妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「コウヨウ、お前は何がしたいんだ……???」
「少なくとも……ふざける気は無いんですよ……」
カスミは夢でも見ているかの様な錯覚に落ちていた。現実だが。メイプル達は第十層に向けてのレベル上げをしていたが、一方でコウヨウはカスミに決闘を申し込んだのだ。
夢だと思ったのはあのコウヨウが本気でやるから付き合ってほしいと言われたからだ。ちなみに、それを聞いていたサリーの恨みの目が思い出されるのは夢は夢でも悪夢である。
冒頭に戻ろう。決闘しながらカスミが信じられない目でコウヨウを見ている……
「くっそ……まだあの感覚が掴めない……」
「何をしようとしているかわからないけど……何度もお前を切ろうとして止められている私の身にもなってくれ……これじゃあ、いつまでもお互いダメージが入らない……」
既にコウヨウはカスミとの決闘で数時間程戦っていたのだ。コウヨウと戦う事自体がカスミにとっては喜べる話なのだが、カスミが攻撃をしてそれをコウヨウが全て止める。ただそれだけなので、どうにもコウヨウの本気が全く見えずに困惑するしか無いカスミである。
対してコウヨウは何度も攻撃を止めた事は気にせず、ずっとアレでは無いコレでは無いと独りごちて、何かをしようとゆっくり歩んでくるが、全く実を結んで無いのもあり、カスミは何がしたいのかわからない。
「もう、そろそろ終わりにしないか?? 流石に私も疲れたぞ……」
「まだです!! 俺はまだ、ムサシと流れ星を見ていない!!」
「なんの話だ???」
訳の分からないことを言ったコウヨウだが、心の中では集中を続ける。
(命の呼吸を感じるんだ……あ、コレ違う……えっと……相手の剣を知って剣を見ず……剣が動く前に斬る……あの時もそうだった……)
コウヨウが見たムサシの動きは、海皇が槍を構える前に勝負を決めた。そして、ムサシがコウヨウに言ってくれた言葉。それ即ち受けの極意。
『元々主は相手の剣を受けて、見切ってから反撃をする事に長けている。私の剣筋とは少し違うが主には主の二天一流があるのだ』
そう伝えてくれたムサシの言葉は本物だ。カスミの剣は既に見切り終わった。後は彼女の動きを……
「見ない……」
「え?」
「カスミさんの動きを……刀の動きを……俺は知ったけど……それを見ないで感覚で覚える……タイミングを超えて……うっし!!」
「えっと……何を言っているか分からないけど……来ないなら最後はこっちから行くぞ……!」
そう言って、カスミが刀を彼に構えた瞬間……既に彼の姿が消えた。
「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり……これが答えだ」
意味不明な言葉と共に彼の姿が本気で見えなかったと思った瞬間……
「がぁぁぁぁぁ!!?」
「相手が手を出す前に斬る……いや、それもあるけど……今の姿勢……動きやすかったな……もしかして……俺の二天一流の全ては構えとこの受けからの反撃……」
「こ、コウ……ヨ……ウ」
訳の分からない数の斬撃がカスミを襲う。そんなカスミをほぼガン無視して、コウヨウは先程の刀の構えがとても動きやすかった事を知ったのもあり、もしかしたらこの構えと身体の使い方で何かを掴めるのでは無いかと考えていた。
「カスミさんもう一度……ってあれ? どこ行った??」
コウヨウがWIN表示に気づいたのはその10秒後である。
「一瞬のうちに、心も身体も準備をととのえ、自分でも気が付かないほど自然に、渾身の一撃を繰り出す……これが無念無相らしいです」
「なんというか無茶苦茶だな、その戦い方……」
決闘後コウヨウとカスミが少しばかり感想戦をしたがカスミはコウヨウについていけなかったらしい。
☆
「まさか本当にこの関連の本が沢山あるとは思わなかったな」
時は変わって現実世界。紅葉は行きつけの図書館で宮本武蔵関連の本を見つけた。前回課題をしていた時も何回か本を読んだことはあるが、それ以外にも探してみればかなりあった。もしかしたらゲームであっても現実であっても、二天一流というものがなんなのか知ることが出来ると考えた。
「あれ? 兄さん?」
「かなで、お前もここにいたんだな」
「何読もうとしてるの?」
たまたま図書館でかなでに会った紅葉は見つけた本を見せると、彼は少し驚きながらもそんな歴史本があるのかと言った。
「二天一流は元々兵法だったとムサシが言ってた……」
「ムサシが?」
「あぁ、ムサシが言ってたんだ。二天一流は元々兵法から生まれ、刀に宿り、天下無双になったと……俺もやってみるか」
「えっと……コウヨウ?? まるで宮本武蔵になるような素ぶりだけど……」
「いまだに信じられんがな。でも、俺は二天一流を身につける事にした」
「本当に宮本武蔵になるの??」
ならないと彼は伝えるが、かなでからすると紅葉の言葉はまるで本物と会話した様な、まるで紅葉が宮本武蔵のような違和感が勝った。そして紅葉は本を読みながら、なるほどと呟き……
「かなで、オセロしよう。ついでに将棋も」
「兄さん将棋苦手じゃなかった?」
紅葉は何故か将棋は苦手である。楓や理沙にも何故か勝てないので、理由は紅葉自身も正直分からないが、恐らくとかなでにこう伝えた記憶はある。
──理沙みたいに軍師では無いから戦略系は苦手なのかもな
だからと言って、強くなったところでオセロでかなでに勝てる道理はないのだが、紅葉はたまにかなでに勝つのだ。意味が分からない。
「とりあえず頼む! 俺はかなでじゃないとダメなんだ! かなでじゃないと満足出来ない!」
「兄さん黙って……なんか違う意味に聞こえる……」
「楓に言われたいセリフだろ?」
「いや……もう言われてるけど……って何を言わせるの!?」
「俺まだ理沙に言われてない」
「泣かないで!?」
図書館なので声は抑えているが、割とお互い顔は赤い。とりあえず、この日はオセロと将棋をして遊んだ2人であったが……
「なるほど……見えたな」
「20連敗しておいて何言ってるのさ……」
「知らないと思うが、俺の戦いの根本は受けの極意。もはやかなでの技量は見切り終わった。行くぞ」
「はいはい……まぁ、確かに兄さんは攻撃を刀で受けてから反撃のイメージが強いけど……」
そこから数分後。将棋で紅葉に軍配が上がったのはかなでも意外な目で見ていたのだった。
「まだ足りない。だが、二天一流が兵法であるのならそれを鍛えるに越した事はないな」
「へぇ……ねぇ兄さん、僕ちょっとだけ怒ってもいいかな……?」
「え? なんで??」
「負けたからに決まってるでしょ? 覚悟はいい? 紅葉」
「うげっ……目が本気だ……」
初めて少し本気で戦って見て彼に負けたのは誤算だったのもあり、かなでは少しどころかめっちゃ本気出して紅葉を虐めた。紅葉も抵抗はしたのだが、天才には流石に勝てなかったという。
ちなみに、本条家帰宅後紅葉が放った一言は……
「楓、かなでって凄いな、俺かなでじゃないとダメかもしれない。身体がかなでを欲しがってる」
「お兄ちゃん、今かなでと理沙呼ぶから2人で正座ね」
「え? 後1人は? ってかなんで??」
「理沙と私はお兄ちゃんとかなでをお説教するから」
「だからなんで!?」
お前の発言のせいである。