妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「そろそろ詳しく教えて貰おうかコウヨウ。お前は今まで何を見てきて、何と戦っていたのか」
「ムサシ、いけるか?」
「頑張ってみる事にしよう。久しぶりだな、皆の衆」
「割と毎日会ってねぇか?」
「最近めっちゃ登場するから久しぶりも何もないぞムサシ」
コウヨウはギルドメンバーを集めて、一旦【魔王】に関しての話を仕掛けようとした。
「全部の話はムサシが知っている」
「その通りだ」
そしてムサシは人の姿で話をした。自分がかの最強剣豪である宮本武蔵である事。病気で亡くなってからこの世界に転生をした事、【魔王】と言う魑魅魍魎で意味不明な存在にこの世界で負けて呪いをかけられ、刀の姿をしたテイムモンスターになった事。そして……
「今ここにいる主が私の仇を取らんばかりに強くなっているのだという事が私の全てだ」
「やっぱり本当だったのかよ……」
「にわかには信じられんが……コウヨウのあの強さを見れば信じるほかないだろうな」
「なんでそれ私やメイプルに言わなかったの?」
「そういえばなんでだろうな」
サリーは隠し事をしたコウヨウを普通にぶん殴ろうとしたが、彼自身本気でなんでみんなに言わなかったのか疑問に思った。みんなに言えばコウヨウのわけわからんクエストとかは楽に攻略出来たのは事実。それでも少し考えて……
「多分、俺が1人でやりたかったんだと思う」
「どうして?」
「このゲーム始めた時、メイプルやサリーが強くなりすぎて、ギルド作って、ギルドメンバーと楽しくゲームしてたのを聞いて、羨ましいなと思った。だから俺も強くなろうとは考えながら釣りをしてたんだけど……」
「俺男だし、お兄ちゃんだし、変なプライドが邪魔して、1人でこっそり強くなろうって考えてたんだと思う」
だから、誰にも言わずにムサシと旅をしたのだと彼は伝えるが、同時に彼は自分自身我儘な人間だと笑う。アレだけ仲間外れが嫌いと言いながら、1人でコツコツとやっていくことも嫌いではないから。
「なんか、わけわかんねぇな俺」
「でも、なんとなく俺は気持ち分かるな。男ってのは女に涙を見せないもんだと昔からの言い伝えがある」
「でもそれで苦しんでたら元も子もないんじゃないかしら?」
「イズさんのおっしゃるストリートです」
「僕は兄さんの気持ちはわからないかな。勝手にフラフラしてサリーやメイプルを不安にさせるから」
「お前元々ぼっちだもんな」
「ゴフッ……」
「カナデが死んだ! お兄ちゃんの人でなし!!」
「言い過ぎた」
話はそれたが、結局コウヨウは今一度みんなにお願いだと頭を下げて、一旦【海皇】を攻略して欲しいと伝えた。
「恐らくアレを倒さねば俺のストーリーが終わらん。助けてくれ」
「正直師匠が負けそうな時点で私達が勝てるかどうかわからないんですけど」
「1人がダメなら数の暴力に頼る事にした。ユイ、マイ、2人も手伝ってくれ」
「私は良いですよ。コウヨウさんのお願いですから」
「仕方ないので私も師匠の為にお供します!!」
「なら、私も行こう。コウヨウを倒しかけたクエストモンスターがどんなやつか知りたいからな」
「カスミさんは良いんですか?」
「コウヨウには驚かされてばかりだが、私達も第十層に向けて強くならなければならない。もし【魔王】という話が本当でも嘘でも、どのみち戦わなければいけないからな」
ユイとマイは相変わらず了承したが、カスミにもOKを貰えるとは思わなかったコウヨウ。正直カスミとしては【魔王】とかはどうでも良いと思っている。
(メイプルやサリーがこのゲームからしばらく抜けるということは、コウヨウも2人のために抜ける事が多くなりそうだからな……せめてもの思い出作りくらいはしておきたい)
「んじゃ、俺もコウヨウについて行こう。男の感情が分かるのは男だけだし」
「その理論から言うと僕も行かないと行けないよね……まぁ、兄さんには言いたい事が山ほどあるけど、メイプルと関係を結べたのも兄さんのおかげだしそのお礼くらいはしようかな」
「クロムが行くなら私も行くわ。お姉さんとしてコウヨウ君の戦いを見届けないといけないしね」
「メイプルとサリーはどうする? こんな俺に着いていくか着いていかないか、勝手に決めてくれ」
我儘だしなとコウヨウは伝えたが、メイプルとサリーはお互いに顔を見合わせて、仕方ないと頷いた。
「着いていくよ。お兄ちゃんが道間違ったら止めるのは妹の私だし」
「間違った覚えはないんだが」
「私も。メイプルとコウヨウがまた好き勝手に強くなるのをこれ以上見過ごせないし」
((お兄ちゃん[コウヨウ]を苦戦させたモンスターを見てそれを私達が倒せば褒めてくれるはず!!))
「それじゃあ……よろしく頼む。みんな」
そうして文字通り【楓の木】全員で、コウヨウが受けた喧嘩を受ける準備を始めたのだった。
☆
「よぅ、1人の力から絆の力に変えてきたぞ」
「ふん……何人で来ても実力が無いのならば結果は変わらぬ……【魔王】を倒したいのならば我を倒して強さを見せろ……!!」
「こ、これが【海皇】……なんて大きさだよ!?」
「コウヨウ、お前こんな奴と戦っていたのか??」
「あの槍には気をつけてください。メイプルのVITや【身捧ぐ慈愛】でもダメージ入る威力なのは実証済みだ」
「それじゃあ兄さんの黄金装備は……」
「効かない。というか装備返したからもうない」
「え? 返したの??」
「元々アイツの宝みたいだったから返した」
「塩送ってどうするのさ……」
「だからメイプル、サリー、俺があの槍をなんとか止めるから援護して貰ってユイとマイで決めろ」
「「「「へぇ……」」」」
「メイプル? サリー? ユイ? マイ? 話聞いてたか?」
【海皇】と対峙した【楓の木】はコウヨウからアドバイスを貰ってそのまま戦いに入る予定だった……のだが、メイプル、サリー、ユイ、マイの4人だけ様子がおかしい。なんだか眼が少し据わっていて邪悪なオーラが出てるような出てないような……
「滅びろ、人間ども!!」
「やっべ……みんな一旦後ろに……!?」
クエストが開始されてすぐに【海皇】は槍を振るう。この槍はガードは出来るがコウヨウでも数メートル吹き飛ばされてダメージを負うまさに化け物を超えた神の槍。だが、メイプル含めた眼が据わった4人だけはコウヨウの指示を聞かずそのまま前に出た。何してんだとコウヨウが4人を止めようと刀を抜いたが……
──ガギィィィィィィッ!!
「【身捧ぐ慈愛】【イージス】」
「は?」
「【糸使い】【氷柱】」
「は?」
「「【巨人の業】」」
「はい??」
メイプル、サリー、ユイ、マイの4人だけで【海皇】の槍を止めた挙句、破壊した。メイプルは何故か普通に槍を止め、サリーは糸を使いながら縦横無尽に宙を移動して武器を弓に変化させて槍に打ち込み、ユイとマイはメイプルのスキルで動きが止まったところを1人8本計16本の大槌で叩き潰した。真面目に何が起こったかわからないコウヨウに対して4人は不気味な笑みを浮かべながら声を出す。
「「お前がお兄ちゃん(コウヨウ)を何度も傷つけたのか(んだね)……」」
「いや、傷ついたわけでは……」
「「貴方が師匠(コウヨウ)さんを何度も殺しかけたんですね……」」
「殺されてはいないが……あの……お三方ならぬお四方?」
「「「「同じ目に合え(合ってください)!!」」」」
そのまま特効野郎のチームが完成して、4人だけで【海皇】を退けることをしているのを見て流石にカナデもクロムもカスミもイズも……そしてコウヨウも苦笑いどころか口を開いたまま動けなかった。
「小癪な!」
「「滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ……」」
「「消えて下さい消えて下さい消えて下さい消えて下さい……」」
「クロムさん、俺間違ったことしました?」
「俺たちに……いやあの4人に頭下げて助けを求めたのが間違いだったんじゃないかな?」
「最強の用心棒じゃん。良かったね女の子4人に好かれて」
「1人はお前の嫁だろなんとかしろよ」
「その本人の兄はコウヨウでしょ?」
「味方ならもう……どうでも良いわね」
「サリーとメイプルはともかく、ユイとマイがあそこまでヤンデレ化してるのは初めて見たのだが……」
「カスミさん、せめて凶暴化と言ってください。ヤンデレは怖いので」
9連敗したからみんなで挑んでようやく倒せるかなと思ったコウヨウだが、正直なんか普通に倒せそう。4人で槍壊してるし、【海皇】を大槌でぶん殴ってるし、HP結構減ってるし。
「「コウヨウ(さん)!!」」
「お兄ちゃん!!」
「師匠!!」
「はい、なんでしょう!?」
「「「「トドメ、刺しちゃって(下さい)」」」」
「うっす……えっと……ムサシやるか?」
「はははっ! 数の暴力と女は恐ろしいな主」
そうムサシは言いながらコウヨウ型駆逐侍に切り替わる。コウヨウも二刀を抜いて【海皇】の前に立つが、【海皇】だって神だ、負けるわけにもいかない。
「ぐっ……ここまでとは……だが、海の怒りを喰らえ!!」
そう言って無数の水の刃をコウヨウに対して連打をした、メイプルはコウヨウにもバフをかけようと前に出る……瞬間。
「仕方ない。俺が斬るか……」
コウヨウは【無詠唱】で【浮遊】して宙に浮かんだ。そのまま弾幕のシューティングゲームのように空を飛びながら水の刃を避け続けた。上下左右に動き回るコウヨウはメイプルの【機械神】やサリーの【糸使い】よりも安定していた。
「ちょっと待って?? アレもう反則じゃない?」
「なんのデメリットも無いのに縦横無尽で空飛んでるお兄ちゃんヤバいね」
「「師匠(コウヨウ)さんカッコいいです!!」」
「流石私の恋人」
「流石私のお兄ちゃん」
「「流石私達の愛人です!!」」
「とりあえずユイとマイは後で説教ね」
「「コウヨウ(師匠)大好きです!!」」
「よし、後であの2人沈めよう」
「サリー、暴力はダメだよ!?」
正直コウヨウからすればお前らの方が反則だろ、それにアレだけ【海皇】に暴力振ってまだやるかとツッコミたかったが、彼女たちからしてみれば装備やスキル依存であってもメイプルのVIT、サリーのAGI、ユイとマイのSTR全てを1人で完結させるコウヨウの方が反則であった。隣の芝生理論はお互いを高めてお互いを成長させていく。
「かなりHP削れたから攻撃も鈍い……これなら避けられるな、ムサシ」
「そろそろ斬るか、主」
「そいやなんでお前も空飛んでんの??」
「元々テイムモンスターの姿で空を舞ってただろう?」
「うわ、それ人型駆逐艦でも有効なのかよ」
「そもそもそのくちく……なんたらとはなんだ?」
「戦い用の船の一種だよ」
「南蛮の船か?」
「作ったのは日の本だ……そんな話はどうでも良いや、やるそムサシ!」
「【二天の無紅へ】」
「【真空刃】」
隣の芝生は青く見える。それはメイプルやサリー、ユイとマイにも見えてしまった。【海皇】を斬り裂いて水滴に変わった神が上空から降ってきた。それを浴びるのはコウヨウ。その姿は、歴戦の戦いの後、戦いの理由を考えて悩み続けた侍に似ていた。
「後はテメェだ……【魔王】」
「みんなで挑めばきっと勝てるな、主」
「ってかお前スキル使えたんだな」
「一応」
「一応ってなんだよ??」
『【封印の槍】を入手しました。これにより新たなクエストが開催されます。実装をお待ちください』
「なぁ、俺たち今回何もしてないよな」
「私はみんなにバフかけたわよ?」
「僕も兄さんとメイプルにかけといたよ」
「つまり私とクロムは荷物だったというわけか」
「カスミ、悲しい事言うなよ……」