妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「お前はユイと同じ道を通るというなら俺が止めるぞ……マイ」
「どうして……どうしてユイばかり贔屓するんですか!」
「俺たちの願いだからな」
冒頭から不穏な空気が流れる中で、コウヨウとマイは初めて喧嘩をしたのである。
☆
「コウヨウさん……私の事嫌いなんですかね……」
「お兄ちゃんがそんな事言うのは信じられないけど、なんか嫌な感じだよね」
「コウヨウはとうとうユイと浮気をしました。コレは刺し殺しても文句はありません。死刑です。真っ赤な桜に染めてあげましょう。チヨノ……おー!」
「サリー黙って」
事の発端はマイがコウヨウに対して言ったセリフである。最近ユイにばかり肩を入れて成長を促してるので、マイも特訓をお願いしたのだが、特訓は良いが刀はやめておけとコウヨウが否定したのだ。マイとユイは曲がりなりにもコウヨウの弟子である。コウヨウの性格上片方に愛を注ぐなど愚かな事はしないと分かっているが、今回ばかりは事情があっても許せない。
「なんでユイばっかり刀あげたり、構っているのかわかりません……あのイベントの時から置いてかれた気がします……コウヨウさんはそんな事しないって信じてたのに……」
「よし、お兄ちゃん殺そう」
「チーヨ、チヨチヨ……チヨノ……」
「サリー歌わないで。お悩み相談じゃないから」
「土器土器土器土器……」
「やめて」
サリーからしたら自分よりユイに構いまくってる事自体が極刑だが、マイの気持ちは理解出来る。メイプルはメイプルでなんかめっちゃ怒ってる。
「そもそもサリーと付き合ってるのにユイとイチャイチャするのはダメだよ」
「イチャイチャというか……誰も手をつけられない特訓をしてるだけですよね?」
「男と女が一緒にいたらそれはイチャイチャだから浮気だよ?」
「相談相手間違えたかなぁ……」
マイが少し頭を抱えたが、メイプルは真剣に話をした。
「お兄ちゃんが1人だけに肩入れするのはサリーくらいだし、多分ユイと何か話したんじゃない?」
「何かとは……?」
「それが分かれば解決すると思うけど……お兄ちゃんとユイに聞かないと分からないかなぁ……」
「なら盗聴しようか。私なら朧のスキルとかで完全じゃなくても姿消せるし」
「それコウヨウさんに通用するんですかね?」
「なら……カナデも連れて透明化とかすれば……」
「それコウヨウさんに通用するんですかね?」
「「マイもうそれ信者じゃん」」
サリーとメイプルが何を言ってもマイの『コウヨウさんに通用するんですか?』botが発動してしまい、もはやなす術なかった3人である。
☆
「そんなわけで教えろ浮気者」
「実の恋人を妹のスキルで毒まみれにするとは何事だ」
「毒の海と毒の柱があればお兄ちゃんも流石に逃げられないでしょ」
「パワープレー過ぎる」
正直、刀で斬ってしまえば簡単に逃げられるが、なんか大事な話そうなのでコウヨウも大人しくした。話を聞くと、マイの話題であることを伝えられたのでコウヨウは少し頭を悩ませた。
「あぁ……やっぱり不満だよなぁ……」
「貴様まさかユイとヤったのか?」
「サリーお前口調おかしい……やってねぇよ」
「お兄ちゃん、ユイは気持ちよかった?」
「貴様は妹の分際でなんて事言うんだ」
「コウヨウさん口調おかしいです」
普通に口調も荒れるだろう。仕方がないと観念しながら、一つお願いをした。
「ユイに許可を取ったから話すよ」
「コウヨウ、流石に私達と妹含めて5Pは……」
「「貴様はなんの話をしている??」」
「コウヨウさん、メイプルさん口調直して」
マイはもはや怒る気力も失せた。サリーの暴走は相変わらずである。メイプルもだが……
「今ちょうど許可貰ったから話すよ……ユイからマイが刀で強くなるのを止められててな……」
「はい?」
マイは絶望した。自分はユイに恨まれるような何かしたのかと。だが、コウヨウは即座に否定して、言葉を続けた。
「ユイはな、現実でマイに助けられてばかりだから、ゲームでは俺とマイを助けたいんだとよ」
「どういう事ですか?」
「「もしかしてユイ……マイの事が異性として……」」
「そっちじゃねぇし同性だ馬鹿」
簡単に言うとだ、ゲームくらいはマイを守ったり助けたりしたいので、マイは強くならないで自分に守られていてほしいとのことである。刀に関しては自分がコウヨウを倒したいという願いのもと手に入れた力であって、姉にもそんな茨の道を突き進ませる気はないのだという事である。
「いつもお姉ちゃんのマイがユイを助けてるからと言ってな、マイが今の強さでも充分だから、それを超えるくらいユイが成長したら2人で助け合ってモンスター狩れるとか、あわよくばマイを守りながらモンスター狩れるとか考えているみたいでな」
——師匠とお姉ちゃんを超えて、2人を守りたいので、強くなるのは私だけで良いです!!
「なるほど、私はユイとコウヨウさんを殴れば良いんですね?」
「ユイはともかくなんで俺も殴られんの?」
「「当たり前でしょ、隠し事してマイを蔑ろにしてたんだから」」
「OK俺を殴れ」
普通に毒の柱までマイにぶん殴られた。粒子になったが【冥界の施し】で死亡は免れた。
——たわけ、こんなくだらないことでコンティニューする馬鹿がいるか
「ムサシに怒られた気がする」
「呼びました指揮官?」
「お前じゃねぇ」
「コウヨウは誰と喋ってんの??」
「武蔵野」
「地名じゃん」
間違ってはいない。結局事情を知ったマイはユイをボコボコにする決意をしたので、今度訓練所で戦うことにしたのである。ちなみに現実に戻ると……
「最近私の出番少ない」
「落ち込むなよ理沙」
「この時期であまりログインしてない日も増えたからね、仕方ないね。お兄ちゃんは殺すけど」
「物騒だな。理由は?」
「お兄ちゃんが理沙に指輪渡しておけば何とかなるって思い始めてる気がしたから」
「今度デート行くか理沙。なんか俺もそろそろそれくらいしないといけねぇ気がしてきた」
乙女心は複雑怪奇である。
☆
「ありがとう、兄さん」
「何が?」
「付き合ってくれて」
「暇つぶし」
「でも、コウヨウ君がいたら心強いわ……とっっっっても」
「なんでそんな溜めるんですか?」
適当な会話をしながら第十層の攻略をしていくコウヨウとカナデとイズの3人。ユイとマイが姉妹訓練所で喧嘩中、3人は攻略中である。
「それにしてもこんな面倒な謎解きの中にダンジョンとクエストがあったとはな」
「カナデ君がいないと誰も分からなかったわね」
「僕は自由気ままに散歩していただけさ、謎解きは好きだから遊んでたんだけどね」
コウヨウが化け物という事は周知の事実であるが、【楓の木】全員が化け物集団であることに変わりはない。カナデは天才的な頭脳で知恵のクエストを攻略し、イズは生産職とは考えられない程の薬や武器、挙げ句の果てにトラップを開発し、クロムは持ち前の玄人PSでしっかりと立ち回れる個々の実力がある。多分普通なのはギリカスミくらい……いやあいつもダメかもしれない。
「でも、やっぱり一番ヤバいのは……」
「コウヨウ君よね」
「なんでさ?」
青龍以下略の刀を変形させずに一本のままで敵を一撃で吹っ飛ばすSTRは例えユイやマイが本気を出しても、どれだけのスキルを手に入れても超えるどころか並ぶことができない。VITだけならメイプルに確実に負けるが、彼はバフ無しで妹の盾すらも吹っ飛ばして本体にダメージを与える実力があるので、無茶苦茶である。
「兄さんがユイに負けたのは【コネクト】があったからでしょ? 普通に戦ってたら勝つよね」
「まぁな」
「即答なのね……」
でも、なんか気に食わない。そうコウヨウは伝えた。プライドなのか、嫌味の感情なのか分からないが、何となく嫌なのだ。
「弱者に手を差し伸べるなんて解釈して貰っても構わない。実際やってるのはそういう事だしな。ただ……」
——それはお前がここまで来れたら言っていい言葉だ
有無も言わさない。コウヨウははっきり言うと強い。強過ぎる。誰もが勝てない。だから、文句言う奴はかかってこい。俺が相手になってやる。まさに強者の言葉である。
「流石ね。なんだか強くなってから、精神的にも大人になったんじゃないかしら?」
「俺は学生ですよ。強いも弱いも無い。強いて言うなら……」
独裁者だと、コウヨウは笑った。
「あながち間違ってはいないよね」
「テメェ斬るぞ」
「コウヨウ君ストップ」
結局第十層なのでモンスターも強くなってはいるが、この3人に勝てる存在など一切いないのだ。
☆
「お姉ちゃん!!」
「ユイ!!」
「「覚悟!!」」
「お前ら……まだやってんのか!?」
中々勝負が付かない双子の訓練はコウヨウ達がクエストをクリアしても続いていた。仕方ないからとコウヨウは仁王立ちでその戦いを見届けた。
「見届け人は俺だ。好きに暴れ……」
「コウヨウさん(師匠)覚悟!!」
「なんでやねん!?」
何故かコウヨウが双子に挨拶行くと必ず大槌片手に、というか大槌16本で戦いの幕が上がってしまう。
「「やっぱり止められますか!!」」
「やっぱりどころか止めるわ馬鹿弟子共!!」
「せっかくだから見に来たけど……ナニコレ??」
「カナデ君が分からないなら私も分からないわね……」
あの一瞬で双子が攻撃を仕掛けて来てからすぐに【二天の無紅へ】を使い12本の大槌を吹っ飛ばした後双子の両手に収まっている残り計4本の大槌を二刀流で止めるコウヨウ。とてつもない風圧が訓練所の建物を襲い、所々ぶっ壊れる始末。カナデとイズは興味本位で見に来ただけなのだが、もはや何が起こっているのか分からない。これが本当の意味不明(☆)である。
「上等だテメェら……カナデにイズさん全員まとめてかかってこいやぁ!!」
「「私(僕)達も!?」」
なんかスイッチが入ってキレたコウヨウが仕方なしにカナデやイズも巻き添えにして訓練しだした。
「なら……僕も本気で行こうかな……【神界書庫】の力、どこまで通用するかなぁ……ソウ、【身捧ぐ慈愛】、【メテオ】!!」
「え!? 私もやるの!? ええっと……とりあえず今持ってる爆発物を……コウヨウ君ごめんなさい!!」
「効くかこんなもん!!」
「やっぱりダメかぁ……割と本気の火力だったんだけど」
「せっ……せっかく作った特製爆弾が……一瞬で……」
「後で手伝うんでかかって来てください」
カナデの炎魔法を斬り捨てたコウヨウはそのままカナデに突っ込んできた。スライムのソウをメイプルの姿にして完全ガードを試みるが……
「カナデ、愛した人は本物が1番いいぞ」
そのままメイプルが真っ二つに斬られた。流石のカナデも苦笑い、イズや双子も擬態と言ってもメイプルの姿をしてAGIを真似ているはず。それでもコウヨウは一撃で斬り伏せた。
「暇な奴から登って来なさい。意地があるなら斬ってみろ」
☆
「お兄ちゃん正座。お説教は私のカナデを刺したから」
「ういっす」
「コウヨウは正座だ。お説教は双子やカナデはともかくイズも斬ったからだ」
「斬ってないです。イズさんは勝手に自爆しました」
「コウヨウ君と相打ち狙いだったんだけど……まさかノーダメージなんてね……」
「コウヨウは正座。お説教は身体で受けて」
「お前だけ目的違うだろ!?」
結局全員斬ったコウヨウ(イズだけは相打ち狙いをノーダメージ回避)は普通に当たり前のことで説教を受けていた。イズに関しては、最後まで残ったのでコウヨウと相打ち狙いで特製の爆弾を爆破させたのだが、【無双転生】で無敵状態になられてイズだけ爆発した。
「とりあえず説教は受けるが、新しいクエストクリアしたぞ」
「あ、そうなの? お兄ちゃんちょっと教えてよ」
「カナデ、どうやって見つけたか説明よろ」
「僕なの??」
「俺は攻略しただけ。見つけたのはカナデだろ」
そう言ってコウヨウはカナデに色々説明させたのであった。
「そういえばコウヨウは【浮遊】あるから関係ないと思うけど、第三層紛いエリアの飛行機械って手に入れた?」
「いや、直接手には入れてないが……」
これがあると、【エンゲージ】を発動。メイド服になって大砲を構えたコウヨウは背中に生えた装甲を見せた。普通にジェット機のような部品が増えていて、そのまま長時間飛行出来るようである。
「武蔵野が改造しやがった。これでも充分だ」
「「武蔵野ってだれ??」」
「秘密」
『フフッ、指揮官のためなら私も頑張るしか無いので、少し気合いを入れてみたわ』
武蔵野割と活躍してくれます。