妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「コウヨウ、お願いがあるんだけど……」
「お願い?」
サリーからお願いされたのは訓練所をローテーションで使う事である。これから始まるPVPのイベントに参加する予定のサリーは倒さなければいけないメイプルを相手にするために訓練をしたいという話なのだが、奥の手は見られたくないので【楓の木】と話し合って時間帯のローテーションで使うことにした。
「なるほど、別に構わないが、なんでお願いなんだ? みんなで話し合ったから問題無いのでは?」
「【楓の木】が9人いるからコウヨウ達の訓練時間も減っちゃうからさ、PVEの人達もここ使うし」
「俺は……あ、そうだ。どうせならもう一個使える場所あるからそこも使って良いぞ」
そう言ってコウヨウはサリー達にかつてコウヨウとムサシが出会った場所を紹介して、そこで特訓をすれば良いと伝えた。
「うわぁ、結構広いなぁ……これなら訓練出来そうだね!」
モンスターがいないのは少々物足りないがとコウヨウはいうが、みんなそんなことは気にしない。素振りやイズが何かを生産する時の場所としては重宝するだろうとイズ含めたみんなが言った。
「だが、コウヨウは本当に良いのか? ここはお前とムサシが出会った大事な場所では?」
「そのムサシがいないんじゃこんな所独占してもしょうがないでしょ。ここは元々みんなの場所ですし、ムサシが強すぎて散ったプレイヤーしか居ないから近づけなかっただけです」
まぁ、多分この場所も忘れられてると思うがとコウヨウは言う。
「それなら……遠慮なく使わせて貰おうかな。魔法のコントロールとかならここで出来るし」
「「私たちもクレーター作る訓練なら出来ますね!!」」
「壊すんじゃねぇよ馬鹿弟子共」
ユイマイの恐ろしい言葉に突っ込むコウヨウ。
「所で、コウヨウはどっちに参加するんだ?」
「俺は見届けないといけないのでPVPですね」
「見届ける? 何をだ?」
「今世紀最大級の大怪獣合戦です」
「それはお前とメイプルでは???」
コウヨウはサリーとメイプルが戦うためにPVPに出ることを知っているのでそれを見届けようと思っている。そうして、彼は【楓の木】にその場所を伝えてから、自分の訓練場所を別に探すことにしたのだが……
「第六層に屋敷がねぇ」
【魔王】を倒したからなのか、吸血鬼の屋敷も消え、第八層の洞窟も何故か消えていた。残っていたのはムサシの洞窟のみだったので、身を隠して特訓とかが出来ない状態になったコウヨウ。
「どうしたものか……」
別にローテーションで使わせて貰えば良いのだが、コウヨウの場合ヤバい時には8時間訓練をする男。ローテーションでは物足りないのも事実である。
「お兄さん……何してるですか?」
「ん? ちょっと訓練所を探していてな……お前さんプレイヤーか?」
「
「綾波? あの……『貴方は死なないわ』って言う人?」
「そっちの綾波では無いのです」
「あら、久しぶりね『
「武蔵……なんでいるですか?」
「知り合いか?」
白い髪に2本の角が生えた……
「これは綾波の耳です」
「耳なの!?」
綾波という少女はここ第八層のモンスター扱いである。出現条件は彼女と同じ系統のモンスターを連れていることなのだが、それがコウヨウが武蔵野と呼ぶ武蔵であった。
「なるほど……武蔵がいるなら、貴方は悪い人じゃないです……綾波の隠れ家、案内するのです」
「ありがとうなのです……って隠れ家?」
「なのです」
「ですです……いや分からん」
よくわからないが悪いモンスターではないのでついて行くことにしたのだった。隠れ家はあまり広くはないが、1VS1で刀を向けるくらいなら出来る広さであり、普通に畳の上で刀を振ることができた。
「中々良い場所だな。ありがとう、またここに来てもいいか?」
「貴方なら大丈夫です。ただ、1つ条件があるのです」
「条件? なんでも飲んでやるよ、性的な事以外なら」
「武蔵、なんで彼はこんなに遠い目でとんでもない台詞を言い出したのですか??」
「指揮官は既に愛しのものがいるのよ、毎日愛を受け取りすぎて悟りを開いたみたいね」
「ご愁傷様なのです」
そう言って綾波は私と戦ってくれとコウヨウに伝えた。コウヨウはそれくらいならと木刀を向けるが……
「本気で来いなのです」
その瞬間、綾波が刀を抜くととてつもない圧がコウヨウを襲う。只者ではないと考えたコウヨウは新しい刀を装備して、刀を抜くことにした。もう一本は木刀だが、この二刀流が今のコウヨウの本気である。
「さっきの素振りは……全く殺気がなかったです……でも、今は……」
「お前こそただの刀使いでは無いな……『鬼神』というのはその戦い方の正体か?」
「指揮官、油断するな。この者は現役時代、『鬼神』と呼ばれる程、数多の船を沈めた女よ」
なるほどと、コウヨウはこの圧の正体を知った。同時に少女も、コウヨウに問う。
「貴方は……何者なのです?」
「ただの人間だ」
「ただの人間は二刀流なんて芸当も出来ないし、その圧を出す事すら叶わぬのです」
「『鬼神』よ、この男はかの英雄宮本武蔵から直々に弟子入りした人間です」
「なっ……!? 宮本武蔵……そんな……バカな話があるです……?」
「刃交えれば分かることよ」
『緊急クエスト 【『鬼神』と呼ばれた刀使いの船】を開始します。これによりコウヨウのスキルは発動不可となりました」
武蔵の言葉に先に動いたのはコウヨウ。急にクエストが開始されたと同時にスキルの発動も出来なくなったが、コウヨウは焦らない。
「スキル使って勝ってもこの場所は借りられん。実力で借りるぞ」
そう言ってコウヨウは綾波向かって刃を立てる。綾波も二刀流のコウヨウ相手に刀で受け、身で避け、距離をとりながらしっかりと隙を見る。10合ほどの刀同士のぶつかり合いの後、一度距離をとった。
「二刀を動かしても隙ひとつない……『鬼神』と呼ばれた理由が分かるぜ……」
「綾波の刀に斬れないものはあまりないはずです。なのに……何故近づけないのです……? まさか本当に……」
ならばと綾波は最終手段として、武装を展開した。
「え? 何それ……?」
「魚雷……貴方にあげるです」
普通に刀ではなく魚雷を陸で発射した綾波。もはやただのミサイルだった。
「いらねー! いらねぇってマジで!?」
コウヨウは流石に逃げ回る。スキル発動不可となった今、【魔法削除】も使えるかわからないので一旦逃げる事にした。まぁ、追いかけてくる追尾弾なのだが……
「なら……綾波テメェぶった斬る!!」
「な……!? この状況で突っ込んでくるです!?」
ミサイル(魚雷)で相打ち狙いかと綾波は考えたが、コウヨウの考えはそれではない。
「先にお前を斬ればミサイルも消えるだろ!!」
「死なば諸共じゃないのですか!?」
最早なりふり構ってもいられないのでコウヨウは綾波に突っ込んで全力で刀を振り回す。適当ではなく、正確に急所を狙い、ミサイル(魚雷)が近づいたらまた離れて、また斬りに行く。それを5周ほどした時……
——ピキッ……
勝気が見えた。
「綾波の……刀が……!?」
「二刀一流……俺の型……武器を叩く五輪斬りじゃ!!」
「スキルは使えないはずなのです!」
——馬鹿野郎、俺の技量だ
全力でぶっ叩いたコウヨウは綾波の刀をへし折った。そして一瞬で距離を詰めて、刀を裏に返してから……
「めぇぇぇんん!!」
綾波の脳天を叩き割る事に成功したのである。
「なんで……綾波を斬らなかったです?」
「斬ろうが峰打とうが、殴ろうが蹴ろうが、HPが0になったら負けだろ。俺は戦っても殺すつもりはねぇぞ」
「まさか……綾波のHPを予測して……」
「場所、貸してくれよ。もう少し打ち込もうぜ?」
余計なダメージを与えない見切りの極意はコウヨウにとってとてつもない技になる事を綾波は悟った。
☆
「お兄ちゃん、私1人でPVP出てもいい?」
「いいんじゃねぇ? タッグで組む必要ないなら俺もソロでやるし」
その夜、楓と紅葉はイベントについて話をしていた。もう少しでまた大規模なイベントが始まるのもあってみんな気合いは十分だった。
「理沙も本気で来るらしいよ、お兄ちゃんは?」
「自由気ままに……多分めっちゃ襲われそうだから逃げたいなぁ」
「もう、またそういうこと言って……」
多分戦うんだろうなと楓は考える。もし、兄と出会ってしまったら、その時は……
「お兄ちゃん、倒していい?」
「言ったろ、この首欲しくばいつでも来いと。ユイにしか首はやったつもりがねぇからな」
特殊なルールだが、ユイだけはコウヨウを斬り倒した人物なので、彼はユイの強さを認めている。それでも、そろそろもう負けないようにしないと、帰った宮本武蔵に申し訳ないのだ。
理沙も楓もきっと自分を狙ってくる。その時コウヨウは……
「相手するよ、必ず」
それしか道はないのだろう。それが、宮本武蔵との約束でもあるからだ。だが、みんなは知らない……このイベントでまたもや波乱が起きる事を、そしてその関係者は……
「バカな……そんな……事が……」
「予想は……してた……だがここまでなんて……」
「こんなの絶対おかしいよ……!? こんなのって……ない……!?」
「後……100人足りねえぞ」
ものの10分で100人斬りを達成した。そしておかわりを求めたのである。