妹と幼馴染が強すぎるので、釣りと料理スキルに極振りしたかったです(手遅れ) 作:初見さん
「コウヨウ好き好きLOVEチュッチュー」
「理沙気持ち悪い消えて」
「楓君口悪くない?」
「理沙が勉強しながら変な歌歌ってるからでしょ……というか現実なんだから紅葉で良いのに」
「紅葉好き好き〜だと語呂悪いから」
「その変なこだわりはなんなの?」
紅葉……コウヨウがギルドを抜けるなんて微塵も思わなかった私はそろそろ勉強を中心にしなければいけない時期に備えて楓と勉強をしていた。
本条紅葉。ここにいる楓のお兄ちゃんであり、私の初恋。というか、恋人。
口調は普通の男の子と変わらず『俺』とか言うし、怒った時は乱暴な言い回しになるのは仕方がないとは思う。ただ、それに対して料理は出来るし部屋などの掃除も綺麗に行う几帳面さに加えて、私達が喧嘩した時の仲介役なんていう優しさを持っている人間だ。
『どうした? 急に俺の裾を掴んで……』
『楓と喧嘩した……』
『今度は何したんだ?』
『ゲームで……ちょっと……』
『仕方ねぇな……』
私は昔から負けず嫌いで、特にゲームに関しては紅葉でも楓でも手を抜かなかった。その性格で楓と喧嘩することもしばしばあったが、いつも彼にその話をすると仲介してくれた。
何度紅葉に助けられたか分からないし、私が数える以上に彼が私達のために動いて、私達の仲を取り繕って、仲を保ってくれたのかなんて知らない。ただ一つ言える事は、それくらい抱えきれない恩を私は彼に対して持っているということ。
付き合ったのも、好きになったのも、その恩があったからというのが少しあったと思う。そりゃ、小さい頃は楓と一緒に白馬に乗った王子様とか、私に世界を救ってくれと言ってくるマスコットキャラっぽいものが、実はめちゃくちゃイケメンの男の人だったとか、そんな妄想はあったけれど、なんやかんや歳を重ねると結論身近の紅葉が一番ましなんだなと思ってしまった。正直言ってうちのクラスの男子別に料理出来る人あんまりいないし、出来る人は出来る人でモテるモテないの下心多いし。
話を戻すとだ、妥協なんて言うつもりはないが、私は本当にラッキーだった。幼馴染のお兄ちゃんという肩書きは一旦置いておいて、料理も出来て顔は妹の楓と同じで美男子側、裁縫も掃除も洗濯も出来るし、勉強だって全国上位。運動は……跳び箱飛ぶ時に油断したら躓いて箱に顔を直撃させるくらいで、油断さえしてなければ普通に10段は飛んでるくらいの運動神経なので普通くらいだと思う。
まぁ、そんなものはどうでもいい、とにかく楓の言う通り優良物件だった。そんな彼と付き合えた事は例え恩がどうとかで好きになったと仮定したのなら運が良すぎたのだ。
彼と付き合ってから、特段何かが変わる事は無かったけど、彼の近くにいる機会が増えて、彼の楓に対しての想いとか私に対する想いとか色々聞いていたら恩の話を吹き飛ばすくらい愛するようになった。
彼の助けになりたい、彼の力になりたいなんて想いは膨らみ始めて、最終的には家族をなりたいなという願望までに段階が上がった。
ここまでは私の紅葉に対する恋の想い。一方で、もう一つの想いも膨らんでしまった。それがこのNWOにいるコウヨウへの想い。
コウヨウは紅葉がNWOにログインする際につけたプレイヤー名である。楓だからメイプルと言っていた妹にしてこの兄ありである。そんなコウヨウは結論言うと私の手に負えない所まで強くなりすぎた。
私とメイプルが先に始めて、実力を伸ばしていく中でコウヨウはただ1人、訳の分からない装備とテイムモンスターを連れてステータスを誰も到達出来ない所まで跳ね上げた。
『別に強くなりたい訳では無かったけどな』
ムカついた。生まれて初めて、彼に対してムカついた。嫉妬した、絶対負けたく無かった。どれだけ私が1から回避盾を学んで、必死に練習したと思っているのか。簡単に身についたステータス程度いつか跳ね返してやる。そう心に誓ったのが、第二回イベントのメダル集めの時。
『んじゃまたな、サリーちゃん』
そして初めて敗北したのがあの練習場の時。確実に彼が本気になれば私を斬れたはず。なのにアイツは私を斬らずに逃げやがった。悔しい、悔しい、絶対負けたくない。メイプルにだって勝ててないんだ。もっと強くならないと行けない。その想いは彼も薄々気がついていたんだろう。
『サリー最近お兄ちゃんと出かけた?』
圧倒的にコウヨウとデートする事が減った時、彼の妹であり、私のライバルのメイプルにそう言われた。確かに出かけた事は少ないと思うが、そこまで大事にはならないだろうと考えたので、適当に返事をして特訓に向かった。
それが続いたある日に彼は私の前から、私達の前から姿を消した。
『【楓の木】辞めます』
何が起こったのか分からない。それでも彼は、コウヨウはギルドを抜けたのは事実だった。
こうなったのは何故だ? 私がコウヨウに勝ちたかったから? コウヨウの事は好きだ、寧ろ愛しているくらいまで膨らんだ想いがある。それでもやっぱり思うのは彼は私に愛想が尽きたのだろう。ゲームに構ってデートもしない私を不快に思ってどこかに行ったんだ。
「次のイベント、プレイヤーもモンスターも全員倒してやる……」
「サリー……苛立ってる時に揶揄ったのは謝るから……落ち着いて……」
「落ち着けるわけないでしょ。コウヨウはどこ? 【炎帝の国】や【集う聖剣】にいたのは知ってるから、全部教えて」
「コウヨウ……なら……どこか行ったわよ……ペインと……」
私は話を聞いている途中で粒子になったフレデリカを決闘場で見てため息を吐いた。もう私に残った選択肢はたった一つ、このゲームで強くなる事。そしてコウヨウを倒して……それから……の事は全く考えてない。結局私は子供なのだ。だからこうしてゲームで暴れるくらいしか術がなかった。
とりあえずコウヨウがいない私は、白峯理沙は、サリーとして道を間違える事にした。
「「メイプルさん! サリーさんがまたフレデリカさんを虐めてます!?」」
「あのバカサリーは一回頭殴打しないといけないみたいだね。カナデ、行くよ」
「メイプル様待ってください僕まだサリーに勝てないです」
「勝たなくてもいいから止めるだけ手伝って」
「分かったから引っ張らないで……」
「「カナデさんが可哀想……」」
それでは皆さんご一緒に。
「コウヨウ好き好きLOVEチュッチュー」