妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「「「お兄ちゃん(兄さん、紅葉)」」」
「ん? どうしたみんな揃いも揃って俺の部屋に来て。勉強分からないとこあったか?」
「「「一緒にお風呂入ろう」」」
「狭いから無理」
別に入りたくないわけではないが、現実世界の紅葉の家はそこまで広く無かったので断った。
「じゃあ順番に入ろう。今日は私ね」
「楓はいつも紅葉と入ってるんだから今日は恋人の私」
「僕は兄さんと入った事ないから今日は入りたいなぁ、かっこ眼のハイライト無し」
「お前ら頭壊れた? というかかなでのキャラぶっ壊れてね?」
普段は楓しかそんな発言をしない……いや、理沙もするか。だとしても。かなでは無い。ないない、それはない。
「かなではなんでそんな事を?」
「だって兄さん後数ヶ月の命じゃん。だったらもうみんなでお風呂入って4人で遊ぼうよ。水着着るからさ」
「勝手に殺すな、水鉄砲持ってくんな、水着を着るな。しかもめっちゃ可愛いんだが……」
ツッコミ三段(四段)論法である。かなでの言葉ではっきりとわかった。自分が呪われていて、ゲーム内で命を失いかけてる状況なのもあり、みんな心配してくれてる……と言うか諦めてない?? 勝手に死ぬ宣言されてるが。
「はぁ……勝手に殺すなよ……なんとかして生き延びるから……」
「じゃあ……聞くけど……【魔王】を倒す勝ち筋は見えてるの?」
「見えるわけねぇだろ……おい待て、泣くな泣くな!!」
紅葉に策はない。だからこそみんなは絶望する。崖まで追い込まれて、無策で崖に飛び込むように。こんな状態では……
「「「みんな死ぬしか無いじゃない!!」」」
「マミるな」
仕方ない……とみんなに対して、1つだけとっておきの話を彼はした。
「策ならたった一つだ。賭けにもなるが、この一手は残してる……ただ、これは【魔王】が俺にくれた一筋の道だ」
「「「【魔王】が!?」」」
3人は驚いた。紅葉に対してと言うよりかは、この策を伝授した人物に向かってだが……
☆
「んで、結局風呂は入ったのか?」
「お兄ちゃんが油断して湯船に使ってる時に乱入しました!!」
「楽しかったよ」
「気持ち良かったよね」
「「それはサリーだけ」」
「そう言う意味じゃない!! お風呂がって事!! それに4人で入ったんだから分かるでしょ!?」
「「サリーならこっそりヤリかねない」」
「ムキー!!」
「落ち着けノグチさん」
「だから誰だよ!?」
何故サリーだけそんな発言をすると変態チックになるのか。普段の行いである。
「枯れた大地か、風情も無いな……これが【魔王】の全てか……いや、私たちの怨念のせいか」
「ん? 怨念……?? 所でコウヨウさん、休まなくても平気かい?」
コウヨウに対してリリィが声をかける。本当は【楓の木】には最終決戦まで体力などは温存して貰いたいのだが、餓狼のように斬り刻むコウヨウを少し心配した。
「うむ、問題はない……が、確かにこの身体は少し休ませた方が良いな」
「身体……? 一体何を言っているんだい?」
「こちらの話だ。一度、後ろに下がろう……貴様を斬ってからな」
「リリィ!? 危な……!!」
その瞬間リリィに向かって一閃入れたコウヨウ。見ていたウィルバードがそれに対して声を上げる。
「グガァァァァァァ!!?」
「剣は剣としか呼べぬ訳がない。私は皆を、主を導くものなり……」
リリィの後ろをコッソリと付けていた狼型のモンスターはコウヨウの一撃で粒子と化した。最初から狙っていたのはモンスター。味方を殺すわけは無いのだ。
「何を勘違いしてんだよ、さっさと行くぞ……なんてな……」
「リリィ、怪我は……?」
「あるわけないさ、寧ろ彼が斬らねば私が斬られていた。まさか私でも気が付かないモンスターがいるなんてね……流石コウヨウさんだ」
「それにしても……あの人は……何か少し違うような……」
「ウィルも気づいたかい? あの人は多分コウヨウさんじゃないよ」
「な……それじゃあ……」
誰なのかとウィルはリリィに聞くが、よく考えれば彼のように立ち回り、彼のように斬れるものはたった1人しかいない事に気がついたのである。
「私じゃないですよ、サリーさん」
「うん、ユイは今ここにいるからね……一体どういうつもりなんだろう……ムサシは」
「多分、何かから師匠を守ってるのではないですか?」
「まさか……怨念……??」
「姫君、安心しろ。主は私の心の中で落ち着いている。ここは怨念が勝手に集まり、かなり多いからな。万が一の事を主と考えただけだ」
「じゃあコウヨウは……」
「心の中で釣りしてるな」
「何してんだアイツ」
「冗談だ」
とりあえず全てを察したサリーに対してコウヨウになったムサシはそのまま後ろに下がったのである。そうして、しばらく歩くと声を出した。
「ここから魔物の数は増えるが対処できない相手ではない。予定通り我ら【炎帝ノ国】と【集う聖剣】を中心に捌く。【楓の木】を温存させるぞ」
「断る」
「は?」
予定を立てた仲間の言葉を裏切り、真っ先に突っ込んで行ったのはコウヨウことムサシ。
「コウヨウ! 待て! 確かに敵は勝てるものだが、お前だけでかなうような数では……」
「主、恨むなよ。私はやはり戦いたいのだ……! 千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。手首5寸3寸の利を知り……」
——千も万も斬るのだ
出てくるものは全部斬る勢いで彼は無双をしていく。流石に全てを斬るのは無理だが、ここのエリアのモンスターの7割は彼が斬り尽くした。
「嘘だろ? 1人で無茶苦茶斬りやがる……」
「うわぁ……容赦ねぇな……」
「これがコウヨウの戦い方なんだろうけど……最早人間やめてるわ……まぁ、私達も【楓の木】守ろうか」
「大楯は俺とメイプルだけだ、何かあれば戦うぜ」
「流石コウヨウ君ね……でも、なんだか様子はおかしいけど」
「あれお兄ちゃんじゃなくてムサシですからね」
「「「は??」」」
今になってメイプルはサリー達と同じタイミングで気づいた事をみんなに話す。コウヨウが今どこにいるかは分からないが、今コウヨウの姿で斬っているのはムサシだとメイプルはみんなに伝えた。
「待って……話が全然わからない……」
「テイムモンスターがプレイヤーの身体を借りて戦うなんて聞いた事ないっすよ……!」
「でも、お兄ちゃんはそのテイムモンスターを倒さないといけないの。だから、今は身体をムサシに預けてる……事情は終わったら伝えるけど、ベルベット達は、今はムサシは仲間って思ってくれれば良いよ」
「私達には理解が出来ない話ですね」
そう伝えながら魔王に向かって着々足を伸ばす一向。魔王の居場所である紫の球にまで至るのだった。球体に近づいたことで分かるのは、それが竜巻のように勢いよく渦を巻いていること。そしてそこに必要なのは……
「妹君、【魔王の魔力】の準備は?」
「うん。バッチリ、みんなは?」
メイプルの言葉に問題ないと答える一向。
「もう一歩進めば魔王への道ができる。準備があるなら今のうちだ」
「バフをかけたところで開幕と同時に消されてしまう。メイプル、心残りはあるか?」
「私は無いです。お兄ちゃんは……?」
「ふむ……少し待て……」
そう言ってムサシは目を閉じる。その後少ししてから目を開けると、今までの雰囲気とは違う雰囲気で彼は存在した。
「もう、大丈夫だムサシ。メイプル、行こう」
「おかえり、お兄ちゃん」
「コウヨウ、行けるの?」
「ここまでムサシ達がお膳立てしてくれて、行かないわけにも行くまい」
「兄さん、頼むよ」
一つ頷いて彼はメイプル達と魔王の部屋に向かう事を決意したのである。