妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
釣り。それは崇高な儀式であり、自分にとって集中力を高める絶対的な特訓方法。例えるならそう、空をかける1匹のペガサス流星。そんな訳の分からない理論を【楓の木】メンバーに伝えて、コウヨウは1人釣りを楽しんでいた。
「10匹釣ったけど見た事ある魚ばっかだな」
ぶっちゃけて言うと、コウヨウはNWOで存在する釣れる魚をコンプリート間近まで迫っていた。特にステータスとか関係無いのだが、『伝説の釣り師』なんて称号と共にゲーム内でトロフィーも貰っているのだ。
フレンド登録した人しか見ることができないのだが、同じギルドメンバーでフレンドのクロムがそれを見て、最強の二刀流釣り師なんていう事を掲示板で書き込んだせいで、少しばかり有名になっているのをコウヨウは知らない。
「危ない! 避けてくれ!!」
遠くからそんな声が聞こえてきたのですぐに声の方向を見るとかなり勢いのある火柱の様なものがコウヨウに飛んできた。慌ててムサシに頼んで火柱を止める様に指示を出すが……
「キュルルン!? キュル……」
「マジかよ!? 危ないムサシ代われ! 俺がやる!」
ムサシでも無効に出来ない炎魔法があるのかとコウヨウは驚いたが、すぐにムサシと交代して【極天二刀】で全力で受け止めた。
「ぐっ……重たいな……! だが、やってやれない……事はない!」
そう言ってコウヨウは二刀を振りきると火柱の魔法は消え去った。危ない所だったと一息つく前に、その魔法を撃ったであろう張本人が草木を分けて出てきた。
「おい! 怪我はないか!?」
「ワンチャン死んでたよ、危ないな」
「す、すまない。まさか人が居るとは思わなかった」
オレンジ色と赤の間程の髪色をして、かなり武装した少女が彼に言った。コウヨウは次は周りを見ろと、注意をして椅子に座り、釣りを続ける準備をした。
「な、なぁ、1つ聞いてもいいだろうか?」
「何だ? 俺からすればなんで魔法をぶっ放したのか逆に聞きたいんだが」
別に怒ってるわけではないが、正直一言くらい言ってやらないといけないとコウヨウは思った。普通にあの威力の魔法なら誤射のせいでプレイヤーキルをして反感をかってしまうからである。
「うっ……すまない事をしたと思っている。レベリングの為にモンスターを倒していたのだが、勢い余って【炎帝】を放ってしまったんだ」
「【炎帝】?? なんかカッコいいスキルだな」
お詫びの言葉と理由を彼に告げた少女。コウヨウはスキルの感想を言ってから溜めた息を吐いて、もう過ぎた事だと、彼女が反省している事を理解して伝えた。
「それで、お前の聞きたいことってなんだ?」
「いや……あの魔法なんだが……遠くで見た感じ直撃してなかったか?」
「した」
「じゃあどうしてダメージが0なんだ?」
少女のその言葉に、コウヨウは眉を動かした。もしかしたらこの人は何かヤバい人の可能性があると直感だが察したのだ。こんな武装をするのはどこかのギルドメンバーのはず、もしかしたらこれから行われるギルド戦もあるので、この人と戦う可能性もこの一瞬で考慮した。
だから……彼女にこう伝えた。
「俺はな、メイプルさんに一目惚れしたんだ。だから防御に極振りした。この装備は魔法を無効にする特殊効果があってな」
よってダメージ0だと嘘を伝えておいた。真剣な目で、さらには自分の絶対的なVITを自慢する演技もした。例え彼女が察しが良かろうと良くなかろうと、コウヨウはゴリ押ししたのだ。
「メイプルさん可愛いよな。モンスターですら食べる食欲がある割には体型細くて、顔も可愛い。きっと裏では体重落とす努力をしっかりしているんだろう。御法度だが、もしかしたら現実ではモデル業とかじゃないか? ストーカーをする気は無いけど、やっぱり惚れてしまったから気になるな」
「あ、ああ……そうだな……そうか、ただメイプルに憧れていた人なのか……だけど……」
「あ、そうだ。紹介が遅れたな。俺はコウヨウ。刀使いだ」
「大楯じゃ無いのか?」
「ゲームをあまりしない主義でな、たまたまプレイして刀を選んだんだが、その後にメイプルさんに惚れてしまったんだ。いやぁ、失敗したよ。俺も大楯にすればよかった」
全力で苦笑いしながら彼女に自己紹介をするコウヨウ。彼女も何かしら隠しているとは思っていたが、ここまでメイプルについて熱弁されるとそれを追求する気もなくなった。一方でコウヨウも兄の目線と他者の目線。二つの目線を使いながら、メイプルがいかに可愛く、可憐で、美少女なのかを伝えた。9割シスコン発言だ。
「こ、コウヨウって言うのか。私は……ミィだ」
「ミィって言うんだな。今覚えた」
コウヨウの言葉にミィは戸惑う。自分の事を本当に知らないのかと。コウヨウはギルド戦に興味はない。ただ楓の木の妹と幼馴染、仲間のために協力するだけであり、どのギルドがどんなメンバーなのかとかそんな情報はどうでもよかった。誰が来ても【楓の木】の邪魔するなら倒すだけだからだ。
だからこのミィという女の子があの【炎帝の国】のギルドマスターである【炎帝】ことミィである事を全く知らなかった。NWOの全ギルドの中で大きさはトップ。実力もトップクラスである【炎帝の国】。彼は全く事情は知らず、先ほど誤魔化したのはなんとなく嫌な予感がしただけだからである。彼の選択はどのみち間違ってなかったのだが。
「せっかくだから釣りでもどうだ?」
「あいにくだが、私は釣竿がないぞ」
「死ぬ程あるから2〜3本くれてやる。基本的に釣竿はあまり耐久性無いからな」
そう言って彼はあのミィにたいして釣竿を渡す。炎を浴びたのに変なやつだなと思った彼女だが、少しの休憩として、彼と釣りをするのだった。
だが、2人は知らない。次のギルド戦で、お互いが対峙をして、どちらかが完膚なきまでに倒される事を……