妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「ミィ……お前嘘つきやがったな。何がただレベリングしてただけだよ……上位トップギルドの長じゃねぇか!」
「それはお前も同じだろうコウヨウ。何がメイプルに一目惚れした釣り師だ。【楓の木】のメンバーだけならともかくとして、そんな強さは聞いた事は無い!」
「因みにメイプルは俺の可愛い妹だ!!」
「余計にタチが悪いだろう!!?」
「黙れ【
「それは……うん? 悪口なのか??」
「いや、ごめん……【炎帝】だったわ……悪口でもなんでも無い」
「そうか……って、言ってる場合か!?」
「そうだよ、俺とお前は今敵だよ!!」
サリーとコウヨウが本格的に付き合い始めてすぐの事、日が照っているいい天気なのにも関わらず、炎と魚が激突した。現在行われているのは全力のタイマンことミィとコウヨウの真剣勝負。
「大体なんだその魚!?」
「刀だよ!!」
「魚だろ!?」
「【ダブルスタンプ】!!」
「うわっ!? な……なんなんだ……そのSTRの高さは……どうなればそんなクレーターをいくつも……」
「呪いの力だ!!」
「やめろ! 私は意外とオカルトとか幽霊は苦手なんだぞ!?」
「んなもん知るか!! 【呪斬】!!」
「今度は刀か!?」
メイプルやサリー、ユイとマイは【炎帝の国】の2位と3位である『トラッパー』マルクスと『聖女』ミザリー、その他の人員を相手に奮闘していた。
本当はメイプルとミィのギルドマスター同士の戦いが始まろうとしていたのだが、ミィはコウヨウの存在に気づいたようで、喧嘩は知り合い同士に任せた。
「【炎帝】!!」
「【魔法削除】!! 全く……威力やべぇだろ……斬るの大変なんだぞ!!」
「うるさい! 【炎帝】! 【炎帝】! 【炎帝】!!」
「連発出来んのかよ!?」
「なんでそんなに魔法を斬れるんだ!」
「刀に聞け! 俺は知らん!」
ミィが炎魔法を駆使してコウヨウを追い詰めようとするが、彼は魚からすぐに刀を装備し、スキルを使いながらその炎でさえも斬り刻み、消滅させる。更にまた魚に変化させて、首輪が取れたSTRで【ダブルスタンプ】を繰り出しながら勢いで風圧を、地面にはクレーターを作ってミィを追い詰める。
ミィの味方であるミザリーやマルクスも彼女の加勢に入ろうとはしたものの、化物メイプルや強者のサリー、尚且つユイとマイの圧倒的なSTRによって苦戦中である。
「どうしようミザリー……コウヨウもヤバイけど、この人達が強すぎてミィに近づけないよ!?」
「くっ……コウヨウさんよりも、先ずはメイプルさん達をどうにかしないといけないようですね……」
「お兄ちゃんの邪魔はさせないよ!!」
「【
「【魔法反射】!」
「ギャァァァァァァァァアアア!!?」
「お前……よくも私の仲間を!!」
「お前が撃った魔法だろ!?」
「跳ね返したのはお前だろ!?」
メイプル達が別の相手と戦っている間、ミィとコウヨウは争いあっていた。側から見たら争うというか、悪友同士で楽しそうに戦ってる様な気がする。だが、信じられない事に寧ろ押しているのはコウヨウであった。ミィの魔法を消滅させるくらいならお互い均衡を破るのに時間はかかるが、彼の反射のせいでミィの炎が他のメンバーに直撃する。
フレンドリーファイアはノーダメージだが、コウヨウが反射してミィの魔法を撃っているのでそれが適用されないのだ。
「っていうか……コウヨウはなんなんだよアイツ……!? あのミィと1対1でぶつかってるなんて……!」
「寧ろ押されてるのはミィの魔法を彼に反射させられて、それに巻き込まれている私達です! あのコウヨウさんって人……本当に釣り師なんですか!?」
「私のお兄ちゃんだよ!」
「「嘘でしょ!?」」
「さっきからそうだって言ってるじゃん……」
メイプルの発言に驚く人たちに対してサリーはツッコミを入れながら敵を切り刻んでいく。そうしてメイプルは信じられないものを見る目で見たマルクス達に【
「私達だって師匠の為に!」
「いくよ! ユイ!!」
「まぁ……私もやるけどね……」
一方でマイやユイもダメージは受けているが、しっかりと善戦してくれているし、サリーはサリーで敵を何人も斬り刻んでいるのだが……
(帰ったらコウヨウと結婚帰ったらコウヨウと結婚帰ったらコウヨウと結婚帰ったらコウヨウと結婚……!!)
コウヨウ狂いを力に変えて立ち回っていた。
「流石ギルドマスター……メイプルも化物だが、お前の炎も強すぎるな……」
「ただの釣り師だと思っていたが……ここまで追い詰められるとは……やるな、コウヨウ! ならコレはどうだ! 【
「うぉ!? なんだコレ檻に閉じ込められた? ってダメージ入るのかよ!?」
ミィ【火炎牢】に閉じ込められたコウヨウはじわじわとダメージが削られていく。この檻はミィのMPが無くなるまで発動し続ける永続魔法。
「やっぱり勝った後のポーションは格別だな!!」
「テメェまだ俺を倒してねぇのに祝杯あげてんじゃねぇよ!!」
「悔しければそれを壊してみろ……ゴクッ……ゴクッ……」
彼女はMPを回復する為にポーションを飲みまくる。閉じ込められたコウヨウに待つのは死のみであるが……それは彼がもしもただのプレイヤーであるならばだ。
「ちくしょう! 頭に来たぜ! 俺の全スキル解放するしかねぇよな!」
「ごくっ……ごくっ……まだ何かやる気か? 無駄な……ゴクッ……ゴクッ……事を……んぐっ……んぐっ……」
「いつまで飲んでんだよ!? 飲み過ぎだテメェは!!」
「だが、無駄だ。いくらお前でもコレは壊せ……」
「【極天二刀】! 【
「ま、まさかお前……ゴクッ……んぐっ……ハーレムなのか!!?」
「違うわアホ野郎がぁぁぁ!! というかそれ以上飲むなぁぁぁぁ!!」
ミィの勘違いも虚しく、コウヨウは全力で否定しながらそのまま彼女が放った牢獄に立ち向かう。そうして彼は今できる全力のスキルで立ち向う。HPの関係上、時間は無い。この一撃のみに全てを賭けた。
「一か八かだ……【居合極】、【魔法削除】!!」
一閃、彼は全力で両方の刀を鞘から抜いて、檻に攻撃を繰り出す。普通のプレイヤーなら破壊は絶対に不可能。それこそ、4桁後半以上のSTRが無い限り、ゴリ押ししない限りは。ミィも流石に勝ったと本気で思った。
だが、やはりミィを襲ったのはメイプルに続いての理不尽の塊である。元々4桁のSTRノルマをクリアしているコウヨウが【極天二刀】で1.5倍のSTRにして、【豪傑にして英雄】でHPを半分も減らしながらさらにSTRを4倍。そしてダメ押しで1撃だけ、STRが2倍になる【居合極】。はっきり言うとだ、STR12倍である。もっと言うとだ、首輪は取れている。
つまり普通にステータスが理不尽なプレイヤーに理不尽な24倍バフがかかったこの瞬間、切り札は木っ端微塵に破壊させられた。
「な!? 【火炎牢】が壊された!?」
「砕け散れや炎帝様ぁぁぁ!!」
「ぐっ……最後まで諦めん! 【炎帝】!!」
「なんてな……あばよ!」
「な!? き、消えた!?」
ミィの奮闘も虚しく終わった。最後にコウヨウが使ったスキルは【
『サリー、指輪を交換しても良いか?』
『する! コウヨウと結婚する!!』
『話を聞いてくれるか?』
『お兄ちゃん、結婚はまだ早いよ?』
『話を聞いてくれるか?』
『『コウヨウさん(師匠)おめでとうございます!!』』
『話を聞いてくれるか??』
先日、告白の後みんなでまた作戦会議をした時、指輪交換しようぜと伝えたコウヨウに対して、一瞬その作戦を忘れてたせいで幼児化トリップしたサリー。彼女を落ち着かせてコウヨウは再説明する。みんなも彼のセリフに大慌てだったからである。
策としてはこうだ。サリーがテイムモンスターを持っている事は多くの人にバレているが、コウヨウがテイムモンスターを持っているのは殆ど誰も知らないはずだと。
だからこそ、わざと指輪を交換してテイムモンスターを入れ替える事で、コウヨウにはテイムモンスターはいないはず。なのにサリーのテイムモンスターがコウヨウにいると思い込ませる混乱させる。
そうなると逆にサリーには何も付いていないと勘違いする人が出てくる。そんな奴に魔法やら攻撃やらしたプレイヤーが勝手に斬り刻まれたら面白い混乱が起きるのでは無いかと考えた。
因みにミィとコウヨウが熱い戦いをしたせいで、マルクスやミザリーは気が付かなかったのだが、サリーは剣を抜いてはいても殆ど振り翳してはいないのだ。つまりは敵はサリーにダガーを振り下ろす事もなくコウヨウのテイムモンスターであるムサシによって消えていったと言う話である。
『メイプルでも良いんだが……ムサシの存在をしっかり見たのはサリーと朧だけだ、ムサシはサリーに懐いてるし、朧もたまに俺の元で寝てくれるからな』
『主人が変わってもテイムモンスターは懐くから悪いこと無しだね』
『俺はこの試合、本気で目立つフリをしながらサリーについてるムサシの存在を隠しながら……【炎帝】をぶった斬ることにする』
『え、【炎帝】を斬るんだ……うん、コウヨウなら出来るよ、頑張って』
『サリー、俺はこれ以上お前に無理はさせたく無い。愛してるからな!』
『どうせなら【炎帝の国】ごと斬らない?』
『無理です。なんという無茶振りをする恋人なのでしょうか』
ただでさえサリーには今回のイベントで無理をさせてしまった。そんな罪悪感やサリーの頑張りを見て今更プレイヤー殺しが嫌だとは言えない。寧ろ、最早迷いは無かった。
「炎帝だろうが化物だろうが……俺の大事な物や人を敵とする奴なら、全員ぶった斬る!」
「身を浅く思ひ、世を深く思ふ……いや、違うな……身を浅く思ひ、愛する者を深く思ふだ!!」
「どこだ!? どこから声が……!?」
そして、一瞬消えたコウヨウは、サリーの相棒である朧と共に現れる。一方で彼女のMPは先程の一撃で完全に尽きた。そしてコウヨウの事をあり得ない物を見る目で見た炎帝様は理不尽に、全力で、理不尽化物君に斬り刻まれたのだった。
「う……嘘……だ……」
「コレでしまいだ! 俺を殺す気かお前は!?」
炎帝様ことミィは初めから本気で貴方を殺す気でしたなんて言える訳もなく、粒子と化して消えたのだった。メイプルに自爆する策すらも一切作らせないまま、彼女に辿り着く前に、彼女の兄に、二刀流の釣り師に切り刻まれたのだ。
「本当はギルドマスター同士戦うのが面白いと思うんだが……悪いな、俺を倒さない限り妹と戦うのはお預けだ、炎帝様」
「お兄ちゃん避けて!?」
「はい???」
最後くらいカッコつけようとしたのだが、コウヨウの姿めがけてメイプルのミザリーとマルクスに対して撃ったわけわからんレーザーが普通に彼も襲ったのは言うまでも無い。
☆
「そうか……ありがとう」
時は少しだけ過ぎて、【集う聖剣】の視点になる。ギルドメンバーの報告がペインにされた事により、彼は眉を顰める。
「ペイン、どうしたんだ?」
「ドラグ、戻ったか……ドレッドとフレデリカは?」
「気合い入れてやった。フレデリカに関してはかなり落ち込んでたからな。ドレッドが今フレデリカを見てる」
ギルドメンバーの1人であるドラグはペインの元に行って話をする。正直ドラグとペインには何が起こったのかなんて分かっていない。
ただ言えるのはコウヨウがブチギレた夜、ギルドのリスポーンエリアから出てきたのが、高らかに自分の負けを宣言しながら笑って帰ってきたドレッドと、この世の終わりを見たような絶望した表情で目が死んでいたフレデリカであった。
ドレッドは【楓の木】の本拠地まで攻めていって、ユイとマイにやられたと言いながら、負けた負けたと笑っていた。だが、問題はフレデリカ。普段はおちゃらけている彼女は身体を震わせながら一言も話さないまま時が過ぎたのだ。
「サリーという奴の回避術をスキルと勘違いしていたのは水に流すが……問題はコウヨウという二刀流……」
「まさかそこそこの人数で攻めさせた部隊がそいつ1人に全滅された挙句……フレデリカ自身は腹パンで吹っ飛ばされて魔法も全部跳ね返されて……手も足も出ないまま木っ端微塵に斬り刻まれたなんて……にわかに信じられねぇな……」
「コウヨウ……うちの紅一点をここまでやった事……許しはしないぞ……」
「ああ。フレデリカをここまでやってくれたんだ、実際に会ったら俺が叩き潰してやるぜ。それで……さっきの話はなんだったんだ??」
ペインとドラグはコウヨウという二刀流に復讐を誓う。その勢いのまま、ドラグはペインに先ほどの話の内容を確認するが、ペインから聞いたのはドラグも耳を疑う事であった。
「【炎帝の国】のミィがやられた。やったのは今俺たちが話をしている二刀流のコウヨウだ」
「おいおい……マジかよ……あの【炎帝】を斬ったのか……?」
「しかもとんでもない情報を聞いたそうだ」
「とんでもない情報? 【炎帝】倒した事よりもか?」
ドラグの言葉に肯定しながら、ペインは口を開いた。
「なんでも、コウヨウという男は【楓の木】所属だそうだ」
「な……なんだと?」
「しかも……あのメイプルの兄で、サリーの幼馴染だと、たった今それを聞いた」
「そ……それが本当なら……てことは【楓の木】で警戒するのはメイプルやサリーだけじゃなくて……」
「3人だ……いや、それ以上かもしれない。コウヨウとメイプルか……これは黙って泳がすわけにはいかなくなったな……」
この日、ペインは久しぶりに冷や汗を流して【楓の木】の要警戒人物の正体を掴もうとするのだった。