妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「また来るんじゃないわよ馬鹿」
「なんで俺が死にかけたら毎回ここに来るんだ?」
「使用よ。そんな事よりも、貴方の中に入ってしまった怨念が強くなってきてる……いつか心臓止まるわよ」
「止まっても身体が動けば問題ない」
「無理に決まってるでしょ馬鹿マスター」
気絶したコウヨウの意識は屋敷わらしのいる洋館の中にいた。毎回死にかけたらここだった。
「俺が紅葉だから落ち葉のように死ぬって事か?」
「逆よ。落ち葉は確かに木から落ちて粉々になるけど、また次の年に葉を生やす。貴方はここまでのムサシおじさん含めて色んな怨念を無理矢理身体に埋め込まれながらここまで生きているのは、無茶苦茶な再生能力のせいね」
「吸血鬼では無いんだが?」
「『誰かのために』の精神力が強すぎて、身体が強すぎるだけよ。まぁ、そもそも貴方は霊感強すぎるからこんなの連れてくるんだろうけど」
最悪、現実世界でサリーに嫉妬とかで刺されても生きてるのではないかとわらしは笑った。笑い事ではないのはコウヨウ。一体どうしてそうなったのかと聞くと、宮本武蔵との刀を振り続けた結果、精神力が鍛え上げられたのではとわらしは考察した。
「まぁ、おじさんもそんな気は無かったんだと思うけど。あの人はなんとなくマスターが気に入ったからついて行っただけだし、試しに刀を教えてあげたら、天賦の才が元々あったからもうコイツに【魔王】……馬鹿侍を倒してもらおうって思っただけみたいだし」
ふざけんな今までの話を返せとコウヨウは突っ込んだ。
「あの野郎なんやかんやシリアス発言しといて、結局たまたま俺が【呪いの首輪】持ってて、たまたま刀が使えて強くなりすぎただけで助け求めただけじゃねぇか……」
「でも、それは後にも先にも貴方しかいないわよ。ある意味偶然にして必然……だから貴方はこんな事で止まっちゃダメなの」
「なんかやる気なくしそう」
「アイツらなんとかしてからやる気なくしてね、私もさっさと成仏したいし」
「まだしてねぇの!?」
「して欲しいならアイツらさっさと斬って」
コウヨウは項垂れた。だが、やっぱり目的は変わらない。今やらないといけないのはムサシと【魔王】を倒す事である。
「後は、貴方がムサシおじさん達のせいで自然と身体に適合してしまった怨念などの負の感情を制御しないといけないわ」
「それしないとどうなるんだ?」
「【名状しがたい何か】になるわよ。文字通り化け物ね」
怖いからやめろとコウヨウはわらしに伝える。わらし曰く、昔は戦いたくないとか言ってたのに、ある時急に戦いたくなったり、誰かに嫉妬したりしたのも、昔からあった感情だが、怨念が身体に入り続けて時折爆発したのではないかとも伝えた。
「喜怒哀楽は人間にあるけど、それを理性で抑えている。貴方の場合抑えてはいるけど、怨念が混じってしまった事により、少し我儘になってきたって感じね。それが今度は体調に影響し、最後には命に影響する」
「怨念って言葉便利だな」
「貴方のPSに言われたくないわよ……宮本武蔵の弟子だからでなんでも斬れると思うな。液体になれると思うな、幽霊拳で殴れると思うな」
ごもっともです。少しばかりしか出来ることではないが、わらしはコウヨウに呪文を唱えた。
「闇に惑いし哀れな魂よ。人を傷つき苦しめて、罪を重ねる業の魂」
「なぁ、前から思ってたんだけどそれ呪文なの?」
「いっぺん、死んでみる?」
そしてわらしはコウヨウの心臓部を殴った。痛みはないが、何かが抜けていく感覚が、コウヨウの身体で感じた。
「怨念を抜いたのか?」
「少しばかり威力を弱めただけ。完全に消すには、この問題の解決以外ないわよ」
「まぁ、少し楽になった気がする……ありがとうわらし」
「お礼はベッドでしなさい」
「嫌です」
なんというお礼の求め方でしょう。アレだけ昔片言で生意気だった少女は清楚系の淫乱に成り果てました。
「まぁ、サリーも人の事言えないがな……お前人じゃねぇけど」
「あの人は快楽に溺れすぎよ。マスターいつも途中でバテてるじゃない」
「おい待てなんで知ってる」
「死んだ人間は天で見守るのよ」
「それよく感動的な話になったりするけどやってる事法をすり抜けたストーカーだからな?」
「幽霊に試験も法律も無いのよ……というか、早くベッド行きなさい」
「襲わない?」
「襲わない。むしろベッドに寝てくれないと貴方の意識を身体に移せないから早く寝て頂戴」
「じゃあ服脱がないでくれない?」
しっかりと事実を説明しながらいつの間にか下着姿になってるわらしに対して全力で突っ込んだ。ちぇ、と声を出して服を着だす。その間にコウヨウはベッドに横になってこれで良いかと尋ねる。
「ええ、それじゃあ……もう二度とこないでね」
「わかりません」
「くんな。【冥界の施し
「えっ……なにそ……れ……」
瞬間コウヨウが消えた。
「教えるわけないでしょ、最悪死者すらも蘇生させる禁忌なんだから……」
「まぁ、早くムサシおじさん達を連れてきなさいな。私と閻魔でお説教しないといけないから」
☆
「ムサシ、お願い!」
「当然だ」
コウヨウが死にかけている頃、コウヨウの身体を使いながらムサシはメイプルやサリー、カナデと第十層の第八層攻略を目指す。コウヨウがムサシに変わったとしても正直何も変わらない。せいぜいスキルをあまり使わなくなったくらいだろう。
「伏せろ神童」
「へ? うわっ!?」
「ちょっとムサシ!? 私のカナデに何するの!?」
「神童の後ろに敵がいたから【真空刃】を飛ばしただけだ。油断するなよ」
「そっか、今はムサシだからムサシ専用のスキルが使えるのか……それでも強いね」
「其方こそ弓矢と銃弾を弾く芸当。誠に
「それでも、コウヨウなら簡単でしょ?」
「たわけ、主にも出来ることと出来ぬ事はあるわ」
「じゃあ出来ないの?」
「いや、それくらいなら弾くどころか指先2本で掴むが……」
「出来るとかのレベルじゃなくて笑った」
というか絶望した。サリーくらいしか銃やら弓矢や、弾く事は可能であり、それは唯一無二のプレイヤースキルではある。対して、というのは違うと思うが、コウヨウは回避よりは肉体で受ける極意を学んだ男。弓でも銃弾でも刀で弾く事もするが、ダメージを犠牲にして指先で止める芸当をするのだ。2人揃って反射神経の問題では無かった。
「されど姫君、お主の力に対して主は足元に及ばぬ」
「はぁ?」
「元々の主は姫君なんかよりも余程人間である。いかに武士といえども、てつはうを弾くなどの芸当は私でも出来ぬ」
「じゃあなんでコウヨウは……」
怨念には悪い意味が強い。強い憎しみや恨みが霊になり、人間に対してそれが移ると、その人間も気が狂った様に変わる。
「だが、主はそれを理性と精神で抑えている。そのせいか、おかげか、主はそれを力に変えたのだ」
——本当はゲームと言えども強くなりすぎたお主らに対する嫉妬、兄である自身には、男たる主には、女を理解する頭も心も、体もない自身への恨みを……
「コウヨウは女になりたかったの? いつでも着替えさせてあげるのに」
「根本の問題だたわけ」
なんとなく理解した、コウヨウが歳は上なので、メイプルやサリーに関しては同い年の方が仲良くもなれるし、遠慮もしない。まして同姓であるならば仲は良い。それはまぁ、仕方のない話だとコウヨウも理解はしているはずである。
それでも、ゲーム内では普段はサリーだけが強かったのもあり微笑ましく見ていたところまさかの妹であるメイプルもゲーム内では能力に違いがあってもとてつもない強さに変わった事に関しては、少しばかり気に食わぬ事はあった。
「されど主は諦めの悪い男よ。10時間ほど私と試合をし、10時間ほど刀を振いながら木偶の坊を斬り、10時間程モンスターを狩る。その集中力と元からあった刀の才に関しては姫君が足元にも及ばぬ」
「私からみればどっちもどっちで強さがある。個々の強さがあることを、主はゆっくりと理解している……だからこそ私達の怨念や怨霊が身体に宿っても人で居られるのだ」
「10時間……確かに何日かコウヨウが現実に帰って来なかった事があって、メイプルが半泣きしてた時あったけど……」
集中力はサリーを超え、刀の腕もサリーを超える。歳上だからこそ、サリーやメイプルよりも精神的な心や考えがあるのは彼の長である。
「私は……どうすれば良いのかな?」
「姫君は姫君らしくいろ。無理に主を立てろとは言わぬ。自分の誇れるところは主の為に、主の誇れるところは姫君の為に。それが家族と言うものだ」
私には居なかったがなとムサシはコウヨウの体で自虐的に笑うが、弟子はいたから寂しく無かったと伝えた。
「コウヨウの為に……私の為に……か……」
「うわっ……どうしよう……」
「どうしたのカナデ?」
「今、文字を読んだら……コウヨウのAGIが0になるって……」
「「なんですと!?」」
「ほう」
カナデが読んだのはダンジョンの文字盤である。この先どちらかのダンジョンに進めと書いてはいるのだが、どちらに入ってもステータスが減るという過酷なことが書いてあった。
「コウヨウのAGIが0なんて……力強いけど足遅い巨人と同じじゃん……」
「お兄ちゃん……いや、今はムサシか……どうするの?」
「私は一向にかまわん。足が遅くなるだけだろう?」
「まぁ……確かにメイプルだって0だけど全く動けないわけじゃないけど……兄さんがこうなったら……」
「行くぞ」
「「「ちょっとムサシ!?」」」
「迷っている暇はない。主を休ませないといけないのだから」
ムサシは驚く3人に対して、早く行こうと言いながら、その部屋に進んで行った。そこにいたのはまた黒いキューブ。それでも変身は絶対するみたいで……
「「「ひ、豹??」」」
「スピード特化というわけか」
そのモンスターは真っ先にこちらに向かってきた。
「【再誕の闇】!」
メイプルの合図でカナデとサリーは古代兵器で空に避けるが、ムサシだけは避けきれない。
「お兄ちゃ……いや、ムサシ危ないよ!?」
「案ずるな……ほらな」
避けきれないムサシに向かって突っ込んできた豹のようなモンスターはムサシの刀に噛み付いた。いや、ムサシが豹の噛む場所を予測して刀を置いたのだ。
「動きは遅くても心は動かず。心は早くも遅くもなってはならぬ……」
「ムサシ、そのまま動がないで! 【古代ノ海】、朧【幻影】【影分身】!」
「貴様が何をするかは知らぬ……だが、私や主は貴様如きに敗れる侍ではない……」
ムサシはモンスターにも伝えたし、味方のサリーにも伝えた。ここにいる全員に対して告げたセリフ通り、ムサシはあまり動かず、豹だけは目で捉え、刀で威嚇をする。
「ムサシ、私の元に来れる?」
「妹君の元くらいは歩ける」
メイプルの後ろに構えたムサシだが、メイプルは【緑の弓兵】【空守りの群れ】を発動して、異形を出しながら豹に攻撃を仕掛ける。
「やるな、妹君。からくり人形みたいなものか?」
「それよりも禍々しくない??」
「私の国でも老朽したからくり人形は目から取れたりするのでな、魑魅魍魎とさほど変わらぬ」
カナデのツッコミに対してもムサシは冷静に答える。会話中に敵のHPが7割切った所で黒い物体がまたもや邪魔をする。
「あっちゃー……そう上手くは行かないかぁ……」
「神童よ、私に面白い技がある……力を借りても?」
「協力はするよ、でも何をする気だい?」
本来ならば出来はしないが、ここはゲームの中だとムサシは笑い
——少しばかりは
そういうと、ムサシはカナデに炎魔法をお願いして自身の刀に灯したのである。
「これぞゲームとやらだな……綺麗な炎だ流石神童よ」
「コウヨウの刀が……燃えてる……」
「スキルの組み合わせを極めるとこうなるんだぁ……凄いなぁ、勉強になったよ。かっこ
「カナデ正気に戻って!? とりあえず……どんな力なのか分からないけど、ムサシ、お兄ちゃんの代わりにやっちゃえ!」
無論だと、ムサシは炎が纏った刀に力を込めると、炎は勝手にモンスターの元に突っ込んでいく。
「炎の渦がモンスターを締めつけた!?」
「これで動きは封じた。さて、向かうとしようか」
AGIは0だが、関係ない。モンスターは動けないのでゆっくりと死のカウントダウンとしてモンスターに歩み寄るムサシ。
「獲ったぞ……足が遅くても私は負けぬよ……」
——主以外にはな
そうして豹をぶった斬った結果、その心臓部からアイテムが出てきたのである。
「【魔王の魔力Ⅵ】ゲットだよ!!」
「後は【魔王】を倒すだけかぁ……いや、多分コウヨウが倒すんだろうなぁ」
「今回ばかりは僕達の出る幕は無さそうだね」
「何を言う、主の為にも、私達のためにも其方達の力を借り……ぐっ……!?」
「「「ムサシ(お兄ちゃん)!?」」」
ムサシが膝をついたので3人は彼を呼んだ。メイプルだけはいつもの癖で兄呼ばわりしたが、彼はすぐに立ち上がり、少し沈黙してから言葉を発する。
「ははっ……終わってらぁ」
「えっ……コウヨウ??」
「おう、ただいま。クエスト終わったんだな」
ムサシから元に戻ったコウヨウに対して、メイプルとサリーは彼の手を握って、感動の再会をしようとして……
「「いや、めっちゃ熱い!?」」
「え? 何が……いや熱い!? なんで刀燃えてんだ!?」
「ムサシのせいだね」
「あの野郎また変なスキル渡しやがったな……まぁ、良いか。帰るぞみんな」
そう言って彼は一振りで炎を消してそのまま締まってから帰るのだった。