妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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宮本武蔵と二刀流

「くそっ……こんな事が……」

「何が剣豪だ。口ほどにもない」

 

 まるで物語の最初に言われるような台詞を彼は吐き捨てられた。生前は病死した自分は死んであの世にでも行ったか思ったが、目を覚ますとそこは異世界。こんなところがまだ世の中にはあったのかと不思議に思いながらもこの世界を探索していた。そこで見つけたのが、この男。

 

「貴様、ただの人間ではないな?」

「何奴だ」

「我は【魔王(まおう)】……全てを滅ぼす存在」

「【魔王】?? まるで聞いたことが無い……」

 

 ただの口だけかと思ったが、そうではないらしい。事実として、その【魔王】が立つ周りには邪悪なるオーラが見えた。すかさず彼は刀を抜いてそのまま叩き斬る。生前は剣豪だとか、60戦無敗だとか、そう言った事実を積み上げてきた男。だが、【魔王】と名乗った男はその上を行く。見たこともない魔法に聞いたことのない言葉の羅列。摩訶不思議で面妖な攻撃ばかりしてきた。

 

「お主……妖の類か!?」

「そういう貴様もただの人間ではない……聞いたことはある。伝説の剣豪と呼ばれる侍……それが貴様の正体」

「私自身剣豪とは思っていない。周りが言っているだけだ」

 

 約10分程のせめぎ合いの末、地に膝をつけたのは彼、剣豪である。そうして、彼は【魔王】と呼ばれる者に敗北の罰として、呪いをかけられたのだ。

 

 ☆

 

「ギュルル! ギュルルルル!!? (なんだここは! 液体が動いていたり、緑色の皮膚の人間みたいな妖が多すぎる!!?)」

 

 彼は混乱していた。見知らぬ土地に見知らぬモンスターの姿。更には自身も負けた代償として言葉が話せないモンスターと化してしまった。唯一の救いとしたらこの洞窟だけにはなるが一瞬だけ人の姿に戻れる事くらい。女になっているのは訳がわからないが。後は……

 

(あの首輪に私の呪いと今持てる全ての加護を与えられたくらいか……)

 

【魔王】との戦いには敗北したが、そいつの持っていた首輪は斬り外す事ができた。【魔王】は彼を首輪と一緒に海に捨てたのだが、彼はそれを逆手に取り、自身だけでは受け切れない呪いと今自分に出来た不思議な力を首輪に念を送って与えることは出来たのだ。

 

(くそ……私が負けるとは……仮にあの首輪を持つ者がいても……きっとあいつには……)

 

 流石の彼も奴に勝つことは無理だった。剣豪と言われたり、最強の二刀流と言われた彼でも、偉大な敵に敗北をしたのだ。リベンジをしようにも、この姿では無理だ。

 

(あの【魔王】とやらに勝てる者など……ましてや私の姿を元に戻すなど……出来は……)

「なんかいる」

(え……誰だ?)

 

 そんな時、彼が現れた。剣豪は忘れることは無い。自身が斬り落とした呪いの首輪が彼にハマっている事を……そして彼がただの人間にも関わらず、自身と同じような志を持っていた事を。彼は、宮本武蔵はコウヨウというプレイヤーを絶対に忘れない。

 

 ☆

 

「なぁ、主。私は何故お前についたか分かるか?」

「しらねぇよ……多分、その【魔王】に負けた時に怨念残した呪いの首輪を付けていたからだろ?」

「違う」

 

 第七層の洞窟で、コウヨウとムサシは話していた。ここではムサシも人型になれるので言葉が話せる。ムサシの問いにコウヨウは全く検討が付かないと答えたが、ムサシはハッキリと仮にペインが呪いの首輪を持っていてもついては行かないと伝えた。

 

「もったいねぇな」

「あの者は私の志とは違う」

「志?」

「私は戦いなどどうでも良かった」

 

 ムサシの言葉に少し驚いたコウヨウ。ムサシも実を言うと、生前は剣豪としてなは知られたが、自分としては平和に暮らしていきたかっただけである。ただ、ムサシが生きていた時代は力こそ正義である戦の時代。いかに平和に、のんびり、釣りをしながら、遊びながら、寝ながらと言っても刀をどうしても抜いて斬らねば生き残れなかった。

 

「私は主の戦いたくないという言葉……割と好きなんだ」

「ただのやる気ねぇ、ヘナチョコの台詞だと思うが」

「確かに動乱の時代ではそんな事は許されない。されど、その様な考えを持つものが一定多数いた時代だ」

「それに主の言葉は何もしなければ、という話だろう? だが主は妹君や妻の為に当時最強と言われた人間を斬り落とした」

 

 確かに戦いたくないとか言いながら釣りをしていたコウヨウだが、妹や恋人……当時は好きな人だったが、傷つけられたのでブチギレて全員ぶった斬った。だからこそムサシは彼を高く評価している。

 

「人のために刀を振えるのは強い人間だ。しかも主は今は強すぎても、その過程では何度か攻撃を受けている」

「刀を振るう者は刀に刺された時の痛みを知らねば勝てない」

「そうか……俺はなムサシ、昔から妹やサリーの為なら手段も事も選ばねぇ。自分の犠牲にしてとか言われた時もあるが、何もしないのは許せない」

「ムサシ、お前も【楓の木】メンバーの1人で俺が守りたい仲間の1人だ。ここまで旅したからようやく気がついたんだがな」

 

 だから、ムサシの頼みを飲んだ。何も言わずに、怒りはあっても飲み込んで仕方がないと呟いた。本音を言うとコウヨウは理不尽過ぎるとは思ったが。

 

「お前の話を聞いてなんで俺がこんな目に遭うんだとは思ったが、だからと言って断る気は無かったよ。どうせ嫌がってもついてくるんだろ?」

「主くらいしか頼れん」

「なら、少しばかり協力してくれよ。お前から見て俺はまだ弱いんだ」

「良かろう。必ず強くしよう……イオリと同じ様にな」

「イオリ? 確かお前の弟子か?」

「知っているのか!?」

 

 ムサシは彼を見た。文献で少しばかりと伝えた彼の瞳には何かが映っているがそれが何かすらも分からない。一方でコウヨウは見た、このゲームが平和に終わった時、【楓の木】のみんなで釣りをしているビジョンを。

 

「まぁ、俺のご都合主義か……」

「主?」

「なんでもねぇよ」

 

 そして、宮本武蔵は切り拓く。己の姿を取り戻すために、この男を選んで、魔王を打ちのめすために。

 

「ムサシ、お前の願いは俺が叶える。だからお前は俺の願いを叶えろ」

「平穏か? それくらいなら……」

「二度と負けるな。んで、その平穏をお前とも共有したい」

 

 ムサシは彼を見て、少しばかり笑ったのだった。

 

『ムサシとの絆が最大になりました。ムサシの【同期】が無くなる代わりに、絆スキル【コネクト】を入手しました』

 

「同期とコネクトって一緒なのでは? いや……同機がコネクトだっけ……??」

「主、新スキルだやったな」

「呑気だなお前」

 

【コネクト】

 唱えてから手を触れた者と触れられた者のステータスが全て合計される。代わりにどちらかが死ぬともう片方も死ぬ。特別な力を持つものと繋がると【コネクト奥義】が発動する。

 1日3回使える。(バフ効果重複有り)

 

「って事はムサシと俺のステータスが合わせて……STRだけで10000超えてるから……」

「多分主と私が合計したら首輪の効果も合わせて数え切れないぞ」

「ぶっ壊れじゃねぇかよ……一応やるか……【コネクト】」

 

『ムサシと【コネクト】しました。【コネクト奥義】が発動します』

 

 コウヨウがスキルを使うと、ムサシはいつもの様に刀に変身して彼の手元に収まる。一つ変わった事は、その姿でもムサシが話せる事だ。

 

「お前で発動出来るのか」

「因みに私の奥義は【二天一流】が出やすいぞ」

「前にメイプルにかましたあれか?」

「あぁ、回避不可の無数斬撃。文字通り最強スキルだ。硬直時間は長いがな」

「あれ条件って何なんだ?」

「私を連れて歩く事だ」

「お前だったのか」

 

 ムサシとの会話で、神々の遊びに付き合ってる感じがするコウヨウだった。

 

「ってか話せるんだな」

「ここだからな。外に出ればただ鳴くだけだ」

「まぁ……刀が喋ったら面倒だしな」

「うん」

「うんじゃねぇよ」

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