妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「サリーさんは師匠のどこが好きなんですか? やっぱり優しいところですか?」
「え?」
「サリーさんコウヨウさんのこと大好きですよね! もしかしてコウヨウさんに胃袋掴まれました?」
「マイ? ユイ?」
「サリーは昔からお兄ちゃんの事愛してるよ」
「メイプル!?」
「私もユイもコウヨウさんが大好きです!!」
「ユイ、マイ、刺すよ?」
「サリーさん怖いです!?」
「青春だな」
「青春ねぇ」
コウヨウがレベリングに行くという天変地異でも起きそうな発言をしてから数分後の出来事である。最初はメイプル、サリー、ユイ、マイの4人に告げて去っていった彼だが、その後に、用事を終えたカスミとイズがギルドにやってきた。クロムは少し遅くなるらしく、カナデも別のクエストで用事があるらしく不在である。
「そう言えば、コウヨウさんとメイプルさんって一応兄妹みたいなものなんですよね?」
「マイの発言だけ聞くと私サラッと絶縁されてないかな!?」
「ご、ごめんなさい! えっと……現実の話はあまりしてはいけないから……メイプルさんやコウヨウさんが嘘を言ってるとは思いませんけど、本当に兄妹というのも確定ではないじゃないですか……」
「そういうことか……大丈夫。コウヨウとメイプルは本物の兄妹だよ」
「そうなんですか?」
サリーのフォローにユイがマイの代わりに改めて聞くとメイプルも頷いた。メイプルはどこまで言っていいか分からないけどと前置きして、自分とコウヨウが本当の兄妹でサリーは本当の幼馴染だと伝えた。ついでに次回は彼の恋人になる発言も忘れずに。
「昔からいる幼馴染に恋をするなんて漫画でしか見た事なかったが、現実でそれが起きてるんだもんな」
「コウヨウが私に優しいからいけない」
「吹っ切れたわね」
「キスしたいなぁ……寝てる時でもいいけど……」
「サリーが怖い」
「というか、コウヨウが思春期男子を彷彿とさせる物が家で存在しないのはなぁぜなぁぜ」
「それは色々とアウトだサリー」
「昨日メイプルとお風呂入ったくせに……」
「ちょっと待って、サリー何で知ってるの!?」
「コウヨウが口を滑らせた」
コウヨウの人権を守るために話をすると、昨日メイプルは現実世界で運動中に転んで両膝を擦りむいた。今でも痛い事に耐性が弱いメイプルは泣きながらコウヨウに抱きついたのだ。
メイプルが風呂で傷を擦りばい菌が入っても困ると言う事で、絆創膏は貼ったのだが、本気でどうしてか、成り行きでコウヨウはメイプルと2人で風呂に入った。コウヨウはなぜそんな事になったかは全然マジでわからない。ただ、普通におしゃべりしながら少し狭く感じる浴槽で彼の脚にメイプルが乗っかる形で普通に風呂に入ったらしい。
それをサリーとの会話で誤って伝えてしまったのだ。元々、サリーはメイプルが怪我をしたのを知っていたので問いかけてみたら思わぬトンデモ話が飛び出して来たのでコウヨウを腹パンしたのは言うまでも無い。
「お兄ちゃんのバカ……」
「思春期男子?」
「彷彿とさせる物?」
「後サリー、ユイとマイに変なこと教えないで」
「本当は黙っていたいけど、アイツの家の中漁っても何もないのはどうかと思う」
「多分ネット派なんだと思うよ、多分」
「でもたまたま部屋に置きっぱなしにしてた私の下着見て顔を真っ赤にするコウヨウがそんな事するかなって言うのも正直ある」
「確かにお兄ちゃんのそういうのは見た事ないかも。表紙がそれっぽい雑誌はあったけど、サリーが勧めた漫画が載ってる漫画雑誌だったし……」
サリーの言葉にメイプルも頷いた。コウヨウはR18系の話題は大の苦手である。だからこそ無いのかとも思ったが、思春期男子なのにそんなのが1つもないというのも矛盾している。そんな会話をしながらカスミとイズが双子の耳をそれぞれ塞ぎながら苦笑いをした。
「ま、まぁ、いいんじゃないかしら? サリーちゃんもコウヨウ君のこと好きなら、自分以外の女の子をそういう目で見て欲しくないでしょう?」
「私以外見ないで欲しいです。メイプルも私たちが付き合ったら赤の他人ね」
「酷いよ!! サリーの言ってる事無茶苦茶だよ!?」
「冗談だよ、コウヨウがメイプルと結婚しなければそれで良いかな。後、コウヨウが他の女の子と結婚しなければ」
「サリーさんが私達を睨んできます……」
「メイプルさん怖いです……」
「私はしないよ!? お兄ちゃんの事大好きだけど! 寝てる時に何度かカッコよくて小さい時にたくさん頬にキスしたけど! 結婚はしないよ!」
「メイプル、ちょっと決闘しようか?」
「サリーだってお兄ちゃんとお風呂入った事あるじゃん!!」
「いつの話? 少なくとも昨日ではないけど?? 数年前じゃない??」
「うっ……だったらサリーもお兄ちゃんと入れば?」
「入りたいから今ここで議論してるんでしょうが!!」
「サリーはいったいなんなのさもう!?」
「コウヨウ君モテモテねぇ」
「コウヨウさんとお風呂入ったら楽しそうです!」
「師匠はお話が上手ですから、ゆっくりお話できるかなぁ?」
「あんの……ロリコンヨウ! 私と言うものがありながら……!」
「まだ付き合ってないじゃん」
「メイプル?」
「ひぃ!?」
サリーマジギレ1秒前である。ってかもうキレてる。
実を言うと、イズはサリーがコウヨウを好きである事だけでなく、コウヨウもサリーが好きなのを知っている。両想いだと伝えてあげるか迷ったが、それはサリーとコウヨウが2人きりになって彼からそれを言っても遅くは無い。ついでに言うとコウヨウはイズにこう言った。
──プレイヤーと戦うのは大嫌いです。でも、愛した幼馴染と大好きな妹を守れるならギルドを斬ります。
これから始まるギルドバトルについて、彼と会話をしていた時である。イズは毎回彼がプレイヤーと戦いたくないとか、釣りしてたいとか本音を愚痴るものだから、無理して参加しなくてもいいと伝えた。
それでも、彼は少し悩んでイズに自分の想いを伝えたのだ。まさかプレイヤーではなくギルドを斬るという壊滅宣言をしたのは驚いたが。
──まぁ、本来なら参加したくないです。でも、妹と幼馴染がせっかく誘ってくれましたし、俺は3人で楽しくゲームをしたいので。サリーがホラー苦手でも泣きながらホラーゲームをしていたように、俺も泣きながらプレイヤーを斬ることにします。面倒だけど成仏してくれって。
そんな彼の言葉を思い出すと、嫌な事は嫌だとはっきり言う生意気さはあるが、妹や幼馴染のためにと何かをするコウヨウをいかにも人間らしく、男の子らしく、兄らしいとイズは好意的に思ったのだ。
「イズさん? 黙り込んでどうしました?」
「え? あぁ、何でもないわよ。ごめんなさいねメイプルちゃん」
「何か考え事か?」
「コウヨウ君とサリーちゃんが付き合ったら、愛の力でギルド戦を無双するんじゃないかって思っただけよ」
「言葉だけ聞くとロマンティックだが……多分戦闘狂が増えるだけだぞ」
「カスミ、どう言う事?」
カスミからすれば味方ならともかく、敵としてサリーとコウヨウには恋人になろうがならなかろうがタッグを組んで欲しくない。
プレイヤースキルで攻撃を翻し、ノーダメージで敵を葬るサリーだけでも厄介なのに、そこに4桁超えのSTRで魔法だろうが物理だろうが反射したり斬り刻んだ挙句、サリーを超えるAGIを使い、姿も見えない猪突猛進でプレイヤーのHPを1秒足らずで0にするコウヨウがタッグを組んだだけで、戦おうが戦わなかろうがカスミは夢の中で悪夢を見るだろう。
普段コウヨウは本気を出さないのでのんびり歩いて釣りをしているのが目立つが、モンスターと戦う時だけはカスミですら目で追えない速さと一撃で既に粒子に変えているのだ。それがまだモンスター用の本気だとすれば、彼がプレイヤー戦で本気を出せばどこまでいけるのかと考えもする。
そこに万が一、妹のメイプルも組み合わさればもはや歩く要塞どころか無敵要塞の完成である。このゲームでトッププレイヤーと言われるプレイヤーは今のところ【集う聖剣】ペインというらしい。だが、カスミが姿も見たことのないそんなプレイヤーでも逃げる、きっと逃げる。そして斬られる。そう発言しかけたが、やめた。なんか怖いし。
「でも、お兄ちゃんとサリーが組んだら私もノーダメージは厳しいかも」
「私はともかくコウヨウはメイプル並に異常だからね。素でステータスが1つでも4桁越えなんてメイプルとコウヨウしかいないし」
「「流石です、コウヨウさん(師匠)、メイプルさん!!」」
もはや恒例のユイマイの凄いです、流石です構文。それでも本当に凄いのは事実なので、サリーやカスミ、イズは苦笑いをするだけであった。
「お疲れ様、みんな集まってどうしたんだ?」
「クロム、お疲れ様。女子会よ」
「俺はどこか行ったほうがいいか?」
「もう終わったら大丈夫よ。せっかくだからクロムも参加する?」
「俺は男なんだが……」
クロムの言葉にイズは微笑みながらサリーとコウヨウの事だと言うと、納得して頷いたのだった。
「コウヨウさん……サリーさん大好きだからなぁ……」
「うん。そうだねお姉ちゃん……」
クロムと話していたみんなは聞き取れない。双子はコウヨウの想いを実は知っていたことを誰も知らないのだ。
☆
「ヤベェ普通に死ぬ」
女子会という花のあることをしていたギルドホームを知らないコウヨウは普通に苦戦していた。HPバーは半分まで減っており、今なお二刀流で敵の攻撃を防いでいる途中である。
「仕方ない……使いたくなかったが……【毒竜】!!」
「黙れ小童が!!」
「おいふざけんな、全く効いてねぇじゃねぇかよ!!?」
コウヨウがレベリング途中でたまたま見つけた刀装備兼二刀流限定クエストなのだが、敵がまぁ強いこと強いこと。コウヨウが久しぶりに一撃で倒せないモンスターの群に襲われたのもあり、普通に苦戦中である。因みにメイプルの許可を得て苦し紛れに手に入れた【毒竜】さえも普通に無効化された。
一応今ボス戦だが、赤い甲冑を着た落武者のようなモンスターが強い。普通に戦う時はただダメージを与えるだけかと思ったが、モンスターの目が蒼く光続けた瞬間、ステータスが上がる仕様なのか全くダメージが削れなかった。
「ムサシが引きつけてる間、回復はしているが……ジリ貧だな」
どうにかならんかと、少し考えた時、ふとメイプル達の会話を思い出す。それは、少し前のギルドホームでの事。
『そういえばこの前シロップが新しいスキル覚えたんだよ!』
『私の朧もレベル上がったよ』
そんな会話をメイプルとサリーがしていたので、テイムモンスターがレベルアップするのかと聞いたら当然だと返ってきた。
『もしかしてコウヨウあのモンスターレベル見てないの?』
『普段透明だから見た事ないな。初めて見たのも最後に見たのも使役して最初だけだ』
『それは勿体ないよ!』
メイプルとサリーはコウヨウのテイムモンスターを知っている。それでも、コウヨウがモンスターのステータスを全く見てないことに驚いたので、見ろと言われた事があった。
今は戦い中だが、少しばかりムサシのステータスを強引に見てみる。何か状況打開のヒントがあるかもしれないと。
結論言うと大正解である。
「うわ、何このステータス高すぎんだろ……ってか、【封印解除】ってもしかしてこの首輪か?」
正直この状況を好転できるのはこの方法しか無いと使うことにしたコウヨウが選ぶムサシのスキルは相手モンスターにとっては地獄絵図になるものである。
「よし、これしかねぇな、俺に力を貸してくれムサシ! 【封印解除】!」
瞬間、ムサシが鍵の形に変化して、彼の首輪をこじ開けた。そこから相手モンスターが見たのは、まるで敵が全く目に見えないのにダメージを受ける自分の姿だけであったのは言うまでもない。
「やったねムサシちゃん身体が軽いぜ!!」
「おいばかやめろぉぉ!!」
だって、彼は、コウヨウは……首輪が取れたせいで、ステータスSTRとAGIが2倍になったから。更には【極天二刀】で合わせて常設3倍、そこに【居合極】が合わさって6倍のSTR。まぁ、当たり前だよねと言わんばかりのステータスである。モンスターはツッコミを入れながらそのまま粒子と化したのだった。
『スキル【豪傑にして英雄】を取得しました』
【豪傑にして英雄】
HPが半分になるが、1時間だけ全ステータスが4倍になる。スキルの効果が残っている間、目が蒼く光輝く。
「俺は釣りをしたいだけなのに……一体何になろうとしてるんだろうな??」