妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「今日も元気にクエスト行こうかな!!」
折角来た第五層を探索するのと同時にクエストに行ってみようと考えた楓は現実世界で張り切っていた。ゲームを始めようかと思ったが、部屋のいつもの所にハードが無い。母親が掃除か何かの時に位置を変えたのかと呆れた楓は母にハードの場所を聞いて見つける。
「あった、全くお母さんったら……勝手に部屋に入るなんて」
楓も紅葉も掃除は出来る方で、親が入らなくても部屋は綺麗なのだが、洗濯をする際などにたまに部屋を漁って確認するのだ。
「まぁ、たまに私達も洗濯物の出し忘れとかあるから仕方ないかぁ……」
そう独りごちた楓はそのままハードを装着して、ゲームにログインした。ログイン場所は第五層のギルドホームだったのだが、メイプルがログインしたの瞬間、サリーと目があった。
「あ、サリーもログインして……」
「コウヨウ! 待ってたよ!! 早くデートしよう!!」
「え? お兄……」
メイプルのセリフが最後まで発される事なくログインしていたサリーに腕を掴まれる。何が起こったかわからないメイプルは黙って彼女につれて行かれる事にしたのだった。
☆
「ねぇ……サリー……」
「コウヨウ、手を繋ぐのも恥ずかしいのは分かるけど……恋人なんだからそれくらい我慢しなさい」
「いや、私……お兄ちゃんじゃなくて……」
「はぁ? そんな装備してコウヨウじゃないわけ……な……い……」
メイプルの方を振り返り、やっとしっかりと姿を見たサリーは言葉を止めて……
「コウヨウが縮んだ!?」
「失礼じゃないかなぁ!?」
「え? コウヨウ……ん?? め……メイプル??」
「うん。メイプルだよ」
「魔法か呪いで背が縮んだコウヨウじゃないの?」
「酷くない!?」
「ま……まぁ……とりあえず……ごめん。それで、どうしたの? それ」
「ど、どうしたって言われても……私は私で……あれ? でも何でサリーがお兄ちゃんと間違えて……??」
冷静になってサリーがメイプルに問いかけると、メイプルも事を理解したのか近くの鏡で自分の姿を見る。装備はコウヨウの侍シリーズであるが、顔はメイプルだった。だが、装備の影響で髪型は彼と変わらず。
「ど、どうなってるのー!!?」
「もしかして……コウヨウのデータでログインした??」
また、兄妹なのもあって幼馴染のサリーでさえもまさかの気が付かない事態が出たのだ。メイプルはハードを間違えて使ってしまった事に気がつき、サリーに伝えながら言った。
「私とお兄ちゃんを間違えるなんて……サリーもう少し恋人の自覚持った方がいいよ」
「とりあえず今自害するから待って」
「はやまっちゃダメだよ!?」
コウヨウと間違えた事が相当ショックだったのか、サリーは自分のダガーを引き抜いて自身の腹部を刺そうとしたがメイプルが止めた。メイプルであっても、今のデータはコウヨウなので、サリーの抵抗でさえもSTRで抑えつけられた。
「ってか、メイプルもコウヨウのハード間違えちゃダメじゃない? パスワードとかどうしたの?」
「入れたってことは……全く同じかも……」
「兄妹揃って同じパスワードって何なの!?」
「IDは記憶させてるから勝手に入ってるし、パスワードはお兄ちゃんに怒られて最近変えたばかりなんだけど……っていうかお兄ちゃん力強!?」
「そりゃ……STR4桁だし」
「とりあえず……お兄ちゃんには謝るとして……どうしようこれ」
「今日は1日これでいいんじゃない? 何があればコウヨウが来ると思うし、折角ログインしたのに抜けるのも面倒そうだし……」
「うーん……まぁ、お兄ちゃんの力を把握してお兄ちゃん攻略するのもありかぁ」
「うわぁ、悪魔がいる……でも賛成かな」
メイプルの悪女そうな笑みにサリーもドン引きするが、恐らくそんな事でコウヨウも怒らないだろうとサリーは考えてそのままクエスト2つくらいだけ行く事にしたのだった。
「キュルルルン!」
「あ、ムサシ……えっと、お兄ちゃんじゃないけど……今日はよろしくね?」
「キュルル!」
「へぇ、ムサシって普段はこんなビジュアルなんだ。改めてしっかりめっちゃ可愛いんだけど」
「アリガト!」
「「え……え??」」
こうしてコウヨウのデータを借りたメイプルはサリーとムサシで攻略しにいくのである。途中でムサシが言葉を話したように聞こえたが気のせいだろう。
「よーし! サリー、行こ……うぅぅぅ!!?」
「メイプル!? 速すぎない!? って……あぁ、コウヨウのAGIかぁ……」
「サリー助けて!? 少し歩きたいだけなのに数メートル移動しちゃう!?」
「コウヨウコワイ」
☆
「ごめん下さい」
「お、メイ……プル……???」
「カスミさん。俺です。コウヨウです」
「え? コウヨウ? 確かに背はメイプルより高い……か?」
「すみません男なのにチビで」
「わ、私が悪かったから本気で落ち込まないでくれ」
「あ、メイ……いやなんでコウヨウ??」
「流石カナデ。メイプルの事を分かってるな」
「いや、コウヨウはメイプルより背が高いからね……同じだったら一瞬僕も分からなかった」
コウヨウがメイプルの姿でログインをしてギルドホームにいると、カスミとカナデがいた。2人には軽く事情を話すと納得しながらもいくつか質問が飛んだ。
「IDとパスワードはどうしたの?」
「IDは記憶で入力いらず。パスワードは……まさかの同じだった」
「「そんな事ある??」
「と、とりあえず……メイプルはどこに行ったんだ?」
「ログインしてるのは家で分かってるので、恐らくサリーが無理矢理どっか連れて行ったのでは?」
「メイプルならすぐログアウトして伝えると思うけど?」
「おおかたサリーと結託してクエスト2個くらい行ってるんじゃないか? こんな機会滅多にないしな」
「まぁ、そうだが……もしかしてお前を倒す方法とか考えているんじゃないか?」
「釣りならいくらでも相手になりますよ?」
「「絶対そっちじゃない」」
コウヨウの言葉に流石の2人も突っ込んだ。どちらかと言うと2人が倒したいのは本気でモンスターやプレイヤーと戦うコウヨウである。1VS1という意味でだ。
「さて、ログインしたけどどうするか……姿見たらメイプルの装備だし、俺はメイプルの戦いを知っているわけでは無いからクエスト行ってもなぁ」
かといって釣りをしてもメイプルのデータではあまり魚も釣れないだろうとコウヨウは考えて、ログアウトを考えたのだが……
「なら私達と行ってみるか?」
「え?」
「確かにコウヨウと一緒にクエストなんてあまり行った事ないかも」
「俺はメイプルですから大楯の使い方なんて分かりませんよ?」
「【毒竜】でゴリ押せばいいんじゃないかなぁ、僕だっていつまでも弱い訳じゃないから後方支援は任せてよ」
「なんなら、簡単なクエストに行って【身捧ぐ慈愛】でバフを付けるだけでも、私が切れば問題なさそうだがな」
せっかく入れ替わったのなら、楽しんで見ればいいと言う2人の言葉に、コウヨウも頷いて見ることにした。その結果……
「【毒竜】!!」
「【一ノ太刀・陽炎】!!」
「【神界書庫】で……【多重炎弾】!!」
「足が遅過ぎるけど攻撃特化ならこれかな……【機械神】!!」
ユイやマイでもドン引きするような完全攻撃特化メンバーが出来た。正直、カスミが言ったように、コウヨウが【身捧ぐ慈愛】を発動して、カスミとカナデが攻撃に出れば、五層モンスターくらいならある程度簡単に倒せるのだが、コウヨウはその上を行く攻撃スキルでゴリ押した。
「コウヨウ、メイプルなんだから守ろうよ……」
「守っていいなら使うぞ? 【身捧ぐ慈愛】!!」
瞬間、コウヨウ君は天使だったフラグが立った。メイプルも可愛く美しかったが、コウヨウもメイプルと同じくらいの髪型で、身長を持ち、美少年である事に変わりは無い。正直コウヨウもカナデも色々弄れば女の子と間違われる可能性はしっかり持っている。色々弄れば。
「よーし、2人とも、俺が守ってあげるね!!」
「男口調のメイプルも可愛いなぁ……」
「おい、正気に戻れカナデ!? アイツはお兄さんだぞ!?」
「コウヨウ……騙したね!?」
「茶番やってないで早く倒して下さい」
一瞬本気でメイプルと勘違いしかけたカナデをカスミが制してコウヨウが突っ込むのだが、結局ふざけてもそうでなくてもこの3人に勝てるモンスターは存在しなかったのだった。
一方で、メイプルとサリーは……
「うわぁ!! お魚さんがいっぱいだぁ!!」
「何これ……メイプルのインベントリからめっちゃ魚出てくるんだけど……」
「なんかこのスキルお兄ちゃんのインベントリの中魚しかいないよ?」
「コウヨウはいったい何になろうとしてるの?」
クエスト中にメイプルがインベントリを漁ると、大量の魚が入っていた。それを食べるとメイプルとサリーのHPが全回復した。
「鮪美味しかったね!」
「後でコウヨウに伝えてね、魚食べたって」
「うーん、鮪以外は100匹以上あったから大丈夫だと思うよ?」
「鮪何個あったの?」
「2個かなぁ?」
「それ多分怒られるよ!? どうしよう……私とメイプルで全部食べちゃった……」
勝手にアイテムを食べたサリーが心で謝っているが、メイプルはメイプルで兄のスキルを試して楽しもうなどと考えた。
「凄いよサリー!! 【暴虐】みたいに着ぐるみを動かしてるみたいで楽しい!!」
「メイプルが龍になった……まぁ、コウヨウのスキルなのは知ってるけど……やっぱり兄妹揃って意味わかんない……というか、ムサシはムサシで一撃で雑魚敵斬ってるし……」
【呪龍 ミラ・マキナ】で暴走するメイプルを死んだ目で見ているサリー。結局クエストは楽に終わったらしい。
☆
「ごめんなさいお兄ちゃん」
「いいよ、俺も楓のデータで楽しんだし」
「どうだった? 私の味は!」
「何か危ない発言なのは気のせいか? まぁ、悪く無かったよ。お陰で受けの極意を学べた」
「私も破壊の極意を学べた!」
「そんなもん俺のデータで学ぶな」
結局お互い怒る事なくご飯を食べながら、こんなスキルを使ったとか、こんなプレイをしたとかそう言った話をして、お互いの立ち回り強化をしたのはサリーでさえも知らなかった。
「あ、お兄ちゃん。鮪食べちゃった、ごめんなさい」
「メイプルとサリー用だからいいよ。今度ユイとマイにも釣ってあげるか。確率0.01%だけど」
「本気でごめんなさい!?」
とてつもない確率論を聞いた楓は紅葉にマジで土下座しました。
因みにこの小説に出てくるメイプルとコウヨウ2人のパスワードは「Tyunibyo@sarry711」だと信じてます。