【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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第112話 昂る、三女

 私、折津エイ15歳!

 どこにでもいる普通の女の子♂(日によって♀)。

 たいへんたいへーん!

 私の全てを管理している(誇張表現無し)地元の神様が、またどこかで変な物を観測して楽しそうにしているみたい!

 聞いてものらりくらりと躱されるし、強引に聞いて神様の機嫌を損ねる訳にもいかないし、これから私どうすればいいの~!

 

『あの、本当に教えて貰えないんですかね』

『はい!』

『隠していることは認めるんだ……』

『確かに私はコンテンツについて隠し事をしています。しかしそれは全てエイに楽しんでもらう為ですよ? ……あ、エイそこのグミもお願いします! それは何度食べても美味しいです!』

『はい』

 

 俺は今、コンビニで買い出しの任務を遂行中だった。

 師匠とセナノちゃんのお弁当がメインなのだが、それ以外に俺はソラへの供物も準備中である。

 こうしてお菓子だけで満足してくれる神様だったら良かったのに……。

 

『ありがとうございます。……と、エイ。私は喉が渇きました』

『はい』

 

 従順に従い、俺は飲み物コーナーへと向かう。

 そして視線で好みの飲み物を問いかけると、ソラは小さなおててで一番上を指さした。

 

『あの一番上のジュースが飲みたいです』

『……あの絶妙にちっさいサイダー?』

『はい、あの絶妙にちっさいサイダーです^^』

 

 ソラが所望する小さなサイズのペットボトルに入ったサイダーは、最上段の棚にある。

 その数段下にサイズ違いの同じサイダーがあるのだが、何故かソラはそれを無視しているようだ。

 

『その下に同じ味のもっと大きなサイズあるけど』

『いいえ、私はあのサイズが良いんです^^』

『そっかぁ……ちなみになんだけど、俺の背丈を考慮したうえで言ってる?』

『おやおや^^ これでは届きませんねぇ。困りました^^』

 

 ソラはそう言ってニコニコと笑いながら両手を後ろ手に組んで横揺れしながらこちらの様子を窺っている。

 ……え、ナニコレ。

 俺の知らない新しいコンテンツのテスト?

 神様特有の人間を急にテストするやつきた?

 人間の価値観とは違う答えが正解で結局バッドエンドになるやつ?

 

『あ、あの……』

『困りましたねぇ^^』

 

 ソラはまるでNPCのようにそうしか言わない。

 うーん、どうしよう。久しぶりに監督の意図が分からないかも。

 このままじゃ、届かない……いや、届かないのが良いのか?

 その時俺の脳内で何かが繋がったような気がした。

 

 成程、監督そう言う事ですね。

 ここでジュースが取れなくて困っている小っちゃい子コンテンツを生産するという事なのですね!

 きっと俺が帰ってこない事を心配したセナノちゃんか師匠が来てくれること読みなのだろう。

 確かに災主級の疑似媒介体にクレカを持たせておつかいは少し心配だ。師匠は来るかどうかわからないが、セナノちゃんは来る可能性が高い。

 というか、それを観測していたからこんな風に俺を誘導していたのか。

 やれやれ、俺じゃなかったら気が付かなかったね。

 

『ふふふ、ソラの考える事がわかるようになってきたよ……!』

『コンテンツを理解したという事ですね』

『ちょっとその言い方はどうだろう。不服かも……』

 

 そう言われると俺もソラ側になっちゃうからねぇ。

 ……っと、そうこうしている内に誰かがコンビニに入ってきたぞ!

 足音からしてこちらに真っ直ぐに向かっているようだ。

 なら俺のするべきことは一つ!

 

「んしょ……んしょ……!」

 

 俺は手を伸ばし、何とか取ろうとつま先立ちをする。

 必死に上を向いてジュースを取ろうとしているのが見てすぐに理解できるだろう。

 監督、これが欲しかったんでしょう?

 もう貴女の作品に何本出演していると思っているんですか。もう試すのは止めてくださいよ(笑)

 

『よしよし^^』

 

 ま、俺に掛かればざっとこんなものである。

 後はこのまま俺の欲しいジュースを取ってくれれば――。

 

「これが欲しかったのか?」

「はい! ありが……ぇ」

 

 誰ぇ!?

 ジュースを取ってくれた手を伝っていくと、そこにあったのは見知らぬ青年の顔だった。

 誰だこの青年!?

 

『彼はヤマモトヨシノリ。このZONEの作り出したNPCでエイ達三姉妹とは昔からの知り合いという設定です。なのでここではそのように振る舞わないと不自然ですよ(早口)』

『な、なんでそこまで知っているんすか……』

『今までも私は全て見て来ていたでしょう? 知らない事があると思うのですか?』

『それは確かに……』

 

 でも、今までのソラのコンテンツ傾向的に急にこんなNPC相手に背伸びコンテンツなんて生産するかなぁ……?

 何かおかしい気もするけど……味変かなぁ。

 

『……ちなみに何も隠してないよね?』

『何も隠してませんよ^^ 強いて言うなら、海について黙ってます』

『また海ぃ!? もうやめてよねぇ……』

『あっちも面白そうですねぇ。これはこっちを締めくくるのもやぶさかではありません。あと漫画も返して欲しいですし』

『もしかして海に漫画貸した?』

『スピンオフと読み切り版も』

『しっかりした布教かぁ』

 

 この後、コンテンツばっかり口にするようになる海の化け物も控えてると思うと震えが止まらねえぜ。

 それなのに俺は今からこのNPC相手に何をすればいいんだ。

 

「ありがとうございます、ヨシノリさん」

 

 ジュースを受け取りそう言うと、彼はぎこちない笑みを浮かべながら照れくさそうにした。

 ……ま、まさかNPCだからって今度はこいつの性癖を破壊する訳じゃないよな?

 流石にそこまでするのは俺も抵抗があるぞ。ちびっ子ならまだ揶揄えるが、この年頃はもう洒落にならんわ。

 

「な、なあエイちゃん。おかしなことを聞くかもしれないがいいか?」

「はい?」

 

 た、頼む。

 こいつとの恋愛コンテンツだけは勘弁してくれ……!

 ソラの事だから、セナノちゃん嫉妬コンテンツ生成の為だけにこいつとイチャイチャさせる可能性もある……!

 

「ネネって……今日は家にいるか? その、少し用事があって」

「…………ネネお姉ちゃんですか?」

「ああ」

 

 これはまさか、俺じゃなくて師匠との恋愛コンテンツ……!?

 ……じゃあいいかぁ!

 ソラ、疑ってごめんよ! 流石にそこまで酷い事をする訳ないもんね!

 

「お姉ちゃんならお家にいますよ! 一緒に行きましょうか」

「そ、そうだな。……よし、行こう」

 

 気合を入れるように彼は自分の頬を叩く。

 これって本当に師匠の事の好きなんじゃなーい?

 へへっ、オイラわくわくしてきちまったぜ。今までは遊ばれる側だったから、こうして人の恋路を間近で見れるなんて思わなかったよぉ!

 

「それで、ネネお姉ちゃんへの用事ってなんですか?」

「うっ」

 

 俺の無邪気故のストレートな問いに彼は言葉を詰まらせたようだった。

 それから彼は明らかに挙動不審になり、視線を彷徨わせながら答える。

 

「らっ、来週に提出予定の課題でわからない事があってさ。ネネならわかるかと思ったんだ……」

「えっ、うちのネネお姉ちゃんがわかる課題ですか?」

 

 失礼だが、あの人は頭脳タイプじゃないのでわからないと思うよ。

 スマホがある時代にわざわざ家まで聞きに言ったりしないだろうし、言い訳にしても苦しいな。

 

「あ、ああ、そうなんだ」

 

 やれやれ、まだまだ取り繕う経験が少ないんだね。頑張れ、青年!

 

『では、お手並み拝見と行きましょうか』

『へへっ、今回はソラと同じポジションで楽しめそうだよ!』

『……ええ、それは楽しみですねぇ^^』

 

 

 

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