妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「コウヨウに会えない!」
「サリー、落ち着いて」
「ラーラーラー!!」
「歌わないで!? いや凄く上手いけどさ!?」
「コウヨウに捧げるレク……なんだっけ? レクリエーム?」
「レクイエムじゃない? ってかお兄ちゃん死んでないんだけど」
「じゃあ鎮魂歌」
「同じだよ!?」
そんな愚痴をこぼしたのはテスト終わるまでNWOプレイ不可だったアホ白峯理沙ことアホサリーである。幼馴染の本条楓ことメイプルと2人でNWOにログインしたのだが、どうしてもサリーは会いたい人がいるようで……
「それにしてもお兄ちゃん本当にどこ行ったんだろうね?」
「はぁ……第一層にいて、コウヨウってプレイヤー名なら分かるんだけど……」
「見当たらないね……そんなにここって広いのかなぁ?」
「うーん、でも普通会えると思うけど……」
2人が探しているプレイヤーはコウヨウ。つまりはメイプルこと本条楓の実兄である本条紅葉であり、サリーこと白峯理沙の幼馴染(ガチ)だ。
少し前にやっとハードが来たのでNWOゲームが出来ていると言われたのは分かったのだが、どこにいるか、何の武器なのかを全く教えてくれなかった。
メイプル曰く3日連続で8時間もプレイしてるならこのゲームにハマっているはずだと確信はあるが、本当に見当たらないのである。
現実でも聞いて見たのだが、実の妹であるメイプルが聞いても、実際見てのお楽しみだと口を割らなかった。
「全く、コウヨウったらせっかく誘ったんだから顔を見せるくらいしなさいよ」
「サリーよっほどお兄ちゃんに会いたいんだね」
「ま、まぁね、勧めたの私だし」
「昔からお兄ちゃんの事愛してるもんね」
「うん。そりゃ愛してるから……ね?」
メイプルの言葉に顔を真っ赤にしながら全力で叫ぶサリー、なぜ知っているかなんて聞いたところで無駄である。
幼馴染として、彼女の事を見てきたメイプルにとってはサリーかコウヨウに惚れている事などお互いの家族ぐるみで周知の事実だ。というか、サリーもメイプルにコウヨウ大好きと伝えたから逃げ場なんてない。
「だって紅葉が悪いじゃん! ずっと昔から私達に優しくてさ! お弁当も作ってくれてさ! 受験だって推薦確実だし、運動も出来ないわけじゃないし! これで惚れない女の子なんているの!?」
「逆ギレしないでよサリー……ってか、お兄ちゃん推薦だったの!?」
「突っ込むところそこ!? あぁ!! 紅葉ー! 私の虜にしてやるー!!」
「お兄ちゃん大変だなぁ……」
「コウヨウに告白したいです」
「なんで敬語?」
因みにサリーの言う通りコウヨウは優しい。口調は男の子特有の荒くて雑な感じではあるが、メイプルやサリーが悩んだり泣いたりしていた時は声色を優しく変えて頭を撫でて抱きしめてくれる。怒ったら怖いが。
お互いの親が居ない時は彼がお弁当やご飯を作りサリー達に渡しているし、勉強も実は推薦確定である。運動は平均だが下手ではないから問題ない。ただ、足だけはマジで速い。正直、メイプルもサリーも現実世界で彼が競走で負けたのを見た事がない程足だけは速すぎる。流石に日本記録とかは無理だが、陸上部だと言われても信じられるくらいには足が速い。実際は帰宅部だが。
基本打ちどころがあるといえばゲームが最初は下手くそな所くらいだ……あくまでも最初は、だが。
「私はお兄ちゃんのこと好きだけど惚れないよ?」
それは妹だからだろとサリーは全力で突っ込んだが、メイプルから一応ゲームの中だから紅葉もコウヨウだと伝えてあげた。現実の名前をそう易々と出すものではないのだ。
「はぁ、もういいや……コウヨウに会えないならログアウトしようかな」
「私よりお兄ちゃんをとるの!?」
「うん」
「酷くない!?」
サリーの冗談には聞こえない発言に対して突っ込んだメイプルであるが、結局第二回イベントまでレベリングを続ける事にしたのだった。
「コウヨウ……早く会いたいなぁ……」
「なんかサリーの会いたいって好意だけじゃない気がする……」
「戦いたいなぁ……本気で……」
「お兄ちゃん頑張れー……」
☆
「なんか寒気がする」
「風邪ですか? お大事にしてください……師匠が風邪を引かれたら私達の特訓してくれる人いませんから……」
「悲しい事言うなよユイ」
ユイの言葉にコウヨウは誰かいないのかと聞くが、極振りなんて基本誰にも相手にされないので頼んでも断られるし、そもそも待ってても頼む人が一切いない。
「私達は……孤独な存在なんですよ……儚いです」
「ユイってさ、もしかして俺より歳上?」
「なんでですか?」
「言葉のチョイスが凄いから。まるで昔のサ……理……幼馴染みたいな感じで」
「コウヨウさんの幼馴染ですか?」
「ああ……昔たまに言ってたんだ……『私のグリモワールは世界の崩壊を食い止める。それは遥か海の……深海に位置するアトランティスにあります。それを手に入れさえすれば……この世界は……』って」
「なんだかカッコいいですね!」
「だよなぁ、まぁ、妹も同じ事言ってたけど」
マイもユイもコウヨウも笑顔でカッコいいと言っているのだが、それはただの厨二病である。それを本人に言えばサリーが泣く、というか死ぬ。恥ずか死ぬ。
「師匠の妹さんと幼馴染さんに会いたいですね」
「多分誰も勝てないから戦う以外の選択肢ならいいぞ」
「そうなんですか……ちなみユイの言葉は漫画とかドラマの影響ですよ……ところで……」
──コウヨウさんは第二回イベント参加されるんですか?
「やらなきゃ駄目?」
姉のマイがコウヨウに聞くと参加しないといけないとそこそこ曖昧な返事が返ってきた。
妹と幼馴染には正体突き止めるから参加しろと念を押されているのもあり、参加だけして静かに釣りをするとのことである。正直自分は2人より弱いから誰にも会いたくない想いがあった。
「師匠戦わないんですか?」
「ゲームだろうが現実だろうが進んで人殺しはしない主義だ」
「人殺しって……ただのゲームですよ? イベントなのに何もしないんですか??」
「マイの言ってる事全然意味分かりません!」
「そんなに強いのに……師匠に物申します!!」
「俺はユイのその物言いに物言いなのだが……」
向こうから来るならやらないといけないが、こっちからは攻める気は全くないと今の理由に追加して伝えた。ちなみ、話しながらコウヨウが釣り上げた魚は50匹程。普通に釣りスキルが上がり続けていた。
「イベント参加しとけばワンチャン新しい装備くれるかもしれんしな。参加だけでもタダだからしておくけど、戦う気はないからな」
「「そんなぁ……」」
コウヨウの言葉に少し残念がる双子であった。そうして迎えた第二回のイベント。銀のメダルを集めて装備などと交換するイベントが始まったのだが……
「おかしい、何で俺の手元に金メダルが1枚あるんだ……」
イベントも終盤に差し掛かった時には、コウヨウは何故か10枚毎に変化する金メダルを1枚を持っていたのだった。
コウヨウ 現在プレイヤーキル数30人
「いや……なんでやねん」
「キュルルン??」
「ほぼお前のせいなんだが……」