妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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防御特化と神の杖

「ねぇ、カナデ」

「どうしたの? メイプル」

「デートしない?」

「へ?」

 

 コウヨウが第四層の釣り場にいつも通り喧嘩を売ってくると言ったので、サリーが彼について行った後、ギルド内ではカナデとメイプルの2人きりであった。

 好きな人と2人きりと言う状況だが、落ち着いて、冷静に、メイプルと話をしていると、彼女からそんな努力を虚しくさせる代わりにとても嬉しい言葉を伝えられた。

 

「ど、どうして?」

「カナデとデートしたいから?」

 

 何故か疑問で答えるメイプル。コウヨウとサリーが付き合ってから妹兼幼馴染としてとても嬉しいのだが、2人に気を使わせているのもあった。そこで、メイプルは今日サリーとコウヨウの釣りに参加せず、のんびりと出かけようと思ったのだ。

 だが、そこで何故かカナデと出かけたい欲が彼女を襲い、彼にお願いをした。

 

「お兄ちゃん達いなくて寂しいんだけどさ、なんだかカナデと一緒にいたいなぁって……ダメ?」

「ダメ……じゃないよ」

「本当!? じゃあ一緒に出かけよう!!」

 

 そうしてカナデとメイプルはそのままギルドから出るのだった。

 

 ☆

 

「私ね、ずっと昔からお兄ちゃんが大好きなんだ」

「コウヨウは優しいからね。僕は彼の事をあまり知らないけどそれだけはハッキリと分かるよ」

 

 ちょっとしたカフェに入ってケーキを食べながらメイプルとカナデは話す。メイプルから出た兄の話はカナデも納得出来るところはある。

 口調こそ確かに乱暴な言い回しが多いコウヨウ。釣りにしか興味は無いし基本戦いを好まない人だが、男子と言うこともあり、近寄りがたいのはある。

 でも、サリーやメイプルが傷ついた時本気で怒って相手を叩き潰したり、口では嫌だと言ってても、理由をしっかり伝えて本気でお願いしたら結構クエストを手伝ってくれたり、一緒に魚を釣ってあげれば、お礼だと言って絶品魚料理を振る舞って喜ばせてくれる。

 純粋な心を持つユイやマイも彼に懐いているし、怒っている時でなければクロムやイズ、カスミなどの大人組にも敬語を使って礼儀作法をわきまえている。

 普段はオセロの時以外あまり話さないカナデとコウヨウだが、カナデは彼の優しさを少なからず理解していた。一応現実でも会っているし。

 

「だからお兄ちゃんがサリーの事愛してるのは知ってたし、サリーもお兄ちゃんを愛してるのは知ってた」

「サリーが彼を好きな事は僕も分かってたけど、コウヨウがハッキリと彼女を愛してるって聞いた時は驚いたなぁ」

「寂しいなぁ」

 

 ハッキリと、メイプルは彼に言った。それでも彼は少し笑いながら……

 

「コウヨウとサリーはメイプルを大事に思ってるよ」

「それは……うん。でも、お兄ちゃんがサリーに取られちゃったなぁって。この前決闘したのはそういう意味もあったんだ」

 

 負けちゃったけどとメイプルは自分に対して呆れながら笑うが、カナデからすれば笑えなかった。

 メイプルの思いもそうだが、彼のメイプルやサリーを下す強さは異常だという意味でもある。

 

「コウヨウって何であんなに強いのかな?」

「多分首輪じゃないかな? 外したらステータス2倍って素人の私でも強いと思うし」

「いつか修正してくれないと勝てないんだけど」

「確かに」

「というか、メイプルってブラコンなんだね」

「お兄ちゃんは大好きだよ。結婚とかは考えてないけど」

「その方が僕も助かるよ……」

「え?」

 

 そんな何気ない会話とコウヨウの愚痴(仮)で2人は笑い、会話をしながら、2人はケーキを食べ続ける。

 

「美味しいね」

「うん……ねぇ、メイプル」

「どうしたの?」

「メイプルは……僕の事どう思ってるの?」

「どうって?」

「別に、やっぱり僕じゃなくても良かったんじゃない? 【炎帝の国】とか、【集う聖剣】とか、誘う人はいたでしょ?」

 

 カナデの言葉にメイプルは少し考えて、なんでだろうと伝えた。

 

「最近、カナデの事考えることが多くなったからかな?」

「ぼ、僕の事?」

「うん。カナデ今何してるんだろうとか、このモンスターならカナデがすぐ倒しちゃうんだろうなとか、この髪飾りカナデに似合いそうとか……あ、カナデ、これあげる」

 

 恥ずかしい事を無自覚で言い出したらメイプルに顔を赤らめるカナデだが、メイプルが髪飾りをカナデに渡すと、カナデは少し喜んでそれをもらう。髪飾りには星とかではなく、四角いキューブの様なものが1つくっついていた。

 

「可愛いねこれ」

「カナデといえばルービックキューブ!! なんて、安直過ぎるけど……でも、カナデなら似合うかなって。星型ならみんなに似合うけど、この四角いキューブはカナデにしか似合わないから」

 

 そんなメイプルにお礼を言ってそれを髪につける。特に違和感もなく似合っていた。

 

「僕男だけど、悪くないかな」

「似合ってるよカナデ。カッコいい」

 

 メイプルの言葉にドキッとしたカナデ。彼を見つめるメイプルの姿は、少し大人びた少女の顔。普段は可愛らしい少女であるメイプルの意外な顔を見てカナデはさらに顔を赤くする。

 

「どうしたの? カナデ」

「メイプル……ずるいよ」

「え?」

 

 もう、ここで言ってしまおうか。自分が彼女を好きな事を。これは一時の夢だ。こうして彼女とデート出来たのも、プレゼントをくれたのも、カナデにとって人生で1番嬉しいこの日は現実世界で会えない少女に本気で恋が出来た。そんな夢。

 

「メイプル、聞いて」

「ん? カナデ?」

「ぼ、僕はね……あの時……初めて会ってからしばらくは経つけど……メイプルの事を……」

「あ、カナデとメイプルだ!」

「愛しているんだ!!」

「よく言ったカナデ!!」

「え……え!?」

「カナデ……ってお兄ちゃん!?」

「あぁ……ごめんメイプル邪魔したね」

「サリーも!?」

 

 全力で告白したカナデの目の前に現れたのは、僅か5回の【居合極】でヌシを斬り刻んだコウヨウと彼を援護して敵の隙をつくったサリー。

 クエストが終わってひと段落した2人は近くのカフェに寄ったのだが、メイプルとカナデの姿を見てそこに向かったサリーに現場を見られた。

 それだけならまだ救いであった。ただ、それだけでなく、メイプルの実の兄に告白現場を見られたのだ。焦りと冷や汗が止まらなかった。

 それでも、コウヨウから出てきた言葉は褒め言葉である。

 

「サリー、カナデはメイプルと2人きりになりたいそうだ。カフェに着いて早々帰るのは残念だが違う店にしようか」

「う、うん。メイプル、カナデ、またね」

 

 後で詳しく聞くと言わんばかりのサリーのオーラ。コウヨウたちはそのまま店を出て、残されたカナデとメイプルは正直頭はパンクしていた。

 

「え……えっと……あはは……」

「ご、ごめんメイプル……」

「あ!? いや!? そういうことじゃなくて!!」

「サリーがお兄ちゃんに告白したのもこんな感じだったなぁって」

「どういうこと?」

 

 現実世界でサリーがコウヨウに告白した時も、メイプルが邪魔をしてしまった事をカナデに伝えた。今回は逆だったわけだがとメイプルが言うとカナデは少し笑った。

 

「兄妹揃って間が悪いね……ねぇ、メイプル」

「カナデ……」

「好きだよ。僕は、君の事が好きなんだ」

「うん……私も……カナデの事……好きかも」

「ほら、私は恋愛って漫画でしか見た事無いから、あんまり分からないんだ……でも、カナデがこれから教えてくれるなら嬉しいな……なんて……」

「可愛いねメイプル」

「か、かわ!?」

 

 こうして、メイカナ及びカナメイは完成した。ギルドに帰った後、メイプルはサリーに、カナデはコウヨウに呼ばれた。

 メイプルはサリーに恥ずかしい想いをさせられ、カナデはコウヨウに全力で応援されたが、カナデとしては実の兄に応援されたのもあり、生きた心地はしなかったそうである。

 

「カナデ、メイプルを頼んだ」

「僕はコウヨウに殺されない様に頑張らないといけないのかぁ」

「俺をなんだと思ってんだ? ただの妹と幼馴染思いの釣り師だぞ?」

「悪鬼羅刹の間違いじゃない?」

「カスミさんにも言われたし、なんか本当にそのスキル手に入れたわ」

「え? 本当??」

 

悪鬼羅刹(あっきらせつ)

 相手1人に自身の半分のSTR数字分の固定ダメージを相手に与える。使うと1時間STR以外の数字が1になる。相手のVITやバフは一切受け付けない。

 

 因みにコウヨウのSTRはバフ無しで4桁後半である。即ち、このスキルはそろそろ5桁かなぁ? の半分のSTRが相手のダメージになるらしい。怖い。

 

「うわぁ……メイプル殺しだ……」

「人に変な罪を着せるな」

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