妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「見つけたぞ二刀流、俺と決闘しろ」
「急に何なんだアンタは……」
「俺はシン。【炎帝の国】所属のシンだ。ミィやカスミから1番強いやつを聞いたらお前だと言われたから来たんだ」
「ふざけんなアイツら」
【炎帝の国】のメンバーであるシンという男にコウヨウは出会ったのだが、正直ほぼ全く知らないやつだった。本来ギルド対抗戦にいたらしいのだが、コウヨウとは会ってないしコウヨウも彼を知らなかったのだ。本当はしっかりいたのに…・
「ギルド対抗戦の反省会いましたっけ?」
「ノーコメントだ……」
「この前やった魚の宴にいましたっけ?」
「マルクスから聞いたが俺はリアルで予定があって……」
「この人もしかしてめっちゃ影薄いのでは?」
「一応原作では出ているつもり……ってそんなことはどうでもいい! コウヨウと言ったな、最強の二刀流使いの実力見せてもらおうか」
「嫌です」
「何でだ!?」
「俺と戦いたいなら先ずしっかりとこうなった経緯を説明して下さい」
☆
「なぁ、ミィ。NWOで最強なのってメイプルかペインくらいしかいないのか?」
「急にどうしたシン」
「いや、カスミも強かったけどよ……メイプルとペインが桁違いだからそいつらが最強なのかなって。俺も剣士として戦ってみたいからな」
【炎帝の国】でシンとミィがそんな会話をしていた時からそれが始まったのだが、ミィはシンの言葉に頷きはしなかった。
「最強……いや、そうと言ってもいいな。だが、ペインを倒した挙句カスミですらも敵わない男なら知っているぞ」
「あの2人が最強じゃないのか?」
「メイプルはともかく、アイツに負けてるからその理論は崩れたな」
「アイツって誰だよ」
「コウヨウ、最強の二刀流使いだ」
その名前は聞いたことがある。確かメイプルの実の兄でペインをぶった斬ったと言う伝説を残した男だと。だが、シンからすればただの噂話なのであまり実感がなかった。
「話は聞いてるし顔も見たことはあるが……そんなに強いのか?」
「ペインを倒したんだ、当たり前だろう」
シンはミィの言葉に少し反論した。あのペインを倒したと言うことはかなりの実力である事に間違いはないが、それが起こるまでは無名であった事ともしかしたら相性の関係もあるので世界各地からログインしているNWOプレイヤーの中で最強だと言うのは言い過ぎではないかと。
「確かにシンの言う事も一理あるが、アイツはそんな次元じゃない。一度会って確かめるといい」
「へぇ……ミィが……ギルドマスターがそこまで言うなんて余程なんだな」
「私はお前が帰ってくるのをリスポーンエリアで待ってるよ」
「負けるの前提じゃねぇか」
☆
「そしてここに向かっている時カスミと会った。アイツにも同じことを言われたんだ」
「あの2人は今度みじん切りにしてやろう……とりあえず事情は分かりました」
「なら、決闘を受けてくれるか?」
「嫌です」
「何でだ!?」
単純に面倒だったコウヨウは断るが、シンは一歩も引かない。少し息を一つ吐いてコウヨウからシンに聞いた。
「シンさんは武器が違っても剣士と見ました。なので聞きますけど、貴方はどうして戦いますか?」
「は? レベル上げて強くなるためだろ?」
「強くなった先は何をしたいですか?」
「えぇ……あー……強いやつを倒して……トッププレイヤーになる……とか?」
「成る程……じゃあ……」
──俺と戦うのを諦めて下さい
「どうしてだよ……俺を揶揄ってるのか?」
「全く。俺は強くなったらサリーやメイプルと楽しくゲームをすること……後【楓の木】の役に立ってみんなを守るのが目標です」
「ほう……なかなかいい目標だな……それで?」
「自分の事しか考えてない男と守りたいものの為に戦う俺はどっちが強いと思いますか?」
シンはコウヨウから伝えられる言葉に驚いた。コウヨウは直接的ではないが、シンに対して俺の方が強いと伝えたからだ。コウヨウは本来そんな事を言わないし、現に本人も言いたくなかった。だが、どうしてもそこの殺気を纏う男を諦めさせたいが為に言っただけである。
まぁ、それを言ったところで、シンという男は止まらないのだが……
「危ないですね」
「クソ……マジでムカついたから本気で斬りに行ったんだが……片手で止めんのかよ……」
「正直俺もちょっと怒りました。諦めて欲しいのにしつこくまとわりついてくるやつはストーカーとかパワハラとかカスハラと同じですから……撲滅してやりたい」
「ふん……お前がどれだけ強いか知らねぇけど……【崩剣】!!」
シンがスキルを発動すると宙に舞った剣から無数の刃が飛び出してコウヨウを襲った。シンはペインの【聖剣】と呼ばれる二つ名を持っている。それがこの【崩剣】。【炎帝の国】トッププレイヤーの1人であり、唯一の剣士であるシンはそれ相応の実力は確実に持っている。
彼の十八番であるスキルはその無数の刃で敵を襲う彼自身最強のスキル。それをコウヨウに向かって飛ばした、そしてその刃はコウヨウを……
「邪魔」
「は?」
襲おうとして全部消滅させられた。コウヨウは空中から出てきた10メートル程の朱槍を片手で一振りする事で、無数の刃を全部かき消したのだ。
何が起こったのかわからないシンはもう一度スキルを発動するが……
「邪魔」
「はぁ!?」
また無効にされた。ちなみに今、武器として持ってるのは刀ではなく朱槍に【変身】したムサシである。テイムモンスターを装備しても【魔法削除】は使えるのだ。だからこそ、普通に消した。
「な……何が起こってんだ……?」
「テメェの刃は俺には当たらねぇよ」
シンは焦りを見せる。少し離れたところにいたコウヨウがいつの間にやらシンの目の前に姿を見せていたからだ。慌てて刀をコウヨウに向けるシン。
その瞬間、彼の左側のこめかみ辺りに何かが当たる感触。それがコウヨウの足である事を理解したのは既に粒子となって消えた後だった。
「な……ん……で……」
「あ、やべ……蹴りで倒しちゃった……」
コウヨウは少しだけ怒りに身を任せたのもあって首輪を外して【豪傑にして英雄】を発動。本気のバフをかけたが、流石に斬るのはと思ったので蹴りでちょっとだけHPを削ってやろうとしたのだが、蹴ったところにたまたまクリティカルが入ってしまい、シンはコウヨウの回し蹴り一発でデスペナをくらうことになったのである。
「あ、お兄ちゃん見つけた……これから【楓の木】で攻略会議するから……ってお兄ちゃん顔色悪いよ?」
「め、メイプル……俺さ……」
──人殺ししちゃった……
☆
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみません!!」
「コウヨウ、謝るな。うちのメンバーが迷惑をかけただけだからな」
「お兄ちゃん……そろそろ首輪外さないほうがいいんじゃないかな?」
「その通りですねはい」
「後、スキル禁止ね」
「はい」
その後、コウヨウはメイプルと共に【炎帝の国】にお邪魔して、ギルドマスターのミィに土下座した(コウヨウだけ)。事情を知ってるミィは苦笑いしながら話を聞いて許したのだが……
「すみません……シンさん? はどこに?」
「あいつは少しお灸を添えている。話を聞く限り、知り合いとはいえ他ギルドの人間に結構しつこく迫ったそうだからな」
「直接謝っても?」
「別に良いが……おいシン! 出てこい!」
「前が見えねぇ」
「「めっちゃ縛られてる!?」」
本人に謝ろうとしたコウヨウはメイプルとシンの姿を見て驚いた。ミザリー達の拘束魔法か何かで目と手と足、挙句に首だけグルグル巻きで全てが縛られていたのだ。
「あ……あの……シン……さん?」
「お……おう……二刀流使い……さっきは悪かったな……」
「いや、デスさせたのは俺なんで……戦いたくないからって生意気言ってすみませんでした……」
「いや……あの強さならこれくらいの生意気なんて……痛い!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
「コウヨウの回し蹴りで首を折りかけたらしい……現実では全くのノーダメージだから問題ないが……」
「なんだろうな……首にお前の足が直撃したのがわかった時の猛烈な痛みは……今もまだ痛くないのに痛い……なんか、あったよな? 四肢が無い時に痛む病気」
「お兄ちゃん本当に何してんのさ……」
「まさか蹴りで死ぬとは思わねぇだろ……」
「「「みんなそうだと思ってたよ」」」
結局、コウヨウがゲーム内の菓子折り持って謝りに行ったのだが、シンもミィもシン本人の実力不足だと伝えて、この場は和解したのだった。
「シン、諦めろ。コウヨウを倒すのは今は無理だ」
「いや……今どころかこれからも無理だろ……なんなんだよ……あいつ……痛たたた……」
初登場にして史上最悪のやられ役になったシンさんですが、彼の巻き返しは多分これからです。