戦鎚とったからパラディ島行くわ   作:匿名

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お待たせ

短すぎたので、閑話ということでよろしく。


閑話:つかの間の休息

 

 「ノルドッ!!!」

 

 飛び込んでギュッと抱き着いてくるのはクリスタ。

 

 無事に撤退できた彼女は、まだトロスト区内にノルドを含めた仲間が取り残されていると知り、何度も補給の救援を志願していた。

 

 しかし、ついぞ聞き入れられることは無かった。その後も何か出来るでもなく、ただただノルドが戻ってくるのを待ち続けていた。彼女自身、ノルドは何があっても帰ってくるだろうという確信はあったが、それでも心配の感情を抑えることは出来なかった。

 

 そして、先程取り残されていたコニーやサシャが戻ってきたことを確認して、ノルドのもとまで全力で駆けていた。

 

 ノルドが居たのは皆から少し離れた場所だった。そもそも、他の脱出組とは遅れて帰還した面々がいて、そこからも少し離れている。

 

 今ここにいるのは、先程の一件で守秘義務が課せられたノルドと、彼を探し走ってきたクリスタ。そして、追いかけてきたユミルだけだ。

 

 

 ノルドは抱き着いてきたクリスタを迎え入れるように、しっかりと全身で受け止める。

 

 「心配かけてごめんな、ちょっと遊んできた」

 

 「本当だよぉ……」

 

 涙ぐみながら、もう絶対に離さないと言わんばかりに両腕を回し、頭をぐりぐりと擦りつける。

 ノルドは痛い痛いと軽く囁きながら、片腕を拘束から抜け出し、クリスタの頭を撫でた。

 

 「ユミルもいいんだぞ、ほれ」

 

 そして彼の隣で何か言うでもなく、何か言いたそうな様子のユミルに声を掛ける。

 正面を占領するクリスタを横にずらし、片方の腕を開ける。

 

 「はぁ…………女の敵っぷりがすっかり板についてんな」

 

 とは言いつつも、彼女もクリスタ同様にノルドの胸へ収まった。身長の違いでクリスタとは違い、顔はノルドの肩に置かれている。

 

 誰も見ていないとはいえ、外ですることではないぞ。

 

 しばらく、三人で抱き着いたまま時間が流れた。

 ()()()()()()()()()()が、お構いなしである。

 

 そのまま、何かしらのイベントが発生するまで続くと思われた空間だったが、そうはいかないようだ。

 

 「ねぇ…………ノルド」

 

(あっ、なんかデジャブが……)

 

 沈黙を破ったのはクリスタである。

 顔を上げないまま、胸にしがみついた体勢で話し始めた。

 

 「ちょっと聞きたいことがあったんだ。あの時はノルドの安否と、準備で忙しかったから聞きそびれたんだけどね」

 

 「…………な、何かな?」

 

 既視感を覚えた彼だったが、この姿勢は動くことすらままならない。

 ちゃっかり、ユミルも力を込めているらしく逃がす気はなさそうだ。

 

 「多分、ノルドも気付いてるんじゃないかなって思うんだけど」

 

 一旦そこで言葉を切り、顔を埋めたままなのは変わらず深く息を吸って吐いてを繰り返し、ぽつりと呟いた。

 

 「…………しちゃった? それも、ユミルと一緒に」

 

 それを聞いたノルドは、アニショックとは違い微動だにしない。

 とある世界に存在する、水の拾壱ノ型をくらったが如く、彼の心は穏やかだった。

 

 「……………………酒って怖いね」

 

 どこかで聞いたような言葉が、彼の口から出てくる。

 

 「そ、そうだね。怖いよね…………えへへ

 

 濁された彼の言葉、その真意をしっかりと理解したクリスタは胸の中で小さく笑みをこぼす。

 

 聞こえてますよー。

 

 「まぁ、私としては全然いいけどな? 記憶が飛んでるのだけは寂しいが」

 

 この場にいる三人に、昨夜の記憶はない。

 酒に弱かったクリスタは皆と飲んでいた段階から記憶が無く、ノルドは露天で買った(ユミルに買わされた)度数の高い酒を無理矢理飲まされた以降の記憶がない。ユミルもまた、余ったその酒を一気飲みした為に記憶が飛んでいる。

 

 記憶紛失やらかし三銃士である。

 

 「私も少し寂しいかな…………」

 

 「どうする、もっかいやるか?」

 

 「ふぇ!?」

 

 身も蓋もないことをいうのはユミルの特権というものだろうか。

 案の定、クリスタは彼女の発言を聞き、顔を見ずとも赤面してるのが分かるぐらいに耳まで真っ赤にしている。

 ついでに、より強く回している腕に力が込められているのが分かる。

 

 「落ち着いてクリスタ」

 

 ノルドも背中に回した片腕で優しく擦る。

 

 「なんだ、クリスタ? もうやっちまったもんは仕方ないだろ。オープンにいこうぜ?」

 

 そんなクリスタの様子にケラケラと笑う声が向けられる。

 

 「まったく、ちょっとは慎みを持ってくれユミル」

 

 「いやだね、私はもう自分を偽らないと決めたんだ。これが私さ」

 

 男に抱き着いているのに、なんと堂々とした言い草だろうか。

 ノルドは明け透けなユミルに、嘆息した後にある種の覚悟を決める。

 

 (もうここまで来たら、ユミルは助けないとな。ここまで来なくても助けるつもりであったけど。原作からズレる音がするぅ)

 

 本来は交わらぬ二人を早々に引き合わせたり、敵国の女戦士を虜にしておいて、お前は何を言ってるんだ。

 

 「はぁ…………俺も、よく分からずに終わっていたんだ。しっかりと愛したいとは思ってるよ」

 

 ノルドとて、転生者だ何だという以前に一人の男である。

 好意を向けてくれる女の子2人(+1人)の想いに応えてやらねば廃るというもの。

 

 二人に回した両腕に力を込めて、苦しいと感じるほど強くする。

 クリスタ、ユミルとの密着率が上昇し三人の間に、もはや隙間なんてない。

 

 「「…………んっ……」」

 

 より抱き寄せられた二人は、あまりの圧迫感に少し呻き声を漏らす。

 それでも、苦しいとは言わない。

 彼女らにとってノルドから軽いアクションはあっても、強いアプローチが来たことはほとんどなかったからだ。そのノルドがここまで自分たちを求めてくれた。

 

 彼の想いに応えたい。

 今の二人の中にあるのはこれだ。

 

 それぞれが顔を上げて、ノルドの顔を見る。

 その眼はとろんと蕩けており、とても熱い眼差しになっている。

 

 三人の視線が交錯する。

 もうその視界には彼ら以外が映ることは無く、理性も徐々に蒸発し始める。

 

 昨夜のリベンジといっても不思議ではない。そんな甘くピンクに染まった空間。

 ここが外であることなんて関係ないと伝わってくる空気。

 身長が異なる為にズレる視点もお構いなしに、三人は額に重ねる。

 

 これから始まるって?

 残念ながら、これ以上はダメです。

 

 

 「こほんっ」

 

 絶対の禁域に足を踏み入れ、咳払いをする人間が現れた。

 

 アニである。

 

 彼女はクリスタやユミルがノルドのところに行ったのを追いかけて、今までずっと物陰から覗いていた。

 先ほどまで漂っていた甘ったるい雰囲気に、嫉妬と羨望を無意識で覚えたようだ。

 

 そのまま彼らの情事を見続けようかなと思うほど、彼に脳を焼かれてしまっていたアニだったが、遠くから聞こえた召集の号令が耳に届き正気に戻ることが出来た。

 そして、目の前の彼らにその号令が聞こえていないのも分かった為、咳払いを一つ入れたのだった。

 

 それが耳に入った三人は、すぐに離れるといったよくあるラブコメのような挙動をすることはない。

 触れていた額が離れ、ノルドの腕が背中から離れる。くっついた状態は変わらず、次に二人が回した腕を解く。

 お互いが支えるものはなくても、離れたくないという意思がひしひしと伝わってくる。

 

 「また、今度な。ちゃんとやろう」

 

 「…………うん、待ってる」

 

 「分かってる。いつでもいい」

 

 そう言ってようやく三人は密着した身体を解放した。

 

 アニはその様子を見て、ため息を吐く。

 その色はどこか羨望が混じっており、熱がある。

 

 「…………今さっき、お偉いさんが号令をかけてた。門前で何か始まるんだってさ」

 

 「そうだったのか、全然気づかなかった。ありがとう、アニ」

 

 「…………気にしなくていいよ」

 

 気にしなくていい、とアニは言うが、どこか期待するようにチラチラとノルドに視線を投げる。

 明らかにご褒美を欲しがっている顔だ。

 

 そんな彼女の心の願望にいち早く気づいたのはユミル。

 

 「はっはーん?」

 

 意味深にウンウンと頷いて、アニに近づく。

 そのまま後ろに回り、勢いよくドンと突き飛ばした!

 

 「きゃっ!?」

 

 いきなり背中から突き飛ばされるとは思ってなかったアニは可愛い悲鳴を上げ、躓きながら前に押される。

 

 少し危ない行為かもしれないが、そこは安心してほしい。彼女が押された先にはちゃんと彼がいる。

 

 「おっと、大丈夫かい?」

 

 「…………あっ……」

 

 ほんの数秒、支えるように添えられた腕は、抵抗する間もなく背中に、気が付けば抱きしめられていた。

 

 想定外の温もりを味わってしまった彼女は、ユミルからの攻撃?で強張っていた身体が、徐々に弛緩していくのを感じる。

 

 ダラリと下げていた腕が、ゆっくりと持ち上げられ終いには、ノルドと同じように回される。

 

 なお、こんな事をしでかした張本人さんは、いい仕事をしたと満足げな顔だ。

 

 「……アニ、ありがとう」

 

 「…………んっ……」

 

 改めて彼女の耳元でお礼を告げると、くすぐったそうに体を身動ぎする。

 残念ながら顔を上げてくれなかったため、どのような表情をしていたのかを窺うことは出来なかったが、想像に難くない。

 

 たっぷりとアニを堪能した後、ノルドは彼女を解放する。まだ浸っていたいのか、彼女はゆっくりと名残惜しそうに体を離していく。

 

 ノルドから離れたアニは、正気に戻った!

 一気にやって来た羞恥の感情に全身を支配されたのか、一歩一歩ノルドから距離を取りながらも、その体は震え続けている。

 そんな様子のアニに、クリスタとユミルは近寄っていく。女子三人集まれば姦しいという言葉がある通り、彼女らは何かと話し始めた。

 

 

 (この短時間で3人も抱きしめちまった。このあと、俺死ぬのでは? それはそうと、ごちそうさまです!)

 

 「そう言えば、集合が掛かってるんだっけか? 急がないとな」

 

 心の声をおくびにも出すことなく、次にすることを話していく。ふと壁を見上げれば、差し込まれる太陽の光が夕焼けに変わりつつあるのも確認できた。

 

 早く移動しなければピクシス司令の『ちゅーもーく』を聞きそびれてしまう。いや、かの御仁の声量ならどこにいても届くかもしれん。

 

 そんな認識のもと、何やら先ほどから騒がしい女子組へと目を向ける。

 

 「ねぇ、アニ。どうだった、ノルドの腕! 暖かかった?」

 

 「え……あ、いや……その」

 

 何と驚きクリスタがアニを揶揄っているではないか。

 ユミルがするならいつもの光景だったが、珍しいことにクリスタが積極的に先程の件を弄っているようだ。

 自分がつい先程まで、耳まで真っ赤に染めていたのをお忘れかな。

 

 「そろそろ行くよー」

 

 出来ればもっと見ていたかったが、流石に時間がない。

 ノルドは苦渋の決断を下した。

 

 そして、アニ含めた四人で兵士が集まっている門前に向かうのだった。

 

 ◆ ◇ ◆

 

 「……っ……アニ…………どうして、君は……」

 

 あーあ、見つかっちゃった♪




優柔不断な彼は、このことを介護している精神分裂お爺ちゃんに話したそうだ。

さて、どうなるか?
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