戦鎚とったからパラディ島行くわ   作:匿名

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お待たせ。

エタりはしません!
すぅぅぅっと投稿していこうと思います(週一で)。


反撃前夜

 

 「調査兵団に所属したお前たち新兵にはまず()()()を覚えてもらう!」

 

 新兵の教育係を務めているネスが、教室でチョークをもって指導を行っている。

 

 新兵勧誘式の翌日。調査兵団に所属した104期の面々は机に座り、一か月後に行われる壁外調査、その陣形について学んでいた。

 訓練兵時代を思わせるような、座学であるが壁外調査という死の危険が待っている任務を前に真剣に聞いている。

 

 ノルドもみんなと同じように、陣形について確認していた。

 

 長距離索敵陣形、そう呼ばれる現団長エルヴィンが考案した陣形。これが実施されてからの調査兵団の死亡率は激減したと言われるほど、理に適った形だ。

 

 それぞれの配置がどういった意味を持っているのか、新兵たちの場所はどこかを説明されていく。

 

 だが不思議なことに、そこにノルドの位置は記載されていなかった。

 それを疑問に思ったノルドは、ネスに尋ねた。

 

 「すみません、班長。ここに私の位置が記載されていないようなのですが」

 

 「何ぃ? …………ほんとだな、書きミスか? だが、エルヴィン団長がそんな…………」

 

 ネスからしても予想外だった。

 この配置はすべてエルヴィンの指示の下、組み込まれたからだった。本来、新兵の位置などもっと内側のはずで、その位置をネスなどが長年決めてきた。

 

 しかし、今年にかぎってはエレンという超存在によって狂った。

 だからこそ、エルヴィン団長が直々に新兵たちの位置を逐一事細かに指示していたのだ。それなのに、一人漏れがあった。

 

 これはネスの一存で決めることはできない。

 そう判断した彼は、一つ頷き質問の投げたノルドに返答した。

 

 「漏れがあったみたいだな、すまないスカーレッド*1。本日の業務終了後、作戦室に来てくれるか?」

 

 「分かりました」

 

 ノルドの名前漏れについてはここでおしまい。

 それにどんな意味があったとしても、この場にいた面々は気づくことはない。

 

◆ ◇ ◆

 

 コンコンッ

 

 扉をノックされる音が作戦室に静かに響く。

 

 「入りたまえ」

 

 「失礼します」

 

 団長の許可が扉の向こうに伝わり、一人の兵士が入室してくる。

 

 ノルドである。今日の座学で自身の名前が無かった彼は、配置先を聞くためにこの作戦室に訪れていた。

 

 「……っ…」

 

 入室してすぐ、彼は息をのんだ。

 それも無理はないだろう。正面の大きな机、その椅子に座っているエルヴィン団長をはじめ、リヴァイ兵士長、ハンジ、ミケ分隊長といった調査兵団きっての実力者たちが揃い踏みしていたのだ。

 

 逡巡は一瞬。

 改めて姿勢を正し、心臓を捧げる敬礼をとる。

 

 「皆さま、お疲れ様です。ノルド・スカーレッド104期調査兵です。第57回壁外調査での配置について話があるとお聞きしました。察するに、お待たせしてしまったようで、申し訳ありません」

 

 「いや、気にしなくていいよ。君を呼んだのは私だ、むしろ大所帯になってしまってすまないな」

 

 ノルドの言葉にエルヴィンが優しい声音で返す。

 

 「ほーん、君がエルヴィンの言ってた例の子かい?」

 

 「例の……というのは些か分かりかねますが、スミス団長とは被検体殺害事件の際に少し話をしております」

 

 「ぐはっ!?」

 

 行儀悪く机に尻を乗せたハンジが興味深げにノルドに話す。それに対して真面目腐った表情と声で、ハキハキと返事をするのが彼だ。

 

 と、しっかりと返したというのにハンジはある言葉に反応して、膝から崩れ落ちた。

 

 「ッ!? ハンジ分隊長!」

 

 それに焦ったのはノルド。真面目に返答したというのになぜかハンジの精神に多大なダメージを与えているのだから。

 

 「ハンジ、巨人が死んだ程度に一々リアクションしてんじゃねぇ。鬱陶しい」

 

 そんなハンジの頭はちょうどソファに座るリヴァイ兵士長の足元に転がった。

 脚にぶつかりそうになったリヴァイがすいと避けて、顔を顰めながら紅茶を飲んでいた。

 

 「それより、エルヴィン。この新兵を起用するのか?」

 

 「あぁ、その通りだ。彼なら出来るだろう」

 

 「使えるのか?」

 

 「それも問題ない。成績優秀でトロスト区襲撃の際も、単独で幾体かの巨人を討伐しているのは報告にあがっている」

 

 「……そいつは良いな。不測の事態でも活躍してもらおうか」

 

 ノルドをそっちのけでドンドンと会話が進んでいく。

 といっても、ノルドは察しのいい方だ。何故呼ばれたのか、ここまでの会話から何となく状況は理解できている。

 

 「…………エレンを狙う知性を持つ巨人を誘き出す。その為の作戦と考えても?」

 

 一石を投じる。

 この発言に驚いたのは、ミケとハンジ。

 リヴァイは形の良い眉が、少しだけ上がった。

 エルヴィンは先日の会話から、辿り着けるだろうと判断していた。

 

 「…………なるほどな、確かに優秀だ。味方ならな」

 

 「味方だとも……少なくとも今回は。そうだろう?」

 

 目の前で、何とも意味深な会話が繰り広げられて、しまいには自身に矢印が向く。

 引き攣りそうになる頬を何とか抑え、団長のご希望に沿った回答をする。

 

 「ええ、もちろんです。そっちの方が()()()じゃないですか」

 

 (邪魔しませんとも、むしろ参加できるならバリバリ働かせてもらいますよ~。あっ、それなら今度アニにあった時、殺しを禁止にしときますか。いや、流石に無殺害で右翼を通り抜けるのは無理だな。森に入ったら殺人はダメぐらいにお願いしとくか)

 

 もはや、アニは彼の言いなりかのような心の声。

 

 

 いつの間に掌握したんですか? 回想シーンでもいいから描写ください。

 

 

 「なるほど、面白い……ね。エルヴィンが気に入るわけだ」

 

 「ほら、言っただろう? 彼は逸材だと…………さて、少し話がずれてしまったね」

 

 先ほどまでのような柔らかさの伴う声音ではなく、組織の長としての顔が覗きだす。

 ここからが、ノルドが本命の様だ。

 

 「今回、君の配置を作戦計画書類に記載していなかったのには理由がある」

 

 エルヴィンはそう言って机の上に置いてあった一枚の紙をノルドに見せた。

 

 「第57回壁外調査、本作戦の真の目的は推定:人類の脅威である鎧の巨人や超大型巨人、またはそれに類した敵性存在の捕獲だ」

 

 「はい」

 

 「ふっ、まぁ先ほど君が言ってくれた内容と同じだ。なぜ我々がこの作戦を立てたか、分かるかい?」

 

 じっとノルドの眼を見つめるエルヴィン。そこには、まるで彼を試すかのような色が伺える。

 エルヴィンだけではない、その場にいる皆がノルドに注目している。

 しかし、ノルドは晒される数々の視線に臆することは無く、推測(原作知識)を披露する。

 

 「トロスト区の内壁が破壊されなかったから…………ですよね?」

 

 「ふむ、正解だ。まぁ、詳細を語ればこうだ────」

 

 そこからは、エルヴィンの飛躍した推測を踏まえつつ経緯が説明される。

 

 ノルドは概ね理解していることばかりであるが、改めて経緯含めて現在のエルヴィン団長らの意志を確認していった。

 

 「────という具合だ。大丈夫かい?」

 

 「問題ありません」

 

 「それは良かった。今回の作戦で君は他の新兵とは異なる場所についてもらう」

 

 手に持っていた紙をノルドに渡す。

 受け取った書類に目を通せば、作戦の詳細が記載されていた。

 

「…………なるほど。エレンを狙う存在が現れた際の時間稼ぎ要員、といったところですね」

 

 中央・最後方

 

 それが秘匿されるノルドの配置箇所。

 

 エレンが居る中央・後方よりも後ろに位置しており、敵性存在と接触後に巨大樹の森でエレンを守る時間稼ぎ用の人員。

 

 原作では、エレンが女型を最初に認識したシーンで、握りつぶされたり、ワイヤー掴まれて巨人の肩と巨大樹に挟まれた兵士たちが受け持っていた場所だ。

 

 「無論、死んでくれ、などと言うつもりはない。あくまで時間稼ぎに徹してほしいというだけだ。君の頭脳と実力があれば、罠がある場所までの時間を稼ぐことは可能だと私は判断した」

 

 (ほうほう、中々いいポジションに入れたんじゃないか…………でも、待てよ? 新兵をそんな都合のいい場所に置くか普通)

 

 ご都合主義は未来から宿命づけられた主人公だけ。それを理解しているノルドは与えられたモノを鵜吞みにしない。

 

 (考えられるとすれば、一網打尽ってところかな。本当に味方ならそのまま作戦に活用すればいい、敵ならばやってくる知性巨人諸共に捕まえればいいってスタンス?)

 

 彼の考えは概ね当たっている。もとより巨人殺害の件から、たとえエルヴィンにとって満点の回答をしても、疑わしいことには変わりない。

 

 いくら、今回は味方と心が判断していても、絶対は無い。対応できる策は用意しておく。

 

 ノルドが敵性存在である可能性は、全然あり得るというのが上位陣の判断だ。だからこそ、釣り糸を垂らす。そこに喰いつけば敵、そうでないならひとまず味方。

 

 それを壁外調査という名目の誘き寄せ作戦で確認したかったのだ。

 

 (だとしたら、その意図がバレてるって思われないようにしないとな。俺は団長に選ばれた凄い新兵だ。俺は団長に選ばれた凄い新兵だ…………ヨシッ!)

 

 「分かりました。全力で任務に当たらせてもらいます」

 

 いかにも、ある程度は気づいているけどその裏までは理解してないよムーブを披露した。

 

 「あぁ、期待しているよ。それでは下がってくれて構わない」

 

 「それでは失礼します」

 

 そのまま作戦室を後にするノルド。

 少なくとも、どのような形であれ作戦に関わることができると内心小躍りしながら、ついでに安堵をもって用意された自室に戻っていった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 「あの様子は…………恐らく、気づいたね。私は彼を味方と判断しているが、何も対策を講じないのは愚の骨頂というものだ」

 

 ノルドが出ていった扉をじっと見つめていたエルヴィンは、彼の挙動からその心理を見抜いていた。

 

 「ふーん。そんな様子、欠片も分からなかったけどな〜」

 

 「隠すのがうまかったからな、私でもしっかりと観察していなければ気づかなかった。それに、彼はまだ何か隠していることがある。先の様子は、疑われているのを理解したからこその反応だ」

 

 もはや断定である。

 

 「しかし、我々が標的としている推定:人類の敵ではなさそうというのが、如何ともし難いな」

 

 人類の敵側勢力ではない。しかし、純粋な人類勢力か言われれば否だろう。

 

 「だから、そこか」

 

 リヴァイは用意した紅茶を飲みながら、作戦書類を見ていた。

 

 「中央最後方。言っちまえば、どちら側だろうと今回の計画にかなり影響を与える事が出来る立ち位置だ。そして、そうでありながら俺という存在が最も近い場所でもある」

 

 味方ならば、巨大樹の森の中でやってくるであろう巨人に対して、時間を稼ぐ事が出来る。

 敵ならば、その巨人の陰に隠れてエレンの強奪に動くだろう。

 

 だが、前方にいるのは人類最強。生半可な力では、人であろうと巨人であろうと関係なしに、殺すことが可能な超級戦力。

 

 「その通りだ。彼がどう動くかで、こちらも手を変えることになる」

 

 「ただでさえ、忙しいってのにこれまでしないといけないなんて大変だよ~」

 

 「もちろん、ノルド・スカーレッドが味方であるのが一番ではあるが、何事も最悪を想定して然るべきだ」

 

 常に最悪を見据え、未来を掴まんと進み続けてきたエルヴィンだからこそ、言える台詞なのだろう。

 

 「ひとまず、本作戦における重要な部分はこれで終わりだな。あとは細々とした所を合わせていくとしよう」

 

 相まみえるは、一か月後の壁外調査。

 その日までに自身が出来る事を全力で全うする彼であった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 「それで? 私が右翼側から攻めればいいってこと?」

 

 「そうだ。作戦ではカラネス区からシガンシナ区までのルートを改めて探るのが目的らしい。煙弾を使って進行方向を伝達するから、お前でも認識できるはずだ」

 

 場所は裏路地。一般人であれば基本的に立ち寄ることが無いような、薄暗く危険な場所。

 

 闇の住民が蔓延る裏世界、その入り口に屯しているのはフードを深くまで被り人相が分からない三人組だ。

 

 「渡された作戦書によると、あいつは右翼側に配置される。持ち出すことはできなかったがな。お前が巨人を呼び寄せて、右翼側に行けばそれだけで索敵陣形は機能不能になる」

 

 「そっか…………分かった」

 

 「頼むぜ、アニ」

 

 「……………………」

 

 今この場にいるのは、マーレから来た戦士であるライナー、ベルトルト、アニの三人だった。

 

 ライナーからエレン強奪計画における自身の役割を聞いたアニは、眼に諦観を浮かべて頷いた。

 

 

 「奪還作戦でマルコが逝っちまった時から、お前さん、精神的に参ってる様子だったからな。少し心配だったんだ」

 

 「別に、あんたが気にするほどのことじゃないよ」

 

 「……………………」

 

 三人が、否、二人が話す。

 

 「それで、あいつが継承した巨人が何か分かった?」

 

 「それについてはすまん。さっぱりだ。そもそも、あまり接触が出来てないってのが現状だ。俺たちとは隔離されていて、不用意に近づけない」

 

 「……………………」

 

 彼らからすれば未だマーレの手中に収まっていない進撃か始祖かの二択。ついでに、来る途中で失った顎。もしこれで進撃や顎だった場合、作戦失敗に終わってしまう。

 

 何が何でも継承する巨人を把握して、始祖の場合は奪還することがメインになってくる。どの道、情報がエレンしか無いので彼を攫うことに変わりはないのだが

 

 だからこそ、アニの内地調査も続いている。

 内地で活動できるようになったため、時間こそ伸びたがそれ故にやることが増え、結果として寝不足なのは昔と変わらなかった。

 

 「そう、ならこっちの調査も続けないといけないね」

 

 「すまんな、きついだろうが頼んだ」

 

 「ん…………それで、話し戻すけどさ。その、ノル……っん゛ん゛……他の皆はどこに配置されているのか分かる?」

 

 「…………っ!?…………」

 

 「そうだな、そこも知っておいた方がいいだろうな」

 

 ライナーは自身の知る限りの、索敵陣形の情報を教えた。

 

 と言っても新兵に配られる資料では、他先輩方の情報は殆ど記載されておらず、左右伝達班周辺の人員しか載っていない。

 

 唯一、団長の場所は書かれているが中央なのは考えなくても分かること。

 

 だから伝えるのは104期の面々がどこに配置されているかだった。

 エレンが右翼索敵班であったり、ジャンやアルミン、クリスタが右翼伝達班であったり、ミカサやサシャが左翼伝達班であったり、ノルドが()()()()()()()である、といった内容だった。

 

 「ふぅ⋯⋯⋯⋯良かった

 

 「ん? なんか言ったか?」

 

 「いや気にしなくていいよ」

 

 小さく、それこそ目の前にいる二人にすら聞き取れないような囁き声で、安堵を漏らした。

 

 「とまぁ、こっちはこんな感じだ。アニ、調査の方の進捗を聞いてもいいか?」

 

 「……分かった、といってもそこまで進んでいる訳じゃない。なにしろ────」

 

 こうして互いの情報をすり合わせる共有会は終わった。

 

 

 

 

 

 これは壁外調査前にノルドがアニに接触する3日前の出来事である。

*1
ノルドの姓




勢いがなくなってきました。

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