戦鎚とったからパラディ島行くわ   作:匿名

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お待たせ。

筆が遅くなりつつある。萎えぽよ




壁外調査①

 

 リンゴンと鐘の音が鳴り響く。

 

 「開門三十秒前!!!」

 

 ノルドが特別作戦に組み込まれたことを知った日から、約1カ月。何度も綿密な打ち合わせを繰り返し、これ以上ないほどに仕上げられた壁外調査。

 

 調査兵団はカラネス区外門前に集合していた。

 そこにはノルドを含め、入団したばかりの104期兵もいる。

 

 「いよいよだっ! これより人類は、また一歩前進する。お前たちの成果を見せてくれ!!!」

 

 「「「おおっ!!!!」」」

 

 新兵以外にもちらほらと窺える緊張した面々に檄を飛ばすように、ベテランの先輩兵士が声をあげる。

 それと同時に、塞がっていた門がガラガラと重い腰を上げながら徐々に上がっていく。

 

 門がゆっくりと上がっていくのを全員が静かに見ている。馬に乗った兵士が通っても問題ないくらいまで、開ききった門。

 

 一瞬の静寂、そして

 

 「進めぇぇぇえええ!!!」

 

 一番先頭に立つエルヴィンの猛る咆哮を合図に、調査兵団は馬を駆ける。 

 

 「第57回壁外調査を開始するっ! 前進せよ!!!」

 

 調査兵団の上位陣を先頭に、門の外に広がる放棄された旧市街地を駆け抜ける。

 ノルドも最後尾を維持したまま、それに続く。

 

 旧市街地に現れた巨人を、援護班に任せながら抜けた先、広大な平野が面前に圧倒する。

 

 この時になってようやく始まる。

 

 「長距離索敵陣形、展開!」

 

 号令とともにそれぞれが事前に通達されていた配置に移動する。

 ノルドの位置はエレンの後方。

 

 六列中央・殿

 

 (さて、待ちに待った壁外調査。唯一を除いて、原作通りになるよう仕込みも済ませた)

 

 馬を駆けながら、配置についたノルドはこれから起こるイベントを待ち遠しく思っていた。

 

 (懸念点として、俺が秘密の作戦に関わることで団長が何をしてくるか。狂っているともいえる思考力を持ったあの人が、俺というイレギュラーに対して手を打ってないとは思えない)

 

 ノルドに驕りはない。

 彼は、確かに特殊な存在だ。頭の回転も非常に早い。しかし、それが簡単に団長やアルミンといった作中きっての切れ者に通用するとも考えてはいなかった。

 

 だからこそ、考える。

 原作知識という絶対のアドバンテージを活かし、彼らより先んじた対応をすることを心掛けていた。彼にとって、エルヴィンの質問対象者に選ばれるのは予想外だったが、それでも知識を以て捌いて見せた。

 

 (あの人たちの俺に対する策が壁外調査に関係ないなら問題ない。あったとしても、ズレてなければ許容範囲内)

 

 壁外調査は『進撃の巨人』の中でも、かなり重要なシーンだ。

 ここがブレることでこの先の展開が大きく変わってくるだろう。

 

 女型の巨人というエレンのような存在でありながら人類の敵が明確に登場する。

 多くのベテランが死ぬことで、実力者の数が減り、もっと多くの兵士が死んでいく。

 女型の正体に気づくことで、ストヘス区の事変が起こる。

 リヴァイ兵長の負傷。

 

 などなど、多岐に渡る。

 

 だからこそ、あまりやってほしくはないがアニの大虐殺を事前に止めることはしなかった。彼女がより精神を疲弊させてしまうのを理解していながら…………。

 

 「一応、なるべく負担を減らす方法は提案したから、どこまで彼女が耐えきれるかの勝負でもあるのか」

 

 当日になって、別の課題も浮き彫りになってくるのはどの時代でも同じか。

 

 「どうした!? 新兵、何か言ったか?」

 

 と、どうやら無意識に呟いた独り言がノルドと同じ班の兵士に届いていたようだ。

 

 「独り言です! お気になさらず!」

 

 「そうか、まぁ、緊張しちまうのはしょうがねぇ。しかも、お前さんは団長から直々に抜擢されているんだからな」

 

 馬を駆け隊列を組みながらの進行。

 ベテランの兵士はノルドを優秀だが、まだまだ新兵としての青さが見えると判断したようだ。

 

 (本当にそうか? この人たちが何かしらの密命を帯びている可能性もある。警戒はしておくべきだな)

 

 エルヴィン・スミスに目を付けられた、これは祝福と同時に呪いでもある。

 これから先、自らの正体を探らんとする彼を搔い潜っていく必要がありそうだ。

 

  

 

 ◇ ◇ ◇

 

 (違うっ、あ、あれは奇行種なんかじゃないっ!!!)

 

 アルミンは先程、目の前で繰り広げられた一幕を思い浮かべながら、必死で馬を駆ける。

 

 

 右翼側から異次元の速度でやってきたその巨人は、自身に向かってきた調査兵を手で掴み、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして、的確に移動の要である馬を空高くまで蹴り飛ばしていた。

 

 (直接殺してはいない…………けど、立体機動や馬無しで平野に置き去りにするなんて殺しているのと同じだ!)

 

 黒の煙弾を打ち上げたアルミンが見た光景。

 それはトロスト区やつい先ほど見た奇行種などとは一線を画すほどの衝撃的なものだった。

 

 (そして、自分の手を汚すことを嫌う。その在り方は、まさしく人間だ。あの巨人は鎧や超大型、エレンと同じ、巨人の皮を纏った人間だっ!!!)

 

 あれを見たあと、逃げるように走り出したアルミンだったが、思考に集中しすぎた影響か、件の巨人がもうそこまで迫っているのに気が付くのが若干遅れてしまった。

 

 (あっ)

 

 後ろを振り返れば、見えるのは巨大な足。

 見上げれば、こちらを覗き込む巨大な顔。

 

 次の瞬間には、巨大な足がアルミンの真横を潰すがごとく、ドシンと踏み抜かれる。

 

 その破壊的なまでの衝撃に、たまらず落馬してしまったアルミン。

 咄嗟にフードを被り腕で頭を守ったことで、深い怪我こそしないまでも腰を抜かしてしまい、動くことが出来なくなった。

 

 (…………っ……終わった。殺すことはしないだろうけど、何かしらで移動手段を削がれて、そのまま他の巨人に食べられておしまいだ)

 

 恐怖で体が動かなくとも、思考だけがはっきりと回り続けている。

 打てる策など存在しない。ただ、現状を正しく認識するしかできない。

 

 ゆっくりと訪れる絶望を前に、アルミンは生を諦めるかのように目を閉じる。

 

 ────しかし、

 

 いつまで経っても絶望が降りかかってくることはなく、疑問に思った彼が目を開けば、くいっと抓まれるように外されたフードとこちらの顔を覗き込む女型の巨人が映った。

 

「っ!?」

 

 自身が頭の中で予想していたこととは大幅に異なる光景に愕然とした感情を隠す事が出来ない。

 

 人相を確認した女型の巨人はアルミンに対して何かするでもなく、屈んでいた身体をそのまま起こすと遭遇時と同じように、綺麗なフォームで陣形内へと走っていった。

 

 (………………はっ? え? これは、一体…………何が)

 

 さしものアルミンも、機動力を奪われることはなく、ましてや馬さえ手を付けずに離れていった巨人の一連の行動に疑問を隠せなかった。

 

 止まりつつあった思考が息を吹き返す。

 そして、ゆっくりと手を自らの顔に当てた。

 

 「なんだ今の……フードを抓んで……顔を確認された?」 

 

 自らの現状を二の次にしてアルミンは、あり得ない出来事について思考をすべて費やしていた。

 しかし、ここは未だ陣形内。

 当然ながら後列からやって来る味方がいた。

 

 「アルミンッ!!」

 

 「ハッ!? ライナー!」

 

 自身を呼ぶ声に、集中が切れ今の自分の状況を確認することができた。そしてアルミンは呼ばれた声に振り返り、自身を呼んだのが誰なのかを認識した。

 

 地面にへたり込んでいるアルミンへと馬に乗りながら、近づいたライナー。

 

 「おい、立てるか? いや、取り敢えず、馬を走らせねぇと壁外じゃ生きてられねぇぞ!」

 

 呆然とライナーを見上げるアルミンに喝を入れるかのように声をかけた。

 

 「急げっ!」

 

 「う、うん!」

 

 先ほどの衝撃で倒れていた馬はすでに起き上がって、周囲をグルグルと闊歩していた。

 おそらく混乱状態なのだろう。そんな馬をアルミンは少し時間をかけ宥めて、かなり遠くまで行った女型の巨人を追いかけ始めた。

 

 □

 

 その後、右翼から打ち上げられた黄色の煙弾を見て、同様に打ち上げたジャンが女型の巨人を追い掛けるアルミンとライナーに合流を果たした。

 

 「────右翼側が一部壊滅したらしい。脚の速い巨人がわんさか現れたってよ」

 

 「っ…………あいつが来た方向からだ。あれが多分、巨人たちを引き連れてきたんだ」

 

 ジャンからの報告を聞いたアルミンは正面を走る巨人を睨みつけ、頭を回し、いままでの事象について納得のいく答えにたどり着いた。

 

 「あいつ? なっ……何であんなところに巨人が!? 奇行種か!」

 

 アルミンの視線が気になったジャンは、その先を目で追いかけると、陣形のかなり内側であるにも関わらず正面を悠々と走り続ける巨人を目視した。

 

 「違う、あれは奇行種なんかじゃない。エレンと同じ事が出来る、巨人を纏った人間だ!」

 

 ジャンの問いに否と返し、自らの意見を告げる。

 

 「なぁ、アルミン。どうして、そうだと思ったんだ?」

 

 ジャンとは違い、一度聞いていたライナーは、アルミンがそこまで至った根拠を問うた。

 

 「…………巨人は人を喰う事しかしない。捕食という殺すことはあるけど。逆に言えば喰う為に、人を殺すんだ」

 

 先ほど、自身が見た光景を思い浮かべながら、アルミンの言葉を待つ二人に話す。

 

 「あいつは人を殺さなかった。馬だけを的確に殺したり、足や腕の骨だけを折ったり、立体起動装置だけを破壊したり、徹底的に機動力を奪うんだ。あいつは自らの手で人を殺すことを忌避してさえいる。重度の怪我を負わせてこんな壁外に放置するなんて殺しているのも同義なのに」

 

 それを聞いたジャンとライナーは息をのんだ。

 

 「その矛盾した在り方は間違いなく人間そのものなんだ。他の巨人とは、その本質が違う。超大型や鎧が壁を破壊したときに大量の巨人を呼び込んだのは、きっとあいつだ。目的は一貫して、人類の攻撃……ん?」

 

 自身で頭を整理しながら、出力していたアルミンはここにきて違和感に気づいた。

 

 「いや……どうかな。誰かを探してるんじゃないかって気もする。もしそうだとすれば、探しているのは────」

 

 そしてようやくたどり着く。

 

 「エレンッ!!!」

 

 アルミンの答えにいち早く反応するのはライナーだった。

 

 「エレンだと? エレンのいるリヴァイ班ならあいつが来た右翼側を担当しているはずだが……」

 

 「えっ?」

 

 「右翼側だと? 俺の作戦企画書には左翼後方辺りになってたぞ」

 

 「僕の企画書には右翼前方辺りと示されていたけど」

 

 ここで情報を擦り合わせ、初めてエレンの場所が誤魔化されていたことを知った。

 また、アルミンは企画書を見た時からあった小さな違和感がここで咲いた。

 

 「いや、そんな前線に置かれるわけがない」

 

 「じゃあ、どこにいるってんだ?」

 

 これに密かに焦るのは当然ライナーだ。団長に一杯食わされたと知り、なんとしてでも挽回しなければという思いがあった。また、アニが自らの手で人を殺していないという情報も、彼が焦る要因の一つになっている。

 

 「この陣形の一番安全な場所にいるはず。だとしたら…………中央の後方辺りかな」

 

 焦るライナーは露知らずと、問われた疑問をそのまま答えていく。

 

 「アルミンッ! 今は考え事してる余裕はねぇぞ!」

 

 そんな二人の様子を見かねたジャンが声を挟む。

 

 「ヤツの脅威の度合いを煙弾で知らせるなんて不可能だ。そのうち司令班まで潰されちまう。そうなったら陣形は崩壊して全滅だ」

 

 目の前を走り続けている巨人を見据え、ジャンは起こりえる顛末を語る。 

 

 「何が言いたい?」

 

 「つまりだな、この距離ならヤツの気を引けるって話だ。俺たちで撤退までの時間を稼ぐことが出来る…………かもしれねえ、なんつってな、ハハ」

 

 最後の方は自信なさげな発言になったが、これが今やるべきことだとジャンははっきりと認識していた。

 

 「あ、あいつには本当に知性がある。あいつから見れば、僕らは文字通りに虫けら扱い。機動力を奪われたら最後、他の巨人に喰われてお終いだよ?」

 

 アルミンはどうしても、実際に女型の巨人から被害を受けた影響か、消極的だった。

 

 「ハハッ、マジかよ。そりゃおっかねぇな」

 

 ジャンはアルミンの意見にしっかりと怯えながらも、やはり自らの考えを変えることはなかった。

 

 「お前、本当にジャンか? 俺の知るジャンは自分のことしか考えていない男のはずだ……」

 

 そんなジャンの様子に、困惑を示すのはライナー。

 確かに以前までの彼は、ライナーの言う通りの男だったのだろう。しかし、今は違う。

 

 「失礼だな、おい」

 

 ライナーの直球すぎる発言に、それはそうと自嘲気味に返しながら、あの日から片時たりとも忘れなかった炎を思い浮かべる。

 

 「俺はただ、誰のものともしれねえ骨の燃えカスにがっかりされたくないだけだ」

 

 そして、死した友であるマルコが残した言葉を胸に、ジャンは今すべきことを告げる。

 

 「俺にはっ! 今何をすべきかが分かるんだよ! そして、これが俺たちの選んだ仕事だ! 力を貸せ!」

 

 その慟哭に揺れ動いたアルミンは、今度こそ覚悟を決めた。

 そして、自らフードを被った。

 

 「フードを被るんだ。深く、顔が見えないように。相手が何をするにしても、目的はエレンだと思うから、必ず顔を確認してくる。少しでも時間を稼げるかもしれない」

 

 「なるほど。エレンを探してるなら、顔を見る必要があるわな」

 

 追従するのはライナー。彼も同じようにフードを被った。

 

 「確かに時間は稼げる。ついでに殺しを忌避するあまり攻撃してこない、なんてのにも賭けてみようか」

 

 そんな二人にジャンは、目を見開きながらも少しに笑みを溢した。

 

 「アルミン。お前はエレンとべたべたつるんでばっかで気持ち悪いって思ってたけど、やるやつだとは思ってたぜ」

 

 「えっ ああ、どうも。でも"気持ち悪い"は酷いな」

 

 褒めか貶しかよく分からないジャンの発言に、戸惑うのはアルミン。

 

 その後、軽い作戦会議をして三人は女型の巨人を足止めするために動き出す。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 人は殺さない

 

 ──周囲に立体物が一つもない平野で馬を殺した。

 

 人は殺さない

 

 ──動けないように両足を握り潰した。

 

 自分の手では殺さない

 

 ──命綱である立体起動装置を破壊した。

 

 

 そして、走る。

 

 カス()ボケ(超大型)から伝えられた情報をもとに、陣形の右翼側から襲撃したのに目的のエレンはいなかった。

 

 本当にふざけんなよ。私のせいで人が死んでほしくない、そんな身勝手な思い。それがあったから、成功すればこれ以上傷つけずに済むこの作戦に了承を示したのに。

 

 まぁ、成功すれば彼とはもう会えない。汚れ切った私なんかじゃ近くにいる資格なんてないだろう、なんて乙女な思考もあった。

 

 もう、人は殺したくないんだ…………。

 

 だから、右翼側を襲った時も引き連れてきたのは脚が速い巨人十体くらいに留めた。それでも、多くの人は喰われたけど。

 

 エレンが右翼に居なかった時点で帰ろうかとも思ったけど、もう引けない。

ここで終わらせたい。

 

 あいつには何も話してないのに、あまり殺しすぎないようになんて約束もさせられた。

 

 直接自分の手では殺さない。

 屁理屈と言われようとも、私はあいつとの約束だけは破りたくなかった。

 

 奇行種と勘違いして、私を襲ってくる兵士に直接手をかけることはしなかった。

 ただ、機動力を削いで置き去りにしただけ。

 

 …………あぁ、私の心がどんどんすり減っていくのが嫌でも分かってくる。

 

 アルミンには、悪いことしたなって思うよ。

 なるべく優しく(当社比)踏み抜いて、怪我させないようにした。

 

 フードをとって見えた顔が凄い絶望してて、私の行動に呆然としていたのも、ちょっとだけくすっとした。本当に終わってるなって自分自身そう思うよ。

 

 

 

 そして今、陣形内に留まるように走っているけど、後ろから馬の足音が聞こえる。三頭ほどいるね。

 

 またか、出来れば私を攻撃しないで欲しい。迎撃しないといけなくなるから。

 

 追い縋るように近づいてくる気配を感じ、チラリと後ろを確認するとフードを被った三人が見えた。

 それぞれが誰なのかを確認することはできない。

 

 …………今まで遭遇した兵士はフードなんて被ってなかった。私がエレンを探してるのを知ってる?

 

 もし、仮にそうだとして、どうやって知った?

 

 あぁ、いや。一人だけ、アルミンなら気づくかもね。

 他の誰かと合流して、私を止めようとしてるってこと?

 

 (…………見逃してあげたのに……ちょっと痛い目みないと分からないんだ)

 

 

 三人が等間隔に離れているのが分かった。これから仕掛けてくるんだろうね。

 

 (誰から来てもいいよ。全員、分からせてやる)

 

 一人、後ろからふくらはぎを狙ってワイヤーを飛ばしてきたから。

 ギリギリで反転して回避する。アンカーは動いてる物体には刺さりづらいからね。

 

 体を反転させた勢いのままに、腕を振って手のひらで空気を押し出して強い風を生む。

 バサリとフードが捲り上げられ、晒される顔はジャン。

 

 後二人。この状態だと少し分かりづらいけど体格が全然違う、狙うなら小さい方。

 

 直撃させるつもりは無いけど怪我は覚悟するんだね。

 

 (――――かなり痛いよっ!)

 

 高く振り上げた腕を払い、馬にぶつける。

 馬ごと横に吹き飛ばされた彼は、軽いため馬よりも遠くまで地面をゴロゴロと転がった。

 

 彼が倒れたところまで行き、フードが外れ顕になった顔を見ると間違いなくアルミンだった。

 頭を怪我したのか血がべっとりと顔に塗られていた。

 

 (ふんっ、これに懲りたら命を捨てるような真似は辞めな。あんたは賢いんだから)

 

 そうしてアルミンの顔を覗きながら、心の中で説教をしているとワイヤーを刺された。最後の一人かと思い、顔を向ければそこに居たのはジャンだった。

 

 隙をつけると思えたの?

 残念、私は他の巨人とは性能が違う。あんたも軽く撫でてあげる。

 そのまま、身体に刺しっぱのワイヤーを掴もうとした。

 

 「ジャンッ! 死に急ぎ野郎の仇を獲ってくれ!」

 

 起き上がって両腕を地面についた状態のアルミンが叫んだことで、私は動きを止めた。

 

 「そいつだ、そいつに殺されたっ! 右翼側で本当に死に急いでしまった、死に急ぎ野郎の仇だっ!」

 

 死に急ぎ野郎。

 このワードに反応するのは、それを指し示す人物がエレンだと知ってる奴だけ。

 

 …………アルミンだったら気づくか。私たちが104期の中に紛れ込んでいる可能性に。

 

 「僕の親友をそいつが踏みつぶしたんだっ! 足の裏にこべりついてるのを見たっ!」

 

 私は誰も直接殺していない。右翼側を襲う時も、ちゃんと踏まないように気を付けていた。

 

 真っ赤な嘘、でも動きを止めてしまった時点で私の負け。ジャンは逃げ切り、最後の一人が私に攻撃するチャンスさえ与えてしまった。

 

 そして、私の眼前までやってき――あっ。

 

 バシッと片手で捕らえた。

 

 (カス(ライナー)だ、咄嗟に掴んじゃった)

 

 まぁ、別に……こいつなら……いっか。

 

 「う、うっ……ぐっ、うぎぎぎ」

 

 握る力を徐々に強めていく。ゆっくり、ジワジワと締め付けてる。

 

 「うごご……ま、待て……待ってくれ。し、死ぬぅ

 

 ああ~、何だろう。凄く気分がいい、爽快な気持ちになる。これは万病に効くかもしれない。

 

 「お…落ち着け、俺だ。手のひらにエレンの場所を書くから、少し緩めて――おおっ!?」

 

 エレンの場所? あんたらが嘘付いたからこんなことになってんの、もっと締め付けてやる。

 

 そんな風に考えながらやっていたせいか。

 つい、ぶちゅっと握り潰してしまった――いや、正確には一瞬だけ握り潰して、すぐに手のひらの中に空洞を作った。

 

 今のうちに修復して、エレンの場所を書き込んで。

 

 私の願いが届いたのか、間もなくしてカス(ライナー)は掌から脱出した。

 

 そして、エレンの場所は?

 

 中央後方。

 

 …………めんどくさ。

 

 はぁ、でも行かないと…………。

 

 お父さんの所に、帰るために。





アニがメイン張ってる章なので、彼女関連の視点が多い。

この物語はユミルで始まり、クリスタが繋げてきたのに!

早く2期、3期が書けるところまでいってほしい。
そしたら目一杯、書けるんだけどなぁ。


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