妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「よし、参加やめるか」
「「「「却下(です)」」」」
コウヨウが言ったのは不参加宣言である。あいも変わらずイベント参加が嫌なのかというとそうではない。単純に組む相手がいないのである。
「PVPと言ってもタッグで決闘だろ? ユイマイ、メイサリ、クロカス、カナイズ……俺は? ってなるじゃん」
「カップリングみたいになってんな」
「言いたいことは分かるが、私をカス呼ばわりしないでくれないか?」
「いやそれは本当すみません。ただ、カップリングになるとこうなってしまって……」
「そもそもカップリングじゃないでしょ……」
「カナデ、イズさんと浮気しないでね?」
「しないよ僕スレンダー派だし」
「それはそれで失礼だろ」
最後のカナデに突っ込んだのはコウヨウ。だが、今回に関してはもはやイベント自体を楽しむ形で、何度死んでも何回も挑めるみたいである。
「死に戻りなら俺とクロムさんの特権だったんだが」
「お前の確定蘇生と一緒にされたら俺はミジンコなんだが」
この2人は割と特殊な訓練を受けているので良い子は真似すんな。
「PVEならと思ったが……パーティは8人だしなぁ」
「最悪コウヨウはレリフルにして、【集う聖剣】に預けようか」
「カスミはさっきの根に持ってるの? それはもう却下だよ。お兄ちゃんは【楓の木】のものだし」
「パーティ制限ありますもんね、んじゃ俺は不参加で【魔王】とムサシを……」
「「逃がさないよコウヨウ(お兄ちゃん)」」
逃げるコウヨウにメイプルとサリーが待ったをかける。逃しはしないと言いながらも、みんなでどっちに参加するかをこれからまた話し合う事を約束したのである。
「あれ? なんだよこれソロでも出れるじゃん」
後に1人でも参加可能なのを後から知ったコウヨウだった。
☆
「これ……どうやって使うんだろう……?」
「どうした主……なんだそれは?」
「あぁ……拾ったんだよ、【聖なる器】」
【聖なる器】
闇の魔王と大剣豪の証を揃えし時、全てを終わらせる伝説が手に入る
「この【魔王の魔力】ってやつか?」
「うむ……だが、大剣豪の証というのはなんだ? 私が合成した刀でもあるまい」
コウヨウは沈黙した。正直言うとこれは拾ったものではないのだが、一旦ムサシには隠しておく事にした。材料が見当たらないので使い勝手も何もないのが問題である。
「まぁ、いつか分かるだろうな」
「主」
「なんだムサ……シ」
コウヨウは少し沈黙した。何でだろうか、考えが分かるわけもないはずだが、ムサシが何か優しい目をしていたからだ。フッ、と笑顔らしきものを迎えたかと思えば、急にモンスターになりそのまま消えた。
「な、何だったんだ……?」
声は、聞こえなかった。
「とりあえず……鍛錬するか。スキルも……新しいものはもう覚えないだろうしな……」
そう言ってコウヨウは刀を両手で持ちながら、モンスターを斬り刻む事にしたのである。
☆
「そういえば、コウヨウは【魔王の魔力】手に入れた?」
「これの事か?」
「そう、それそれ……ってEXってなに!?」
「知らん」
普通はⅠ、Ⅱなどのローマ字表記なのだとサリーはコウヨウとモンスター狩りをしながら伝えるが、コウヨウは何事もなかった顔をして、多分本来最後に集めるやつを順番間違えたんだろと伝えた。
「ほら、あるじゃん、1、2の順だけど、たまに冒険で5とか行って1、2を後から集めるやつ。アレだよ」
「うーん……でも、ペインさん達にも聞いたけどEXなんて単語は聞いたこともないし……もしかしてまたゲームシステムじゃないやつ??」
「さぁな、とりあえずキーアイテムの一つであるなら持っておいて損はないだろ」
「因みにどんなボスだったの?」
「魔王幹部で亡霊を操る……顔青いぞ」
「いや……おばけだよねそれ……ペインさん達の話聞いてもそんなモンスター第六層にはいなかったって……」
「へぇ」
「と……とりあえず……塩撒いとくね」
「やめてね?」
☆
「そういえばよ、コウヨウが攻略に全然来ねえのは何でだ?」
クロム達【楓の木】は着実に【魔王の魔力】を手に入れていた。時にはメイプルとサリー中心に【炎帝の国】と協力して黒い不死鳥を倒したり、【魔王の魔力】を集めるための道を歩んでいるのだが、コウヨウの姿があまりなかった事にクロムは疑問だったのだ。
「確かに不思議よね、ギルド会議とかはまだ出てくれてるけど、クエストにくる数が少ないし、たまに姿を見かけたと思ったらムサシと訓練しているだけで……」
「「そういえば最近師匠(コウヨウ)さん私達の元に来ないですね」」
「イズ達の。【魔王】を倒すと言いながら、クエストに参加しないのは不思議だ……メイプル、コウヨウに何かあったのか?」
「お兄ちゃん今現実世界でご飯作ってます」
「「ただの家事かよ!?」」
「すみません……私達が家事無頓着なばかりに……」
「師匠可哀想……私だったらそんな事させないのに」
「コウヨウさん可哀想、私だったら手伝うのに」
「「ゴフッ……」」
「ユイちゃんもマイちゃんもだいぶ悪女になったわね……」
「あ、でも最近お兄ちゃんあんまり笑わなくなって……たまに苦しい顔してます……ね、サリー」
「多分それ私達が家事全任せしてるから疲労困憊なだけだと思う」
最近コウヨウがゲームに顔を出さなくなったり、クエストに参加しなかった一つの理由として、メイプルやサリーのために朝食、昼食、おやつ、夕食、夜食を作りながら、お互いの母親と協力して家事を手伝いながら、資格取得をしているからである。
サリーやメイプルみたいにまだ大事な時期ではないが、元々コウヨウも何かしらの資格を取ろうとしていた時期が被っただが、コウヨウはたまに顔色が悪くなってしまうことが多い。
「なんか……兄さんって凄いよね。僕も兄さんの料理メイプル達と食べてるけど美味しいし」
「え? メイプル達はともかく何故カナデまで……?」
「そういえばクロム達にはあまり言ってなかったけど、現実ではメイプル達と家が近いんだよね。コウヨウとは図書館で知り合ったし」
「「そうなのか!?」」
衝撃の事実である。クロムとカスミはそんな事を言ってたような言ってなかったような、とにかく思い出せなかったので驚いた。
「んじゃ……メイプルとカナデ、サリーとコウヨウは現実でも知り合いで恋仲なのか……こりゃ……コウヨウの言っている婚約もマジなんだな」
「信じてなかったんですね」
「そりゃ……まぁ……嘘とは思っていないが……実感がな……」
稀に見栄を張る者やネカマ問題もあるのでゲームプレイヤーの現実世界の話はあまり信じない事にしていたクロムだが、今回のメイプルとサリー、コウヨウにカナデの話だけは信じるしかない。
「ただでさえメイプルとコウヨウが兄妹なのも驚いてるのに、さらに驚かされたな」
「化け物兄妹だもんな」
「食べますよ??」
脅しである。そうして少し落ち着いてからコウヨウの話題に戻る。
「んじゃ、コウヨウは家事で忙しいから来ないと」
「まぁ……それもありますけど……最近コウヨウ、変な本を読み出して……」
「変な本?」
「五輪書読んでます」
「もうアイツが宮本武蔵でいいだろ」
「そうだな、最強のプレイヤーは最強の本を読む。それが道理だ」
聞かなかった事にしたクロムとカスミであった。一方、コウヨウは……
「なぁ、ムサシ」
「なんだ主」
「俺、【魔王】斬れるかな?」
「出来るさ。現に主はもはや地水火風空……全ての物事を理解している」
「五輪書のやつか?」
「それもあるが、今の主はもはや私ですら到達出来ぬ向こうに行こうとしているからな」
「そうか……後、最近めっちゃ身体だるいんだけど原因分からない?」
「ふむ……私は医者では無いからな……」
「病院行っても異常無しなんだよな」
ムサシと刀を合わせて戦っていた。だいぶムサシの動きも読めてある程度弾き返すことは出来る。トドメまではさせずとも、前回ボコボコにされた時よりもかなり立ち回れるし、負けなくなった。
「主、最近一つ思い出せた事がある」
「なんだ? 前世の記憶か?」
「うむ……主が聞いた事はあるかわからんが……」
——神道夢想流を知っているか?
瞬間、コウヨウは思いっきり笑った。そうか、やっと思い出したかとムサシに伝えると、少しばかり困惑するムサシ。
「主、知っているのだな?」
「当たり前だ。お前とそいつが元凶で俺に被害を被りやがった奴らなんだからよ」
コウヨウをソロにするか、誰かと組ませるか。悩みどころです。