ブルアカ×ゴジュウジャー キヴォトスナンバーワンバトル! 作:伊勢村誠三
その日、学園都市キヴォトスは世界諸共に滅びた。
突如襲来した色彩の勢力により街は焼かれ、人々は逃げまどい救いを求めた。
「あれは……」
「機械の……巨人?」
命を、未来を願う純粋な祈りが奇跡を起こした。
遍くユニバースを超えて機械仕掛けの巨人たちが集った。
速き者、硬き者、猛き者……千差万別。
しかし人々の平和と笑顔を守らんとする姿は等しく気高い彼らは人々の希望となった。
しかし……
「ああ! 大獣神が!」
「エンジンオー! そんな!」
色彩の勢力はすさまじく、一体、また一体と巨人……ユニバースロボたちは倒されていった。
戦いそのものは最後の巨人が終わらせたが全てのユニバースロボは力を使い果たし、眠りについた。
そして乗り手を失った最後の巨人もまた……
「ナンバーワン……ナンバーワン!」
ロボの墓場。
最後の巨人、テガソードは待っている。
新たな乗り手、救世主の到来を。
「……なんだ今の?」
窓の外の光景は全く見えず、車内は吠以外向かい側に座る若い女が一人だけ。
寝過ごしたかと思い、電光案内を見ようと立ち上がった時、女が口を開いた。
「私のミスでした」
「……もしかして俺に話しかけてるのか?」
「私の選択、そしてそれによって招かれたすべての状況」
「結局、この結果に辿り着いて初めてあなたの方が正しかったことを悟るなんて」
吠の問いを無視して語る女に怪訝そうな顔を向け、改めて社内を見回す。
本当に二人しか車内には居ない。
「……いまさら図々しいお願いですが、お願いします。吠先生」
女は初めて吠の名前を呼んだ。
だが吠にはやはり覚えがない。
そして何より
「俺はこの世のはぐれ者。人に教える程の物なんてないぞ」
遠野吠という男の半生は孤独と共にあった。
そんな自分が何かや誰かに寄り添えるとも思えない。
「遠野君、そのクソガキの言葉に耳を貸す必要はないよ」
三人目の声がした。
振り向くと、黒いローブで口元以外をすっぽりと覆い隠した誰かが立っていた。
結構近い距離に居るはずだが接近されるまで気付かなかった。
「今度は誰だ?」
「僕は神の代理人。
遠野吠君、君の願いはなんだい?」
ローブの男とは会話が出来た。
ならこの不可解な現象も女と違って説明してくれるだろうか?
そう思って女に視線をやると、女もまたこちらを見ていた。
だが女は吠の事情を無視して続きを語ることなく様子を見守っている。
だから吠もローブの男の問いに答えることにした。
「俺に願いはない。
そんな大層なもん、持ち合わせちゃいない」
迷い込み、逃げまどい、踏みにじられ続けた十年で全て否定された。
自分で言う通りのはぐれ者に願いなどない。
『それはお前が本当の姿を失っているからに過ぎない』
男の声が変わった。
雰囲気も先ほどまでの不機嫌を隠さない物からどこか超然とした物へと変わっている。
誰かに身体を動かされているのだと不思議と確信できた。
『お前は眼を塞がれ世の広さを観れていないのだ。
高みを……ナンバーワンを目指せ。
さすればお前は世を知り、人を知り、真の姿を取り戻す。
その果ての願いを、指輪を全て集めた時かなえよう。
それが、私と指輪の戦士の契約』
男が、否、男の身体を借りた誰かが吠に深紅の
「誰より大人で、誰より子供なあなたは、誰より痛みと喜び知り、きっと覚えていなくても同じ選択をするでしょう」
女が口を開いた。
彼女もまた立ち上がっており、契約を促すように微笑みながら吠の背に手を当てる。
「大事なのは経験よりも、選択。
貴方にしか出来ない選択の数々」
瞬間、吠の脳裏に見覚えのない光景が浮かんだ。
砂漠に沈む現代都市、陥落する未来的なデザインのタワー、崩れ去る地下聖堂、全滅したユニバースロボ。
そして最後に立ち上がった赤い機装の巨人。
『今一度生き、全ての選択の果てにナンバーワンとなれ遠野吠!』
「……いいぜ、丁度バイトクビになって暇してたところだ」
受け取った赤い指輪、テガソードレッドリングを右手の人差し指にはめる。
ローブの男は満足げに頷くと、電車を降りる。
いつの間にか電車は止まっていた。
「ありがとうございます先生、テガソード。
どうか───」
「起きてください」
「あ……」
ぼんやりとする頭を無理やり起こして吠は起き上がった。
辺りを見回すと、先ほどまでの電車とはまるで異なる光景が飛び込んでくる。
どこかのオフィスのロビーだろうか?
「夢か?」
良くは思い出せないが、なにかとんでもなくおかしい光景を見ていた気がする。
あくびをかみ殺して目を擦ろうとして、右人差し指にさっき見た夢の通りの指輪をはめているのに気付いた。
「夢じゃねえ」
どうにかローブの男と、それを操る神とやらと契約したことを思い出した吠はようやく現実感を取り戻し、声をかけて来た女を見上げた。
「お疲れだったみたいですね、なかなか起きない程度に熟睡されるとは」
「……なあ、ここはどこだ?」
「状況の説明が必要なほどだったとは。
なんにせよ、眠気覚ましに外の景色でも視た方が良いでしょう。
説明も、いくらかできます」
眼鏡に、よく見ると吠の元居た五十拍区ではまず見ないエルフのように尖った耳をした女に先導されるまま窓に立つ吠。
そこから見える景色は、正に摩天楼だった。
「こいつは……」
「ようこそキヴォトスへ、遠野吠先生」
学園都市キヴォトス。
数千の学園がそれぞれに運営する自治区とキヴォトス全体の行政を担う連邦生徒会が直接管理するD.U.地区で構成される連邦都市。
超銃社会であり、犬や猫、ロボ等をモチーフとした多様な住民も生徒も非常に頑丈であり、銃弾飛び交う戦闘はちょっと乱暴な喧嘩ぐらいでしかない力が全ての殺伐とした場所でもある。
これには五十拍区にて『赤いジャックナイフ』の異名を取った喧嘩屋遠野吠をもってしても面食らった。
いくら碌な学歴がない吠であっても銃弾一発で致命傷になりかねないことぐらいは常識で知っていたからだ。
(そんなやべぇ連中が普通に政治とかガキの内からやってるところで先公なんてできんのかよ)
何度考えてもはぐれ者の自分に任されたのが不思議でならない。
「そして次に──」
「ちょっと待って、代行! 見つけた、待っていたわよ! 連邦生徒会長を呼んで来て!」
七神リンと名乗った少女による吠への説明が続いていると、4人の少女が入ってきた。
「誰だアイツら?
リンとは制服違うけど他所の学校の連中か?」
「ええ。中でも非常に面倒な方々です」
「面倒なのはこの現状でしょう!?
数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!?
この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「大問題じゃねえか」
プリプリと怒る黒い制服に白い上着の生徒の発言に思わず素で返した吠に全員の視線が向く。
「この大人の方はいったいどなた?
どうして此処に?」
後から来た少女たちの中で唯一眼鏡をかけた少女が少女尋ねる。
「なんでここに居るかは俺も聞きたいぐらいだが、どうにもお前らの先公になるために呼ばれたらしい」
「先生って、あなたが?」
怪訝そうな眼で吠を見る4人。
その背後でドアが開き、新たな誰かが入って来る。
「少なくともお前らクソガキ共よりは真っ当な者さ。
連邦生徒会長1人が行方不明になっただけで本当なら打ち首級の停学者が大量脱走。
挙句出所のわからない兵器、武装の不法流通が20倍に跳ね上がるようなトップ不在で機能不全になる典型的駄目組織におんぶにだっこのお前らより、な」
声も姿もぼんやりと思い出したさっきの夢で吠に指輪を渡したローブの男だった。
次々明かされた戦争クラスの案件に吠が眼を白黒させている間に5人の少女はそれぞれ問題の重大さに驚愕している。
「待ってください。何故あなたが最重要機密を……」
「暫定生徒会長代行のクソガキ様は物事の優先順位も分からないのか?
最終管理者がいなくなったサンクトゥムタワーは無人の城……連邦生徒会は今行政制御権すらないんだろう?」
「おい、まだ色々と呑み込めてねえけど下手したら国一個滅びそうな事態ってのははぐれ者の俺でもわかるぞ。
ここに居る全員の言う通りどうにかしないとまずいんじゃねえか」
リンは完全な部外者であるローブの男がいる状況での説明を少しためらったがどうせ知られているだろうと踏んで話し始めた。
「……それをどうにかする為のファクターがあなたです。
吠先生には元々、連邦生徒会長が立ち上げた部活……連邦捜査部シャーレの担当顧問として、此方に来る事になっていました」
「なにそれ? そんなこと今まで一度も……」
「便宜上部活と呼称しておりますが、一種の超法規的機関です。
所属は連邦組織になりますのでキヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させる事が可能なもので、更に各学園の自治区で制約なしで戦闘行動も許可されています」
「──とんでもない部活ですね。
いえ、部活というよりは最早一個の戦力ですか」
「チナツさん、あくまでシャーレは部活、そして現状所属しているのは先生のみ、今動かせる戦力はありません」
もう1人の眼鏡の名前はチナツというらしい。
「シャーレの部室は外郭地区にある一棟です、連邦生徒会長の命令でその建物の地下にあるモノを──先生を其処にお連れしなければなりません」
「そこなら今頃なんちゃらの狐とか御大層な二つ名ついたクソガキが兵隊引き連れて大暴れしてるぞ」
全員の視線がローブの男に向く。
果たしてこの男はこの流れを何処まで知っているのだろうか?
だが行かなければならない場所が戦場となっているなら確認しない訳にはいかない。
「お前ら、誰のでもいいけど携帯でテレビ見れたりするか?」
「吠先生、でいいんですよね?
もしかしてワンセグ機能のこと言ってますか?
もうどの携帯にもついてない機能ですよそれ。
代わりにネットニュースとか動画サイトでもいいですか?」
「コイツの言ってることが本当か確認出来りゃなんでもいい」
白い上着の少女、ユウカが代表してスマートフォンを起動してアプリを立ち上げる。
『クロノスジャーナルスクール特派員の綾瀬です!
ただいま我々は外郭地区に来ているのですが、ご覧ください!
先日矯正局を脱獄した停学中の生徒たちが武装し、戦車まで持ち出して暴れています! これはもう戦場です!』
「「「「「「……」」」」」」
「な?」
「……大丈夫です、少々問題が発生しましたが大したことでは」
「大事だろ、戦車走ってたぞ」
「大丈夫です吠先生、丁度此処に各学園を代表する、立派で暇そうな方々が居ます」
「まさか6人であそこに突っ込むつもりですか!?」
「ええそうしなければキヴォトスは終わります」
胡散臭い満面の笑みを張り付けたまま告げたリンが先導するように部屋を出る。
仕方なくそれに続く4人に吠も追いかけるように向かうが、ローブの男に呼び止められた。
「戦いの時が来ればもう一つの指輪も使える。
その時こそ、君の本当の始まりだ」
意味深な言葉をむずがゆく感じながらも吠は取り残されるわけにはいかなかったので急いで部屋を出た。
〇キャラクタープロフィール
名前:遠野吠
学園:連邦生徒会
部活:連邦捜査部S.C.H.A.L.E
学年:大人(顧問)の為、なし
年齢:20歳
誕生日:12月22日(山羊座)
身長:176㎝
趣味:なし
演者:冬野心央
所持指輪:テガソードレッド