妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と運営視点

「おい、始まったぞ……」

「とうとう来たか……【楓の木】と【集う聖剣】の直接対決……」

 

 運営達は目を離せない。モニターで映っている光景はギルド対抗戦のメインといっても最早過言では無い。要は強いギルド同士の決闘である。

 対戦カードは【楓の木】と【集う聖剣】。即ちメイプル対ペインの試合だ。

 歩く要塞だの天使だの化物だのと言われた初心者プレイヤーメイプルに対して、ペインは【聖剣】の異名を持つガチプレイヤー。彼に関しては恐らく古参も古参であり、全プレイヤーのトップ、即ち最強である。

 

「うぉ!? ペインがメイプルのHPを1にした!!」

「あの化物でもペインには勝てんか……」

 

 ペインはフレデリカのバフを受けながら、メイプルの元に突っ込んで行き、【断罪ノ聖剣】でメイプルの防御を突破した。それだけなら運営側もまだ分からないと言うはずなのだが、今回に至ってはHPを1にしたという点で、勝機は完全に【集う聖剣】側に傾いた。

 流石の【楓の木】もメイプルのVITには絶対的に信頼をおいているとしても多少なりとも削られる考えはあったはずだ。だが、HPを1にされる予想は立ててない。

 だからこそ【楓の木】のメンバーが士気を下げているのを見て運営側は【集う聖剣】に勝機があると睨んだのだ。

 

「終わりか? 流石にここから逆転なんて……」

「ああ……流石に無理だろ……ってあれ??」

「どうした?」

「なんか……1人足りなくねぇか?」

「足りないって……何が?」

 

 運営の1人が違和感を感じた。【楓の木】と【集う聖剣】の戦いは滞りなく行われているはずであるが、何かが足りない。ふと、【楓の木】メンバーが1人だけいない事にもう1人が気がついた。

 

「なぁ……コウヨウってどこのギルドだっけか?」

「コウヨウ……? ああ、あの二刀流釣り師か? えっと……確か……」

「【楓の木】だよな?」

「じゃあ……今試合してるのに……コウヨウはどこ行ったんだ??」

 

 そう、運営が言葉を発した瞬間……30メートルの大剣君が、ペインとメイプルの間に突き刺さった。突然の出来事に運営達はというと……

 

「え? 何あれ?」

「え? 何あれ?」

「え? 何あれ?」

「え? 何あれ?」

「何ですかあれ?」

 

 1人敬語だが、全く同じセリフである。しかもその大剣はすぐに透明になって消えていくので何が何やらわからない。その瞬間、テクテクと、ゆっくりと、静かに歩いてくるプレイヤーが1人。

 

「あ、コウヨウだ。やっぱり【楓の木】のメンバーだよな」

「もしかして遅刻したか? それなら……あの大剣ってコウヨウの武器か?」

「いや、そんな武器俺達は作ってないけど……あ、ドレッドが突っ込んで行ってコウヨウに攻撃を……」

「え?」

「何で片手で止めたの?? というか止められるの??」

 

 モニターでは言葉は聞こえないが、モニターではドレッドの攻撃を片手で止めたコウヨウの姿が見えたので、訳がわからんと運営達は疑問に思う。その瞬間、コウヨウがドレッドを一撃で吹っ飛ばした。

 

「何これ?」

「何これ?」

「何これ?」

「何これ?」

「何これ?」

 

 運営の理解が追いつくまえに、コウヨウはドラグに魚を出して突っ込んで行って……ドラグを地面に叩きつけた。地面にめり込んだドラグを足で踏んづけながら、そのまま歩いていくのを見て彼らは分かった。

 

「おいちょっと待て!? 何だあの魚!?」

「というかアイツめっちゃ怒ってないか!?」

「今情報入りましたが、どうやら妹のメイプルがペインに攻撃されたのでブチギレてるみたいですね」

「ブチギレだだけでドレッドとドラグを一撃で沈めるとかおかしいだろ!? どんなステータスして……オイオイオイオイ!! なんだこれ!?」

「STRが4桁……挙句AGIも4桁届く数字……しかもスキルの影響でSTRが5桁も狙える……え? 何これ? メイプルよりタチ悪いだろ……」

「ペインが行った! って、それも止めるの!?」

 

 ペインの攻撃を止めながら何か会話をするコウヨウだが、涼しい顔をしながら二刀で止めていた様に見える運営達。実際本人はかなり頑張った方だが、正直怒りであまり覚えて無いと後のコウヨウは語ったワンシーンである。

 

「ペインとサシでやり合うプレイヤーを俺は初めて見たんだが……」

「ってか、コウヨウが押してない? うわ、最早人間じゃないだろコイツら2人、鍔迫り合いしてるだけで他のプレイヤーが飛ばされそうな風圧って何だよ……」

 

 そうして運営はNWOの歴史に残る大事件を目撃する。コウヨウが自身でバフをかけ始めてから、彼のテイムモンスターが二刀に変わってからのシーン。

 

「おい待て……今テイムモンスターが2本の刀になったんだが……もしかしてあの大剣って……」

「アイツが変身したのか!?」

「いや、待ってくれ……そんな機能入れた覚えは無いんだが……」

「記憶喪失は黙ってろ! ゲームバランスが崩壊する可能性があるから1人に何かを作らせるなとアレほど言ったのに……」

「いや……でもみんなOK出したからコウヨウが使ってるんじゃないの?」

 

 1人の言葉にみんなが黙った。

 

「コウヨウがペインを斬ったぁぁぁぁぁ!!!???」

 

 と、思ったら1人が叫んだ。騒がしい軍団である。

 

「コウヨウ……いよいよなんか修正かけないとまずくないか?」

「何かしらかけよう。そうしよう。じゃないとこのゲームが崩壊する」

「何でメイプル然りサリー然りコウヨウ然り……初心者初ログイン者だと思ったらこんな事になるんだ……」

 

 ☆

 

 一方で時は少し戻って、ギルド対抗戦前の本条兄妹の様子はというと……

 

「お兄ちゃん、私のシャンプー切れたからお兄ちゃんの使うね」

「お前なんでまた俺と風呂入ってんの?」

「兄妹だから」

 

 訳がわからないと紅葉は苦笑い。流石に歳も歳なのでこういう事をするのは良いか悪いかさておいて珍しい事である。楓曰く、兄妹だからと聞く耳持たず、兄と一緒に風呂に入る事は何故か最近、楓が怪我して入った時以来もよくあるし、昔から入っていたので気にしない事にした。

 

「いや、やっぱり気になるわ。楓、何で最近一緒に風呂入るんだ?」

「うーん……だってそろそろお兄ちゃん理沙に告白して付き合うでしょ?」

「ど、どこにそんな話が……」

「それで理沙と付き合ったら、私が寂しいからかな」

「べ、別に俺が理沙と付き合おうが付き合わなかろうが楓を仲間外れには……」

「しないってお兄ちゃんは言うけど、私がやっぱりそう思っちゃうところもあるから……だから、少しだけ良いでしょ?」

 

 これは私の心構えの問題だと、楓は紅葉に伝える。彼女からすれば、兄も幼馴染も両想いである事は確定しているので、どちらかが告白すれば付き合うことができるはずである。もっと言うと、その条件はすでに理沙がやってしまっているので、後は紅葉の返事待ちなのだ。

 

「お兄ちゃんが理沙に好きって言えば大団円じゃん」

「大団円なんてそんな言葉よく覚えたな」

「お兄ちゃんが教えてくれたよね」

 

 そうだったかと紅葉は自らの記憶を辿るが、あまり思い出せない。そんな事をしていると楓は紅葉の上に乗って、そのまま湯船に沈んだ。

 

「うぃー……」

「おっさんじゃねぇか」

「こんなに可愛い女の子におっさんって言わないで」

「まぁ、可愛いのは認める」

「うぇ!?」

 

 正直紅葉は楓が美少女だとクラスで有名になっているのは知っている。たまに妹目当てで自分に近づく人間がいるので、とりあえずこう言っておく。

 

 ──お前達が虫とか食えるなら付き合えるんじゃないか? たまにあいつ蛇とか食うけど、それでも良いなら……

 

「たまにこう言ってる」

「だから最近クラスの男の子達が私を見る度に驚いてるの!?」

「幼稚園とか小学校の時とか……今もそうだけど、てんとう虫とかアリとかなんなら蛇とか食ってただろ」

「いや……そ、そうだけど! それみんなに対して普通言うかなぁ!?」

「楓が大事だから言ってるだけ。それでも良いって言うやつなら努力して頑張ってくれ」

「そんなこと出来るの……カナデくらいかなぁ」

「え? マジで?」

 

 NWOで彼女曰く、最近カナデとモンスターむしゃむしゃ大食いツアーに出かけることが多いらしい。流石の紅葉もそれを知らないし、何なら何回もやってる事自体に驚いている。

 

「カナデ結構食べるんだよね。やっぱり男の子だからかなぁ……?」

「ああ……まぁ、それもあるだろうな」

「それも??」

 

 恐らく楓……メイプルと一緒だからだと言う言葉を飲み込んで何でもないと伝えておいた。カナデがメイプルの事をどう思っているかはある程度予想はついているが、それを口にするのは自分の役目では無いと考えて一旦思考を放棄した。

 

「理沙……愛してる……」

「急に何?? ってか、私理沙じゃないよ」

「理沙と付き合いたい……早く返事したい……」

「じゃあ早く返事すれば良いじゃん、お兄ちゃんが一言理沙に好きって言えば済む話でしょ?」

「断られたら嫌だな」

「そんなことある!?」

 

 好きだと告白した相手に好きだと返事されてごめんなさいなんて返答があるか? 楓は昔から理沙と紅葉が両想いなのを知っているので、紅葉の解答は意味不明である。

 とりあえず楓は年頃の男女というのもあり、男である紅葉に質問してみる。

 

「理沙と付き合ったらどんな事したい?」

「楓と3人で手を繋いで一緒にケーキ屋でケーキ食べて……」

「何で私もいるの!?」

 

 紅葉曰く楓と理沙が居るからこそ日常だと話している。確かにさっき寂しいとは言ったが、そこまでして自分の事を考えて欲しくもない。

 

「お兄ちゃん、理沙と付き合ったら2人っきりでデートしよう」

「え? お前と?」

「理沙と!!」

 

 楓はまだ死にたくない。理沙が紅葉と付き合ったら今までのリミッターが解除されて8割ヤンデレになる事は目に見えていたので、ユイとマイみたいに命を捨てるようなアピールは紅葉にはしない。

 

「私はまだ死にたくない!」

「何で死ぬとか出てくんの?」

「ユイやマイみたいに命を捨てる事もしない!!」

「何の決意表明? ってか何でユイとマイ?」

 

 本条紅葉は気づかない。理沙にしか目が行ってないせいで、ユイとマイが尊敬とかを突き破る以上の想いを彼に抱いている事を、彼だけは気が付かない。ちなみに理沙がめっちゃ警戒してるのは本当に知らない。

 楓はとんでもなく理沙以外には鈍感な紅葉に対してため息を吐いて、そのまま兄とお風呂を入れて満喫したのだった。

 

「ねぇ……カエデ?? マタモミジトオフロハイッタッテホントウ??」

「私はまだ死にたくないです! はい!!」

 

 因みにその翌日、また紅葉が口を滑らせたせいで理沙がブチギレしたのはいうまでもない。

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