妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「コウヨウ、お疲れ様」
「おう、サリーかお疲れ様」
メイプル達の誘いで【楓の木】に入ったコウヨウ。それから数日過ぎていた。メイプルは今日ユイとマイのレベリングを付き合っていて、サリーは今ログインして来たところである。
「これからギルドの対抗戦あるからみんな燃えてるね」
「ゲームと言えども何で人殺しをせなあかんのだ」
「まだ言ってるの? 戦わないと負けるんだから我慢しなさい」
サリーの言葉に仕方なく頷くコウヨウ。側から見たら普通に世間話をしている様に見えるが、お互いの心の中を覗くと割と大変な事になっている。
(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……コウヨウがいるコウヨウがいるコウヨウがいる!! カッコいいなぁ、声綺麗だなぁ、ちょっとメイプルに似て内気な所もだけど、優しいところめっちゃくちゃ大好き、愛してる、メイプルの家から盗みたいぃぃぃ!!)
(そう言えば……俺はサリーに告白されたんだよな? 何でこいつ平然としてんの? 正直昔からサリーしか見てないから嬉しすぎるんだけどさ。サリーはスポーツ万能でプロゲーマーで歌もプロレベルで上手いから人気者だし……ってかもう少しお前も2人きりなんだから喜べよ。こっちはかなり嬉しいのに何でそんなに淡々としてんだ? えっと……もしかして他の男に興味持っちゃったやつですかね? いや無理だ耐えられない、昔から好きだった女の子がどっか行くとかマジ泣く)
サリーがコウヨウを……だけでなくコウヨウもサリーを想っていた。この場にいないメイプルだけは2人が両想いだと知っているのだ。ギルドメンバーに関してはサリーの一方通行だと誤解しているのだが、メイプルだけは仲がいいな早く付き合えといつも通りの2人を見て微笑んでいた事が多い。
「と、ところでさ、そのモンスター可愛いな」
「え? モンスター? あ、朧!」
コウヨウの指を指す方向を見ると、サリーの肩にいつのまにか第二回イベントで卵から生まれた狐モンスターの朧が乗っていた。勝手に出てくるなとサリーは怒ったが、すぐにやめた。
「どうした?」
「ねぇ、コウヨウ……この部屋って私とコウヨウだけだよね?」
「そのモンスター……朧? もいるだろう」
「そうじゃなくて! それ以外に人とかいないよね?」
コウヨウが周りを見ても誰もいなかった。仮に誰かいたら声を掛けてくれてるし、隠れていてもコウヨウがスキルとか関係なしに直感で気がつく。その話を伝えてもサリーの顔は晴れなかった。
「じゃあさ、どうして朧はキョロキョロ周りを見てるの……?」
「フォォォォォ……」
「何で朧は喋ってるの!!?」
「サリー、落ち着け……なるほど。朧には見えてるのか……」
「この世ならざるもの!?」
「この世のもの……多分」
「多分って何!?」
ふと見ると朧がキョロキョロと目線を色んなところに運んでいる。もしかして幽霊とかなのかと叫びながらコウヨウの元に近づいてそのまま身体を預けるサリー。おばけやゾンビなどのホラー系は彼女か大の苦手であることはコウヨウも把握していた。
だからこそ言うべきか迷った。確かにもう1人この場に誰かはいるのだと言うこと。それは人ではなくてモンスターであると言うこと。そして朧はその姿が見えていること。
「サリー、一応……お前の言うとおりもう1人いる」
「ひぃぃぃぃ!? 怖いから逃げよう? そうしよう!?」
「大丈夫だ、おばけじゃないから……多分」
「だから多分ってなに!?」
刀の形したモンスターなのでおばけみたいといえばおばけみたいなのだが、可愛いから問題無いと彼は判断した。
「ムサシ、恥ずかしいと思うけど出て来てくれるか?」
「キュ……キュルルン……」
「ひっ!? 何!?」
「俺のテイムモンスターだ。お前達のシロップや朧と同じで第二回イベントで手に入れた」
「か、刀のモンスター?」
「キュルルン……」
「人の形はしてないからおばけといえばおばけだが、そこはサリーの判断に任せる。でも、心強い俺の味方だ。もっと言うとギルド戦まで隠し球で取っておきたいくらい強い。ユイとマイの師匠が俺ならば、こいつは俺の師匠みたいなもんだ。たまに刀の握り方とか教えてくれるからな」
そうして彼の後ろに隠れるムサシを少し落ち着かせながら、コウヨウはサリーにならと全てを伝えた。刀を抜刀してない時は基本このムサシがモンスターでもプレイヤーでも斬り刻むこと。
イベント中にサリーの攻撃全てを防いだのもこのムサシである事。テイムモンスターをバレたくないのでわざと右手を出して魔法の様にカモフラージュしていた事。全て話した。
「って事はこの子相当強いね。あの時、かなり本気で攻めて見たんだけど全部この子に防がれたって訳か」
「サリーの魔法を斬ったのは俺だが、コイツも同じ事出来るぞ」
「え? マジ?」
コウヨウ曰く、ムサシの強スキルは【
更には【
「本物の化け物じゃん」
「天下無双の侍に仕えてた伝説のモンスターだからな」
「それがムサシ??」
「多分……宮本武蔵??」
流石に【超加速】とかは無理だと笑うが、こんなモンスターに魔法を斬られたり反射されたらたまったもんじゃないとサリーは愚痴る。
そんな話をしていると、いつの間にかムサシは朧の周りをクルクル回っていた。朧はそれを追いかけて楽しそうに遊んでいた。
「ムサシが懐くのは珍しい。初対面なのに……」
「朧が大人しく毛をカットされてる……」
恐らく斬撃の達人なら毛をいい感じに切ってくれると思ったのだろう。朧は朧でくつろぎながら自慢の毛をカットされ、ムサシはハサミに変身して丁寧に毛を斬りながら朧にどうですかと様子を聞いていた。
「可愛いな」
「うん、可愛いね」
2人は気づかない。ムサシと朧の様子を微笑ましく見ている間、いつの間にか自分達が体を寄せ合って手を繋いでいた事もモンスター達の可愛さで気が付かなかった。それをギルドに遊びに来てこっそり見ていた青い髪のお姉さんが笑っている事も。
☆
「こんにちは、朧!!」
「うわっ……びっくりした……何よアンタ……」
「私はムサシだよ! ねぇねぇ! 主と友達?」
「私は違うわ……サリーのモンスターだけど、あんな男は知らない」
場面は朧とムサシの会話になる。テイムモンスター同士話しているのだが、コウヨウとサリーは少し鳴いているくらいしか聞こえない。
ムサシはクルクルと朧の周りを周りながら朧に話しかける。朧はムサシの姿を追いかけながら話をしている。
「アンタ……クルクル鬱陶しいわね……というか、アンタのマスターから恥ずかしがりって聞いた気がするけど?」
「あ、ごめんごめん……いつも主の周りには敵がいるから……確かに私は恥ずかしいけど、人間が少し苦手なだけ……でも、朧は平気だよー!!」
「いつも敵って……そんなに強いの? あの男」
「うん……まだそこまででは無いけど、いつか強くなるよ」
「サリーとどっちが強いのかしらね」
「主!」
「はっきり言うのね……」
何の躊躇いもなくムサシは朧に言ったが、かなり本気なようだ。主贔屓というよりも、完全に主観で話しているのは言葉で分かった。
「サリーも強いわよ。あの子、ダメージ受けないし」
「それは困るなぁ……主に刀の使い方教えないと……構えあって構えなし。ってね!」
「アンタが教えるのね……」
「私は主の師匠だからね!!」
ムサシは勝手にコウヨウの師であると伝えた。ふと、ムサシは朧の毛を見て、毛繕いが充分でない箇所を指摘する。
「私なら切れるけど切る?」
「痛そうだからやめておくわ」
「これならどう??」
朧の言葉にムサシは髪切り用のハサミに変身して朧に見せる。刃の部分は勿論切れるが、髪切りようなのでそこまで殺傷力は無い。
「器用ね……」
「切っていい??」
「変な事したら攻撃するわよ?」
「普通に切るだけだよ……」
そう言って、ムサシは朧の毛を綺麗にカットし始めてたのだった。
「上手ね」
「でしょ? だって私大剣豪だもん!!」
「何よそれ……」
それをサリーとコウヨウは物珍しく見ていたのは2人の知る由もなかった。
以上、朧から見たムサシでした。