妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「お兄ちゃんせこい!!」
「逃げはしないが、隠れはする……宿命の幕を閉じようか、メイプル、サリー」
「「絶対負けない!!」」
再び戦いの火蓋は切って落とされた。されどお互い割と手の内は明かし尽くしたようなもの。使っていないスキルはあれど、仮に使ったところで彼が、彼女達が通用するものではないスキルもある。ここが正念場であるのは間違いない。
「【魔王】【古代兵器】【攻撃開始】【滲み出る混沌】!!」
「朧! 【影分身】【黒煙】【幻影】【神隠し】!!」
「「これが私達の全力だ!!」」
破れるものなら破ってみろと、複数体のサリーと魑魅魍魎の異形を召喚して最早自分自身が魑魅魍魎と化したメイプル。それに対してコウヨウはたった一つの行動を取る。
「見ろ! コウヨウが……!!」
「やはり……刀を収めたか!!」
「全部まとめて斬る気だな」
「何かしら……あの恐ろしい気配……ちょっと震えが止まらないわ……」
「イズ、大丈夫か? 恐らくコウヨウはアレをやる気だ」
カスミの声に対してクロムが確信する。あの構えは宮本武蔵とともに二刀流を学ぶよりも前、コウヨウの最初にして最後まで共にしたスキル。
その構えはまるで本物の【剣豪】のような、【達人】のような構え。更にコウヨウの周りには凄まじいオーラがある事を戦いをあまりしないイズでも感じ取れた。
「思い出すな、俺が初めてコウヨウの姿を見た時、アレでスライム8時間斬ってたっけか……」
「動きが見えないから本当に兄さんを倒す意味の攻略をさせる気無かったよね」
「アレは確か私の【火炎牢】を最初にぶっ壊したな……」
「俺も思い出すよ、アレで俺は久しぶりにNWOで最大の敗北を貰ったんだ」
クロムにカナデ、ミィとペインはそれぞれ感想を述べる。それくらい、コウヨウは強かったし、実を言うと今でもこのスキルを攻略出来たものはいないのだ。
「あれ? ユイ止めてなかったっけ?」
「アレを止めたと言うのならお姉ちゃんはまだ二天の向こうには届いてないようだね」
「ユイ!? どうしたのさっきから!?」
「ちょっとごめんねお姉ちゃん……うん……うん……そうだよねぇ……やっぱり師匠は最強だ!」
「みんな助けてください! ユイが壊れちゃった!!」
誰と話しているのかは分からないが、今のユイは眼を虚にしながら凄く綺麗で不気味な笑顔を浮かべながら一人で話してる。普通に怖い。
「メイプル……来るよ……」
「うん……もう、こうなったら攻めるしかない!!」
観客席で何が起こっているのかは理解出来てない3人はそのまま試合を続ける。メイプルは盾をしっかりと構え、自身にバフを。サリーはどこからコウヨウを斬ろうか、しっかりと吟味して。
「俺のターン……ドロー……スタンバイ、メイン、俺の全てを生贄に捧げ……このカードを召喚する」
「「いや長いな!?」」
「俺のプライド……そして俺の魂……いでよ! ブルーアイズ……」
「「早く斬れよ!?」」
「雷の無呼吸、クリアマインドノ型……【雷加速】【居合極】装備込みで火力最大、全力全開……!!」
——これが俺の、俺が学んだ刀の……絶唱だ!!
「全力で……!?」
「【超多重加速】【クインプルスラッシュ】!!」
方や既に驚きを見せた、方や全力でスキルを展開した。ここで、コウヨウの事を改めておさらいしよう。
コウヨウは割と空気が読めない。いや、めっちゃ優しいし、人想いだし、妹や幼馴染などの家族も愛している程人間出来ているのだが、NWO内ではステータスが強すぎて本当に空気が読めないのだ。
そして話は戻る。サリーやメイプルは努力した。コウヨウを倒すために、兄であり、幼馴染を越えるために、いろんな戦略やスキル、数多の戦いを共にし、2人はプリキュなんとかのような最強コンビネーションで葬った敵は数知れず。今回はその総まとめであり、かけがえのない全力勝負。
全身全霊、最高の立ち回りとスキルでコウヨウをワンデスさせるという前人未到の追い詰めるまでは行った。だが、それでも! コウヨウは空気が読めないのだ。
「お前らに紅葉狩りにはまだ早いな」
コウヨウは何処にいるのか目に追えないが、声が聞こえてきた。瞬間、サリーとメイプル、分身やら異形やら、全ての者に無限の斬撃エフェクトが襲いかかった。
「「痛ったぁぁぁぁあああいいい!?」」
「MP全部使い切った【居合極】20連撃×STRとAGI20倍……俺の最大にして最高火力だ。楽しかったぜ、ありがとよ」
そうして、コウヨウとサリー、メイプルの戦いは終わった。勝者はコウヨウ、一番スタートが遅かった男は、一番のゴールを手に入れたのである。
「コウヨウさん!? ユイが……!?」
「テメェ宮本、何してんだボケ師匠」
『痛い!?』
ちなみにユイの意識を盗んでいたのは宮本武蔵の亡霊であった。コウヨウはすぐそれに気づいてぶん殴る。
「え……はっ!? ここは何処?? 私は誰!?」
「ここは【楓の木】訓練所。お前はくどはる」
「違いますよね!?」
「私はくどはる……?」
「貴方はユイです!!」
「練習は本番のように……本番は練習のように……私には……刀しかないの……!!」
「コウヨウさんのバカ! なんとかしてくださいよ!?」
「ユイ、いい加減目を覚ませ。宮本武蔵、テメェどっからユイに入った?」
コウヨウは流石に怒りかけた。宮本武蔵は怨念である。自分はともかくユイを呪おうとするのならば流石の師匠でも許せない。
『い、いや……別にお前達に害を為す気は無くてだな……主の最後の戦いを見届けようと……』
「だからってユイをアヘ顔ダブルピースさせるのは違うと思うぞ」
「そこまでではないですよね!? あ、お姉ちゃんただいま!」
「おかえりなさい、くどはる」
「お姉ちゃん!?」
無事でした。はい。
『主……いや、見事だ我が弟子よ……』
「早く帰れ、怨念が移る」
『う……分かった、分かった!! 全く……折角権之助とわらし殿から許可を得て見にきてやったと言うのに……』
「おい、宮本武蔵!」
『今度はなんだ主……』
「負けねぇよ、あんまりな」
コウヨウのその言葉に宮本武蔵は眼を開いて、やがて眼を閉じて踵を返し静かに帰っていったのだった。
「お兄ちゃん、さっきのは……?」
「バカ師匠。俺の戦い見に来たんだとよ」
「ユウレイコワイ」
「安心しろ、幽霊くらいぶん殴るから……ペインさん、さっさと試合終わらせちゃってくださいよ」
「あ、あぁ……この試合、コウヨウの勝ちだ!!」
そうしてペインの言葉と共に、この長いエキシビションマッチは幕を閉じたのであった。
「「師匠(コウヨウさん)寂しいです……」」
「サリー、ちょっと俺ユイマイと遊んでくるわ」
「今日は……まぁ、良いよ。負けたし」
「お前ら、今日の残り時間は遊ぶぞ」
「「わーい!!」」
「お兄ちゃん本当にモテモテだよね」
☆
「じゃあ、ギルドのことよろしくお願いします!」
【楓の木】のロビーで、メイプルとサリーはしばらくの別れを告げていた。
「コウヨウがペイン達に頭下げてまで話をしてくれていたからな。そこら辺は任せておけ」
「それに、後世の別れでもあるまい。また落ち着いたらみんなも戻って来るしな」
コウヨウとカナデがごく稀に姿を現すと言う話もみんながする。コウヨウもカナデも後1年程猶予があるので、メイプルとサリーの勉強を2人で教えているので教え終わった後の息抜きにたまにログインするとは聞いている。
「カナデ……私の一個下なのに凄い勉強教えて貰ってるから頑張らないと」
「私もコウヨウのヒモだから頑張らないと」
「とうとうヒモ宣言したよこのバカサリー!?」
働きたくないでござるとサリーはボソッと言うがメイプルに殴られた。
「「メイプルさん! サリーさん! また会いましょうね!!」」
「うん! ユイもマイも元気でね!」
「あれ? 所でコウヨウは? ユイとマイの3人で遊んでたんじゃ……?」
「師匠なら……お墓参りです」
「ユウレイコワイ」
「はい。コウヨウさんの大事な人達の……ってサリーさん、大丈夫ですから震えないで下さい!?」
「なるほどね、コウヨウ君はみんなのお墓に行ったのね」
「はい、カナデさん連れて」
「え? なんで!?」
カナデとばっちりである。メイプルとサリーはしばらく会話した後『ログアウト』を選択したのだった。
☆
「カナデ、手伝え。最後の仕事だ」
「なんでお墓参り行くだけなのにこんなに死霊モンスターに絡まれるの……??」
「俺の体質だからな」
カナデはもはやため息を吐いた。コウヨウに最後付き合ってくれと言われて宮本武蔵達のお墓参りとして、第六層に向かったのだが、何故か前よりもコウヨウに向かって来る死霊モンスターが多い。
コウヨウは冷静にぶん殴り、カナデは魔法を放つが、カナデからしたらツッコミしかない。やがて奥の広間についた2人を待っていたのは……
「「「よく来たわね(な)2人とも」」」
「宮本武蔵……! 【魔王】! しかも……えっと兄さんの幽霊……??」
「屋敷わらしだ。お前ら、最後に頼むぜ」
コウヨウ達を待っていたのは今までの怨念共である。警戒するカナデに対してゆっくりと椅子に座らせて、コウヨウはカナデの両肩を掴む。
「この子で良いの?」
「え?」
「この子が良いんだ」
「え? 兄さん?」
まさか自分は実験台にされるのだろうか。コウヨウが実は死んでいて、カナデをあの世とこの世の狭間に連れていくことで苦しみを……
「メイプル……楓……ごめん……でも僕は……死んでも君のそばに……」
「「「「「『コピー』!!」」」」」
「え?」
『コウヨウのスキル【冥界の施し】をコピーしました。これによりスキルが使用可能です』
「ナニコレ? 僕おばけ?」
「な訳ねぇだろ。説明してなかったが、カナデに【冥界の施し】を渡しておきたかったんだ」
コウヨウはカナデに伝える。カナデは何度かコウヨウに対して、自分は魔法使いだからメイプルに守られてばかりである事を伝えていた。
なのでコウヨウとたまに訓練はしてたのだが、訓練は出きてもコウヨウは魔法使いでは無いので、強くするにも限りがある。
「貴方は守りたい人がいるのでしょう? このスキルは元々私の所有者が死なないように、幸せに生きられるように自分が身代わりになる聖なる呪いなの」
「『聖』か『呪い』かどっちかにしろよ……」
「だからね、貴方はこれを正しく使って、本気で大切な人を守りなさい。テイムモンスターは犠牲になるけど、貴方が彼女を守るのよ」
「僕が……メイプルを守るための……スキル……」
「たまにはメイプルの盾になってやれ。何も知らなかったらメイプルが泣くかも知れないが、不意をついたら自分を倒した相手を、お前が倒せる」
「これ……貰っていいの?」
「コピーだから俺も使える。男たる者守るもんは守れ。どんな手を使ってもな」
ただそれをしに来たとコウヨウはカナデに伝える。義弟がビビるな、前を向け。そう言ってコウヨウは……
「帰るか、家に。今日鮭が安くてさ、バターで焼こうと思ってんだ。家こいよ」
「にゅふふ……美味しそうだなぁ……それならご一緒させてもらうね」
「ああ。世話になったなお前ら」
『『『また、いつか』』』
じゃあなと。そう言ってコウヨウとカナデも【楓の木】に戻ってから『ログアウト』を選択したのだった。
「ねぇ、兄さん……」
「どうしたカナデ?」
「兄さんの周りになんかいっぱいいるんだけど……」
「うげっ……おいお前ら見せもんじゃねぇぞ、散った散った!!」
「兄さんのせいで最近霊感強くなったんだけど」
「諦めろ」
「僕死霊モンスターならなんとも無いけど本物は流石に……」
「俺が守ってやるよ」
「いや、兄さんのせいでしょ」
☆
「て、敵襲だぁあ!!」
「は!? 嘘だろ!? ここは合同ギルド基地の中だぞ!? イベントのルールでは同ギルド50人以上斬らないと攻められることはないって……」
「だから攻めてきたんだよ1人で!!」
「「「はぁ!?」」」
数ヶ月以上の時が過ぎた。あれから行われた新しいイベントで、男女含めた300以上の合同ギルドがその知らせにビビり散らかしている。
「うわぁ!? 来たぞ!!」
そのギルド内に現れたたった1人の白い装束を着て顔を仮面で隠したプレイヤーは刀を右手に一本持って、そのままゆっくり歩いて来る。
「誰だお前は……1人で50も斬れるやつなんて……チート以外いないだろ!?」
「また、チート扱いされてんだな……」
声は少しだけ低いのもあり男であることが見受けられた。だが、その男はすぐに姿を消して、プレイヤー3人を同時斬りした。
「メイプル達が早くしろとうるせぇからな……全力全開だ……」
「メイプル……だと? お前一体……!?」
仕方ないとプレイヤーは仮面を外す。そして5人。刀を左手に装備して、5人。すぐに粒子に変えた事によって目の前にいる人物をようやく理解した。
「め、メイプルと同じ顔……お前……こ、コウヨウか……?」
「コウヨウ!? あのNWO最強刀使いか!?」
「俺は最強じゃねぇよ」
彼は二刀を振り回してプレイヤーを蹂躙しながら、しっかりと名乗りをあげた。
「俺はコウヨウ。ただの【釣り師】だ」
「なのです」
「そうね」
「「「いや、コウヨウは分かるが誰だお前ら!?」」」
以上で完結なのです。
今まで付き合ってくれた方。ありがとうございます。
あと1話だけ番外編を出して本当に終了ですので、よろしくお願い致します。