妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「すまぬ……私のせいで……主が……」
「ムサシ、一体何があったのか教えてくれる?」
メイプルとサリーが【楓の木】に入っていくと、そこにいたのはコウヨウではなく、コウヨウの形をしたムサシであった。ムサシは両手に自身の【天下無双の指輪】。そしてコウヨウが身につけていた侍装備と刀を持って暗い顔をしていた。大事な話だとムサシは2人に伝えてから【楓の木】全員が来る間、先ほどの話をした。
「私はいつの間にか……【魔王】に意識を取られていた様だ」
「【魔王】? お兄ちゃんが倒そうとしているモンスターだよね?」
ムサシは第十層に来てから自分の身が少しざわつく感じがした。ある時、コウヨウのインベントリにある【呪いの首輪】を触ったところ、黒いオーラがムサシを襲った。その結果が、今回のコウヨウ誘拐である。
「と、とりあえずコウヨウはどこ?」
「分からない……だが、【魔王】が黒い穴を作り、そこに主を投げようとした瞬間、【早着替え】で装備を変えて、コレだけを残したのだ」
「うーす……ってメイプル? サリー? どうしたんだ?」
「クロム殿、落ち着いて聞いてくれ」
「ん? コウヨウ……いや、お前ムサシか? いったいどうしたんだよ?」
「主が【魔王】に誘拐された」
クロムは流石に大声を出した。
☆
「話を整理……するまでもないな。コウヨウは誘拐されて消息不明。だが、ムサシの予想では第十層の【魔王】が城に誘拐した可能性が高い……」
「そんな無茶苦茶な話があるかよカスミ!? ここはゲームの世界だろ!?」
「でも、コウヨウ君は前からムサシがゲームシステムではないと言っていたわ。この前もムサシが宮本武蔵の転生した姿って言っていたし……」
だとしても……無茶苦茶であるとクロム、イズ、カスミの大人組は思った。ただ、メイプルとサリーは話よりも前に自分の兄で、恋人のコウヨウがいない事に動揺を隠せない。
「お兄ちゃんまたいなくなった……お兄ちゃん……お兄ちゃん……私のお兄ちゃん……本当はもう死んでしまっているかもしれないお兄ちゃん……」
「メイプル!? 気を確かに持って!? 確かに兄さんは幽霊に好かれたり魑魅魍魎の類連れてきたり、意味不明な事ばかりする……アレ? 兄さんって実はもう……」
「生きてるよ馬鹿夫婦!! コウヨウは絶対私が見つける!! ムサシ! 【天下無双の指輪】は私が付けるから朧と一緒にコウヨウ探すよ!!」
「構わない。今の私は主がいないと動けないただのモンスターだ。よろしく頼むぞ主の奥方」
サリーだけは流石に大声を出した。無茶苦茶なコウヨウが誘拐される事自体信じられないし、それを聞いたら絶望しかないが、一度彼女はコウヨウと一緒に並ぶのを諦めかけて、彼の弟子に怒られた身である。
そして、その双子の片割れも、コウヨウが残した防具を持って……
「私は二刀流ではありませんが、この防具があれば、師匠を見つけるお役に立てます」
「サリーさん、ユイにこの装備は使わせてあげてください。この中で刀を持っているのはカスミさんとユイだけですが……」
「まぁ……ユイの方が強いよな……」
ユイは一度1VS1でコウヨウを斬って勝利を収めた唯一無二のプレイヤーである。ユイはコウヨウの装備を試着しながら彼の刀を振り回す。
「なんかコウヨウの動きに似てる……」
「まぁ、師匠の動きほとんど覚えてるので」
「ユイはコウヨウさんの動きを9割コピー出来ます」
「チート過ぎない!? え? 何それスキル??」
「愛です」
「ぐっ……今回は……許す……くっそ……」
「サリードンマイ」
「メイプル、刺すよ」
同じくマイは妹のサポートに徹しながらも、同じ師を探す事にした。
「よろしく頼む、我が弟子たちよ……」
「「はい!」」
「仕方ねぇ……一度俺とイズ、みんなで【集う聖剣】や【炎帝の国】、【ラピッドファイア】に【thunder storm】に声をかけて手伝って貰うか。あのコウヨウが誘拐されたんだ、流石に俺達だけでは心許ないだろ」
クロムはみんなの話を聞いて、一度大規模な作戦会議を開こうとする事を決めた。そうして、コウヨウ誘拐事件解決特別部隊が組まれる事になったのである。
☆
「ここは……お前の城か?」
「あぁ、余の仮初の城だ」
「【魔王】……テメェの目的はなんだ?」
「目的か……まずは貴様の現状から話をさせてもらうぞ」
暗い地下室の様な場所。そこにコウヨウと【魔王】がいた。【魔王】の身体はコウヨウの身体ではなく、人の形はしているが真っ黒な姿でまるで全身が黒煙で出来たようなそんな姿である。その男はコウヨウの言葉に対して、たった一言。それを聞いたコウヨウは眼を大きく開けて……
「そ……そんな……じゃあ……お前は……いや……お前も……??」
【魔王】を見つめることしかできなかった。コウヨウは考える。この男はきっと……
「そしてお前の力はどちらかと言うと余に似ている……勝つのは殺すことではない……それをお前は知っている……」
——だからこそ、お前は……人間にも関わらず、2つの武士の魂に導かれたのだ……悪しき怨念を連れてな
「いつかお前にはムサシ……宮本武蔵を殺してもらう。そして……余も……全力で勝負をし、貴様に殺されなければならぬ
「分かった……その話ならばお前の条件飲んでやる」
「ならばこれをやる」
「え?」
「余達はお前と全力で戦う事になる。その時は貴様がこの刀で斬るがいい……」
そして、魔王は彼にいくつかのものを渡したのである。