戦鎚とったからパラディ島行くわ   作:匿名

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お待たせ、ちょっと短め

戦闘シーンの描写って難しいね


トロスト区襲撃②

 

 壁上に戻ったエレンとノルド、そしてコニーは先遣班から指示を受け本部に戻った。

 そして超大型と直接接触したとして報告も済ませた。

 

 その後、彼らは消費したガスを補給する為に移動する。

 

 補給場には多くの訓練生がおり、各々準備に取り掛かっていた。ノルドはエレン達と分かれ、他の皆と同様に準備をしているクリスタとユミルに声を掛けた。

 

 「大丈夫そうか、お前ら?」

 

 「っ!? ノルド!」

 

 「お前…………直接戦ったって聞いたけど、何ともなさそうだな」

 

 声を掛けるまで気づいていなかったのか、二人とも驚いた表情を見せていた。

 それに加えてユミルは、ノルドの全身に視線を動かして傷の類がないのを確認し密かに安堵していた。

 

 「それと、私たちも問題なかったよ。壁が破壊された時はちょうど内壁付近を巡回してたからな」

 

 「ねぇ、ほんとに大丈夫?」

 

 ノルド達がいた場所に超大型が出現したと聞いた時から、ずっと心配していたクリスタは無事な姿を見てなお、不安を隠せずにいた。

 

 その様子をみたノルドは、両手をクリスタの肩に乗せ二の腕に沿うように撫でる。

 

 「大丈夫だって、ほれ見ろ。俺は何ともないだろ?」

 

 クリスタの中にある不安を拭うように、ゆっくりと時間を掛けて。

 

 やがて腕に伝わるぬくもりを理解したのか、彼の両手を掴み返して頷いた。

 

 「全く…………クリスタ、お前の心配性はいつまで経っても変わんないな」

 

 「変わるわけ無いよ。私はもう、大事な人を失いたくない」

 

 聞く人が聞けば告白と思っても不思議ではないだろう。

 近くに屈強な兵士が居ないことが救いか。

 

 もはや、告白しようがしまいが一緒ぐらいには親密な関係を築き上げてきた三人だが、改めて言葉に出されれば気恥ずかしいものがある。

 

 

 ノルド自身それは変わらず、誤魔化すために意識を分散させると、こんな声が聞こえてきた。

 

 『怖いわ……………………フランツ

 『大丈夫だよ、ハンナ。僕が必ず君を守るから

 

 104期の名物バカ夫婦の二人だった。

 そして、原作では先にフランツが死に、現実が受け入れられなくなったハンナも巨人に食われている。

 

 (あー、死亡フラグってやつですね。分かります。面白そうだし、俺もやっとく? ……………………いや、折れたフラグがクリスタとかに刺さりそうからやめとこ)

 

 一瞬だけ『この戦いが終わったら結婚しよう』をやろうかと考えたノルドだったが、人類最強さんみたく自分だけ生き残るエンドになりそうな予感がしたのでやめた。

 

 面白ければある程度許せるノルドだが、流石にクリスタを失うのは痛いでは済まない。当然ユミルもだ。

 

 目の前には、自身の発言を思い返したのか赤面しているクリスタと、よくわからなくなった空気を払拭せんと普段以上に茶化すユミルがいる。そんな二人を見てノルドは改めて思った。

 

 絶対に生き抜いて彼女たちを守ってみせると…………。

 

 あっ、これめっちゃフラグっぽくない?

 

 

 ノルドは二人を尻目に準備を整え、移動を開始した。

 

 「いちゃつくのもそこまでにしとけ、広場に行くぞ。駐屯兵団のお偉いさんから指示がある」

 

 いまだ、茶化し続けるユミルやクリスタに移動するよう催促する。

 

 既に準備を終えていた二人はパッと立ち上がり、前を歩くノルドに小走りで追いついた。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 集合した訓練兵に、『図体がでかい割に小鹿のように繊細な男』ことキッツ・ヴェールマンは現状のトロスト区内の情勢を説明していく。

 

 ノルド達が超大型巨人戦後にすれ違った彼ら先遣班は既に全滅しているらしい。それに伴い、多くの巨人が既に侵入し現在は駐屯兵団の迎撃班が担当しているという。

 

 ノルドたち訓練兵も、それぞれ班ごとに分かれ駐屯兵団のサポートに回されるらしい。

 

 「なおっ! 承知しているとは思うが、敵前逃亡は死罪に値する。皆の者、心臓を捧げよっ! 解散っ!」

 

 一斉に訓練兵が移動を開始する。

 ノルドもその流れに合わせて動いていく。

 

 今回、彼が配属された班はかなり危険な位置となる。

 前衛班の直接支援を任された部隊である。直接支援とは、他支援のガス補給や情報伝達、衛生部隊とは異なり戦闘によって戦線を支えるものである。

 

 怪我人によって空いた穴を埋めたり、補給の際に一時的に時間を稼ぐ役割など多岐に渡るも、一律として戦闘を前提とする支援である。

 

 であるが故に、選ばれる人員は訓練兵の中でも指折りの実力を認められた者のみ。

 

 すなわち、成績上位者で構成されている。

 首席のミカサは、優秀すぎるあまり後衛部に配属となったので除外される。

 また、他中衛部の支援班にも幾人か優秀な人材は置いておくべきとして、半数が別々に配属される。

 

 結果として残ったのはライナーにノルド、マルコとサシャが部隊として動くこととなった。

 

 駐屯兵団支援部隊の中でも指揮能力が高い人がリーダーを務め、その下に訓練兵を置く形だ。

 

 ノルドは皆が集まっている場所に集合した。

 

 「今回は大変なことになったなライナー」

 

 「そうだな。だが、起こったことは変えられん。全力で兵士としての本分に努めるまでだ」

 

 「流石だね、二人とも。緊張してないのかい?」

 

 ライナーに話しかけ、返ってくる声に付随してマルコも加わってくる。

 

 「緊張というかは、いよいよって気分だな」

 

 マルコの問いにノルドはそう返した。

 

 「今まで何のために鍛えてきたんだ? ようやくこの力を使える舞台が整ったんだ。楽しまない方が無粋だろ」

 

 「流石に不謹慎だと思うが、俺も似たようなもんだ。今まで訓練に取り組んできたのは、いざという場面で戦えるようにする為。今がその、いざって時なだけの話だ」

 

 既に戦場であるのに、不謹慎な発言をするノルドを咎めながらも自身の思いを話すライナー。

 

 色んな意味で覚悟が決まっている二人をマルコはやっぱりこの二人は凄いっ! という尊敬の眼で見ていた。

 

 片や、どんな時でも頼れる存在として理想の兵士であり続けた104期の兄貴分。

 片や、常に飄々とあらゆる物事を楽々と乗り越えていく104期きっての享楽者。

 

 方向性は違えど、どちらも確固たる強い意志を持っている。故に同期でも彼らを憧れる人はいる。

 

 「すみません、遅くなりましたっ!」

 

 そこへ最後の合流者がやって来た。

 ライナーやマルコ同様に成績上位者に名を連ねるサシャ・ブラウスだ。実力は申し分ない、欠点として組織的な行動に向かないが少数精鋭であれば問題なく活躍できるだろう。

 

 「よし、揃ったな。これより我々、直接支援班は前衛部を後方に位置し迎撃班の支援に回る。時間もあまり無い、駆け足で行くぞ」

 

 全員が集まった所でこの班のリーダーを務める駐屯兵が指示を出す。

 

「「「「了解ッ!」」」」

 

 指示に従い班員は即座に行動を起こす。立体機動で屋根の上まで飛び、リーダーを追いかけるように走り出す。

 ガスの節約も兼ねて、移動は基本的に脚を使う。

 屋根に登ったり、足場がない時はガスを使うが、それでも最小限に留める。

 

 そこら辺の動きや判断が出来るからこそ、彼らは最上位として認められている。

 

◇ ◇ ◇

 

 「止まれっ! …………想像以上に深くまで入り込まれているな。各員、立体機動への移行準備を怠るなっ!」

 

 周囲を見渡せば、まだ予定ポイントまで距離があるというのに何体かの巨人が既に、闊歩していた。

 

 「…………まるで地獄だな」

 

 「ああ、この様子じゃ前衛部はほとんど喰われちまったらしいな」

 

 「えぇぇぇ、本当に私達で支援できるのでしょうか」

 

 前衛部を抜けてこの地点にまで入り込んだ巨人を見て、ノルドたちは口に出していた。

 

 「訓練兵、私語は慎めっ! このルートを使うのは困難として、我々は右から大きく迂回して目的地まで向かう。急げっ!」

 

 矢継ぎ早に指示を出し、我一番と駆け出していく。

 流石、支援部隊の中でも指揮能力が高いと評される兵士、的確に状況を把握して最善手をうてている。

 

 リーダーを先頭にノルドたちは余力を持って走る。

 班員の男たちは勿論、サシャも食糧盗難の折檻として走らされ続けただけあって、余裕がある。

 

 ある程度巨人を避けながら走り、本来予定していた場所まで後少しとなった。

 

 「いいかっ! 先程までは戦闘を避けていたが、ここからは我々も巨人と戦うことになるっ! 市民の避難が完了するまでの間、何としてでも――――おおおっ!?!?」

 

 ガシッ。

 走りながら班員に指示を出そうとしていた駐屯兵は、突如として横合いから伸びてきた巨大な手に掴まれた。

 

 ぬっと姿を現すのは10m級の巨人であった。

 建物と建物の間、確かに死角としては十分すぎる場所。

 

 しかし、その場所は少なくとも10秒前からノルドたちは視界に入れていたし、足音にも警戒していた。

 すなわち、この巨人はかなり前からあの場所で微動だにせず、獲物を待ち続けていたことになる。

 

 奇行種、に分類される巨人の一種。

 通常の個体とは違い、動きが読めないことが特徴。

 

 「――おごっ!?…………っ……ガッ!?!?」

 

 掴まれた兵士が握り潰された。

 ノルド達が救出に移る間さえ与えられなかった。

 

 巨人はそのまま握り潰した肉塊をひょいっと口の中に投げ入れ、咀嚼を繰り返す。

 

 「た、食べられた…………」

 

 「そんな…………っ」

 

 その様子を間近で見たサシャとマルコは、完全に体を硬直させた。

 

 「…………くっ! ノルドォ!!」

 

 「分かってるっ! 俺が脚の腱を斬る。お前はうなじをやれ!」

 

 呆然とする二人をよそに、いち早く動き出したライナーとノルド。

 巨人の明確な隙は授業で習っている。それは捕食行為中だ。どれだけ俊敏だろうと狡猾であろうと、人間を食べる瞬間はそれのみに注力する。

 

 今なお、咀嚼が止まらないということは捕食している事を示している。

 

 ノルドは屋根を飛び降り、立体機動で地面スレスレを滑空する。そこまで距離が離れていないので、一瞬で巨人との差はゼロになる。

 

 一閃。

 いや、正確には二本のブレード使っているので二閃になるか。彼はすれ違いざまに腱を削ぎ落とした。

 

 斬られたことによりバランスが取れなくなった巨人は、うつ伏せに倒れる。そして晒されるは弱点である、うなじ。

 

 ノルドが巨人を地面に転ばせたのを確認したライナーは、即座にアンカーを首部分に刺し自身の身体を引っ張る。

 固定されたワイヤーが巻き取られることで、巨人の首めがけて突貫する。

 

 「うおおおおっ!」

 

 ザシュっと二本のブレードで綺麗にうなじを刈り取った。斬られたうなじは再生することはなく、ただ肉体から蒸気を上げ続ける。

 

 「ふぅ」

 

 明確な手応えを感じたライナーは一息ついた。

 

 「ライナー、ここはまだ危険地帯だ。屋根に上がってこいっ!」

 

 「っ…………あぁ、すまねぇ。少し気が緩んだ」

 

 ノルドの一声で、はっとした彼はすぐに屋根へと移った。そこでようやく、この戦闘は終わったと言える。

 

 「やるねライナー。見事な一撃だ」

 

 「お前もだろう、ノルド。転ばせたおかげで斬りやすかったぞ」

 

 お互いに先の戦闘を褒め合う。

 だか、そう長くもしていられないようだ。

 

 「それにしても、班長をやられたのは痛いな。これからどうする?」

 

 「即時撤退と行きたいが、まだ避難完了の鐘が鳴ってない。ここで耐えるべきか」

 

 リーダーが居なくなろうとこのメンバーが直接支援班であることに変わりはない。

 取り敢えずは、と未だ呆然とした様子の二人を戻すことから始めるのだった。

 

 

 意識が通常に戻った二人を含めて、改めて今後の行動指針を明確にする。

 

 「俺たちは直接支援班だ。他部隊と合流し、戦線を維持するぞ」

 

 ライナーがそう告げるが、先の捕食を見てしまったサシャは首を振りかぶって否定する。

 

 「む、無理ですよっ! あんな、あっさり食べられて…………」

 

 「だけど、戦線が崩壊すれば避難が終わってない市民が食べられる」

 

 そんなサシャを嗜めるのは、意外にもマルコだった。

 マルコは彼女と同様に、先輩兵士が呆気なく喰われるのを見て動けなかった。

 

 そんな自分が情けなく、次こそは使命を全うすると息巻いている。今出来ること、それは住民の避難が完了するまで時間を稼ぐことだ。

 

 「俺たちは三人じゃ難しい。サシャ、手を貸してくれ」

 

 ノルド、ライナー、マルコ。

 覚悟を決めた三人を見たサシャは、自分だけ逃げるなどという選択肢が取れるはずもなく。

 

 「ああもう、分かりましたよっ! やります、やりますよ!」

 

 メソメソとしながら、サシャも覚悟を決めたようだ。

 

 「ありがとう、助かるっ! では、役割を分けるぞ」

 

 これで四人全員で掃討に当たることができる。

 代理班長として、指示を出すのはライナーとなった。

 

 「対巨人の主戦力は俺とノルドが受け持つ。マルコとサシャも補佐はしてもらうが、それ以外に重要なことを任せたい」

 

 「それ以外?」

 

 ライナーとノルドが巨人戦の主力とするのは分かる。互いに立体機動の練度はかなり高いのは、訓練兵時代から知っている。

 だが、他二人に重要なことを任せるとは何だと訝しむマルコにサシャ。

 

 「時間を稼ぐとは言ったが、俺たちも死ぬ気はない。マルコには常に他部隊の戦線を確認していてほしい。全方位から囲まれるのは対応出来んからな」

 

 時間を稼ぐのは下がりながらでもできる。むしろ、無理に戦線を維持しようとすれば部隊は総崩れになってしまう。

 だから気配りがよくできるマルコが担う。

 

 「サシャには索敵を頼みたい。さっきのような不意討ちは俺たちでも対応できるか分からんからな。何か違和感を覚えたらすぐに教えてほしい」

 

 死角からの強襲。

 こればっかりは、事前に話し合って分かるものではなく普通に気づくのも難しい。

 そこで猟師として磨かれた常人以上の聴覚に、野生としての鋭い勘を持つサシャにしか任せられない。

 

 

 それぞれ納得のできる説明で理解し頷く。

 

 「よしっ! んじゃまぁ、いっちょやるか」

 

 一度、目を閉じ大きく深呼吸したライナーは呼吸を整え、号令を出す。

 

 「直接支援班っ! 行くぞォオ!!!」

 

 「「「おうっ!!!」」」

 

 気合の入った掛け声とともに、全員が走り出す。

 目的地は、既に中衛前方辺りまで後退した前線。

 

 既に目と鼻の先である。

 ここはもはや巨人領域、一つの油断や慢心、感情による冷静さの欠如で全てが終わってしまう場所。

 

 それらを一切無くし、全員で耐え抜く。

 

 戦線に向かう途中に遭遇する巨人。

 これを放置しても、後方にいる同期たちの負担が増えるだけ。そう判断し、確実にここで刈り取る。

 

 「ライナーッ!」

 

 「ああ、俺が気を引く。ノルド、お前が斬れっ!」

 

 「了解、任せときな」

 

 互いに軽く言葉を交わし、巨人に向かって走る。

 

 「そらっ! 来いよ、デカブツ!!!」

 

 ライナーが巨人の視界に入り巨人の気を引く。基本的に本能でしか動かない巨人は、最初に目についた獲物が視界の中心にいる限り、他の人間には目移りしない傾向にある。

 

 「黄金パターンは楽でいいねっ!! よいしょっ!!!」

 

 回り込んだノルドが、立体起動で動き続けるライナーの方を向いて背中を晒す巨人へ迫り、確実にうなじを刈り取る。

 

 「一体ずつなら何とかなるな」

 

 「囮の危険度を度外視すればね? 本当に凄いよ二人とも」

 

 そこは勿論、自分の命なんてチップにしか思ってないノルドと、自身の命は民のために使い果たしてこそと考えている(思い込んでいる)ライナー。

 

 この二人だからこそ問題なくできる芸当だ。

 短時間で何度も巨人戦を続けた影響か、一体だけならほぼ確実に討伐できるようになっていた。

 

 この調子なら問題なく、時間を稼ぐことができそうだなとライナーが考え、次の場所に移動しようとしていた。

 

 

 

 「止まってくださいっ!!!」

 

 しかし、この道中に走りながらもずっと集中し続けたサシャの初めて発した言葉が響く。

 

 

 

 索敵を担っていた彼女はとても緊張していた。

 何故なら、これから先、死角から巨人が現れたさっきのようなことが起これば、それは気づけなかった自分の責任ということになる。そして、仲間が喰われる可能性すらある。

 

 絶対に見逃してはいけないと、極限まで集中していた。

 そして今、鋭敏に研ぎ澄まされた感覚は、常人では決して捉える事が出来ない何かを掴んだ。

 

 「目の前の路地裏っぽいところに何か潜んでいます」

 

 彼女が指した場所は、屋根と屋根の間、それこそ幅は2mもない小さな路地。屋根の高さも3mと非常に低い。

 

 もし巨人が隠れようものなら、四つん這いや伏せっていないといけないだろう。

 

 あり得ない。本来なら彼女の言葉は一蹴されるほどに現実が無い。しかし、ここにいるのは三年も共に過ごしてきた同期たち。

 

 信頼しないはずがない。

 

 「ここはひとつ試してみますか」

 

 ノルドはつい先程、立体起動中に引っかけて怪我した左腕の傷口から流れる血を刃こぼれが酷くなったブレードに染み込ませる。

 

 

 「ライナー、今からこれを投げるから、出てきた巨人を頼んでいいか?」

 

 「ああ、いいだろう」

 

 準備が整ったライナーを見て、ノルドはボロボロのブレードをサシャが指し示した路地めがけて投げ飛ばす。

 

 瞬間。グワッと飛び出してくるのは、脚で跳躍したのだろう伸び切った太い脚と耳元まで裂かれた口を持つ小型の巨人。

 

 ライナーは飛び出た巨人の後頭部にアンカーを刺し、ガスとワイヤーの巻き取りで一気に近づき、うなじを抉り取る。

 

 そのまま屋根に降り立った彼は周囲を警戒し、何もないことを確認。一息入れる。

 

 「はぁ、それにしてもよく分かったなサシャ」

 

 「ほんとに、俺は全く気付かなかったぞ」

 

 「い、いや~。これでも猟師の娘ですからねっ!」

 

 ポンッと胸を手のひらで叩く。

 実際、彼女自身何故気づけたのかもう覚えていない。

 

 無我夢中で集中し続けた果ての産物だったのだ。

 もし気が付かなかったら悲劇が待っていたこと間違いなしの巨人だった為、それを回避できたことで少しだけ空気が緩んだ。

 

 「みんな、戦線が少し下がった。ここは巨人に囲まれてしまう」

 

 常に遠くへ意識を割いていたマルコが戦線後退を確認し報告する。

 その言葉にちょっと緩んだ空気が一瞬で引き戻される。

 

 「まだまだ、これからってことか」

 

 「そうだな。ありがとうマルコ、だったらこちらも少し場所を下げよう……………………それにしても住民の避難はまだ済んでいないのか」

 

 「早く撤退させてほしいです」

 

 支援班が行動開始してから体感でかなり時間を経過しているはずなのに、鐘が鳴る予兆さえない。

 

 直接支援班は他の中衛支援班より、早く先頭に移ったこともあるだろう。というより、前線が下がり気味となった今、ようやく中衛支援部隊が動き出したと判断するべきだろうか。

 

 ここに至りノルドにはある考えが頭をよぎる。

 

 (トーマスやミーナを助けられるか?)

 

 言うなれば原作死亡キャラ生存ルート。

 

 (もしエレンが俺というイレギュラーが居てなお、進撃し続ける男ならここでも彼らの班は全滅する)

 

 彼らの班が全滅というより、エレンが巨人に丸呑みされることは巨人覚醒の大事な手順だ。

 

 (別に同期の一人や二人助けたってこの先の展開に変化はないと思うんだけどな)

 

 助けられるならば、助けたい。必要な犠牲なら目を瞑ろう。そんな、どこまでもドライに選択できるノルド。

 

 

 既に、リーダーと呼べる存在は死んだ。代理として務めているライナーにもノルドが進言すれば動いてくれるだろう。

 

 そんな彼や彼含む班に対して、世界は────。

 

 「四方から巨人が来るよっ!」

 

 絶対にそれはさせないとばかりに立ち塞がってくる。

 

 正面から一体、戦線が崩れて紛れ込んできた左右の二体、そして、いつから潜んでいたのか。隠れていた奇行種が後方に一体。

 

 (なるほどね、行かせてくれないというわけですか)

 

 何故、今になって集まりだしたのか。

 この四人なら問題なく倒せるだろうが、確実に時間がかかってしまう。

 世界の、ひいては彼の真意をノルドは理解した。

 

 (分かったよ、彼らは諦める。まったく、困ったやつだよ)

 

 ここから離れることは叶わなくなった。

 エレンたちの班は無理でも、他にも戦っている多くの同期の命を少しでも救う為に、巨人戦に明け暮れるのだった。

 

 




キッツさんってアニメじゃただの臆病な人だけど、結構優秀な人なんだね。 色々調べてびっくりした。


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