妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と悩み

 第五層でイベントが始まった二月。コウヨウはギルドホームで溜息を吐いた。サリーもいないから少し残念に思っているのかと妹であるメイプルが少しだけ慰めると……

 

「サリーが一緒に出かけてくれない」

「お兄ちゃん、サリーを処す?」

「怖いからやめなさい」

 

 サリーは生かして置けない。アレだけコウヨウ、コウヨウと言ってる割には最近確かに一緒に居る機会が少ないように感じたメイプル。それとは別に、サリーに対して喧嘩を売ろうとする交戦的な妹を目の当たりにしながら少し事情を話す。コウヨウはサリーを愛している。恋人たるもの……というわけではないが、サリーを大切に思っているので彼女喜ぶ事をしてあげたい。

 彼女が喜びそうなのはゲームである事はある程度分かっているが、最近サリーをクエストに誘おうとすると毎回のごとく断られて1人で行っているのだ。

 

「最初はサリーも女の子だからロマンある方が良いかと思って五層のスイーツ食べに行こうとか言ったり、現実世界でデートをしたんだけど、最近ゲームではクエストを断られてな」

「うーん、サリーがお兄ちゃんを嫌うわけないし……」

 

 メイプル達しか知らないが、サリーはコウヨウ狂いてある。口を開けばコウヨウや紅葉など彼の名前が飛んできて、これから彼とどこに行ってどうするかをメイプルに嬉しそうに伝えてくる。

 たまに暴走した彼女が、そのまま夜になってホテル街に迷って……などと妄想シチュエーションを繰り広げる事も彼の妹であるメイプルは知っているので、コウヨウを嫌っている線は0%である。

 

「メイプルはカナデとどこに行くんだ?」

「え? 私?」

「カナデもメイプルが好きだから誘ってくれるんだとは思うが、俺とカナデでは彼女の性格も方向も違う分行く店も違うだろ? 何かヒントでもと聞いたんだが……」

「えーと……セーフティーのお花畑とかスイーツのお店とか、シロップに乗って空中散歩とかかなぁ……」

 

 そこまで大きく変わらなかった。コウヨウもムサシにサリーを乗せて空中散歩するし、スイーツのお店も誘う。サリーだって元気で活発だが、年相応の女の子に変わりはない。

 

「嫌われたらしいなぁ……」

「それは絶対ないと思うけど」

「サリー、元気かなぁ……ちょっと寂しいから釣り行ってくるわ」

「私も付き合う? 今日はカナデもいないみたいだし」

「それじゃあ4人で釣るか」

「え? 4人??」

 

 後2人は誰なのかをコウヨウに聞くと返ってきたのは意外な人達だった。

 

「火遊び女と金髪勇者男」

「そ、それって……もしかして……」

 

 恐らく、【炎帝】と【聖剣】の事をそう呼ぶのはこの最強の二刀流釣り師だけだと後にも先にも思ったのはこの場にいるメイプルだけである。

 

 ☆

 

「20匹目」

「早すぎるだろう……」

「流石コウヨウだな。俺はその魚食べた事ないから後で焼いてもらっても良いか?」

「良いですよ、せっかくなんでみんなで食べましょう」

「お兄ちゃん助けて、全然釣れない!!」

 

 他のプレイヤーから見たら目を疑う光景である。【炎帝の国】のギルドマスターであるミィと【集う剣聖】のギルドマスターであるペイン。妹でありながら【楓の木】のギルドマスターであるメイプルが、あの最強の二刀流釣り師であるコウヨウと一緒に釣りをしているのだ。

 トップ上位3ギルドと言われの高いギルドマスターたちがこうしてクエストではなく釣りに参加しているのは、暇つぶしにモニターを見ていた運営陣が泡吹いて倒れそうになる光景だ。

 

「みんなゆっくり釣りましょうよ、魚は逃げません。釣れなかったら俺が料理してお裾分けするので、釣りを楽しみましょう」

「まぁ、コウヨウの言う通りか……正直始まったイベントも大事だが最近ゆっくり出来る日も少なかったからな」

「コウヨウから誘われた時は正気かと思った。イベント開始の直後にこの誘いだからな」

 

 ペインとミィはコウヨウを見て笑みを浮かべる。コウヨウ曰く、イベントに向けてレベリングしているのは知っていたので、逆にイベントの最初だけで違う事したらどうかと誘われたのだ。

 最初のうちはかなり混むから不具合も出やすいだろうし、逆に争奪戦というわけでもないので、2日目から参加した方が良いのではとコウヨウは伝えた。

 勿論ペインやミィもギルドマスターとしてプライドもある。だからこそそれを彼に伝えると意外な言葉が返ってきた。

 

「プライドで経験値入るならそれで良いんじゃないですか? でも、たかだかゲームに熱持ちすぎて、それで強くなったとして、現実で干からびたって泣き言言われても俺は知りませんよ?」

 

 所詮ゲームだと、はっきり彼はこの2人に言ったのだ。プライドだとかギルドマスターだとか、レベルが高いとか全部彼は分かった上でしっかりと伝えた。

 

「所詮はゲームか……本気でやってる俺達に言うセリフではないが、コウヨウの言う事も一理ある」

「どれだけギルドで偉くても、それは現実に戻ったらただの人間です。まぁ、2人の強さは分かりますけど、イベントイベントって視野を狭めすぎると大事な事忘れますよ」

「大事な事って何だ?」

「俺たちはNWOのプレイヤーであってここで生きているわけではない。ゲームなんて夢の世界なだけですから楽しむだけで良いでしょ。命かけてまでやるものじゃないです。お金貰ってるならともかく」

 

 コウヨウは真面目であるが、愚直ではない。勉強くらいなら愚直に出来るかもしれないが、一点集中なんて基本的にはしていないと彼は言う。

 スライムを斬った時も、釣りのクエストをした時も確かに3日間8時間くらいプレイはしたが、こまめに休憩を取ったのも事実である。

 

「大体、1日イベント参加しなかっただけでギルドマスターについていけませんなんて言うやつは辞めてしまえばいい。年中無休のブラックギルドがお似合いだ」

「まぁ……それは確かに……」

「長々と話しましたけど、ゲームは楽しみましょう。やる時はやるけど今日くらいサボる。今日に関してはシステム上の可能性から言い訳も出来ますしね」

 

 だから釣りに誘ったとコウヨウは言った。もし、このギルドマスターに教養が無ければ彼の誘いには乗らなかったし、他のギルドマスターなら反対していたかもしれない。だが、2人は彼を見ながら、お互いに笑うだけだった。

 

「NWO最強プレイヤーにそう言われれば何も言い返せないな」

「はい?」

「そうだな、【炎帝の国】をたった1人で7割壊滅させる勢いで私に挑んで来てるし」

「俺はただの釣り師です」

「私を倒した釣り師ってお兄ちゃんだけだと思うけど」

「メイプルに勝ったのか……やはりフレデリカの言ってた事は本当だったんだな」

「HPは0にしましたが結果的には俺の反則負けです」

 

 メイプルやミィ、挙句ペインを斬り裂いたコウヨウ(サリーだけノーカン試合)はすでに1VS1最強と名の高い存在である。彼はそんな事をつゆ知らず、釣り師と言い張る。

 

「コウヨウ、俺はずっと考えていた……」

「な、何ですかペインさん。なんか顔怖いんですけど……」

「俺とメイプル、ミィの3人でお前に挑んだら……流石に勝てるかもしれないとな」

「多勢に無勢過ぎるでしょ、さっき言ってたプライドどうした!?」

「ペインに賛成だな……この前完膚なきまでやられた借り……今ここで返したいところだ……」

「ミィさんもですか!? メイプル……何とか言ってくれ……」

「お兄ちゃんって美味しそうだよね……前回負けちゃったし……今食べようかなぁ」

「1人よく分からん事言ってるんだけど!? 何で敗北したから食べるの!?」

「よし、コウヨウ。決闘しようか」

「しねぇよ!?」

「コウヨウ、サリーと付き合った恨みをここで晴らす」

「え? 何でサリー? もしかしてミィさんサリーの事を……」

「私だって恋人が欲しい!」

「私利私欲じゃねぇか!?」

「お兄ちゃん食べて良い? ガブガブ」

「もう食ってる!? 今俺の腕食ってる! しかもなんかダメージ入ってる!?」

「さぁ、コウヨウ。逃げ場は無いぞ……」

「え? ちょ……あ……あぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 結局その後コウヨウがどうなったのかはメイプルとミィとペインしか知らない。

 強いて言えることがあるとすれば……大きな闘技場で3人は30メートルの大剣と強制参加のせいで少し怒った最強の二刀流使い、そいつが変身した黒いドラゴンをまとめて討伐しなければならないクエストが発生したと伝えておこう。

 

「はぁ……コウヨウ怒ってるよね……?」

 

 一方でコウヨウの話題の中心であるサリーはメイプルとコウヨウに勝てるようにしたいため、彼の誘いを我慢して特訓していたのだ。だが、それを言えずにコウヨウに黙っていた。この決闘の後、サリーは久しぶりに彼をデートに誘ったら、泣きながら抱きしめられたので、サリーは恥ずかしくてそのまま死んだらしい。




 次回、コウヨウ死す。
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