妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
終わり次第すぐ戻ってきます。
『お主には資格がある……望むなら強くなれるぞ』
『あいにく……魔法少女はお断りなんだが……』
『きゅっぷい』
『マジな奴いるじゃん!?』
誰かの声に反応するコウヨウ。男の渋い声だが、とても優しく、それでも威厳があるような声であった。因みにコウヨウはこんな声知らないし会った事ないし誰だよコイツ状態である。
『お前の使う二刀流は刀は2本である事に違いはない。それでも真の二刀流は刀が2本ではないのだ……』
『二刀流なのに2本では無い?? 何言ってるか全くわかんねぇな……二刀流ってそもそもなんなんだ?』
『元々は二天一流……それ即ち兵法である』
『なんで兵法?? ごめん、マジで意味わからん』
『いつか分かる……お主が本気で強くなりたいのなら……二天一流を身につける事が……1番の近道だ……』
『俺は釣りをしたいだけだ……いや、大事な人を守るなら……ちょっとくらい身につけてやってもいいか……』
『期待してるぞ、主……』
『所でさ、誰だよお前は?』
『いつか答えてやる。恥ずかしい』
『なんでそこはじるんだよ
☆
「キュルルン!! キュルルルン!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛がりたい……」
バシバシと何かに頭を叩かれるコウヨウ。なんの騒ぎだと目を覚ますと、そこには彼のテイムモンスターであるムサシが短刀の形をしながらも柄の部分で主人を殴っていた。どうやら起きろと言っているらしい。ダメージは無いが普通に痛い、痛がりたい。
「どうしたムサシ、何かあった……」
コウヨウがムサシに話しかけようとしたが、すぐにこいつの言っていることがわかった。なんだか向こうが騒がしい、いや、確実に【楓の木】がドンパチやっている。
「起こせと言ったのは俺だが、起こしに来れないと言うことは……来やがったか?」
「キュルルン!!」
「ムサシ、やる気だな」
「ギュルルルルル!!」
聞いた事ないくらいムサシがコウヨウの周りを暴れながら声を上げる。腰を上げて歩いて向かうと声がする方を特定。
そうしてその場所に現れて、しっかりと周りを見てみると……
「なんで……俺の妹がダメージ受けてんだ?」
壁まで吹っ飛ばされて、HPが1になったメイプルが聞いたことの無い悲鳴を上げて倒れ込んでいたのだった。
「よし、斬るか……ムサシ、俺の首輪は取れてるよな?」
「ギュルルルルン!!」
「俺の呼吸を見せてやるよ……」
それを視界に入れた瞬間。ブチギレたコウヨウの中で【集う聖剣】が次の破滅の対象であるとロックオンしたのはここにいるムサシ以外は一切知らない。
☆
「よし、ペインがメイプルを斬った! コレなら私達の勝利は近い!」
フレデリカは心で喜んでいた。あの歩く要塞と呼ばれたメイプルを切り裂いたのは、最強プレイヤーにして自分達【集う聖剣】の頼れるギルドマスターのペイン。
フレデリカが必死で詠唱したバフでメイプルの4〜5桁辺りであろうVITでも切り刻むことが出来たと分かれば、こちらの勝利は近いどころか確定する。ここでいつも通りにバフを掛ければ、このままいけば自分達が勝てると完全に信じ切った。この男がいなければの話だが……
「俺の呼吸、壱ノ型、ぶん投げる」
詠唱中にある男の声が、フレデリカを襲った。この声に聞き覚えしかない。瞬間フレデリカの全身が恐怖で震えた。
「ペイン! 危ない!!」
「フレデリカ? 一体何……がっ……!?」
「人の妹に手を出してんじゃねぇよ……金髪ナルシスト……」
奴の声と共に、30メートルの超巨大大剣がメイプルと彼女にトドメを刺そうとした聖騎士ペインの間に突き刺さった。とてつもない風圧がペインを襲い、流石に少し仰け反りながらメイプルから距離を取る。見ると、既に投擲し終えたポーズというか、モーションになっていたコウヨウが見えた。
「お兄……ちゃん??」
「ごめん……今起きた……だが、ストライクだな」
「コウヨウ、遅い!!」
「謝るけど、起こしてくれよ……」
歩きながら発するコウヨウの声に対してやっと来たかとサリーは怒る。それを見た【集う聖剣】と【楓の木】メンバー。何が起こったのかすら双方のギルドマスターであるペインやメイプルですら理解が出来なかった。
「おい、カナデ。ドンパチやるなら起こせって言ったよなぁ?」
「ごめんね、すぐ仕掛けられたから呼ぶ暇無かったんだ」
「そうか、許す。俺も悪かったな」
「お兄ちゃん! 遅い!」
「バカ妹にも起こせって言ったよなぁ!?」
「コウヨウ遅い! 旦那が大事な所で遅刻とかありえないんだけど!」
「本当……お前ら辛辣すぎるだろ!?」
戸惑いながらコウヨウに謝るカナデとコウヨウが全面的に悪いと伝える妹と幼馴染。それ以外の人間はこの大剣を片手で放り投げたその男を信じられない目で見ていた。
そんなコウヨウに迫ったのは二刀流の短剣使いであり【神速】の異名を持つドレッドだった。彼の姿を見て、すでに一撃で決める準備は整っている。
「また会ったな二刀流使い!! フレデリカの仇だ! 【神速】!!」
「ちょっとドレッド!? まだ私いなくなったわけじゃないんだけど!?」
「お兄ちゃん危ない!」
そう言って攻めたドレッドと兄に警告するメイプルだが、コウヨウは一切動かずそのまま身体を……
──ガキンッ!!
斬られなかった。寧ろドレッドの刃を左片手1つで止めた。何が起こったのかすらも状況も何もかも分からないドレッド。
「お前に用はねぇ」
コウヨウの言葉に1つ、たった一言で、ドレッドはフレデリカと同じくらい未知の恐怖に襲われる。一度サリーと戦った時も、コウヨウの時も、挑んでしまってるが確実にヤバい奴だと一目で分かった。それでもこの男は、コウヨウはサリーどころか前に対峙した時以上にヤバいとドレッドの頭の中で警告を増やし続ける。
実はこれは彼の作戦である。怒りが表に出ても頭はカナデ並みにキレる男。そんなコウヨウはわざとギリギリでドレッドの刃物を止めた。その方法は、ムサシの【変身】。
ムサシは刃物であればある程度変身が出来るテイムモンスター。最大全長は30メートルだが、最低になれば本当に細かいものになれる。
だからこそ、この場の全員は気が付かない。コウヨウの手にあるダメージ判定スレスレの位置にカミソリの一枚刃が2、3枚ほどこっそりと姿を表して、彼のダメージを防いだ事を。それを知らなければ、プレイヤーから見てコウヨウは片手でドレッドの攻撃を止めたと誤解させられる。
そうしてドレッドはそんなカラクリを分からず、自分の刃物を止めるほどの手はどういうカラクリなのか……そんなことを考えてしまったのが、彼の敗北。コウヨウに攻撃を片手止められて、その瞬間、身体の脇腹からとてつもなく味わったことの無い痛みが彼を襲った。
「【吹っ飛ばし】、お前ユイとマイを倒した奴だろ? 弟子の仇は俺が取る」
「あ……が……」
「いっぺん……死んでみる?」
そしてドレッドはたった1本の刀にも関わらずとてつもない速さで、身体を真横に吹っ飛ばされた。慌ててドラグが大斧を出してコウヨウに迫るのだが……
「メイプルを……ギルドマスターの首取りたければ……まずは俺の首取ってみろや!! 【ダブルスタンプ】!!」
「さ、魚!? くっそ! 【パワーアックス!】ぐっ……!? な……なんだコイツ……俺が力で負けるなんて……ガァァァ!!?」
「落ちろよぉぉぁぉぉ!!」
コウヨウは魚に装備を変えて、力技でドラグを叩きつける。ドラグは大斧を構えてなお、受け止めきれずに頭から地面に叩きつけられた。
これはまずいと一瞬でコウヨウに距離を縮めたのは【集う聖剣】のギルドマスターにして最強プレイヤーのペイン。あの男は何者なのか全くわからないが、確実に分かることはただ一つ。
この男1人に、【集う聖剣】のトップメンバー2人が一撃でやられたこと。中でもその内の1人はギルドトップのSTRの持ち主。しかもフレデリカのバフもかかっているのだが、それを上回るほどのとてつもないSTR持ちと、ドレッドの剣を片手で受け止めたメイプル並みか、それ以上のVIT持ちという、事実……とは違うことをペインは分かった。いや、その理解が、ペインを苦しめた。
そのまま突っ込んでコウヨウに攻撃をするが、それを彼は二刀で受け止める。
「危ねぇ!? 殺す気かお前!?」
「俺の仲間をあそこまでやっておいて何を今更」
「コイツ……剣1本で俺の二刀流に対抗してきやがった……流石【集う聖剣】……お前まさかあのペインってやつか!?」
「そうだが……コウヨウと言ったか? お前は一体何者だ? 俺の剣を止められるのは久しぶりだ、少なくとも俺達の知っている情報にはいなかったと思うが」
「俺か……二刀流の釣り師だと言えば?」
「なるほど……お前が……仲間から少しだけ聞いたが……お前、メイプルの兄か!」
「ああ。コウヨウ、それが俺の名だ、よろしくなペインさん」
「マジかよ!? 本当にメイプルの兄貴だと!?」
驚くドラグを気にせずにペインは剣を交えた瞬間分かった。コウヨウという男はハッキリ言ってメイプルよりもタチが悪そうだと。
こんな時に普通にペインと会話して、自己紹介なんてできるプレイヤーが未だかつて存在しただろうか? 後にも先にもコウヨウだけである。
「【断罪ノ聖剣】!!」
「【極天二刀】! 【呪斬】!!」
コウヨウとペインの刀と剣が接触した瞬間、とてつもない衝撃波が全員を襲う。
「ぐっ……!! なんて威力だよアイツら!」
「こちらの方まで衝撃波が飛んできて……他の奴の相手をしたいけど……油断したら飛ばされそうだ……」
「正直なところ味方贔屓もあるけど……コウヨウの強さがヤバいね」
「あの最強プレイヤーを相手にコウヨウ君が互角に戦ってるなんて……夢でも見てるのかしら?」
「むぅ……お兄ちゃんばっかりペインさんと戦ってズルい!」
「いや、メイプル……コウヨウはメイプルを守るために戦ってるわけで……」
「「コウヨウさん(師匠)!! 頑張って下さい!!」」
「いや、お前らも戦えよ!?」
なんとか避難したメイプルはみんなの元へ。クロムとカスミを筆頭にコウヨウの強さがいかに化物なのかを語る会が開かれているが、それは【集う聖剣】も同じである。フレデリカは何とかこの状況を飲み込み、正気に戻りながらも未だに目の前の光景を信じられずに見ていた。
ドレッドはよろけながらも地面に伏せているドラグを抱えてフレデリカの元に避難させる。
「わ、私の……私のお腹を殴った挙句……あのペインと互角とか……ありえないんですけどぉぉぉ!?」
「フレデリカ! 下がってドラグの回復を頼む! アイツはペインに任せないとヤバい!」
「アイツ……メイプルの兄って……言ったよな……強すぎるだろ……HPが……半分も残ってねぇ……」
「だからお前らも戦えよ!?」
コウヨウは流石に敵味方関係なしにツッコミを入れた。急に現れた男1人に一撃で沈められかけた2人はフレデリカの回復魔法で体勢を整えながらも、ペインとの戦闘に目が離せない。
因みにコウヨウは呪いの首輪がムサシによって取れたためステータス2倍。更には【極天二刀】で1.5倍。つまりは常に3倍ステータスで戦っている。
そして、ペインとの鍔迫り合いが終幕を迎えて、お互い後ろに下がった瞬間、話したのはコウヨウ。
「仕方ねぇ……アレをやるか」
「ここまでの強さを持ってしても、まだスキルがあるのか……?」
「俺が使うのはたった2つだ。もう首輪も取れてるしな」
その瞬間、すぐに反応したのはサリー。コウヨウの首輪が取れているのを確認すると、急に計算をし始めた。
「め、メイプル! 助けて!」
「ど、どうしたの? サリー?」
「えっと……2×1.5って何?」
「3だよ!? そんな事も分からなくなったの!?」
「い、いや、そうじゃなくて……じゃあ3×2は?」
「6でしょ……なんなのさ急に……おバカになったの?」
「じゃあ……6×4は?」
「24だよ……もうダメかも……サリーは留年だ……」
「ち、違うよ!? って事は今コウヨウが本気出したら……」
「え? お兄ちゃんがどうしたの?」
「1000×24のSTRだ!!?」
「えっ……何言ってるの???」
サリーは顔を青くして答えた。コウヨウの今のステータスを。首輪が外れて2倍になった4桁のSTR数字は2000以上になり、【極天二刀】で1.5倍になる。そこで恐らく彼がするのは最強の一撃必殺技【居合極】という一撃だけ2倍のSTRとAGI強化。その前にやる事は……サリーには見えていた。
「まずは1つ目【豪傑にして英雄】」
コウヨウの目が青く光る。それをサリーは予測していた。順番は違うがこれでコウヨウは12倍、そこに【居合極】を使えばステータスは24倍に跳ね上がる。そこまではサリーは予測できた……だが、コウヨウはそれ以上の言葉を発した。
「2つ目、ムサシ【変身】」
「ギュルルン!!」
「え!? ムサシ!?」
「なんだあれ? モンスター!?」
コウヨウの言葉で出てきたモンスターにみんなは驚くが、そのモンスターは光出して……2つの刀に【変身】した。コウヨウはムサシを構えて二刀流になる。
「ちょっと待って!? ムサシって二刀になれるの!?」
「ムサシ……俺はまるで意味がわかってないから【二天一流】を教えろ」
「キュルルル!!!」
「か、刀型のモンスター……そうか……ドレッドを止めたのはこのモンスターか……!?」
「に、二天一流……って……何?」
急に現れたムサシに対し、少しばかり思考が追いつかないペインと一切聞いたことの無いスキルに対して驚くサリー、確実に来ると覚悟したペインだが、コウヨウは目を閉じて構える。
『二天一流とは兵法……されど剣術……見せてやろう』
何かの声がコウヨウの耳に入ってくる……この声は眠っている時に聞いた……
「あれ……知らないおっさんの声が聞こえる……ぐっ……!?」
瞬間、頭痛と共にコウヨウは少し身体を前に傾ける。何が起こったかペイン達にも分からないが、すぐに彼はまた二刀を構える。だが、先程とは違い、刃を寝かせて地面スレスレに向けていた構えから、刃を上に、持ち手も上に、空中に刀が浮くような別の構えをした。
「雰囲気と構えが変わった……?」
「来るがいい、今の私は主よりも強いぞ」
「口調も変わってる……何のスキルか分からないが……攻めるしかない!!」
そうしてペインは突っ込んでいく。聖騎士の剣をコウヨウに向けてそのまま一振りしようとした。あくまでもしようとしただけになったが。
「先ずは一回」
「い……いつの間に……俺の首に刀が……くっ、ならば【断罪ノ……」
「続いて二回」
突っ込んできたペインが剣を振りかざす前に彼の首元に刀の刃を当てた後、少し離れてスキルを発動しようとしたペインの腹部の甲冑装備に、しゃがみ込みながらも二刀を当てる。そして、ペインが驚いている隙に彼は消え、いつのまにかペインの後ろから首に二刀を交差させて当てた。
「三回だ……戦場ならばお前はもう三回死んでいるぞ?」
ペインは初めて恐怖した。今までガチ勢プレイヤーとして名を馳せてレベリングを一切怠らず自他共に最強のトッププレイヤーになったペイン。それでも、コウヨウはそれすらも超えてきた。その強さは最早レベリングの問題ではない、チートの類でも無い。どちらかというと……
「ま、まるで……歴戦の侍のようだ……」
「主、動きは見せたぞ。後は……」
そう独り言を残してからコウヨウはペインから離れてから笑みを溢す……
「ありがとう。二天一流は始めの一歩くらいだけども……ペインの動きは……何もかも見切った」
「コウヨウ……お前は一体……」
「ただの釣り師だよ……でも……」
コウヨウはペインの前まで歩く。大事な人を守る為に、奴に一撃を入れる為に、彼は最強に向かって歩く。
「【断罪ノ聖剣】!!」
「やっとスキル出せたな……まぁ、当たらねぇけど」
ペインが初めてコウヨウに対してスキルを発動出来たが、それはしっかりと止められる。いや、止められたのは間違いか。確かにペインのスキルで二刀は弾き飛ばされたが既にコウヨウはその二刀から両手を離していた。
「ここで刀を捨てたか!?」
「ムサシは捨てた。されど刀は生きている」
それに気づいた時にはペインはスキルの硬直時間が少しばかり襲ってくる。ゲームは得意で無くても、それを見逃すコウヨウではない。彼はムサシを犠牲にして本命の刀に手をかけて……
「舌噛むから口閉じろ最強。俺の最弱はちっとばっか空飛ぶぞ……【居合極】」
その言葉が聞こえる前に、すでにNWO最強プレイヤーでありNo.1ギルド【集う聖剣】のギルドマスターは、【楓の木】のそこまで名も無かった少年に全力で斬り刻まれ、宙に飛ばされた事はNWO史上歴史に残る大事件になるのは言うまでもなかった。
「全然なってねぇな……二天一流……また教えてくれよムサシ」
「ガンバレ」
「え? お前今喋らなかった??」
「キュルルン」
「気のせいか」
「ペインが斬られて……吹っ飛ばされたぁぁぁぁ!!?」
キャア喋ったー、なんて叫ぶ事は無かったが一瞬ムサシが喋ったのは気のせいだと信じたい。とりあえずペインは斬った、フレデリカは大声を出した、それでいい。後は【集う聖剣】全員をここから追い出すだけである。