戦鎚とったからパラディ島行くわ   作:匿名

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お待たせ、待った?

ストック?んなもんねぇよ。

俺は今を生きてんだ。


巨人二体で女の子を襲ってみた

 

 壁内に到着した日から3ヶ月が経過した。

 

 あの日以来ノルドとユミルは常に行動を共にしている。

 トリルハイム城跡を拠点として、彼らは情報を集め続けた。改竄されている歴史や宗教、貴族から科学力まで雑多に様々な知識を収集していた。

 

 それと並行して、巨人化の鍛錬も忘れない。

 お互いに継承してから日が浅く、練度も不十分だったが故だ。

 ノルドは開示しても問題ない原作知識をユミルに教え、ユミルがなぜ人間に戻ることができたのかを把握させた。

 

 そう、すでに壁の中にユミルが喰った奴らの仲間が居るのだ。また、自由を奪われない為にもこの力を高める必要がある。

 

 情報収集と戦力強化、この二つをメインに数ヶ月を過ごした。

 

 得た情報で大事だったものを挙げるとすれば

 

 ・近々、避難民の口減らしが行われる

 ・訓練兵の104期は再来年

 ・燃える水で出来た池が東にある

 ・クリスタがいる南の開拓地

 

 ぐらいであろうか。一つ目と二つ目、四つ目は当然、原作を感じる上で大事なキーとなる。

 三つ目に関しては、恐らく石油であろう。

 精製さえ出来ればノルドの硬質化物質操作と合わせて現代兵器の製造も夢じゃない。

 

 ノルドからしてみれば石油の回収に勤しみたいところだったが、ユミルから待ったが掛かった。

 

 クリスタについて、昔の自分と境遇が重なり気になって仕方ないと。

 

 彼からしてもユミルがクリスタに興味を持ってくれるのは悪いことではなかったので、ある程度の目処が立ったらそちらを優先することが決まった。

 

 次に戦力強化について。

 こちらは彼がマーレから脊髄用の注射器を幾つか拝借してきていた為、互いに互いの脊髄液を飲むことである程度補えた。

 

 原作においてユミルが持つ"顎の巨人"は、特徴ともいえる顎が目立っておらず、非常に弱い印象があった。

 当然、今のユミルもそうだった。

 しかし、そこに"戦鎚"の硬質化を爪や顔部分に限定集中させることで、ファルコと似たような仮面を取り付けることに成功したのだ。爪に関してはウルヴァリンもかくやと言わんばかりに三本のブレードが指の隙間から伸縮できるようになっていた。

 

 この時点で、原作よりも強力になっているので後は巨人形態での動きに慣れさえすれば、よほどのことがない限り大丈夫だろう。

 

 ノルドもしっかりと能力が発現し、ユミルに比べれば強化率は低いが強力になった。

 元々、彼の巨人形態は上から下まで全身をただ硬質化物質で覆っているだけののっぺらぼうの様な姿だったのだが、凹凸が付き関節部が分かれ、頭部も口部分に切れ込みが入り、全身の所々に棘が出現していた。

 見た目を現代で表現するなら、ある作品の狂気に墜ちた湖の騎士だろうか。それが全て真っ白で構成されていると想像してもらっていい。

 棘となった部分の硬度が、"顎"のソレと同等である。

 

 また、"戦鎚"の能力は継承者の知識や想像力で如何様にも進化を遂げる。

 本来、擬似的とは言え潜水艦を造り出し、再現が難しい動物すら造形した彼は歴代で見てもかなりの上澄みだ。

 しかし、そこで満足することはなく目指すは現代兵器、燃料や火薬さえ手元にあれば一瞬で完成出来るようになりたいの一心で能力向上に努めていた。

 

 二人の戦力詳細はこの辺りに。

 

 

 ある程度の情報収集や戦力強化が終わり、いよいよノルドたちはクリスタへ接触を図ることになった。

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 ノルドたちは馬を使い、クリスタがいるという南の開拓地へと向かった。

 

 この馬は造物ではなく野盗から頂いたものだったりする。トリルハイム城跡を拠点に活動していたある日、ヒャッハー世紀末だぜぇと襲って来た野盗を返り討ちにしたのだ。

 

 駿馬でなければ駄馬でもない。普通の馬だったが、移動するだけなら問題ない。

 むしろ、若僧二人が兵団用の馬やそれに近しい性能を持つ馬に乗っていれば、そちらの方が目をつけられるだろう。

 

 というのもあり、普通の馬に乗り移動している。

 

 

 原作ではクリスタの改名&放逐以降の動きは描かれなかったので、正確な位置は分からない。

 得た情報でも、偽の名前がクリスタ・レンズ、南の開拓地に送られた、2年後に訓練兵になる。というものだけ。

 

 予想とすれば他の開拓地よりかは、(ウォール)教が多いのだろうといったところ。

 

 ひとまずは、南にある開拓地を全部回っていくのが基本になってくる。

 幸いというべきか、容姿は原作から知っているので見つけられれば分かる。しかし、極端に変装などをしてなければの話にはなるだろう。

 

 最悪見つからなくても訓練兵団に所属すれば、出会えるので無理すべきではない。

 見つかれば御の字でノルドは探すのだった。

 

 

 

 

 そこからは本当に、地道に根気よく探した。

 ひとえに、南の開拓地と言っても土地によって育つ作物が異なるので、場所がバラバラなのだ。

 

 それにウォール・ローゼ内は壁から壁まで約130km

 面積で表せば小さく見積もっても20万km²

 南側だけを対象にしても5万km²もある。

 

 日夜、駆けずり回って探す日々は非常に労力を使うものだった。

 その甲斐あってか、クリスタと思わしき少女を見つけることができたのは僥倖といえるだろう。

 

 3ヶ月経ったあの日から更に2ヶ月の時間を有し、監視の目を掻い潜りながら、ようやくクリスタと接触することが出来た。

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 「うあ〜、ホントに長かったなぁ。人探しってこんな難しいのかよ」

 

 太陽が中空に上がった時間。

 開拓のために人が出払い、見張りが交代の為に一時居なくなったタイミングを見計らい、クリスタが寝泊まりしている馬小屋に侵入したノルドたち。

 

 積まれたワラの裏に隠れ、小さな声で話していた。

 

 「無理して探す必要はないと、あれほど言ったんだがな」

 

 「気になっちまったもんはしょうがねぇだろ〜」

 

 そう言ってユミルは脱力し、後ろの藁に体を預ける。

 

 「はぁ、今回は見つけることができただけ良しとするけど、これからは自重してくれ」

 

 「了解りょうかーい」

 

 ノルドはその様子に呆れた眼差しを向け、言及するのを諦めた。

 

 「取り敢えず地下を掘って城と繋げるから、もし件の少女が戻ってきたら君が一人で対応しろよ」

 

 その言葉にギョッとした視線を向けてくるユミルを無視し、ノルドはゆっくりと揺れや音を出さないように慎重に、硬質化物質操作で地面を掘り進めていった。

 

 「まじか~……でも、私が言いだしたことだしな。うわー、女の子とまともに話したことなかった気がするわ」

 

 

 

 ノルドと出会い、彼に導かれる形でここまで生きてきた彼女は一つの指針を決めていた。

 

自身を偽らず(ユミル)のまま【自由】に生きる。

 

 この話を彼にすると非常に喜ばれたのを思い出したユミルは、多少の疑問を覚えていたがそれ以上に肯定されたことが嬉しかった気持ちが強かった。

 

 彼女がいまだ会ったことのないクリスタに執着している理由は、

 

 逆らえない上位の存在に人生をいいように振り回され、最後には捨てられた

 

 という昔の自分に境遇が似ているその少女の話を聞いたから。

 別段なにかしら深い理由があったわけじゃない。

 

 ただ、会って話をしてみたいと思ったから、そう動いただけ。

 【自由】に生きるをモットーに決めた。

 自分勝手に、会いに行って、話して、知りたいと思った。ただそれだけだった。

 

 

 

 夕方になり、徐々に集団特有の騒々しさが外から聞こえてくるようになった。

 ノルドは相変わらず地下堀に専念している。その手際は非常に早く、もう既に半分以上は開通していた。

 

 ユミルは手持ち無沙汰に小道具で時間を潰しており、外の様子を確認し早く会えないものかと心の声をこぼしていた。

 

 

 少しして、馬小屋の扉が開き一人の少女が入ってくる。

 チラリと窺えたその顔は、何とも言えない。慣れていないのか、頑張って貼り付けたかのような笑顔で、どんな鈍い人でもバレてしまうほど下手くそな作り笑いだった。

 

 扉が閉まる。それと同時に、先ほどまで頑張って貼り付けていた笑みを剥がした。

 能面。一切の感情がそぎ落とされたかのような虚無を思わせる表情が姿を現したのだ。そのまま倒れるかのように、そばに積まれていたわらに身を委ねる。

 

 その移り変わりをこっそりと見ていたユミル。

 

(あちゃー、こいつは重症だな。……けど、ますます気に入ったっ!!)

 

 

 

 他人の前では何かを演じていても、それは本心ではない。

 けど、限界まで……それこそ先のように精神疲労で倒れようともやめない姿勢。

 

 

 満点!!!

 

 もろもろ含めて、ユミルは目の前の少女を一発で気に入った。

 

 

 (よしっ! このままうだうだしてても埒が明かないからな、一発かますか)

 

 改めて気合を入れなおしたユミルは、普通を装って話しかけた。

 本来一人だけの、この馬小屋で。

 

 「なぁ、お前ーー「きゃっ!?」っと」

 

 計画性のかけらもない、声掛けがひとつ。

 誰もいないはずの場所から自分以外の声が唐突に聞こえてきたクリスタは、驚きのあまり突っ伏していた藁から転がり落ちた。

 

 驚いたのはユミルも同じ。声を掛けたら小さな悲鳴とともに遮られたのだ。

 お互いに驚きあう形となり、見上げるクリスタと見下ろすユミルの視線が重なった。

 

 ここにきてユミルは自身の失策を理解し、至らなさに頭を搔きながら改めて声をかけた。

 

 「あー、そうだった。そりゃ驚くわ、こんな場所に隠れてたわけだし」

 

 「……え? なんでいるの?」

 

 普段は取り繕うことに全力な彼女も、状況を理解しきれず素で疑問を呈していた。

 

 「急に押しかけて悪いな。でも、お前と話してみたくてさ」

 

 「……私と?」

 

 それはヒストリアからすれば、理解できないことだった。

 生まれたころより誰かに求められたこともなければ、必要とされたこともない。

 (フリーダには構ってもらえていたが、記憶を消されていて覚えていない。)

 

 その逆は多々あり、最たる例でいえば半年前に告げられた放逐宣言がそれに当たるだろう。

 

 誰かから個人として認識され、必要とされるなど初めてだったのだ。

 故に、その言葉を一度は吞み込み喜色が顔をよぎる。

 

 ふと、冷静になりそんなことはあり得ないと理屈で感情を突き返す。

 そのまま、理屈に突き動かされた口は心とは反対に冷たくあしらう。

 

 「そんなはずはない。私と話したいなんて、あり得ない」

 

 虚無に片足を踏み入れた表情で闖入者を見つめていたクリスタ。

 そのまま耳を塞ぎ目を閉じ蹲る。

 こんな私に都合のいい存在がいるはずない。幻覚は早く消えろと希う。

 

 その様子を理解したユミルは顔を手で覆い、天井に遮られた宙を見上げる。

 

 「まじか、これ私だけじゃ無理じゃね? 頼るしかないよなー」

 

 打開策は早々に見つけるも、相方に頼りすぎるのもなとなったユミルはどうすべきか悩み、今日のところは撤退することに決めた。

 

 (すまん、相棒。お前を巻き込むっ! 許せ)

 

 誠意のかけらもない心の謝罪を彼にする。

 

 

 「明日もまた来る。今度は友達も連れてくるから、楽しみにしてろよ」

 

 しゃがみこむクリスタに近寄り、耳を塞いでいる腕の片方を離して耳元で告げた。

 

 耳に伝わった言葉の意味と吹きかけられた息にビクリと、体が反応する。

 開かれた腕はそのままに少しの間、呆然としていた。

 

 

 

 

 クリスタがそこから脱却したときには、小屋の中には誰一人としていなかった。

 幻覚や夢かとも思ったが、今なお耳に残る感触が現実だったと教えてくる。

 

 ここ最近一度としてなかった予想外の出来事にどうすればいいのか、いよいよ分からなくなった彼女は、一言誰もいない空間につぶやいた。

 

 「なにこれ」

 

 

 理解できない感覚に戸惑う彼女は、その日の夜ついぞ一睡も出来なかった。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

 「それで、おめおめ帰ってきたと?」

 

 場面は地下。現在、目の前では硬質化物質がフル稼働でされど発生音などは最小限で切削活動をしている。

 

 その後ろ、地下道開設中に追い付いてきたユミルからの報告を聞いた彼が一番最初に放った言葉である。

 

 「そうなんだよ、ノルドッ! あれは重症だよ。この私と言えども限界はあるってもんだ」

 

 「どの私だよ、全く…………分かったよ。そもそも地下を掘り終わったら、俺も会おうとは思っていたから問題ない」

 

 本格的に原作が始まる前段階で出会えた二人目の主要キャラ。

 ここで会わずしていつ会うか。それにノルドの考えとしては、この段階での接触がまずければ、歴史の修正力もとい、あの人が何かしらしてくれるだろうという安易な考えがあった。

 

 「本当かっ!? 助かるー」

 

 ユミルは彼の助力発言を聞き、ケロッとした雰囲気で感謝を述べる。

 飄々とした様子に再度呆れた視線を向けるノルド。その裏ではクリスタの一件で考えをまとめていた。

 

 (しかし、良い子クリスタはまだ生まれてなかったのか。いや、作っている最中だったのか? これはちょっと予想外だな。攻略は難しいか?)

 

 父親の意向で訓練兵になることは確定している。同期になってからもお世話になるのは確定的。接触した以上、ここで絶対に印象はよくしておかないと後々まずいことになる。

 

 (可能ならユミルに任せたかったが、最初に俺と出会った影響か、それとも年月か、まだ原作のような男前でかっこいいユミルになれてない。……俺が頑張るしかないのかよ)

 

 

 その日は穴をトリルハイム城跡の地下まで繋ぎ終え、軽く談笑を挟みつつも思考を全力で回し、攻略の糸口を模索し続けることになった。ユミルも彼がクリスタのためにずっと考えているのは容易に分かったため、茶化すことなく雑事の多くを請け負いノルドの手助けをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 結局なにも糸口が見つからぬまま一睡も出来なかったノルド。

 隣を歩くは、夜もすやすやとおねんねして元気いっぱいのユミル。

 

 現在は昼間。繋ぎ終えた地下道を歩いてクリスタが寝泊まりする場所へと向かっていた。

 昨日まで乗っていた馬は、ちょうど馬小屋というのもあり、切削の邪魔だったので向こうに置いてきた。

 そのため、昼間のうちから出発しないと夕方に間に合わないのだ。

 

 昼食を終え、ゆったりとしたペースで二人歩く。

 

 「それで、なんか思いついた?」

 

 唐突に始まるのは、クリスタ攻略会議。

 といっても大半のことは既に共有済みであるため、再確認のようなものである。

 

 「朝話した通りだ。高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する。これしかないだろう」

 

 「行き当たりばったりね?」

 

 「うるさい。それに現状、俺は彼女を見ていないから何とも言えないんだよ」

 

 実際にそれはそう。

 いくら原作キャラだろうと、ノルドは今この世界に生きている。直接見て、聞かないと分からないことのほうが多い。

 

 (一応、話のきっかけになりそうな物はいくつか見繕ってきたから、どれか一つでもヒットすれば全然いける……なんとなくだけど)

 

 

 

 あれやこれやと言い合いながら、時間にしてちょうど夕方。真下にたどり着いた。

 

 梯子は既に作っており、順に登っていく。

 念の為、兵士がいないことを確認し安全が取れたら上にあがる。

 

 中を見渡すと、まだ戻ってきていないようだ。

 ユミルを引き上げ、昨日と同じようにワラの裏にて二人して寄りかかり、クリスタが帰還するのを待った。

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 今日も開拓地にて、作業をこなしたクリスタ。

 

 日々、良い子を演じ、良い子になろうとしている。

 昨日、変な幻覚を見たせいで崩れかけてしまったメンタルを何とか持ち直し、日課を終えることができた彼女は重い足取りを寝泊まりする馬小屋へと向けていた。

 

 小さな馬小屋、馬用に誂えた大きめの扉。

 閉まった状態のそれを前に、少し、ほんの少しだけ足が竦んでいた。

 昨日の出来事は夢。疲労で幻覚を見てしまったのだと思い込んだ彼女は、それでもなお恐る恐るゆっくりと扉を開けていく。

 

 静寂。

 聞こえるのは周囲の喧騒か、建付けの悪い扉特有のギィギィとなる響音。

 顔だけを中に入れ、様子を窺う。

 

 異常は見られない。朝と同じで何も変わらない。

 やっぱり昨日が可笑しかっただけ。

 

 ふぅ、と一息ついたクリスタは今度はシッカリと扉を開き中に入る。

 

 (うん、何もないね)

 

 改めて、確認し大丈夫と判断した彼女は部屋から目を逸らし背中を向けた。

 そのまま、開きっぱにしていた扉を元に戻して。

 

 そこでようやく、仮面を剥いだ。

 

 「何度見てもその変わりようはスゲェな」

 

 ガバっと声が聞こえた方に顔を向けると、そこには昨日見た幻覚がいた。

 いや、幻覚なんかじゃない。今、クリスタの腕はしっかりと掴まれている。

 

 「あっ…………いや……っ!?……!?!?」

 

 クリスタは後ろから身体を抑えられ、口に手を当てられた。

 声を上げることが出来なくなってしまった。

 

 「ちょっとごめんね。今、騒がれると少し困るんだ」

 

 耳元から聞こえるのは男の人の声、でもまだ幼さが残っており私と同い年か少し年上と分かる。

 男の人に抑えられているというのに嫌悪や強い拒絶が湧かないのはなぜなのだろうか。

 

 はた目から見れば危機的状況であるにもかかわらず、穏やかな感情に浸っていた。

 

 「騒がないと約束してくれたら、離すよ」

 

 ノルドは今の発言にクリスタが小さく頷くのを確認し、ゆっくりと口から手を離した。

 

 「っ! おっと……」

 

 腰が抜けたのか、へなへなと崩れるクリスタを咄嗟に抱え、積まれたワラの上に座らせた。

 

 「……ありがとう……ございます」

 

 どこか居心地悪そうに、感謝を述べる。

 

 「あぁ、昨日から急に押しかけて悪かったね。こいつが迷惑かけたようだし」

 

 そう言って、立てた親指をユミルへと向ける。

 ユミルはその言葉に、自分だと認識したのかクリスタに笑みとピースを向ける。

 その仕草を見た二人は、顔を見合わせ何とも言えないようになる。

 

 「……すみませんね。うちの阿呆が」

 

 「……別に……それは構いませんけど」

 

 お互い何とも言えない状況で、意を決してクリスタのほうから声を上げた。

 

 「あのっ! それで、今日は……一体何をしに?」

 

 その言葉に、開いた掌へ拳をポンッと乗せる動作をした。

 まるで、今思い出したかのように。

 

 「忘れてた。というより、君とお話しをしてみたかったんだ」

 

 「わ、私とっ!?」

 

 クリスタは昨日も聞いたような誘い文句にまた、ときめいた。

 心の防壁が崩れ始める。昨日は新しく要塞を築くことで事なきを得たが、今回の敵はそれを許してくれないようだ。

 昨日のユミルとは違い、ノルドがそのまま畳みかけるように話し始めた。

 

 「あぁ、噂程度に君のことを知ってしまってね。興味がわいてきたんだ。本当はユミル――こいつが先に興味を持って俺がそれに乗っかった形なんだけどね。あ、俺の名前はノルドだ。よろしくね」

 

 普段からは想像できない程の饒舌。

 その様子にちょっぴり傷つくユミル。

 

 「君の辛い境遇を耳にしてね。それで会いたくなったんだ、ダメだったかい?」

 

 なお、彼の中にあるのは何とかなれの精神による心の声全開放だけ。

 原作関連を除く、彼が思っていること全てを吐露していた。

 

 その言葉を受けたクリスタは涙を目尻に溜めながら頷いた。

 

 「ううんっ、ダメじゃない。いいよ! 何でも聞いてっ」

 

 母親を殺され、自らも殺されかけ、名前や存在を捨てさせられた彼女の傷が、たったの半年で癒えるはずがない。

 原作においても、時折剝がれかけていたその仮面は、中途半端な時期に襲撃を仕掛けてきた巨人二体に呆気なく壊されるのだった。

 

 

 

 

 

(あれ? 私のターンはっ!? ピースだけ!?)

 

 ノルドの影響で、本史よりハッちゃけた彼女の心の声をここに置いていく。





現在のクリスタの年齢は10または11歳。
頑張って取り繕ってます。


悪い大人(肉体は子供)たちに勝てるはずないんですよねぇ。
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