妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「お願いします!」
「お願いします!」
「だから何でだよ」
超巨大蛇を斬り刻んだ後、普通に釣りを仕切り直したコウヨウは双子の姉妹であるユイとマイにお礼を言われていた。
最初は大した事ないのでと軽く返したのだが、妹のユイが何を思ったのか、コウヨウに鍛えて欲しいと訳の分からない願いを伝えたのだ。
急な話で驚いたコウヨウだが、姉のマイも少し考えて、お願いしたいと伝えた。
勿論コウヨウの答えはNOである。彼からすれば知らない人間に弟子入りするな、ネット犯罪とか危ないだろという理由で答えを返したが、ユイとマイはそう言ってくれる人は優しい人だと言って聞く耳を持たない。
急すぎると伝えると、自分達も始めてそこまで経っていないと伝えられたので彼女達の弟子入りの視点からしても急なのは同じだと返された。
「別に俺じゃなくても良いだろう」
「私達、メイプルさんに憧れてて……STRに極振りしたいんです!」
「知らない、知らない、俺は何にも……何だって??」
ユイが元気に答えてくれたが、コウヨウからすればメイプルという名前に注目した。もし、彼女達が言っているメイプルが自分の実の妹であるのならとんでもない話である。
極振りだけしてしまうと最初は問題ないが、段々とモンスターの個体値とプレイヤーのステータスバランスなどで戦闘が上手くいかず、データをリセットしたり、最悪つまらないと引退するプレイヤーになってしまう。その覚悟を持ちながら彼女達は真剣にSTRに極振りする気であった。
そんな極振りの成功例は実の妹であるメイプルしかコウヨウは知らないため、乗り気ではない。
「はっきりと言うが、メイプルになるのは無理だ」
「それでも、やります」
「憧れだけじゃどうにもならん」
「私達はメイプルさんに憧れてますが、いつか超えたいです」
「正気か?」
「「はい!」」
双子の意思は変わらなさそうである。正直、誰に憧れるのは自由ではあるが、それが実の妹である可能性が高いのならコウヨウも無視はできなかった。
「メイプルにはなれない。それでも、近づく事は可能かもしれない」
「あるんですか?」
「え? それ聞くの?」
双子は真剣だったが、行き当たりばったりの目標だったようだ。コウヨウは少し考えて伝える。
「極振りの基礎をしっかりやる。そして、STRが倍になる装備を攻略サイトとかで見て手に入れれば、メイプルまでとは行かないが少しでも近づける可能性はある」
この世に二分の一になる装備だのステータス変化がある装備が沢山あるのならSTRを10倍にするくらいのスキルはあるだろうと考えているコウヨウなので、憶測ではあるが可能性は0ではないと伝える。
「ダメージ0は何倍にしても0だが、0.5でも1でもあれば何倍かにしたら5桁もありえる。もしかしたらこのゲームは可能性の獣かも知れない」
「可能性の獣ですか?」
「多分な。あいにく、幼馴染と妹がこのゲームすこぶる強くてな、会話だけではあるが、コツを教わっていた。少しくらいなら協力しようか」
コウヨウの言葉に双子はパッと笑顔になって、頷いたのだった。
☆
「ここってなんですか?」
「スライム増殖エリア。昔は使われていたけど今は人もいない……らしい。掲示板で見た」
「スライムくらいなら倒しやすそうだね、お姉ちゃん」
「最悪俺が斬るから大丈夫だ」
コウヨウは自分もやってみたスライム増殖エリアにユイとマイを連れてきた。軽く手本を見せて、スライムが増殖することを確認すると、双子に順番にやってみろと伝える。
「えっと……貴方はどれくらいやっていたんですか?」
「そういえば名乗ってなかったな。俺はコウヨウだ。ここは……24時間くらい粘ってたかな?」
「に、24時間って一日中ですか!?」
「1日8時間を3日間斬ってた。レベルは10くらいまで上がったぞ」
「凄い集中力……結構ゲームはされてたんですか?」
「いや、妹も俺もあまりゲームはしない。幼馴染に誘われてな、始めたばかりだから本格的に熱を持ったのはこのゲームが初めてだな」
「初めてで……あの強さですか……!?」
「いや、ゲームは初めてではないが……」
コウヨウの言葉に呆気に取られる2人。流石にそこまで集中力は無いので、少し時間を決めてレベリングをする事になったのである。
因みにコウヨウは釣りをし続けて、釣りのスキルレベルが上がってくれたと喜ぶのは別の話。
☆
「大蛇王がやられたぞ!?」
「大蛇王? 確かごく稀に第一層の草原で出るやつだろ? HPとか3本くらいで設定して初心者にトラウマ植え付けようとしたはずだけど」
「倒したのは誰だ、モニターを写せ!」
「コウヨウというプレイヤーみたいですね。というか何で【極天二刀】と【呪いの首輪】持ってるの!?」
「何だそれ?」
「【極天二刀】ってあれだろ? テストプレイの時、別のゲームの影響で二刀流のプレイヤーが結構いたから面白半分で実装したスキルだろ?」
「でも、みんな二刀流が使いずらいからって言って……あれ? なんでコレまだ実装されてたんだっけ??」
「お前が思い出せないなら誰も分からんって……なんていうか使いこなせるなら運がいいんだな」
「そうとも限らんな。【呪いの首輪】は……あれ? なんだっけこれ?」
「なんで誰も覚えてないんだよ!?」
「一応外せる鍵はあるはず……多分。まぁ、大丈夫だろ」
「というかアイツ何者なんだ……本当に初心者か?」
「モンスターを殆ど一撃で……しかも、必ず一回は攻撃を刀で受け止めながら、一つ一つ冷静に対処している……」
「初心者でそんなことある? まるで古参の大楯使いみたいだな」
「まぁ、様子見でいいんじゃないですか? そんなプレイヤーより、今はメイプルをどうにかするのが先だと思います」
「「「「それな」」」」
運営側の男達がそんな会話をしているのはつゆ知らず、コウヨウは双子の姉妹とパーティを組む事になったのである。