妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ)   作:初見さん

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二刀流と本条紅葉

 本条紅葉は争いが嫌いな男である。妹の楓や幼馴染の理沙とは口喧嘩こそしたが、大体は紅葉が謝る事や、怒鳴って喧嘩腰にならずにしっかりと楓達の話を聞いて解決する人間だ。

 それでも、そんな彼だって年頃の男である。理沙の漫画などを見てヒーローだとか、よくあるカッコいい主人公に憧れを抱いたことはある。それが自分で出来るかと言われればそうではないと思うのだが。

 

『安心しろ、お前は俺が守ってやる』

 

 ある漫画や小説の一部のこういったセリフを見ながら紅葉は憧れはしていた。

 

「楓も理沙も女の子だしな……別に頼まれてないけど、これくらい兄貴として格好はつけてみたいものだ……」

 

 そう思ってはいるが、現実世界では別にそんな戦いのシーンは起こらないし、台詞も言える訳がない。平穏に暮らしていきたかった紅葉は憧れてはいたが実行も出来なかった。

 そもそも紅葉が平穏な生活を好いていたのは単純に自分はそれが似合うと思ったからである。勉学は出来ても、家事が出来ても、特段それが将来の夢を生み出すかと言われれば彼にとってNOである。

 

「結局、将来何になりたいかも分からないだけなんだがな」

 

 理沙はゲーム関係かもしれないし、楓は昔お嫁さんだとか言ってたから、多分大丈夫だと思う。実現してもしなくても、夢や目標があるならそれに越したことは無い。ただ、紅葉にはそれが無かった。

 

「平穏な暮らしって将来の夢でもあるまい……」

 

 そんな平凡な青年は、理沙の一言で変わることになった。初めてNWOにログインした日、彼はゲーム内であるにも関わらず、現実そっくりの広大な世界に心は奪われていた。わけわからん呪いを持ってしまったが、のんびりとモンスターを倒しながらゲームにハマっていった。

 

「さようなら現実、こんにちは異世界とは言うものだが、これはコレで面白いな」

 

 ここで何かをすれば、自分もやりたい事とか見つかるのだろうか。紅葉はコウヨウとしてプレイしながら、自分の目指すものを見つけてみようと思った。

 

「釣り楽しいな……釣り師は……職業じゃねぇ、生き方だから夢でもなんでも無い……」

 

 1番ハマったのは釣りである。ゲームだからこそ簡単に釣れるので楽しさはあったが、それでも夢とか目標かなんて言われると全く違った。

 

「俺は……何も無いまま終わっちまうのかなぁ……」

 

 秋の紅葉は寿命が短い。それでも色鮮やかなオレンジ色は人々の目に焼き付けて想い出に残る。別にそこまでたいそうな事をしたいとは思わないが、紅葉という名前な以上は誰かの心に残るような生き方をしてみたいとは思っていた。それでも具体的に言うとなると口を閉じる程何がしたいのか分からなかった。

 

「「すみません! 誰か助けてください!!」」

 

 そんな事を考えていた時に、双子と出会った。

 

 ☆

 

「俺はな、ユイとマイには感謝してんだ。あいつらが俺を頼ってくれなかったら、俺は普通に釣りをしていただけだった。それもそれでありがたいんだが……」

「変わりはしなかった……だろう?」

「んだな」

 

 あの時から、双子であるユイとマイの手伝いを続けた。妹みたいに強くなりたいなんて主人公みたいな事を言われてしまっては少しばかりそれを意識していた自分の心も動いてしまう。

 

「あいつらが純粋すぎてな、何か手伝いたくなった。そしたらメイプルに会って、サリーに会って、ギルドに入れられて……なんか知らんうちにこのゲーム最強だの言われてたペインさんを斬った……正直心と身体がついていかねぇんだ」

 

 別に、誰かのためになんていうわけでも無い。頼ってくれるからお手伝いさせてもらう。そんな事をしていると、いつの間にか最強だのわけわからん事を言われて、自分がなんなのか分からなくなった。

 

「釣りしたいとか言ってたのは事実だけどさ、結局ゲーム初心者なのに強いとか凄いとか言われるのが抵抗あって、わざと戦いを避けてた」

「でも、気がついているんだろう? 誰かと戦う時の楽しさがある事を」

 

 ムサシの問いに彼は頷く。本当に釣りしかしたく無いのなら、戦ったモンスターを弱いなんて言わないし、ムサシの頼みも断った。そうしなかったのは彼自身、誰かと勝負する事に段々と抵抗がなく、寧ろそれが楽しくなってきたからだ。後は……なんて言うべきか……

 

『私が守ってげるよー!!』

 

「誰かに頼られるなら、それに全力で答える。その為には俺自身も受身でなく、首を突っ込んで行かないと……きっと弱いままだ」

 

 ふと、最近頼もしくなってきた妹を思い出した。だからコウヨウは隠すことはしないと言う。昔は争いたくなかった、喧嘩もしたくなかった。ただ、誰かを守る人間に憧れた。現実では出来ない事をこのゲームは出来るのなら、少しくらいは夢でも見させて欲しいとそう言った。

 

「どこまで出来るか分からんけどさ、俺はやるよ。だからムサシ、お前の願い叶えるから、俺の願い叶えてくれ」

「私は絶対に負けない。それでいいんだろ?」

「後、俺に平穏な生活をくれ。戦うのはやるから」

「軸がブレブレなんだが……」

「俺は人間で学生だぜ? 意志が弱いなんて当然だろ」

 

 本条紅葉は人間だ。しかも学生で子供だ。だからこそ目標を決めても軸はブレる事を彼は分かっていた。ただ、1つだけブレないものがある。

 多少なりとも誰かの役には立ってみたい。紅葉が人を照らすように、誰でもいいから1人の心に残るくらいは助けになってあげたい。

 

「俺はただの人間だ。お前みたいに偉くも強くもねぇけど、少しばかり前の俺よりは誇れる俺をなれる様には……それを目標としてやってみたいな」

「ははっ、若造だな。主も」

「うるせぇ」

 

 洞窟の中で、コウヨウはテイムモンスターとポーションを飲みながら、先程の特訓でついた傷を回復させるのであった。

 

「まるで酒みたいだな」

「ポーションは薬だろ、それ以上言うな、危ないから」

「やくチュウ」

「黙れムサシ」

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