妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「最近ミィさん来ねぇな」
第一層に潜って1人で釣りをしながらコウヨウはミィの事を考えていた。先日あった【炎帝】と言う女性と何度か最近釣りをしていたのだが、ここ数日は姿を見せない。
何かあったのかとは心配になるが、そもそも赤の他人である事に変わりないので自分が心配する筋もないか。そんな葛藤に悩まされながらも、ギルドメンバーに配るために魚を釣っていた。
「見てくださいマルクス。綺麗な湖がありますよ」
「本当だ、結構大きいんだね……ってあれ? 人がいる」
カップルか何かだろうか。それにしてはかなり装備は強そうだ。女はどこかの教会にいそうなシスター装備をしているので、恐らく回復系の魔術師。男はフードを被って軽装ではあるが、恐らく前衛では無さそうな……だが、2人からはそこそこ強者のオーラがコウヨウには見えた。
「他人のふりしよう……まぁ、他人だけど」
「すみません、お隣宜しいでしょうか」
「なんでだよ!?」
コウヨウは初対面の2人にツッコミを入れた。2人は驚いて、申し訳無さそうに迷惑だったかと謝ったのだが、それに対してコウヨウがお前らデート中だろ。何で赤の他人の隣にわざわざ来るのかと伝えると、女は顔を赤くした。
「で……デートではなくてですね……えっと……その……」
「デートじゃないよ、たまたま息抜きでここに来たんだ」
「そうなのか……まぁ、2人が良いなら良いんだけど……」
「マルクス、後で覚えておいてくださいね?」
「え? ミザリー? なんでそんなに怒ってるの??」
「知りません」
なるほど、マルクスと呼ばれる男は鈍感系かと、コウヨウは妹から借りて読んだ漫画を思い出した。
「鈍感難聴系主人公はバッドエンドだぞ」
「何それ……」
「その男性の言う通りですよ、マルクス」
「ミザリーまで!?」
「お二人……いや、ミザリーさんとマルクスさんが良ければだが……せっかくだから、釣りでもどうだ??」
「「釣り??」」
コウヨウはミィにやったように釣り竿を2人に渡して誘った。ここは初心者でも簡単に釣れるんだと伝えると、楽しそうだと言いながら二人はコウヨウの誘いに乗った。
「そう言えば……君名前は……?」
「俺はコウヨウ。ただの釣り師だ」
「見たところ侍装備で刀使いにしか見えませんけど……」
「戦いなど二の次だ、どうしてもと言うなら戦うが、釣りをしていた方が楽しい」
「まぁ、NWOの楽しみ方は人それぞれだからね」
2人は気がつかない。彼が実はこれから戦う予定であるメイプルが所属する【楓の木】のメンバーである事を。そして、彼の本気はNWOトップクラスを誇る強さである事を。実際見ないと分からないのだ。
「それにしても、よくあのミィが休暇くれたよね」
「ミィはああ見えて優しいですから、ギルド対抗に向けて戦いばかりの私達のことを考慮してくれたんでしょうね」
「ミィだと??」
ミィ、その言葉にコウヨウは反応した。2人は気がついて彼の方を見る。
「ミィを知ってるの?」
「さぁ? 一緒に何度か釣りをした仲だが、お前達の言うミィとは人が違うかもしれないから……何とも……」
「特徴とか分かりますか?」
「大人なのに火遊びが大好きな女」
「じゃあミィじゃないね」
「そうですね、【炎帝の国】のギルドマスターとはいっても……火遊びはしませんから……」
「因みに見たことあるスキルは【炎帝】」
「「ミィだよね(ですよね)!!??」」
「でも、俺と何度か釣りしたぞ?」
「じゃあミィじゃないね」
「だろ?」
「マルクス……そんなわけないでしょう……コウヨウさんも……気づいてますよね?」
「ギルドマスターが俺みたいな平凡プレイヤーと釣りをするわけないでしょう。という考えが少しあったので認めたくなかったです。はい」
コントみたいな感じにはなったが、2人が言ったミィとコウヨウの言ったミィは同一人物である事が判明した。結局コウヨウがミィの正体を教えられて、あの野郎嘘つきやがったなと少しだけ自分を棚に上げながら怒るのだった。
☆
「【炎帝の国】で気をつけるプレイヤーは3人……【トラッパー】のマルクス、【聖女】のミザリー、そして、【炎帝】のミィ。この3人が【炎帝の国】の上位3人ってフレデリカは言ってた」
「へぇ」
「お兄ちゃんやる気出して」
「怠い」
「師匠、真面目な話ですよ」
「せっかくサリーさんが【集う聖剣】のフレデリカさんから情報を持ってきてくれたんですから聞きましょう?」
「はぁ……戦いたくない……んで、サリーはどうするんだ? プロゲーマーの頭で攻略法とかあるのか?」
「前からコウヨウに言ってるけど私別にプロゲーマーじゃないからね?」
「ハハッ、ご冗談を」
「ただ家にゲーム大会のトロフィー飾ってるだけだから」
「ただのプロゲーマーじゃねぇか」
「それに関してはお兄ちゃんの言う事もおかしな事じゃないよね」
化物兄妹が、サリーという名の人間にツッコミを入れる。コウヨウは昔からサリーが好きだったという恋盲目もあるが、現にサリーの自宅では大量にゲーム大会のトロフィーが飾っている。それを見たコウヨウは昔からサリーはプロゲーマーだとずっと言い続けているのだ。
「んで、ミィさんはともかく、マルクスとミザリーはどうすんだ??」
「「「え??」」」
「えって何? いや……対策とかだけど??」
みんなが突っ込んだのはそこではない。サリーがみんなの言葉を代弁してコウヨウに伝える。
「コウヨウ、話全然聞いてないでしょ?」
「聞いてるぞ、【炎帝の国】は【聖女】ミザリー、【トラッパー】のマルクス、そしてギルドマスターの【炎帝】ミィがいるって話だろ?」
「いや全部聞いてんのかい……それよりもミィさんはともかくってなに? ギルドマスターなんだから1番警戒するのは当然でしょ?」
「あぁ……確かにな」
言えない。ミィとは釣りしてた仲だとか、最近今サリーの話題にあったマルクスとミザリーに釣りを教えたとか、もっと言うとミィの【炎帝】をぶった斬ったとかなんて口が裂けても言えない。
「あいつらそんなに有名人だったのかよ……」
「コウヨウ?」
「サイン欲しかったです! はい!!」
「なんでサイン??」
「何でもないです……はい」
怪しい目で見るサリーから視線を逸らして、彼は少し考えて発言した。
「それよりも……【トラッパー】マルクスは罠を中心という事で良いのか?」
「恐らくそうだけど、何を隠してるかはわからないから警戒して。もしかしたら私たちが触れなくても爆発したりする可能性があるから」
「ミザリーさんも【聖女】とか言われてるから回復関係な気がするけど……もしかしたら攻撃してくるかもね」
「そういえばミザリーさんの【ホーリーランス】カッコよかったぞ」
「「「「え?」」」」
「え? あ……いや……ちょい噂で聞いて……」
コウヨウは隠し事は出来ない事を悟った。結局、サリーに詰められたので、最近釣りしてたらスキルちょっとだけ見せてくれたなどと供述して誤魔化したのだった。
4人から驚かれたが……コウヨウは冷や汗かきながら苦笑いするだけである。
「まさかモンスターが出てきたからミザリーさんの【ホーリーランス】跳ね返してモンスターに当てたり、マルクスさんの罠スキルかっ飛ばしてモンスターに直撃させたとか口が裂けても言えない」
「お疲れ様、コウヨウ、ところで君はなんて事をしているの??」
「あ……ようカナデ、お疲れ様」
「誤魔化されないよ? 【炎帝の国】のトップ3人と会って、一緒に共闘してモンスター狩ったとか……かなり面白い独り言言ってるね」
「サリーとメイプルとユイマイには内密に!!」
「今度パフェ奢って」
「良いよ。ついでにお金出すからメイプルと行って来ればいい」
「な、なんでそこでメイプルが……」
「俺はメイプルのお兄ちゃんだからな」
結局カナデにはバレました。もっと言うと、ミザリーとマルクスもミィにそれを話したせいで、コウヨウの隠れた実力が【炎帝の国】の警戒を少し強めたのはミィの指示だからである。
「コウヨウめ……何がメイプルのファンだ……バリバリの警戒枠だろ……」
「私達の魔法跳ね返してましたよ」
「何ならモンスターのスキル斬って無効化してたよ」
「あいつめ……警戒どころかペインやメイプル並に要注意人物だろ……」
「というかあの人本気で何者??」
「少なくともとんでもない人だと言うことは分かります」
そしてコウヨウもコウヨウで……
「あいつら3人許しはしないぞ……有名人が凡人プレイヤーと釣りなんかしやがって……」
「「許せん!! 倒してやる!!」」
実を言うとミィとコウヨウが全く同じタイミングで喧嘩を吹っかけるセリフを放ったのは誰も知らないのだ。
類は(猛者)は友(猛者)を呼ぶ。