妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
皆さん報告ありがとうございます。
「コウヨウがいない……コウヨウがミィに浮気した……コウヨウが裏切り者になった……」
「お兄ちゃん大丈夫かなぁ?」
「師匠なら大丈夫ですよ」
「コウヨウさんだから負けないです!」
【楓の木】の本拠地に帰ってきた一向。そこにはコウヨウの姿はいなかった。その理由が、彼が【炎帝の国】と共闘してミィ達を助けに行ったせいである。
元々メイプル達は、【炎帝の国】が他のギルド達に滅ぼされかけているところに混ざってオーブ回収などを漁夫の利していたつもりだったのだが、帰り際にコウヨウが吠えた。
「なんか嫌だ! むしゃくしゃする!」
「急にどうしたのお兄ちゃん!?」
「あのままミィさんのギルドが滅ぼされるのを見るのは心が痛い……メイプル許せ!」
「ちょ、お兄ちゃん!?」
「あれ? コウヨウどこに行くの?」
「ミィさんに協力してくる!! サリーはメイプル達と先に帰っていろ!」
「は?」
そう言ってコウヨウは一時的ではあるが、【炎帝の国】の一員として、喧嘩を売りに行ったのだった。そして現在【楓の木】メンバーは出て行ったコウヨウについて話をしていたところだった。
「コウヨウのやつ……サリーを放っておいて他の女を助けに行くとは……武士の風上にも置けないな」
『武士じゃねぇです』
「カスミ、僕はコウヨウと会ってからそんなに経ってはいないけど、彼がサリーを置いて行ってまで他の女性の元に行くなんて事はしないと思うんだ。武士だからね」
『武士じゃねぇよ』
「そうねぇ、コウヨウ君から聞いてたからこの際言ってしまうけど、彼はサリーちゃんの事が大好きなのよ」
『イズさんの言う通りです』
「カナデの言う通りだ、あそこまで真剣にサリーちゃんの事を想っているコウヨウが、もっと言うと妹のメイプルがいるのにも関わらず、急に【炎帝の国】の味方をするなんて言うか?」
『クロムさん、ごめんなさい。今味方してます』
「そ、それは……だが、行ってしまったのは事実だろう!」
『すみませんでした』
「カスミ、お兄ちゃんは悪い事しないよ」
『メイプル、お前だけは俺の味方だ……嬉しいよ』
「というか、コウヨウはそろそろメッセージチャット送るのやめない? 送る暇あるなら戻って来てよ……」
『すまないカナデ、今20人くらいに囲まれてる』
「「コウヨウさん(師匠)が危ないです!?」」
『ユイ、マイ。戻ってくるよ。必ず』
彼の事情を知らないためにコウヨウが【炎帝の国】に行ったと泣いているサリーをカスミは慰めているが、メイプルは真剣に伝えた。コウヨウは誤解が無いようにとチャットでなんとか宥めようとするが、彼も普通に忙しかった。
「お兄ちゃんはきっと、お兄ちゃんの考えがあるから。私達を裏切るような事はしないよ。みんなで今はゆっくり休もう」
「メイプル……」
「サリーも安心して良いんじゃないかな? 帰ってきたらちゃんと聞こう。私たちが喧嘩してる時にお兄ちゃんが私たちの意見を聞いてくれたように、今度は私たちが、お兄ちゃんの意見を聞いて、仲直りしようよ」
「グスッ……うん……そうだね……」
『サリー、泣かないでくれ』
「いや、お兄ちゃんのせいでしょ……」
結局コウヨウの想いは完全に理解は出来なかったが、【楓の木】はコウヨウを信じて待つ事にしたのだった。
☆
「コウヨウ! 頼んだ!」
「任せてください……お前らよく聞け! 俺は【炎帝の国】所属のコウヨウだ! 貴様らは俺達を滅ぼすつもりだろうが、その前に俺が貴様らを斬り刻んでやる!!」
「いつの間にかコウヨウが私達のギルメンになってるのだが……」
「ノリって言うのはこうして作るものですよ」
「とりあえずチャット打ちながら会話するのやめません??」
ミザリーはそう言うが、コウヨウはチャットを打つ手を止めなかった。チャットを終えてから、攻めてきたプレイヤーを大量に斬り刻むコウヨウ。指示を出しているのは【楓の木】であるメイプル達ではなく、【炎帝の国】のミィである。彼が本気で立ち回る事で、【炎帝の国】を滅ぼそうとした他のギルドが逆に滅ぼされかけている。
「と、とんでもない強さだね……コウヨウ」
「コウヨウさんのおかげでかなり楽になりました」
「気にしないで下さい。ムサシ、帰ったらみんなに謝るからさ、今は黙って力貸してくれ」
「キュルルン!!」
「それにしても……なんで私達を助ける?」
【楓の木】だけでなく、ミィですらも疑問だったコウヨウの行動。彼はメイプル達の呼びかけで、自分のギルドに帰ると言ってから数分後、すぐに戻ってきた。それが本気で分からない。戻ってきたと思えば、自分達以外に刀を向けて、ミィの仲間以外を叩き斬ってくれたのだ。
「このまま放置すれば私達は勝手に壊滅する。まぁ、上位はキープ出来るがな。それでも、仮にお前が助けようがなかろうが、私たちの順位は【楓の木】より低いままだし、お前にとってなにも良い事はないだろ?」
「まぁ、正直何一つメリット無いですね」
「ならどうして僕達を?」
「ミィさん、この前釣り場で会った時俺とフレンド登録したじゃないですか」
「ああ、あの時か……確かにしたが、それがどうした?」
「普通に友達が落ち込んでる姿見るの嫌なんで」
「は?」
コウヨウ曰く、この行動はミィに暗い顔をしてほしく無いからという理由である。もしもこのまま【炎帝の国】が滅びても順位は上位キープで終わる。
それでも、この状況で素直にボコボコにされて滅びてしまうと、【炎帝の国】は上位になっても、顔は暗くなるはずだ。ギルドマスターであるミィも自らの責任を強く責めるだろう。
それならば最後くらい、どうせ滅びるなら【炎帝の国】の全力を尽くして今攻めてくるプレイヤーを少しでも叩きつぶしてやる事で、ミィ達の顔も立てられるだろう。そこでコウヨウは手を貸した。
「別に俺が【炎帝の国】のためになんて考える気は無いですけど、【炎帝の国】のメンバーが少しでもこうして防衛をしていけば、他のプレイヤーはこう思うでしょう。【炎帝の国】のほとんどが、ガッツのある人であり、その全員がミィさんにスカウトされたと。そう考えてくれる奴がいれば、ミィさんを軽蔑せずにしっかりとついて来てくれるでしょ?」
「コウヨウ……お前、妹や幼馴染のいるギルドを差し置いて、たかがフレンド登録をした現実で会ったことのないプレイヤーを助けると言うのか?」
「そんなの言ったらユイやマイだって現実で会ったことありませんよ」
でも、俺は彼女達と一緒に戦ったと、コウヨウはミィに伝えた。自分の釣りに付き合ってくれたのなら、戦いくらいは付き合うと、彼はミィに真剣な目で伝えた。それを見たミィは驚きながらも、少し照れながら、お礼を言って、的に魔法を発射する準備をした。
「そうか……お前は……恐らく現実ではとても優しいのだな」
「優しいやつは女の腹を殴ったりしません」
「え? 女の子のお腹殴ったの!?」
「【集う聖剣】のフレデリカって人……サリーを傷つけようとしたから殴ってから叩き潰した」
「叩き潰すって……穏やかじゃないですね……」
「ものは違いますけど、本当に叩き潰すという事をなんなら見せてやりますよ……『秋刀魚』、『太刀魚』【ダブルスタンプ】!!」
そういいながらコウヨウは2つの刀から2匹の魚を装備してスキルを発動。この日、【炎帝の国】の本拠地にて、超巨大クレーターが10つ程発生した挙句、100程のプレイヤー達が彼のSTRの餌食になったという伝説を残したのは、ミィ達が知っているのである。
「ほ、本当に魚だ……」
「あぁ……魚だな……」
「お魚……ですよね? どうして地面に穴が開くんですか……?」
「魚だからです」
わけも意味も全てわからん。そう思ったミィ達であった。因みに他のプレイヤーからしたら魚で殴られて即死している自分達の実力にあれ? 俺たち弱いの? と疑問しか残らなかったという。