイプルさん達との違いだと思います。メイプルさん達は師匠を本気で倒して……多分凄いねって褒めてほしいんだと思いますよ? 妹ってのは兄や姉にいいとこ見せたり、たまには頼ってもらいたいので。コウヨウさんがすごいプレイヤーだから、いっぱい助けてもらったから、守られてばかりは嫌だから、コウヨウさんを超えたいんです。サリーさんだって幼馴染でも妹みたいなものじゃないですか」
「恋人なんだけど」
「認めません」
「なんでさ……というかゲームでは俺が初心者なんだけどなぁ……」
「初心者もどきですよね」
「ムサシのせいです」
「それを師匠はそんなセリフばっかり吐いて、素直に現実を見ないで、卑屈になってるから足元救われて心が穢れるんです。魂のジェムも言ってたじゃないですか、『私ってほんとバカ』って」
「それは嫉妬の魔法少女だろ」
「もはや私からすればコウヨウさん自体が魔女です」
「因みに何の魔女?」
「紅葉の魔女です。コウヨウさんだけに」
ユイは指摘するが、彼は動揺した。いや、流石にユイは自分の本名も知らんだろうと心を落ち着かせた。
「ダジャレか?」
「それ以外何があるんですか?」
「いや、気にしないでくれ……因みに、紅葉の魔女って何するんだ?」
「全てのものを虜にします。もう貴方のことしか考えられないくらい。それが恋情でも、嫉妬でも、なんでも……」
「ユイちゃん本当に最近なんの本読んだの??」
「カナデさんがいっぱい読ませてくれるんです」
「あいつのテイムモンスター今度木っ端微塵に斬っとくか。スライムだし大丈夫だろ」
彼はとりあえずカナデは許せんと口にしながらあまり難しい言葉を使っても意味が分からなければ相手を傷つける可能性あるぞと、少し諭しておいた。それを聞いたユイは意味を教えてもらっているとハッキリ言った後、彼に物事の核心を突く一言を伝えた。
「話し合って下さい。メイプルさんと、サリーさんと。師匠はこんなことで悩んでいて、3人で楽しく遊びたいから、一生一緒にいて下さいって……そう言って下さい。普通にそれを言わないと何も解決しませんよ」
「うわぁ……うわぁ……あああ……その通り……です……」
どっちが大人だから分からない。少なくともこの瞬間だけは、ユイの方がしっかりとしていた。ユイから見たコウヨウとサリー、メイプルの3人は本当に家族みたいに仲が良く、こんな人達の子供だったら、友達だったら良いなとたまに本気で思う事があったらしい。
「私、メイプルさんもサリーさんも大好きです……でも、正直に言うと……1番好きな人はコウヨウさんなんですよ?」
「え? 俺?」
そう言ってユイは笑う。あの時、最初に出会った男の人はぶっきらぼうで怖かったけど、本当は強くて、カッコよくて、優しくて、自分達の兄のような、そんな感じがした。だけど、マイもユイも実を言っても言わなくても、めちゃくちゃコウヨウの事が大好きだった。
「コウヨウさん。私は貴方が好きです。貴方の台詞を借りると……愛してます」
「ゆ、ユイ……お前……」
「だからサリーさんと恋人になったのは認めません。異議ありです」
「逆転の道はないけど?」
「一応私はサリーさんとメイプルさんが大好きなコウヨウさんを愛してるんです。だから……一度でいいから3人でぶつかって、また私達の好きな3人に戻ってくれたら良いなって思ってます」
「ね? コウヨウさん」
ああ……どうして……自分はここまで情けないのか。
「少なくとも、さっきメイプルさんに向かって飛んできた矢をサリーさんと止めていた時は、3人で命を預けていたんじゃないかなって思ってましたよ」
どうして自分は、こんな小さな子に慰められているのか。すごく……頼りになる子だ。自分がやはり惨めに見えた。
「師匠は前から自信無さすぎです。誰かのためになったら頼りになりますけど……正直それ以外は釣りばっかりで頼りないです」
「うっ……」
「俺は弱いなんてほざきやがってっていつもサリーさん怒ってました。自己嫌悪は誰も救われませんし、煽りと同じです」
「ユイちゃん今日口撃強いね」
「戦ってる時は頼りになりますけどね。それでもなんて言うかいつも師匠って感じはしなかったなぁ……」
「じゃあ……呼ばなくて良いんじゃないか?」
「うーん……でも、戦いを教えてくれたのも師匠ですし……でもお兄ちゃんみたいですし……私の恋人ですし……」
「最後は違うよ?」
「とりあえず私とお付き合いしてくれませんか?」
「とりあえずの意味わかってねぇだろ」
「この前サリーさんが師匠の事モミモミって言ってましたけどもしかしてコウヨウさんってモミモミさんなんですか?」
「そんなキラキラネームあるわけねぇだろ」
因みにさっきの告白をサリーに一言でも言ってみろ、切られるぞとコウヨウは笑う。ユイはコウヨウを抱きしめ続けながら、小さな身長で彼の頭を撫でた。
「コウヨウさん良い子良い子ー、バーカバーカ、師匠のバーカ、意気地なし、我儘、クズ男、ゴミクズ」
「俺そろそろ泣いて良い??」
「良いですよ、泣かせる為に言いましたし。泣いて冷静になって、私と一緒に前に進みましょう」
「座ったらユイに抱きしめられるとか……俺そんなに身長低いのか……なんかショック」
「でも、撫でやすいです。相変わらず師匠の髪、メイプルさんみたいにサラサラですよ!」
「そりゃ……どうも……っていつ撫でた?」
「少し前に師匠が眠っている時です。あ、そうだ……これ食べませんか?」
ユイがコウヨウの頭を撫でてからすぐに3つだけだが、おにぎりを出した。聞くとマイとユイで握って作ったそうだ。
「もし休憩する機会があったら、【楓の木】みなさんで食べようとしていたんですが……お姉ちゃんやられちゃったからコウヨウさんと私で3つ食べちゃいましょう」
まさか自分より少し年下の、しかも身長の高い自分が頭を撫でられるとは思っていなかったし、本来ならサリーにしか撫でられたく無かったコウヨウなのに、それを受け入れてしまった事に驚きながらも、それ程までに弱っているんだなと呆れてしまう。
「それなら今、魚を焼こう。イベントと言っても、インベントリに2〜3匹は常備しているから」
「お魚食べられるんですか!!」
だいぶ落ち着いたのもあって、ユイにハグをやめてもらってから、魚を焼いてそれとおにぎりを食べながらこれからどうするかを2人で話す。
「正直アレだけごちゃごちゃ言ったが俺の奥の手は全部使った。ウィルさん達がミィさんにその奥の手を伝えている可能性は絶対ある」
「生き返ったスキルはもう使えませんもんね」
「ミィさんはどのギルドマスターでも一筋縄ではいかない人だ。知られた奥の手は、多少驚かせるくらいですぐ対応されるだろう……ムサシがいない以上、【剣豪の帰還】やら【宮本武蔵】は使えないから」
「なら、私に1つ案があります」
「ほう? 聞きたいな。ユイが考えて俺に伝えるなんてあまりないし」
「えっと……予想外の事をすれば師匠がミィさんに勝てる可能性が高いんですよね?」
「恐らくな。ただ、それを対策される前に一撃で決める必要はあるが」
「なら、これが一番早いです。ただ……」
「ただ?」
「私がついていけるかなんですけど……」
師匠の迷惑になるかもとユイは少し顔を暗くする。別に今更弱々でザコな自分を見せてしまったのもあるので、全く気にしないコウヨウ。
「勿論メイプルやサリー、ペインさん達もいるが、ミィさん達は大所帯なのもあってミィさんに近づくのは少し厳しそうだからな」
「サリーが俺を最終兵器だと言ってくれたのなら、最終兵器らしくミィさんの不意をついて倒してしまおう……そのためにはユイの案が必要だ」
彼の言葉に、少し考えてから、ユイは頷いた。ごめんなさいと一言つけて、ユイはコウヨウにこうお願いした。
「私と繋がってくれませんか? 私の身体じゃ……物足りないと思いますけど……」
「はい??」
台詞だけ見たらとんでもない修羅場であったのは言うまでもなかった。
「とりあえず服脱ぎますね」
「一旦待って、マジで何するかだけ本気で教えて??」
「私の手作り料理を食べたのでもう師匠は私の物ですよ?」
「お前達が作ったおにぎりまさかよもつのご飯じゃねぇよな??」
「ヨモツヘグイでしたっけ?」
「ヤベェこの子知ってる……え? マジでそれじゃ無いよね??」
「タベマシタネ?」
「やめて、マジで怖い」