妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と己の流儀

「コウヨウ、頼む」

「嫌です」

「お前ら……これで何回目だ?」

「「15回目だ(です)」」

「コウヨウはそろそろ許可してやったらどうだ?」

「絶対に嫌です」

「メイプルからサリーがお前に負けたと聞いた。そこまでの強さなら俺もお前と戦ってみたいんだ」

「メイプルが大嘘ついてますね。俺は逃げただけです。ってか俺は貴方と戦ったでしょう」

 

 コウヨウは男のお願いを全力で断りながら釣りをしていた。それに対して一度くらいは問題ないだろうと伝える、それを傍観しながら釣りをしている女。即ち3人が湖で釣りをしていた時の一幕である。

 

「お前に負けたのがかなり悔しい。【聖剣】と言われる俺もそのレベルに到達した後、ここまで本気で戦って普通に負けたのはお前と戦った時くらいだ」

「自分のギルドメンバーと戦えばいいでしょう。練習場とか使って。ミィさんも同じです」

「私に関しては他の奴らは相手にならん。マルクスやミザリーは強いが刀などで戦うには物足りないからな……まぁ、1人剣を使うメンバーはいるが、コウヨウには絶対に勝てない」

「俺も確かにドレッドやドラグは強いが、コウヨウ程ではない。そう俺の口から言ってしまうことが悔しいがな」

「私もだ」

「その物言いに物言いなんですけど」

 

【集う聖剣】のギルドマスターであり、【聖剣】の二つ名を持つNWOトッププレイヤーペインは、ただの釣り師であるコウヨウに戦いを申し込んでいるのである。因みにもう1人の女は【炎帝の国】ギルドマスター、【炎帝】のミィだ。

 

「一度だけでいい。俺ともう一度剣を交えてくれないか?」

「好きで人を斬るのはただのバーサーカーです」

「コウヨウは何故そこまで戦いを避けるんだ?」

 

 ミィの言葉にコウヨウはハッキリと嫌だからだと返した。自分は人を斬るのは苦手だと伝えたからだ。

 確かにNWOはゲームだからモンスターだけでなく、対人戦も面白い要素である事は理解しているつもりだ。それでも、現実で人を斬るのはいけない事だと昔から教わったのもあるし、何ならサリー以外誘い以外ゲームには触れてなかったからゲームで人を斬るというのはどうにも抵抗があるのだ。

 

「たまたま対人戦のイベントだから斬りましたけど、普段は報酬も無いんですから斬る必要がありませんよ」

「確かにお前の言い分も理解は出来るが……コウヨウ、お前は俺たちみたいにもっと強くなりたいとは思わないのか?」

「全く。釣りしたいです」

 

 コウヨウにとってNWOの世界でやりたい事は、普通にモンスターを倒して、素材を売って、お金を稼いで、装備や釣竿買って、釣りをして、魚を売ったり食べたりして、要はのんびりとスローライフがしたかったと言う。

 

「強くは確かになりたいとは思いますけど、サリーやメイプルと仲良くゲームが出来るくらいの強さになれればそれでいいです」

「もしメイプルとサリーがNWOの頂点になったらどうするんだ?」

「その時は諦めて釣りしてます。姫プレイまではいらないですけど、簡単なクエストに連れてってもらったり、暇そうにしてる時は釣りに誘っておけば良いかなと」

 

 毎日彼女達と遊べなくても、たまに3人で遊んで少しでも彼女達が笑ってくれれば兄として、恋人としてそれでいいと伝えた。

 

「別にペインさんやミィさん……メイプル達もそうですけど、ゲームで人を斬る事に異議を唱えるとかはありませんよ。それに味を占めて現実世界で……なんて考えたらぶん殴りますけど」

「そう言えばうちの魔法使いに腹パンした仇を取れなかったな」

「アレは向こうが悪いです」

「あの話マジなやつだったのか……」

「ふむ……俺はどうしても戦いたいんだがな……お前のようなプレイヤーが……正直勿体無い」

 

 少し考えて、ふとペインは気がついた。要は人を斬らなければいいんだなとコウヨウに伝えて、1つ武器を彼に渡した。

 

「これ……『木刀』ですか?」

「ああ。これで稽古というのはどうだろうか? もちろん、フレンドリーファイアを無効にしてノーダメージでだ」

「なるほど、これならコウヨウも文句は無いだろうな。斬らないし、ダメージも無いなら私も安心してお前に突っ込んでいける」

「はぁ……ペインさんはまだ剣使いですからアレですけどミィさんは魔法では?」

「私だって剣を使わないといけない事があるからな。やっておいて損はないだろう。例えば……どこかの二刀流プレイヤーに【炎帝】を無効化された時とかな」

 

 そう言ってミィは遠い目でコウヨウを見つめる。彼は苦笑いしながらも、流石にここまで対策されると断るのも失礼だなと思ったので、しかたなくだが誘いに乗る事にしたのであった。

 

「とりあえず後30匹釣ったらやりましょうか。それまで釣りに付き合って下さい」

「そ、そんなに釣るのか!?」

「いや、ミィさんのギルドメンバーが多すぎるんですよ。今日2人が俺と釣りしてるのはギルドのみんなに魚料理振る舞って前のイベントの労いをしたいって頼んできたからじゃないですか……」

「うっ……それは……すまない」

「まぁまぁ、俺も手伝うからさっさと終わらせよう。コウヨウ、約束は頼んだぞ」

「分かりましたよ……」

 

 ☆

 

「あの……大丈夫ですか?」

「「まだだ!!」」

「いや……あの……」

「頼む、もう一度だ。このまま一本も取れずに引き下がる訳にはいかない」

「もう15本目なんですけど」

「はぁ……はぁ……魔法しかあまり使ってないから……お前達より息が切れるのはさておきコウヨウは何故そんなに涼しい顔をしてるんだ……?」

「刀使いなので」

「まさか一本も取れないなんてな……」

 

 関係ないだろとミィは疲れながら恐怖した。アレから場所を移動して、誰も来ない【集う聖剣】側の練習場を借りながら稽古という名の戦いが始まった。ミィとペインが木刀を使いながらコウヨウに迫るが、この15回ずっと彼に一太刀入れる事は出来なかった。当たるギリギリで避けられたり木刀で止められたりしてコウヨウはノーダメージである。

 

「コウヨウ……まさかここまでの実力とは……メイプルが嘘をつく奴ではないし、恐らくお前の自覚無しか」

「魔法とか撃たれてたら無理です」

「その口ぶりは刀同士なら絶対勝てると言ってる風に聞こえるが?」

「少なくともミィさんは大丈夫そうです」

「一発【炎帝】撃ってもいいだろうか」

「跳ね返して良いなら」

 

 因みに首輪も外れてないので二分の一ステータスでもペインとミィの攻撃を木刀一本で受けている。因みに彼もペインやミィに当てる事はせず、ペインの木刀を遠くに吹っ飛ばしたりミィの木刀を叩き落としたりしていた。

 

「二刀流プレイヤーとは聞いていたが、木刀一本でも強いんだな」

「元々刀使いは一刀流ですからね」

「二刀流の理由は何なんだ?」

「【極天二刀】のせいで、二刀流にしないと1.5倍にバフかからないからです」

「つまり仕方なくか」

 

 ミィの言葉に頷くコウヨウ。それでも彼は自分自身で気がついている。ペインやミィの木刀を止めたり弾いたりしてるのはステータスのSTRに依存して個人では簡単操作をしているだけである事を理解している。

 

「だからこそ俺はペインさんやミィさんみたいな強さはないんです。だから俺を相手するのは絶対に間違ってます」

「それが、お前の考え方か」

「ええ。だから……よっと!!」

「うわっ……しまった……また首を取られた」

 

 コウヨウはペインの首に木刀を向けて伝えた。もう自分と勝負するのはやめろと。ミィも突っ込んでは来るが木刀を無視して、お腹辺りに足を忍ばせて片足で立ちながら2人にトドメを刺す姿勢に変えた。

 

「うっ……流石の私も魔法を使わないとお前に近づけん……」

「俺はただの釣り師です。本気で決闘やるならメイプルとかサリーとか……とにかく他を当たって下さいね」

 

 結局ペインやミィのトッププレイヤーが2人がかりであっても彼を止める事は出来なかった。だからこそペインは考える、彼をこのままにするのは流石に勿体ない……そんな思いだけではなく、あわよくば彼と協力して大きな事を成し遂げたいとそう思ったのであった。

 

「ペイン、コウヨウをそのままには私もしたくないぞ」

「そうだな、アイツを本気にさせていつかNWOの頂点まで一緒に上って行きたいと、俺は本気で思っている」

「私もメイプル達に伝えておこう。アイツは絶対に手放してはいけないプレイヤーだとな」

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