妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「貴様もようやく辿り着いたようだな……磨き上げたその腕、恐れ入ったぞ」
「黙れ怨念。お前のせいで具合悪い」
コウヨウ達を待っていたのは男の侍であった。みんなが少しどよめいたのは、今までの魔王の形とは訳が違うものだったからである。
「これが……魔王なのか……??」
「私達が戦った時は、こんな武士では無かった……コウヨウの影響だろうか……?」
「久しぶりだな、権之助」
「宮本武蔵……貴様一時的でも余を忘れるとはどういう事だ」
「ふん、確かにお前と私は引き分けたが、お前は私ほどの功績を上げてはいまい。だからこそ陰と陽、私が正義でお前が悪になってしまったのだ」
どちらも悪である事は予想できなかったが。とムサシこと宮本武蔵はコウヨウの姿をしながら話す。夢想権之助はそれを聞きながら笑う。
「ハハッ、確かにあまり功績は残せてないな……だが、それが忘れる理由にはなるまい」
「今私が忘れることはない者はここにいる主のみだ。貴様も主のように励め」
そう言って、宮本武蔵は【魔王】権之助のもとに歩く。そして、権之助達はコウヨウを見て、一つ笑みを浮かべた。
「ならば、そいつを倒せば余も……俺も有名になるのか?」
「強きものとまだ戦いたい我らにとっては、絶好の相手であろう。主、いや、コウヨウ。そして人間共……私達が相手になろう」
——ここの魔王は、2人だ。
「主、覚悟はいいか? この先もはや手加減は出来ぬ……」
「具合悪い。それだけだ、斬ってやる」
「「「「「いやそれダメじゃね!?」」」」」
コウヨウがそういうとムサシと権之助はお互いの手を合わせて黒い光に包まれる。コウヨウに宿っていたもの含めた全ての怨念を吸収して出来た最悪最恐の集合体。
刀は二刀を構え、黒い煙のような物で身体を覆い約5〜6メートル程の身の丈をした禍々しいモンスターに対して、コウヨウは……
「いや……どう見てもちょっと身長低い凶エスターk……」
「「「ストップ」」」
竜クエに出る黒い二刀流のアレである。それよりも、メイプル達はコウヨウの姿にツッコミを入れたかった。
「と言うかお兄ちゃんなんでレリフル装備なの!?」
「え? あれ? 本当だ……なんで??」
『貴様の力は元々我らのものである。全てを奪い取った今、貴様のできる事はない』
「嘘だろおい!?」
マジで殺されるつもりねぇんじゃねぇかと思ったコウヨウ。はっきり言うと装備殆ど奪われた。今のステータスはというと……
コウヨウ
Lv MAX
HP 450/450
MP 560/560
【STR 10000 〈+180〉】
【VIT 0 〈+150〉】
【AGI 5000 〈+150〉】
【DEX 0 〈+200〉】
【INT 0 〈+170〉】
装備
武器『紅葉紅』、『最強木刀』
頭以外全て『白装束の衣装』
頭『狐の嫁入り』
スキル
【呪斬】、【居合極】、【水泳Ⅹ】、【料理Ⅹ】、【魔法削除Ⅹ】、【魔法反射Ⅹ】、【幻の一角Ⅲ】、【雷加速Ⅹ】、【毒竜】、【海皇Ⅷ】、【無双転生Ⅹ】、【浮遊Ⅹ】、【早着替え】、【無詠唱】、【刀造り】、【コネクト】、【咆哮絶唱】、【エンゲージ】、【始祖龍 ミラ・オリジン】、【名状しがたい何か】、【冥界の施し】、【ショウキョク】、【???】、【多重水弾Ⅷ】
「ちょっと待て!? ムサシ関係のスキルと力がほとんど全部消えてやがる!? しかも【???】ってなんだ!?」
「お兄ちゃんどうするの!?」
「コウヨウ来る!!」
少し悩んでいると既に魔王が真空刃でメイプルを狙っていた。流石に着替えられないと考えたコウヨウは【紅葉紅】片手に左バッターボックスに立った。キャッチャーはメイプル。サリーもコウヨウを手伝おうとするが、間に合わなかった。
——ギリギリギリギリィィィィイイイ!!
魔王の放つ真空刃とコウヨウの刃が激突。とてつもない金属音と共に……
「カナデ! バフを!!」
「分かったよ兄さん!!」
——ズバッ!!
「えっ……兄さん……?」
「サンキュー……カナデ……メイプル、後は任せ……た……」
厳しいと考えてメイプルの真正面に立ったコウヨウの胸元に一閃それは直撃をした事でその一撃は消えていった。
「こ、コウヨウが……斬られたぞ!?」
☆
「ほう、やはりやるな」
「ペインさんこそ……」
【魔王】を倒しに行くそれよりも前に【楓の木】訓練所でサリーとペインが訓練中であった。回避のサリーと元々最強を手に入れたペインはお互い相手にとって不足無し。
メイプル達【楓の木】と【集う聖剣】フレデリカ達もそれを見ながらサリーやペインを応援する。
「ペイン! 負けんな!」
「サリー! やっちゃえ!!」
お互いがお互いを応援している中で、サリーとペインは少し話をする。
「相変わらず当たらないな……お前がここまで強くなるのはやはり目的はあいつか?」
「はい。ペインさんも同じですよね?」
「当然だ」
サリーの言葉に頷いたペインが思い浮かぶのは、コウヨウ。ペインが座る史上最強の座を僅かな時間でひっくり返した伝説と言える最強の刀使い。
彼の二刀流はモンスターでも、敵でも、メイプルの鋼鉄VITでも斬り刻む対人戦ほぼ無敗のプレイヤー。
「例外があるからな、今でも俺はあいつが敗北した事はないと思っている」
「奇遇ですね、私もです」
一度は決闘を理不尽な集団で、二度目はユイを庇って、三度目はそのユイに殺された。計三度の敗北と言えども、例外試合が強い分、本当の敗北ではないと信じているものが2人どころかそれ以上いる。
「私はコウヨウのために戦います。だから、もっと強くなって、コウヨウを庇えたら……最高ですよ!!」
「そんな恋人みたいな事をするのはサリーくらいだが……俺だって奴にはメイプルの次に世話になった、何か一つ返してやろうと……思っているさ!!」
声高々に刃がぶつかり合う光景は圧巻である。【楓の木】、【集う聖剣】、【炎帝の国】、その他のギルドで連合を組んでも、コウヨウがいれば魔王だって、乗り越えられる。そう、みんな信じていたのだ。
『所詮は宮本武蔵頼りの人間……全力の余らには勝てぬよ』
魔王は笑う。その目に映るのは、膝をついてHPが1になったコウヨウと、それを泣きそうな目で見ながら彼の名を叫ぶメイプル。カナデのバフとわらしのステータスが乗ってはいたのでギリギリの生還であった。サリーは眼を細めて魔王に突っ込んでいくが……
『避けろ小娘』
「コウヨウの仇……!? 攻撃が出来ないくらい……速い!?」
魔王の剣技に対して避けることしか出来なかった。いや、避けるのは簡単だが、何故かサリーが攻撃に転じれない。それを予想しての剣技だろう。魔王は天才プロゲーマー(仮)すらも凌駕した。
『無駄だ……この刀を振り回している間、いかなる攻撃も通らぬ……余は一歩ずつゆっくりと進んでやるから最後まで足掻け人間』
「くっそ……コウヨウの仇……絶対取る!!」
「サリー……距離を取れ……みんなで……やらないと……」
「お兄ちゃん! 私が運ぶから黙って!!」
「みんな、コウヨウを後ろに下げろ!! 俺達が時間を稼ぐ!!」
とりあえずHPを回復させるためにコウヨウを後ろまで運んでもらいながら、他のみんなで加勢する。
「アース【覚醒】! 【突進】【岩の守り】! 全員備えとけ! 俺がチェックする!」
ドラグが先に仕掛けたとしても魔王の二刀流で全て弾かれる。
「「「「【大規模魔法障壁】!」」」」
ついでにカナデ達魔法使いが一斉に壁を作るが、それすらも真空刃で割られた挙句、風圧のダメージで少しばかり体力を削られた。
「【範囲拡大】【光輝ノ聖剣】」
「【多重炎弾】、ノーツ【輪唱】【増幅】!」
「【灼熱】!」
【集う聖剣】も魔王に対して牙を剥くが、二刀が強い。いかなる攻撃も受け付けないといったような勢いで、全ての攻撃を弾き返す。
『この刀に触れれば死ぬぞ? さあ、来るが良い』
「なるほど……速さはないが……あの刀の間合いに入ったものは全て無惨に斬られるというわけか……だが……!!」
「カスミ! 単体は危険だ!!」
カスミが走って魔王に向かう。クロム達もそれを止めようとするが、既に時は遅い。
「【六ノ太刀・焔】!!」
カスミの刀が燃えて魔王の刀に当たる。それでも、魔王は怯むことなく……
『ふん!』
「ぐっ……!!」
思いっきりカスミを飛ばした。みんなにキャッチされたのでそこまでダメージは入ってなかったが、何故1人で急に向かっていったのか……
「私だって刀使いだ……同じ刀なら、戦っておきたい。それでも……やはり……アレを倒すのは私も無理だな」
残念だとカスミは少し笑う。悔しいが、刀使いとしての道を歩んで行ったカスミは認めないといけない。元々【楓の木】刀使いはカスミだけだった。そんな時、奴が来やがったのだ。元々努力をしていたカスミだが、彼女より遅く始めて、彼女の実力を遥かに超える奴はチートと感じるには充分。最初こそは訝しげに見ていた彼女は彼を凄いとは言ったが認めてはいなかった。
それでも、奴と話をして気がついた。奴は、コウヨウはメイプルと同じなのだと。
「メイプル、私はここからコウヨウの全力援護に注力する。だから、早く……奴を呼べ、奴を」
「カスミ……うん。誰か! お兄ちゃんの回復を!!」
カスミの膝をつきながらもポーションを飲んで、自ら認めた刀使いを見る。奴こそが、鋭い眼差しで魔王を睨みつける最強の刀使い。【魔王】を斬るためにここにいる存在。それに気がついたみんなは頷き、彼を待つことにした。
「コウヨウ! 何か策はあるんだろうな!!」
「あります……ただ……攻撃パターンだけ……見れるだけ見ておきたい」
受けの極意と見切りの極意。宮本武蔵さら習った感覚の全てを使う代わりに、みんなには遠距離で攻撃をしてもらってから魔王の攻撃パターンを出来るだけ全て把握すると伝えた。
「【雷神再臨】【稲妻の雨】【落雷の原野】【嵐の中心】!」
彼の言葉にすぐ反応して攻撃を仕掛けたのはベルベット。
「私は頭あんまり良くないし、コウヨウさんには勝てないっすけど……魔王だけは絶対倒しにいくっす。その攻略の鍵がコウヨウさんなら……いつだって、貫き抗う言葉は1つっす!!」
「【崩剣】! コウヨウ! 俺はお前に顔面殴られるしか出番の無かった男だけどよ、こう見えて【炎帝の国】ではある程度山張ってんだ! 魚の礼も兼ねて時間稼ぎくらいならやってやるよ!」
「なら……頼みます。俺は……1つ詠唱をしますので……依代は……これだ!!」
詠唱。何かの魔法でも唱えるのだろうか、そう考えた瞬間、コウヨウは1つ唱え出した……褌で。
「コウヨウ!? なんで装備脱いでるの!?」
「依代はこの装備……ここに【魔王の魔力EX】と……あの魔王から貰った【禁断の書】、そして【封印の槍】……そして【紅葉紅】と【謎の光剣】……めんどくせぇ、全部入れるか。よし、詠唱だ! 五月雨は……露か涙か……ホトトギス……」
「「「短歌じゃねぇか!!?」」」
「いや、皆さんお願いします!! コウヨウは至って真面目です!! 多分!!」
何故か褌姿で短歌を詠唱し出したコウヨウだが、本気も本気、そのままごちゃごちゃといろんな歌を混ぜて詠唱する。
「祇園精舎の鐘の声……諸行無常の響きあり……
「一個なんか違くない!?」
『何をしても変わらぬわ!! 【二天の無紅へ】!!』
「みんな避けろ……ぐぁぁぁああ!!」
「こ、これは……コウヨウの……!?」
「これすらも吸収したのかよ!?」
流石にサリーもコウヨウの詠唱に突っ込んだ。だが、魔王がゆっくりと迫るのでふざけてもいられない。彼が詠唱を続けていくとコウヨウと装備が光り輝き出して、それが段々と大きくなる。みんなが1人、また1人と傷はついていても、死ぬまでは至らないのが救い。
「サリー、お兄ちゃん守るよ!!」
「メイプル……でも……」
「サリー、行け。後で追いつく……紅の、二尺伸びたる薔薇の根の……」
メイプルの言葉を遮ってサリーを行かせたコウヨウ。みんなの攻撃と魔王の攻撃。知ってるものも知らないものも、全てを理解し、吸収した。
「【範囲拡大】【祝福の聖域】【回復の泉】! トラップは仕掛けたよ!!」
「サンキューマルクス!! コウヨウ! 流石にまだか!? そろそろかなり距離を詰められてるぞ!」
「後はこれだけ……闇に迷いし哀れな魂よ……人を傷つけ苦しめて、罪を重ねる業の魂……」
——いっぺん、死んでみる?
そして彼は光に包まれた後……魔王を、怨念を、全てを終わらせる存在として目の前に立ったのである。
——民のため、私は前に進む!!
「お前、誰だよ……?」
「問おう、貴方が私を呼んだ少年か?」
知らぬ少女が、褌男の前でだが……