妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「『武蔵』がやられただと!?」
とある男は叫ぶ。なんでも、自分の作った最恐のクエストが突破されたからである。
正直このクエストは完全な悪ふざけであった。発生条件は刀使いの全員対象ではあるが、出てくるのはボスの『武蔵』のみ。
しかも、武蔵に勝つための最低条件はSTR200越えであり、尚且つ一撃でHPを1にしなければそのまま追撃され終わる。仮にそこまで削ったとしても、最後に真空波をプレイヤーに当ててくる。
しかも二刀流なので刀1本で受け止めても絶対にプレイヤーの刀が破壊される仕様である。もっと言うと、真空波を受け止めている間でもダメージが通るので、それを避け続けないといけない。あるいは200越えのSTRで二刀を持って弾き返すしか、攻略は出来ない。因みに【居合】を覚えた何名かの刀使いはこのクエストに訳が分からないまま挑戦したらしいのだが、何も出来ずに死んだらしい。
そもそも刀使いのステータスでこのイベントが始まる前に200越えは毎日8時間このゲームでレベリングをやっても無理難題であり、初手から詰みである。つまりは刀使い全員対象ではあるが誰もクリアさせない悪意塊のクエストであった。
「倒したやつは誰だ!」
「えっと……モニターが映った……コウヨウだ!」
「コウヨウだと!? なんなんだアイツ!? 呪いの首輪でステータス二分の一のはずだろ!」
「スキルポイントで振ったステータスでゴリ押ししたみたいです」
「なんだこのステータス!? STRとAGIがとんでもない事になってるぞ!?」
「呪いの首輪のスキルポイントと装備のせいだろ! 何でこんなもの作ったんだ!」
「まさか勝てるとは思わないだろ!? しかもヤバいぞ……」
男が少し顔を歪ませたのは理由がある。実はこのクエストで手に入るテイムモンスターが呪いの首輪を解除するための鍵であるということを思い出した。
「元々ツルギってモンスターは呪われた刀……つまり妖刀の扱いで設定したんだが……首輪を取るのがコイツなんだ」
「【呪いの首輪】取る条件ってコイツかよ!?」
「呪いの首輪を断ち切るのが妖刀ツルギって設定に変更した気がする……」
「だからなんで全部覚えてないんだよ!? って事はつまり……」
「ツルギがコウヨウに懐いたらコウヨウの首輪が取れる。そうなると、コウヨウのステータスは今の2倍になる」
「待て今から2倍って……おいSTAとAGIが4桁越えそうじゃねぇか!?」
「銀翼倒したメイプルやサリーでもヤバいのになんでまたヤバいやつ作り上げようとしてんだ!?」
「そんなつもりはなかったんだよ! ただ……あれ? そもそも何でこんなクエストあるんだ……?」
「いい加減思い出せボケェ!!!」
「結局どうする事も出来そうにないなら見守るしかありませんね……」
結局男達はコウヨウを見守るしか方法がなかったそうだ。因みに物忘れ男はそのままみんなに病院行けと心配された。
☆
「なんやかんやでレベルもステータス上がったから少しばかりはあいつらの前で胸張れるかな」
「キュルル?」
「俺の話だ」
そんな運営の会話はつゆ知らず、コウヨウは呑気に急に弟子入り志願したユイとマイ、そしてコウヨウが始めたばかりなのに既に最強格のプレイヤーになったメイプルとサリーの顔を思い浮かべて笑みをこぼす。このイベントで釣った魚はとうに100匹は超えていた。
因みに、釣りの途中で数人に囲まれたのだが、ツルギが自動で敵を切り裂いてくれた。
どうやらこのテイムモンスターは敵が近くにいれば勝手に戦ってくれる戦闘モンスターらしい。モンスターをテイム出来るなら補助系統のモンスターも少し欲しいとゲームをする前に予想して考えていたのだが、実際仲間にしてみるとこうして一緒に戦ってくれる方がありがたい。
更にはコウヨウも無視するわけにはいかず、攻撃してきたプレイヤー数人を斬り捨てて壊滅どころか全滅させたのは彼の想い出としては残っていない。
「おい、プレイヤーがいたぞ!!」
そんな声と共に、コウヨウを囲むプレイヤーが近くにさっきのから追加で10人ほど。釣りをしながらも周りを見た彼は溜息を吐いて少し声を張った。
「俺は戦う気はないぞ……お、珍しい魚釣れた」
「お前がなくても俺達があるんだ、悪いがそのメダルを……」
台詞は最後まで発されなかった。姿を消したツルギが一瞬でプレイヤーを斬り裂いてそのまま粒子にしたからである。何が起こったのか分からない9人は慌てて戦闘態勢になるが、その瞬間コウヨウはプレイヤーの目の前にいた。
「戦う気はねぇって言ってんだけど?」
「い、いつの間に目の前に……くっ、【炎弾】!」
「【魔法削除】」
【魔法削除】
魔法に攻撃を当てるとダメージを負わずに消し去れる。STRの数値分だけ消せる魔法が増える。
「うそ!? 魔法が斬られ……」
「終いじゃ、テンゼン!」
「誰だ……よ……!?」
男プレイヤーの炎魔法をコウヨウは目の前で斬った。すぐに斬られた炎の弾は消え去り、そのまま男プレイヤーも慌ててもう一度出した炎の弾とまとめて斬られていた。
粒子になった男を見た残りのプレイヤーは何が起こったのか全くわからない。だが、まだ人数では勝っていると、全員でまとめてかかってきた。それが彼に対して1番やってはいけない事だと知らずに。
「ムサシ、まとめて斬れ」
「キュルルルルン!!」
「え!? モンスター……」
急に現れた刀のモンスターがコウヨウの目の前に突っ込んできたプレイヤーに対して斬撃を与えた。更にはムサシが刀よりもリーチの長い太刀の様な刀に変化して、残りのプレイヤーを一掃した。
「もしかしなくても……お前最強?」
「キュルルン!!」
「まぁ、ありがとうな」
そうして、なんの声もあげられなかった彼に斬られたプレイヤー達はこのイベントが終わった後、全員が答えた。
──化物を使役する最強の二刀流釣り師がいる
「今日で15人……俺はゲームであってもプレイヤーキルとかやりたくねぇんだけど……」
「キュルル?」
誰もが嘘つけと思うセリフを堂々と吐いてコウヨウは釣りを続けて焼き魚を料理するのだった。
「魚美味いな、ムサシも食うか?」
「キュルル!!」