妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「サリー、大丈夫?」
「うん。ゆっくり休めたから大丈夫。それよりも……コウヨウ達は……?」
「多分大丈夫だと思うよ、さっきユイからメッセージが届いたから」
──今日は師匠と野宿します! 師匠の事は任せてください!!
朝になって目を覚ましたサリーはメイプルにコウヨウ達の行方を問うた。あの後、一度ミィ達は退却をしてこちらも一時休戦という形になったので、コウヨウ達の元に向かったのだが、そこにいたのは彼ら以外の人達だった。
「2人ともあの後どこに行っちゃったんだろうね?」
「うーん……でも、コウヨウがいるからユイも大丈夫だと思うよ」
「逃避行かなぁ?」
「刺し違えるよ?」
恋人だから多少なりとも心配はあるが、正直サリーからすれば、自分でも敵わない最強の二刀流がユイといる事もあって、特に気にしていなかった。
「お兄ちゃん私達より強いもんね……」
「うん。私だけじゃ勝てないのは悔しいけどね。だから、メイプルといつか力合わせて倒すって決めたからね」
「うん! そしてまた3人で一緒に遊ぼうよ!」
「そうだね、コウヨウ大好き」
「なんかサリーがムサシみたいな喋り方してる……」
「主従プレイ」
「黙ってサリー」
サリーやメイプルが2人で仲睦まじく、コウヨウに隠れて行っていたのは彼を倒すためにお互いを鍛える事であった。
サリーもメイプルも彼の事を仲間外れにするとか、嫌っているとか、百合の間に挟まるなとか一切思っていない。彼のゲーム内での強さはサリーでも勝てないと判断したのもあり、2人で力合わせてコウヨウを倒したいのだ。
その後、みんなで笑いながら昔みたいにゲームを楽しみたいと、ユイの予想が99%以上ピンポイントである。
「きっと、このイベントで私たちが玉座を取ったらコウヨウも驚いてくれるよね」
「うん! お兄ちゃんには申し訳ないけど……お兄ちゃんにはいっぱい人を倒してもらって、その間に私達がこのイベントの勝利を勝ち取ろうね!」
「正直、私達が玉座取ってもMVPはコウヨウだと思うけど……」
「それでもお兄ちゃんは褒めてくれるはず!!」
正直2人はコウヨウに褒めてもらいたいだけだった、イベントの勝利に貢献してありがとうと、よくやったとコウヨウに褒めて欲しいだけだった。基本2割はそれだけのために、残り8割はコウヨウのソロでの実力を本気で認めた上で指示は適当にしたわけではないが、かなり彼を1人にさせた。
コウヨウがそれをよく思わなかった事はまだ彼女達も理解してなかったのだが、ただ、分かって欲しい。彼女達はコウヨウを愛している事を。だからこそコウヨウを信頼しているし、彼なら平気だと、大丈夫だと、そう信じきって送り出していただけである。まさかもうすでにNPCとプレイヤー合わせて2000人斬りしやがってるのは予想すらしてなかったが。
「お兄ちゃん2000も斬ってるからね」
「普通はありえないからね……死んだと思ったらコンティニュースキル発動して帰ってくるし……しかも無詠唱でスキル発動した挙句、急に空飛んで突っ込んで行くとか……また運営が黙ってない事してるなぁって」
「でも、だからこそお兄ちゃんなら絶対負けないってずっと信じられるからね!」
「逆に言うと私達が勝てないって言ってるよね」
彼が悪意のない2人に対してとてつもない捻じ曲がった想いを馳せているのは一切知らなかった。
「あら、サリーちゃん。目が覚めたのね」
「あ、イズさん。おかげさまで……みんなは大丈夫でしたか?」
「ええ……まぁ、マイちゃん達がやられてしまったけど」
マイとカスミの死を思いながらイズは少し暗い顔になる。それでも彼女はコウヨウがいるからと彼に対してとてつもない信頼を置いてみんなの勝利を信じていた。
「ペインさんは無茶苦茶なので、ミィさんのことも何とかしてくれると思います」
「メイプル毒吐いてる」
「まぁ、それもそうだな。所で……コウヨウとユイちゃんは?」
「2人なら大丈夫だってメッセージが来ました」
「お兄ちゃんがいるなら大丈夫です!!」
「確かにな。もう、コウヨウは俺達が届かない場所まで辿り着いてるし」
「正直兄さんが負けるとかありえないからね。一緒にいるユイも頼もしいだろうね、コウヨウの弟子だし」
「自慢の兄です!」
「自慢の恋人です!」
【楓の木】の残りのメンバーで作戦会議をしながら、コウヨウ達の安否を確認するが、コウヨウがいるから大丈夫という、もう彼の名前が絶対的信頼に値するものに成り代わっていた。
「とりあえずこっちはメイプルの【暴虐】もあるし、万が一コウヨウが帰ってきたら【無詠唱】と【浮遊】で宙を舞って不意をついてもらおうかな」
「しっかしあいつも本気で勝てない相手になったもんだな……」
「そうだね。魔法使いだから僕もその【無詠唱】に関しては喉から手が出るほど欲しいよ」
「コウヨウ君に勝てる人……いるのかしら?」
「1人じゃ無理ですね。でもいつか、私とメイプルで倒しますよ」
「確かに2人ならワンチャンあるかもね」
「一応勝算は……まぁ20%くらいだけどね……」
「サリーの数字だけ聞くと全然勝てそうにないんだけど……」
「お兄ちゃんに全然届かない……スタァの様に」
「コウヨウに全然届かない……コウヨウのスタァライトが遠い……」
「落ち込むなよ……いつか【楓の木】フルメンバーでコウヨウの相手をしそうだな」
「どうしましょう、コウヨウ君が可哀想って言えない自分がいるわ……」
「実際それくらいしないと無理だからね。今はいなくてもムサシがいるし」
「あのテイムモンスターほどヤバいものは無いよな……」
「もはやお庭番だよね」
作戦会議はいつの間にか消え、何故かコウヨウを倒す方向に話を進めていくメンバー。本気で今大事な事がイベントに勝つための作戦とコウヨウに勝つための作戦なのだから彼の存在はタチが悪すぎるのだ。
「あ、ユイからメッセージだ……えっとなになに?」
ふと会話を止めると、メイプル達全員にメッセージチャットがユイから届いた。何か情報でも掴めたのだろうかとみんなは思い開けてみると……
──おはようございます! 今日はコウヨウさんが優しくしてくれました! とっても幸せな気分になれたので、この後2人で絶対にミィさんに勝ってきます!
「はぁ??? ぶっ殺すぞ!?」
「サリー!?」
サリーは発狂した。みんなは止めた。
☆
「師匠……ありがとうございます」
「サリーにもやったけど、そういえばこれって一応聞くけど感覚的に痛くないのか?」
「痛くは無いですよ? 寧ろ温かい気持ちが溢れていて、師匠と繋がってるなぁって感じで気持ちがいいです。ただ、なんでそのままでも発動出来たんですか?」
「ユイ」
「何ですか?」
「これ服脱がなくてもいいからだぞ」
「え!? そうなんですか!?」
「普通に手を繋げば良いだけですしおすし」
「先に言ってください!? 普通に脱いじゃいましたよ!?」
「いや、言おうとしたらもう装備解除してたからいいやって……流石に服も行きかけたから止めたけど」
装備を外してラフな格好になったユイはコウヨウにツッコミを入れた。あの発言の後、ユイは装備を解除した挙句普通に服をも脱ぎ出したのでそこだけは彼は全力で止めた。
「慌ててたのはそういう理由でしたか、別に師匠ならいいんですけど」
「俺は良くないです」
結局何したかというとナニではなくスキル発動である。コウヨウにしか出来ないスキル【コネクト】はお互いの命を預ける代わりに、お互いのステータスを上乗せするスキルである。
コウヨウが死ねばユイが、ユイが死ねばコウヨウが死ぬまさにお互いの生殺与奪を握るスキルを使って欲しいと言ったのはユイだった。
『私の身体(ステータス)では満足出来ないかもしれないですけど……』
つまりはそういう意味である。コウヨウはユイにしっかり一字一句尋ねたので誤解はしなかったが、サリー達が聞いていたら発狂どころかユイをギルドの練習場に監禁して暴力行為をするだろう。まぁ、もう遅いが。
「それで、どうする? 一応これで俺のステータスとユイのステータスは合体したが……このまま戻るか?」
「いえ、敵を騙すにはまずは味方だとサリーさんが教えてくれましたので、一旦皆さんと別行動しましょう。メッセージも打ちます」
「頼もしい」
サリーの参謀っぷりがユイに移ったのかは明確では無いが、今は何故か彼女を頼りにしたいと本気で思ったコウヨウ。その信頼のせいでユイの送ったメッセージを確認しなかったのが、後ほどコウヨウの呪いになるのだが、そんなのは今どうでも良い。重要な事じゃあ無い。
「よし、分かった。今日はユイに従う」
「師匠も意見出して下さいよ」
「俺はそこまで考えるのは得意じゃねぇよ」
「でもメイプルさん言ってましたけど師匠学校推薦だったんですよね? カナデさんとも互角にオセロが出来るって聞きましたし……」
「勉強出来るのと兵法考えるのは別だろ」
そうは伝えたコウヨウだが、恐らくしばらくは両方の陣営とも作戦を練ったり、準備をしたりして、動かないだろうと予想はしていた。
「それじゃあ行き……まままま!?」
「ユイ!? めっちゃ速くね!?」
「ぶ、ブレーキが効かない……です……師匠もしかしていつもこんなAGIを調整してるんですか……??」
「あ、そうか俺のAGIだからか……まぁ、俺は慣れたよ」
「そう言えばここに慣れるところからスタートだったの忘れてました……」
こうして、ミィの【炎帝の国】勢力と【楓の木】、【集う聖剣】連合にプラスして、コウヨウとユイの師弟コンビの3勢力でイベントを戦う事になったのだった。
「まずはスピードに慣れてから動こうか」
「はい……本当に手取り足取り教えて下さい」
「本気でお前やる気なんだな」
「ええ、未完成の覚悟は師匠の隣にいる時はいりませんから」
「なら、俺も付き合おう。ユイと一緒にスタァライトするぜ」
「「ポジションゼロ、My name is コウヨウ(ユイ)!!」」
「所でスタァライトってなんですか?」
「俺の全てを使って届かないといけないものだ」
「じゃあ歌わないとですね! 真の姿がみんなと違うことを嫌悪して〜♪♪」
「なんでサリーもユイもダークファンタジー的な断罪の子守唄歌うの好きなの??」
☆
「お兄ちゃん最低……」
「コウヨウは殺す……」
「落ち着け、まだそうと決まったわけでは……」
「「この文面見ても言えますか!?」」
「言えない……です」
クロムニキは沈黙した。突然送られてきたユイからのNTRメッセージに激昂するサリーとメイプル。にわかに信じられないと誰もが思ったが正直それしか無い選択肢のせいでそうなりだしている。
「みんな、少し落ち着こうよ」
「カナデ……」
「ほら、ユイももしかしたらたまたまみたドラマとかの言葉を間違って使ってたりする可能性だってあるんだし、そもそもコウヨウはサリーLOVEなのにそれを今まで黙っていることのほうがおかしいよ」
カナデは、カナデだけは彼を分かってくれていた。恐らく彼の知り合いであるならば、誰でも分かりきっているコウヨウのサリーLOVE。
サリーを愛し、サリーに愛された、自称サリー大好き人間のコウヨウが、ユイと過ちを犯してしまった時サリーに黙っていられるだろうか……いや、絶対にありえない。そもそも過ちすらないのだが。
「メッセージでも何でも、サリーに個別に謝るの一言はあってもいいんじゃないかな?」
「カナデの言う通りだ、コウヨウもユイちゃんも優しいし純粋な子だからな。そんな事をするなんてありえない」
「確かにお兄ちゃんが首にキスマ付けて帰ってくるのは大体サリーがお兄ちゃんを襲って元気そうな時だよね」
「メイプル、シャラップ!!」
赤くなるサリーに苦笑いするメンバー。何かの間違いだとカナデは改めて伝えると、サリーも少し落ち着いたのか深呼吸をした。
「ふぅ……うん。コウヨウを信じる。恋人の私が信じなくて誰が信じるんだって事だよね……大丈夫、コウヨウはそんな事……」
サリーが何かを言い終える前に、メンバーにメッセージが飛んだ。コウヨウからである。
──しばらくユイと2人きりにさせてもらう。サリー、とりあえずごめん。
「ごめん、やっぱ泣く」
サリーの言葉にカナデは初めて本気で舌打ちした。メイプルは……もう【暴虐】を使う勢いである。
「コウヨウは僕が殺ろうかな」
実を言うとコウヨウも殺ろうとしてた……カナデのスライムをだが。