妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「おーい、起きろ楓」
「うーん……むにゃ……ドラゴンって食べられるんだ〜……美味しいぃ……」
「食への探究心が凄まじいな」
現実世界で妹の可愛い寝顔と共に物凄い寝言に苦笑いする紅葉。とりあえず布団を全部剥がして全力で揺さぶる。もう朝かと尋ねる楓に返事をして、そのままキッチンへ向かい、作っておいたお弁当の粗熱が取れているか確認する。
その後に自身の携帯で愛しの幼馴染(まだ親友)に電話をかける。
『おーい、理沙朝だぞ』
『うーん……むにゃ……これでキル数が50人目……みんな遅いなぁ……』
『俺からすればゲーム内のお前ら全員恐ろしいよ』
普通にしていればただの可愛い妹と自分が恋した可愛い幼馴染ではあるのだが、いざゲーム(NWO)になると普通では無くなる。と言うか50人本当に斬ったのは紅葉本人なので彼も苦笑いだ。
幼馴染は圧倒的なスピードとプレイヤースキルで攻撃をノーダメージで回避して敵を何人も斬り倒す。妹は文字通り圧倒的な防御力でノーダメージが当たり前。
妹なのに毒やら光線やら放った挙句、訳の分からない化物に変身して蹂躙する。天使の姿は可愛すぎて兄であっても見惚れてしまったが、やってる事(スキル内容)が敵に回したく無いレベルである。
「全く、2人してゲームの話しかしなくなったなぁ」
元々ゲームはあまりしない本条兄妹ではあるが、最近NWOにどハマりしている妹をみると、だいぶゲームに毒されたんだなぁと感じながらも、特に勉強に支障が出てはいないので好きにやらせる事にしている。たまに体育の授業中に【カバームーブ】しようと大楯を構える動きをしていると理沙から報告があったりして心配になるくらいだが。
「俺も気をつけないとなぁ」
そう言って、紅葉も手の指先を空中に当ててステータスから釣竿を出す動きをしようとして、笑ってしまったのだった。
「俺は釣り師だからなぁ」
☆
「ねぇ、君オセロって興味ある?」
「あるぞ、初対面で俺に挑むとは大したやつだな」
学校の図書館で、赤の様な、まるで本物の紅葉の様な髪色をした中性的な人間が声をかけてきた。たまたまオセロをしたかったらしいのだが、相手がいないのもあり、ちょうど本を探していた紅葉に声をかけたらしい。
「俺はコウ……本条紅葉だ。お前は?」
「コウ? えっと……一応かなでって呼んでいいよ」
そう名乗ったかなでだが、念のため性別を尋ねるとどっちだろうねと笑って返された。
「僕に勝ったら教えてあげるよ」
「そんな褒美はいらん。言いたく無いなら答えるな」
「随分としっかりした人だね」
「俺にオセロで挑んだ事を後悔させてやろう。俺のターン、ドロー!」
やっている事はオセロであるが、紅葉はオセロだけは得意である。妹の楓が幼馴染の理沙よりもめちゃくちゃ強い事もあり、紅葉も楓には負け無しである。だからこそ、この勝負だけは全力で挑むことにした。そうして結果は……
「む、無念だ……まさか負けるとは」
「流石に自信があるだけあるね、結構本気で挑んだんだけどなぁ」
僅か5枚差でカエデの勝利である。両者、文字通り本気であったが、紅葉はかなりショックを受けている。
「俺の驕りがお前の勝利を生んだ。反省しながら次は負けないと誓おう」
「フフッ、それじゃあ次は全部僕色に染め上げようかな」
「違うな、俺色に染め上げてやろう」
随分とナルシストな言い方をするお互いではあるが、不思議と気持ち悪いとは思わなかった。というかただの厨二病である。
「えっと、本条さんで良いのかな?」
「紅葉でいい。妹と間違えられても困るしな」
「妹さんいるんだ」
「可愛いぞ」
「君ってシスコン?」
「まぁ、そうだが、惚れた女は幼馴染だ」
紅葉の急な告白によりかなでも流石に顔を赤く染めながら照れ笑いする。まさか初対面の人から恋バナをされるとは思わなかったからだ。
「今度は負けない。俺はNWOとかゲームは苦手だが、オセロには絶対的自信があるからな」
「君もNWOやってるんだ」
「かなでもか?」
「うん、少数だけど、とても強いギルドにいるよ」
「そうか、今度ギルド対抗戦をするらしいからな。お前と喧嘩になるかもしれない」
「そうなったら戦わないといけないよね」
「俺は弱いから手加減してくれ」
「さっきと真逆のこと言ってる……まぁ、僕もそこまで強くないしね。言葉が本当ならいい勝負にはなるんじゃない?」
「武器はなんだ?」
「これから勝負する人に言うと思うかい?」
「それもそうだな。んじゃ、俺の武器は釣竿だって言えば教えてくれるか?」
「釣竿は武器でもなんでもないでしょ……まぁ、紅葉がそう言うなら僕は……うん、ルービックキューブかな」
「お互いどうやって戦うか分からない武器だな」
「そうだね」
そんな会話をして笑っていた2人だが、彼らは知らない。同じギルドメンバーであり、最強の二刀流と神の杖を使うものである事を。今この場では全く分からなかったのだった。
☆
「全然勝てないよぉ!!」
「フフッ、メイプルも強いけどね」
「カナデ強すぎない?」
楓の木ギルドホーム内で、メイプルとカナデ、サリーがオセロで遊んでいた。全く勝てないメイプルとサリーに対してカナデは笑っていたが、すぐにギルドホームに1人の男が遊びに来る。
「おう、邪魔するぞ。3人揃って何やってるんだ?」
「お兄ちゃん! 今カナデとオセロしてたんだけど、全然勝てないんだよ!」
「オセロ?」
「コウヨウもやるかい?」
カナデが得意げな顔をしてコウヨウを誘ったので、コウヨウも盤の近くに座って誘いを受けた。彼は自信満々でカナデに声をかける。
「俺にオセロで勝負を挑むとは、カナデかなり出来るな?」
「お兄ちゃん?」
「へぇ、かなり自信ありそうだけど……やってみようよ」
「カナデ?」
「構わん。自己紹介の時から一度挑んでみたいと思っていたのだ。我がアトランティスの力を持って、貴様に海の怒りを見せてやろう」
「コウヨウそれ私の
サリーの黒歴史ノートの一文が暴露された。コウヨウはなぜか分からないが、このカナデという男には負けたくない気がしてならなかった。一方でカナデもどこかで聞いた事のある台詞を聞いたのもあり、現実世界でオセロをした男を思い出しながらコウヨウに火花を散らす。サリーは顔から火花を散らす。
「あんなに自信満々なコウヨウ初めて見たかも……あぁ、恥ずかしい……」
「お兄ちゃん何に対してもとりあえずとか、なんとかなるって言ってるだけだもんね」
「レベル選べるけどどうする?」
「MAX」
本気だとメイプルとサリーは思った。初めてかもしれない、コウヨウの本気を目をここで見たのはと。現実では勉強に関して本気で挑んでいるコウヨウではあるが、ゲームでここまで燃えるコウヨウはサリーは初めてみた。
一応メイプルはオセロの時だけ自信満々なのは知ってはいるのだが、ここまでハッキリと言葉で伝えた事は今までの記憶上無かった。
そうして、試合が始まってすぐ、2人は気がつく。こいつ何処かで見たプレイの仕方だなと。そうして気づいたのは完全記憶能力を持ったカエデだった。
「なるほど……君だったんだ」
「あ?」
「いや、何でもないよ」
結局コウヨウは最後まで気が付かなかったのだが、この試合も5枚差でコウヨウが負け、カナデが勝ったのである。
「お兄ちゃんも負けた……」
「ってかカナデの本気にここまでついて来れるコウヨウも凄いんだけど……」
「次こそは必ず」
「またやるのを楽しみにしてるよ。そうだ、折角勝ったからご褒美欲しいな」
「無茶振りでなければいいけど……何が良いんだ?」
そしてカナデは笑って彼に伝える。
──僕にも君の釣竿を頂戴
「釣竿? 別に良いぞ?」
「出来れば太くて大きな方が良いかな、出せる?」
「あぁ、耐久性があるからいっぱいあるし何本かくれてやる」
「コ……コウヨウの釣竿なんて……そ、そんな趣味が……カナデの変態!」
「サリー!? どうした急に!?」
「サリーの悪いところ出ちゃった……ごめんねお兄ちゃん、私サリーとオハナシするから」
「え? ちょっと? メイプル?」
「サリーはネット見過ぎだから……」
そう言ってメイプルに連れて行かれた変態サリーだが、その後悲鳴が聞こえたのは言うまでもない。カナデは意味に気がついたのか、僕は男なんだけどなぁと言って苦笑いをしたが、コウヨウは気づかずに普通に釣竿を2本ほど手渡して釣りツアーに誘ったのだった。
「最強の二刀流釣り師か……流石コウヨウだね」
「なんか言ったか?」
「何も言ってないよ、コウヨウもサリーの様な彼女を持つと大変だねって」
「まだ付き合ってないぞ」
「え……嘘でしょ?」
本当である。
「あ……ねぇコウヨウ、一つ聞いていい?」
「何だ?」
「コウヨウってさ……どうして僕達と同じ速さで歩いてるの??」
「何だそんなことか……」
カナデの問いに対しては理解はしていた。STRはともかくAGIに関しては歩く速さが完全に影響するので本来ならば【楓の木】メンバーどころかメイプルと歩いたら置き去りコース間違いなしであるからだ。だから、コウヨウは笑って伝えた。まるで、そんな質問が来るのは当たり前だよなと思っているくらいに。
「サリーが教えてくれたテクニックだよ。アイツはプロゲーマーだからな」
「そうなんだ……でも、プロゲーマーとか言うとサリーがまた怒るよ?」
「俺の中ではあいつはプロゲーマーだ。ついでに……俺の……サリー愛してる……うん。好き、大好き、カナデちょっとサリーの代わりに抱きしめていいか?」
「ナニソレイミワカンナイ」
コウヨウはカナデを抱きしめて頭を撫でたのだった。カナデの顔もまた火花を散らした。
「なんか、弟が出来たみたいだな」
「身長あまり変わらないけどね」
「泣くぞ、俺が」
モミカナ、コウカナ回でした。