妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と喧嘩(後半)

「【毒竜】!!」

「危ねぇ!? 死ぬ死ぬ!!?」

「避けないでよ!」

「避けるわバカ!」

「もう一回! 【毒竜】!!」

「ひ……【毒竜】!!」

「うわ、相打ち!?」

「威力はほぼ同じか……」

 

 決闘承認後秒で即死級の毒スキルを発動するメイプルに対して、コウヨウはムサシにライドオンして毒を避ける。一回だけ相打ちさせたが、それだけではメイプルはそのまま攻撃を仕掛けてくる。本当は了承したく無かったが、メイプルからの殺気やギルドメンバーの目もあったので、決闘しながら事情を聞こうと考えた。

 だが、話し合いなどメイプルはする気もなく、何も言わずに秒で攻撃を仕掛けてきた。メイプルは本気で兄のコウヨウを倒すために戦っている事など彼も分かっていたが、なんか言ってくれ頼むと彼は思った。

 

「【パラライズシャウト】!!」

「【魔法削除】!!」

 

 地面にいるならまだしも、ムサシに乗る事によって宙に浮かぶコウヨウに【毒竜】は通じない。だから麻痺にしようとしたのだが、タイミングよく彼にスキルを封じられた。

 

「鞘に収める瞬間さえ分かれば斬れる」

「流石お兄ちゃん……隠しておいてもAGIで防がれるのかぁ」

「割とお前は昔から分かりやすいからな」

「【パラライズ……」

「【魔法削除】」

「ちぇ、やっぱり無理か……」

 

 仮にメイプルがどれだけ速く、隠しながらスキルを使っても、コウヨウのAGIで高速無効にされ間に合わないのは確実。それならば、防御特化のメイプルが攻撃に転換するしか無かった。

 

「【機械神】!! 【全武装展開】!!」

「レーザービームもムサシなら避けられるぞ」

「【サイコキネシス】!!」

「【魔法……いや、俺が対象じゃなっ!?」

「きゅる!?」

「やった! やっぱり効いたよ!」

 

 メイプルがスキルを唱えた瞬間、ムサシが体勢を崩した。【サイコキネシス】はコウヨウに無効化されて効かないが、モンスターには効く。急に体勢を崩されたムサシはそのままコウヨウを落とした。

 ようやく地面に足をつけたコウヨウに対して、メイプルは銃口を向ける。その瞬間。

 

『すまない、油断した……主! 二天一流は兵法だ、考えろ、さすればこの力は主のものだ』

「いやどういう事!? ってかお前また喋ってんのかよ!?」

「お兄ちゃん……誰と話してるの?? まぁいいや絶好のチャンスだしね……【全武装展開】!!」

 

 かつてギルド対抗戦の際に聞いたおっさんみたいな声、それがムサシの声だと分かるのに1秒もいらなかったが、言葉の意味を理解するのは難しい。

 

「兎に角ヤベェ……【封印解除】! 【極天二刀】! 【豪傑にして英雄】!!」

「いっけぇぇぇぇぇ!!!」

「レーザービームも知った事かぁぁぁぁ!!」

 

 メイプルの【機械神】により、放たれた光線をコウヨウは刀2本でそのまま受け止めた。

 

「いや痛いわ!! 刀で抑えられても止められねえし俺のHP減ってるんですけど!?」

「うわぁ……普通に止められてるよ……もうなんなのさお兄ちゃんは……」

 

 ただ驚いたメイプルではあるが、恐らくここに他のプレイヤーがいたらドン引きどころかゲームの範囲を越えすぎて運営に通報されていただろう。

 それくらいありえない事を、この兄妹はしでかしているのだ。例え【楓の木】メンバーでも、口は開けど、恐怖で心は閉じたに違いない。

 

「ぐぅぅ……流石に斬れるようなものではないか……ってあれ?」

 

 メイプルの【機械神】レーザーを受け止めながらコウヨウは考える。これ止められるなら多分斬れるんじゃねと結論付けたのはすぐである。

 

「大きいなら……分ければいい……?」

「いくらお兄ちゃんでもこれは大丈夫でしょ! いつまで止められるか分からないけど……流石に私の勝ちだね!」

「作戦変更だ! 【魔法反射】!!」

 

 勝ち誇ったメイプルに対して何かを思いついたコウヨウは【魔法反射】でメイプルのレーザーの一部を斬り取って別の場所にかっ飛ばした。

 

「え? レーザーの一部を斬って反射で飛ばした……?」

 

 それを一回、二回、三回、四回を超えて何回も何十回もレーザーを斬り刻む。

 

「反射反射反射反射反射反射反射反射反射……反射ぁぁぁぁぁ!!」

「嘘!? レーザー光線が……細かく刻まれて……」

「レーザーなんて微塵切りだ!! 俺は釣り師だが料理も出来るんだよ!!」

「料理とこれは関係ないでしょ!?」

 

 そう言ってコウヨウはメイプルが発射したレーザーを……全部斬り刻み消滅させた。まさかの最高火力であるレーザーを訳の分からない刀捌き技術で斬られたのだ。メイプルも流石にドン引きである。

 

「嘘……【機械神】のレーザーが消えちゃった……」

「お前の目的はなんだ!? サリーのために怒ってるのは分かっているが、サリーは俺に何を望んでいるんだ!」

「サリーはお兄ちゃんの事が大好きなんだよ!」

「そんなの俺だってサリーが大好きだよ!」

「じゃあ、サリーとキスして!!」

「ゴフゥ!!?」

 

 HPは減ってないが、精神力は減ったコウヨウ。意味が分からない。いや、意味は分かるがそれをしないだけで何が悪いのだとコウヨウの思考は停止した。そんな彼にメイプルは続ける。

 

「サリーはお兄ちゃんの事が大好きなの! だからキスくらいして欲しいってずっと泣いてたの! お兄ちゃん男なんだからそれくらいやってよ!」

「無茶苦茶……って訳でもないよな……」

 

 メイプルの訴えとサリーの想いに少し悩むコウヨウだが、昔からの幼馴染で両想いであるのならば早いうちにキス1つしてても違和感は無いだろう。

 どうやらサリーは恋人として真剣にコウヨウを愛したいらしい。そんな事は重々承知だが、サリーがそこまで自分と愛を育みたいと思っている事に驚いた。

 昔からおばけやゾンビなどに耐性がないサリー、メイプルと喧嘩して2人で泣いていたサリー、現実世界でそんなサリーの事を守っていたのはコウヨウである。

 サリーはいつまでも彼の事で頭がいっぱいだった。彼と恋人になりたかったのだ。せめてゲームの中くらいはキスの一つはしたいと本気で思っていたのだ。

 

「サリーはね、お兄ちゃんの事が大好きなの。お兄ちゃんに嫌われたく無いの。お兄ちゃんが何を言っても、サリーはお互い対等で愛し合いたいの。そんな乙女心を分からないお兄ちゃんなんて……妹の私が食べるしかないでしょ!!」

「【暴虐】!!」

「粛清とか教育ならわかるけど食べるのは全く理解できねぇよ!?」

 

 途中メイプルの無茶苦茶な理論もあったが、【暴虐】によって化物に変化したメイプルはそのまま彼を襲う。彼はなんとか走って逃げるが、さっきの【機械神】を受け止めたせいで、割とこれ以上のダメージを食らえない数字まで減っていた。

 だからこそ彼は、決意する。目には目を、歯には歯を、化物には化物をと。瞬間、すぐに刀を入れ替えて、赤黒い呪われた刀を1本取り出す。

 

「大怪獣決戦シリーズ第1章だ馬鹿妹。【呪龍 ミラ・マキナ】!!」

 

 そして彼は黒龍になった。ここから先はもはや兄妹喧嘩というより天地を揺るがす世界滅亡レベルの大怪獣バトルである。恐らくこれを見た時、あのペインでさえも、【集う聖剣】含む全プレイヤーは絶望に襲われるだろう。

 龍と怪物はお互いに手を組み合わせて、肩を噛みちぎる。地面が揺れて、裂けて、決闘のステージがボロボロになり、もはや神々の戦いに似ていた。

 

「お兄ちゃぁぁぁぁぁん!!」

「メイプルぅぅぅぅぅぅ!!」

「「いただきまーす!!!」」

 

 文字通り、物理的にお互いを喰らい尽くした兄妹は、そのまま元の姿に戻る。そのままお互いに一定の距離を保ちながら、メイプルは彼に告げた。

 

「来て、お兄ちゃん」

「俺降参しようかな……疲れた……」

「どちらかが負けないとここから出られないから」

「は? あれ? 降参ボタンがない……」

「サリーが言ってたんだけど、最近NWOのバグで決闘中に降参出来ないバグがあるらしいよ」

「計ったなお前!?」

 

 まさかのバグのせいで普通に逃げられなかった。いや、正直今の状況とかメイプルの想いとかサリーが何考えてるのかとかあったので逃げの一手は正直冗談みたいなところはあったけれども……けれども!! 

 

「ってか……お前の防御なら俺の攻撃とか効かねぇんじゃねぇの?」

「お兄ちゃんだから多分私のVITも貫くでしょ。だからどちらかが死ぬよ」

「物騒だなぁ……ゲームとはいえ恋人のサリーや実の妹のメイプルも殺したくはないんだけど……」

「それじゃあ一生一緒にここで過ごす?」

「そんなヤンデレみたいな事を……」

「恋人までは行かなくても正直サリーと同じくらいお兄ちゃんを愛してるから別にいいかなって」

「俺はサリーを愛してるからお前を斬る事にするわ」

「私の愛を受け止めるどころかぶった斬る気!?」

「まぁ、サリーの方が好きだし……それに……いや、カナデの話は放っておくか……」

「へぇ……私という女の子がいるのにサリーかぁ……よーし! 絶対お兄ちゃんを倒すよ!!」

「そこを退けろバカ妹。俺はサリーに会いに行って……き……キ……キス……を……します。キスを……しましょう……リサリーさん」

「顔真っ赤だよ!? しかも本名とか混じってる!?」

 

 ツッコミながらメイプルは自慢の大楯を彼に向けて、VITを極限まで上げて成長した自分をアピールする。コウヨウも二刀流に戻して【極天二刀】に首輪無し、そこに、ほとんどないHPを半分まで削り【豪傑にして英雄】を発動。

 

「私の本気とお兄ちゃんの本気、どっちが強いか見てみたい!」

「もう、話は終わっただろ。後は俺がサリーに……き……キスして終わり……じゃねぇか」

「だから顔真っ赤だよ!? 本当にそういう話題弱いよね!?」

 

 うるさいと言いながら刀を鞘に収めるコウヨウ。全ての準備は整った。後は、一撃通るか通らないかの真剣勝負。

 

『主、折角の妹君が誘ってくれたのだ。私からすればまだひよっこだが、二天一流で決めてみたらどうだろう?』

「分かったよ……一撃勝負だ、行くぞ……メイプル!!」

 

 そう言ってコウヨウは刀を抜く。メイプルとしては【居合極】が出るものだと思っていたが、そうでは無いらしい。

 

「【二天一流】これが構えだ……【呪斬】!!」

「え!? 消え……!?」

 

 本当に一瞬、彼はこっそりと【超加速】を使って高速移動をした。急にコウヨウが現れたと思って盾を構えた瞬間それを思い切り弾き飛ばされた。同時にコウヨウも反動で宙に浮かぶ。それをチャンスと思ったメイプル。

 

「お前に正統法は効かないからな……大楯をかっ飛ばすことにしたよ……」

「ぐっ……!? でも、宙に浮いたら【居合極】は使えないよね……【毒……」

「【居合極】!!」

「嘘!? なんで……!?」

 

 弾き飛ばされた盾を構わず、メイプルは反動で宙に浮いた彼に【毒竜】を出そうとしたが、彼はすぐに刀を鞘に収めて【居合極】を繰り出す。【居合極】は本来地面に足が付いていないと発動不可能なスキル。メイプルもコウヨウもそれを分かっていた。

 だが、その対策をしているのはやはり本人のコウヨウである。一体何故かとメイプルが思う瞬間。足場が宙から見えた。

 

「ギュルル!!」

「む、ムサ……シ」

「うらぁぁぁぁ!!」

 

【サイコキネシス】が切れたムサシが何も無い場所から、少し太い刀の形で現れて、彼の足場になっていた。それを気づいた時には既に、メイプルの周りに数えきれない程の斬撃エフェクトが舞い散ったのだった。

 

「う……あああぁぁぁぁぁ!!!??」

「悪く思うな。兄妹喧嘩はどっちかが謝る(敗北する)まで続くんだからな」

 

 結局メイプルを早い段階で切り裂いたのはペインだったが、メイプルを粒子にまで変えたのはコウヨウのみである。

 

二天一流(にてんいちりゅう)】(仮)

 通常攻撃やスキル攻撃に関係無く発動する。全知全能の知恵と剣術が宿し時、相手を斬るとその実力に応じた斬撃が攻撃に追加される。無数の斬撃で相手は宙を舞う。

 相手は避ける事も出来ずにそれに飲み込まれるというが、未だに避ける手段が無い命中率100%スキル。

 プレイヤーの実力によって発動の有無があり威力や斬撃の数にも差がある。




 個人的Q&A

 Q.コウヨウ君強すぎませんか? 俺強展開がすぎると思います。

 A.本当はメイプルとサリーの間くらいの強さにしようとしたのですが、筆者が調合間違えてキメラにしやがりました。ただ、メイプル達と違ってダメージは普通に受けたり、苦戦はするので完全なる最強ではないです。
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