妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「なぁ、なんかおかしいぞ?」
【魔王】攻略会議中の【楓の木】でクロムは疑問を投げる。何があったのかを聞くと、パーティメンバーが増えていると言うのだ。
「元々24人のパーティだったんだが……見てくれ、オレンジ色の字で25人と書いているんだ」
「本当か? どれ……ん? 【魔王の魔力EX】を持てばパーティ上限が人枠増える……これってコウヨウが持っていたやつか?」
「あの野郎、元々俺を招待するためにこれを渡したのか……ゲームルールシステムにも影響与えるなんて、いよいよ不味いな……」
カスミの言葉にコウヨウは苦笑いで返す。想像の中で『貴様を待っているぞ』と【魔王】が笑っている所を想像してしまったのでムカつく事この上ない。
「んで、条件は良いとして、クロムさんは何待ちですか?」
「24人待ちだったんだが、コウヨウ入れてちゃんと25人に……」
「その時点で俺仲間外れですよね?」
「いや……最悪ジャンケンで……」
「俺パーティ抜けますね」
「すみません、貴方がいないと絶対危ないのでどうかいてくれませんか!!」
クロムは人生初かもしれない土下座をした。みんなはそれを見て笑っているが、クロムはバツが悪そうに、コウヨウは1つ息を吐いて話す。
「どのみち大パーティ決戦しないと負けるならさっさと組んじゃいましょう。アテはいるんですよね?」
「あ、あぁ勿論だ」
「あの、クロムさん。1つ私に考えが……」
お兄ちゃんが行けなくなるのも嫌なのでと前置いてからメイプルはクロムに1つ案を立てた。
「そりゃ、面白そうだな」
「あの人達なら攻略した人もいるから頼りになるな。メイプル、そこはお前の人脈で頼む」
「うん!!」
「それならわざわざ25人にする意味もなかったわけだ……最初から最後までお前の思い通りなるとは限らんな、【魔王】」
☆
「兄さん、僕に少しの時間しかないけど、稽古してくれない?」
「俺は魔法は使えんぞ」
別に魔法を放てと言わないが、戦い方を教えてくれとカナデはコウヨウに言った。
「なぜ、俺なんだ?」
「兄さんには勝てないけど、追いつきたいからかな」
「追いつく?」
「僕はね、兄さんにはとてつもない程の感謝と好意を持ってるんだ。それこそ1トンよりも多くのね」
「んで、それがどうした?」
何故か話しながら魔法で攻撃してくるカナデに対してコウヨウは弾き返しながら言葉を交わす。
「そんな兄さんが、ゲーム如きで死ぬなんて事があったら、メイプルやサリーだけじゃ無くて僕もヤンデレ化するのは必然でしょ?」
「でしょ? じゃねぇよ、なるな」
俺は死ぬ気はねぇとコウヨウは言うが、そもそもこの話はあり得ない珍妙なお話なので、コウヨウの御伽話で片付けられるし、逆にコウヨウの命はいつ無くなるか分からないの二択である。
「僕は後者にかけるよ、ムサシや兄さんの力は本物だし……僕はまだ兄さんと出会ってから貰ったものが多すぎて100分の1も返せてないんだ」
「だから僕も【魔王】討伐に前立腺で協力する」
「今お前前立腺って言った??」
メイプルに開発され続けたカナデはかなり毒されてる気がする。全力で協力したいカナデに対して、コウヨウは……
「んじゃ、登ってこいよ、意地があるなら。くらわせてみせろ、命かけて」
「僕の本気、能力も頭脳も全部使って兄さんと並ぶ……ついでに最近メイプルがサリーと親友としてイチャイチャしてて彼氏としての自信無くした」
「お前そっちが本音だろ。というかそろそろその濁った眼やめない?」
「うわ、そんなに見つめられると……僕恥ずかしいんだけど……」
「散れ」
とりあえずムカついたので15回斬り刻んであげたのだが、カナデは粒子になり続けてもまだ立ち上がった。
「ほら、こいよ。何時間でも付き合うぜ」
「フフフ……こんなに僕が今までで最大の本気を出しているのにこのザマかぁ……兄さん、やっぱり君は……」
「兄より優れた弟くらい存在しても構わないが……」
——最後に勝つのはこの俺だ
「僕の大好きな人の1人だ」
「黙れ僕娘」
「僕男なんだけど」
結局、コウヨウの刀によって全戦沈められたカナデではあるが、魔法使いの避難経路などの回避に関する立ち回りを吸収出来たのは良かった点である。
☆
「メイプルの頼みだからここに来たのは良いが……」
「師匠(コウヨウさん)覚悟!!」
「兄さん、覚悟してよね」
「流石前衛と後衛いたら違うな」
メイプルに呼ばれて来たミィ、マルクス、ミザリー、シンだが、コウヨウが訓練所でやってることに対して引くしか無かった。
「【魔王】は強いぞと伝えに来たが、どうやら無意味かもしれんな」
「ユイとマイ……更にはあの魔法使いまで相手にして……コウヨウが押してるだと??」
「こりゃ……勝てないわけだ」
「魔法すらも斬り裂いて弾き返すなんてあの人しかできませんからね……」
「「【ダブルスタンプ】!!」」
「ソウ【覚醒】! 【ライトニングボルト】!」
「いでよ木刀、斬り裂けや」
カナデの魔法は木刀で斬られ、ユイとマイの攻撃はすぐに二刀で受け止める。しかしそれはカナデの読み通りである。
「【ハイドロレーザー】!!」
カナデが放った魔法は双子が動きを止めたコウヨウに対して向かって行って……すり抜けた。
「よし、兄さんに【無双転生】を使わせた! ユイ、マイ! そこから1分我慢すれば倒せ……」
「コウヨウ二天」
すり抜けた後、コウヨウは【二天の無紅へ】でユイマイを高速で斬り裂いた。嘘だと言わんばかりにカナデが流石に目を開くが……
「おら、トドメだ」
普通にコウヨウに心臓を刺されて散ったのである。
「おかしいなぁ、【無双転生】はMPをほぼ0にするからスキルは使えないはずなんだけど……」
「わらしがステータスを俺にくれたおかげでその話は過去話になった……つめが甘いぞ」
「ああ……なるほど……ごめんね、ユイ、マイ」
「いえ、私も伝えてなかったので」
「え? ユイ知ってたの?」
「そりゃ、師匠の事だし」
ユイのあっけらかんとした発言にコウヨウやカナデ、マイも苦笑い。なんでも知ってやがるなとコウヨウは話して、みんなの元に向かう。
「奴の厄介なところは行動パターンが多様すぎる上、決まった順序がないことだ。クリアしたとはいえ与えられる有益な情報はそう多くない……」
「それでも、私とベルベットさんも全力を尽くしに来ました」
「私達も右に同じだ。いやはや、それにしても豪華なメンバーだね」
なんかもうめっちゃいた。【炎帝の国】、【thunder storm】、【ラピッドファイア】、そして……
「【集う聖剣】のギルドマスターとしてメイプルの勝利のために手を貸そう」
【集う聖剣】のメンバーも、参戦している大所帯。だからこそコウヨウは、一度ムサシと透明化した。
「ありがとうございます。みなさん、力を貸してください!」
「あぁ……それは良いのだが……」
「ここのエースはどこに?」
「エース? もしかしてお兄ちゃんですか?」
他に誰がいるとウィルバードの言葉に対してフレデリカが言った。【楓の木】ではギルドマスターではないが、全てのプレイヤーやモンスターをほぼ無敗で斬り捨ててきたNWO最強の男、コウヨウの姿が見えない。メイプルも探しはしてるが、全く見当たらないのだ。
「まさかこの状況でも釣り行ってんのか?」
「流石にありえないですよ。お兄ちゃんと【魔王】は絶対に対峙しないと行けない存在ですから……ユイならわかるかな……」
そう言ってメイプルはユイがいるところに向かって兄の居場所を尋ねる。
「ユイ、マイ、お兄ちゃん見なかった?」
「え? 私は見てませんけど……ユイは?」
「師匠ならそこにいますよ?」
「「え? いるの??」」
普通に見えていた。コウヨウはムサシと【コネクト】をした特殊スキルにより透明化していたのだが、流石はコウヨウの弟子。普通に消えたところ見たし、こっそりみんなに囲まれるメイプルを微笑ましく見ていた。
「お兄ちゃん……? ここにいるの?」
「ん? メイプル、みんなは良いのか?」
「いや、そのみんながお兄ちゃん探してたんだけど……」
「なぜ俺の姿が見えた? ちょっと不思議な力を使って透明化したんだが?」
「ユイがすぐ見つけたよ」
「最早笑うしかないな。怖いわ」
「「コウヨウ!!」」
ミィとペインが彼の元にやってきた。どこにいたんだと聞くが、ずっとここにいたと返して、2人の話を聞く。
「私は一度攻略したが、パターンが読めない。気をつけろよ」
「その中に、権之助はいましたか?」
「ご……ごんの……なんだ?」
コウヨウの問いに答えられなかったミィを見て彼は魔王の正体は仮初かと気づく。恐らくクリアは出来るのだろうが、この怨念はコウヨウ自身にしか感じ取れないし見えないのもあり、奴が出てくるのは自分が喧嘩を売った時なのだと確信する。
「本物の【魔王】は余程俺と喧嘩したいらしいなぁ……」
「本物? どういう……」
「それじゃあ、魔王メイプルと一緒に頑張ろう! チヨノ……」
「「「「「「「「おー!!!!」」」」」」」」
「なんか私のいない所で私が魔王扱いされてない!?」
「んじゃ、行くか魔王様」
「お兄ちゃんまで!?」
言葉はそこで消えた。そしてこっそりとコウヨウはみんなに内緒で自分の相棒に声をかける。
「ムサシ……最後の大仕事だ。頼む」
「あぁ、当然だ」
「コウヨウ、準備は出来てるのか?」
「ペインさん、俺はまだですが、宮本武蔵は充分ですので問題無いです」
「お前の準備は?」
「歩きながらしますよ」
☆
魔王の攻撃方法は多彩でパターンも侵入ごとに変化するらしい。四つのトップギルドが見た攻撃パターンを全てつき合わせてみた時に、それぞれのギルドが知らないパターンがあったことは、魔王が一筋縄ではいかない相手であることを証明していた。
一発クリアという困難な目標の達成を目指す上での最低条件としてメイプル達は頭に叩き込むのだが……
「おーい、コウヨウ聞いてるかー!」
「あぁ……聞いている……」
なんとなくコウヨウの様子がおかしい事にクロムが気づく。コウヨウは頭を少し手で押さえながらも、鋭い目つきでみんなの話を聞いていた。
「どうしたんですか師匠、調子悪いんですか?」
「コウヨウ、少し休んでいても良いぞ、俺達が後で伝えるから」
「いや……まぁ、そうだな……頼む」
絶対的エースがここでパンクされても困るので、ペイン達はコウヨウの代わりに頭に攻撃パターンを叩き込む事にした。コウヨウはイズ特製のベッドで少し横になっているが、サリーとカナデはコウヨウについて少し話していた。
「ねぇ、カナデ……もしかしてコウヨウ……」
「恐らく怨念の影響で身体に悪い影響が出てるんだと思う……【魔王】に会うまで兄さんには休んでいてもらいたいけど……」
既知のパターンに対応できない状態では、未知の攻撃への対応など考えている場合ではないし、コウヨウはどのみち必要である。魔王の元へと移動する間も【楓の木】の面々は、どの攻撃にどのスキルで対応するかを復習していた。
「モンスターも出るが、【楓の木】は基本控えていてくれればいい。ボス戦までは魔法での先制攻撃を主軸として遠距離攻撃で攻める」
「はい……ってお兄ちゃん!?」
「コウヨウ、身体は……」
悪魔の風貌をしたモンスターに対してコウヨウはみんなより前に出る。そして、ゆっくりとモンスターに近づくと……
「主の邪魔は……私がさせぬ」
約3秒。この一瞬だけで、5体ほどのモンスターを全て粒子に変えた。たった一振り、されど一振り。サリーとユイはギリギリ追えた。だが、ほかのメンバーは……
「いつ……斬った?」
「いや……そもそもコウヨウは歩いただけじゃ……」
「師匠は斬りましたよ。確実に」
「うん。ユイの言う通り、コウヨウは斬りました。そして鞘に刀を戻しました」
「何も……見えませんでした……」
本気も本気。絶対に全部斬る覚悟を持ったコウヨウはスキルも使わず、HPも減らさず、向かう敵を全て斬り刻む。
「わ、私達もコウヨウに負けられないよ!!」
コウヨウの刀捌きにビビりながらも、フレデリカが魔法使い代表として鼓舞をすると、みんなも我に返ったのかその鼓舞に乗った。
「そ、そうだな! フレデリカの言う通りだ!! お前らコウヨウに続け!!」
「流石……それでも、私達が荷物になるわけにも行かないね、ウィル、やろう」
「はい。お任せを」
「ヒナタ! やるっすよ!!」
「うん……でも……コウヨウさんってあんな戦い方だっけ?」
ヒナタは少しコウヨウに違和感を持っていたが、このまま魔王討伐のためにみんなで突き進むのであった。
この小説もここまで来ました。完結までまだありますが、ここまで続いたのはひとえに皆様が読んでくれたことと、普通に私のモチベーションが続いたおかげですので感謝致します。(おい、後半おかしいだろ)
後もう少しお付き合い頂ければと思います。