【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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第115話 介入する、恋路

 ヤマモトヨシノリはどこにでもいる普通の男子高校生である。

 ある夏の日、彼は自分の幼馴染が超常の現象を相手に戦う組織の人間であることを知った。

 そこから紆余曲折色々とあった結果、今彼は――。

 

「す、好きだ……!」

 

 世界を救うために告白をしていた。

 人の気配がしない公園で、喧しい蝉の声をBGMに彼は一世一代の告白を世界の為に犠牲にしたのである。

 

(これでいいんだよな、ルウ!)

 

 どこかで自分を見ていると信じて彼は少し視線を彷徨わせる。

 しかし、彼女の姿はどこにもない。

 代わりに、公園の端に植えてある木の影からこちらを覗くエイの姿はばっちり確認できた。

 

(み、見られてるゥー!)

 

 幼馴染の妹に告白を見られるのは中々に精神に堪えるものである。

 例えそれが予想の範疇だとしてもだ。

 

(いや、これでいいんだ! そ、そう……これで。こうして喧嘩から意識をずらせば良いんだ。予定通り作戦通り計画通り――)

 

 再びチラリとヨシノリはエイを見る。

 彼女は木陰からスマホをこちらへと向けていた。

 

「え?」

 

 ヨシノリに見られていると気が付いていないのか、ひょっこりと顔を覗かせてスマホを何やら操作している。

 間もなくスマホからフラッシュが焚かれ、何故かエイ本人がわたわたと慌てていた。

 

(うん、これ撮られたわ。バッチリ夏の思い出としてデータに残されたわ)

 

 姉とその幼馴染の恋愛はエイには余程の大イベントであったらしい。

 彼女は撮影を終えて満足したのか、キラキラとした目で続きを待ち望んでいた。

 

(くっ、今はループから脱出するのが最優先だ。あのデータは土下座でも金銭でも解決策はある)

 

 ヨシノリは取捨選択が出来る男である。

 故に世界の為に自分の青春と尊厳を投げ出すことが出来た。

 

 いや、実のところ少しだけ期待もしている。

 

(こ、これでOK貰えちゃったら俺どうしよう……!)

 

 不可思議な体験がヨシノリへと与えた主人公的感覚は、彼へと妙な自信を付与していた。

 普段であればネネなど手の届かない存在だが、今のヨシノリはワンチャンスあると信じることが出来ている。

 彼は幼馴染という要素ただ一点でこの告白をあわよくば成功させようとしていた。

 

(こうして改めて見てみるとやっぱりネネは美人だな)

 

 顔立ちはアイドルというよりは武人に近いだろう。

 可愛さよりも美しさが目につく、まるで名匠が作り上げた日本刀を前にした時の様な無意識の内に背筋を伸ばしてしまう感覚。

 彼女が男女問わずに人気であるという事も頷ける。

 

(これでもしOKされたら明日から一緒に学校に行ってクラスの奴らに……って、返事まだか? も、もしかして告白が嫌すぎて固まってるのか!?)

 

 ヨシノリは恐る恐るネネを見上げる。

 彼女は告白を聞く前と全く同じ顔をしていた。

 

「……?」

「あの」

「どうした」

「へ、返事とか」

「返事?」

 

 ネネは首を傾げる。

 それから顎に手をやり、何かを考え始めた。

 うんうんと唸ってヨシノリの方を何度か見ながらまた唸る。

 それを繰り返し、やがて彼女はこう言った。

 

「なんの返事だ」

「俺がお前を好きだって言っただろ、その返事だよ!」

「そうか」

「……え?」

「そうか」

「え?」

「そうかと言っている」

「ちょ、ちょっと待っ「はいごめんなさい! ちょっとお姉ちゃん借りていきます!」――エイちゃん!?」

 

 見て居られなくなったのかエイが乱入し、ネネの腕を掴む。

 そして木の陰へと引っ張ろうとして、全く動かずにむしろ彼女が転びそうになっていた。

 

「重っ!?」

「鍛えているからな。私は常に自身を巨大な屋久杉として――」

「いいから、こっちに来てください!」

 

 エイにそう言われてネネは首を傾げながら手を引かれたまま歩き出す。

 ヨシノリにはただそれを見ていることしか出来ない。

 

「行っちゃった……」

 

 木の陰に明らかに隠れ切っていない幼馴染の姿を見て、ヨシノリは炎天下の中立ち尽くすしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 あっぶねー!

 せっかくの告白イベントがとんでもねえ壊されかたする所だった。

 

「師匠、さっきのアレは何ですか」

「ああ、アレは重心を意識した立ち方だ。先程も言った通り自身を屋久杉だと思って――」

「そっちじゃないですねぇ」

 

 師匠……もしかして何度もこうして告白をぶん投げてきたんじゃ……。

 

『あははっ、ここまでとは思いませんでした!』

『ねー』

『まさかここで手を取ってしまう程に依存していたとは!』

『ん? ……ソラだけ違うもの見てない?』

『おっと、失礼失礼。こことは別のコンテンツを見てました。さて、エイわかっているでしょうが、このまま付き合わせるのです。今はこの人間の様なヒロインの需要が高まっていると聞きます!』

『ヒロイン需要は置いておくとして……人の色恋沙汰を外野からいじれるチャンスなんだから、きっちり楽しむよ! コンテンツの乗ったお皿までペロペロしちゃうもんね!』

『こらこら、エイったら。はしたないですよ』

『『あははははは!』』

 

 今の俺は上位存在と同義。

 だからこそ、こんな所で最高のコンテンツを終わらせるわけにはいかないのだ。

 

『良い感じの仲になったら、男の娘妹枠でヒロインとして参入も視野に入れましょう』

『ちょっとそれは要相談でどうでしょう(震え声)』

 

 今回は晩年の俳優が自らメガホンを握るアレだと思っているので……。

 というか、まずはこのコンテンツを育てないと。

 

「せっかくあの人が告白をしてくれたのに、どうして返事をしないのですか!?」

「告白……そうか、あれは告白か」

「他になんだと言うのですか……」

「私の知ってる告白はもっとこう……凄かった。というか、アレが告白なら私に今まで同じような事をしていたあいつらも……?」

「余罪があるんですねぇ……じゃなくって、今はまずヨシノリさんの想いに応えてあげてください!」

「うぅむしかし……」

 

 師匠は困ったように顔を顰める。

 確かにデータである存在の告白を受けるのかどうかは悩むだろう。

 が、それでも俺のコンテンツの為に受けて欲しいのだ。

 

「私には既に相手がいるんだ」

「えっ」

「彼女が知ればなんと言うか……」

 

 まさかの女ァ!?

 これがS階位……!?

 というか俺の知ってるS階位がどっちも、同性でもいけそうな奴なんだけど!? もしかしてS階位ってそうなの!?

 ……へ、へへっ、よくわかんねえ恐怖で膝が震えてらぁ。

 

『ソラは知ってるの?』

『ちょっと見てきますね……ああ、はい。この人間ですか^^』

『教えて!』

『教えない方が面白そうなので黙っておきます^^ それよりも、このままだと彼女が告白を断ってしまいますよ?』

『そ、それは駄目だ!』

 

 くそっ、唸れ俺の脳細胞!

 

「お願いします! その……私こういうの見るの初めてですっごくワクワクしてるんです!」

 

 無邪気に目を輝かせながら俺は師匠の手を取って飛び跳ねる。

 それはもう純真無垢に、そして玩具をねだる子供の様に。

 師匠は良い人だから、こうするだけでだいぶ揺らぐだろう。

 

「し、しかし……」

「今回の夜神楽が終われば、リセットされるんですよね? なら、問題無いじゃないですか。ヨシノリさん、本気の目をしていましたよ? 」

「ううむ……」

 

 仕方ない……かくなる上は……!

 

『ソラ、澄目村にすっっっっごく鍛えられそうな場所はある?』

『御空霊峰がたった今、生えました^^』

『感謝だっぺ!』

 

 一つの問いで全てを理解したソラにより、澄目村の地図が変わった。

 俺は今出来たばかりの激アツ情報を即座に師匠へと開示する。

 

「……もしあの告白を受けてくれたら、澄目村に存在する過酷な霊峰への登山許可を出しましょう。あそこはかつて知る人ぞ知る山伏の鍛錬場所として「告白を受けよう」……ありがとうございます!」

「澄目村にそんな場所があったとは……! 災主級の住まう山々での鍛錬かぁ!」

 

 先ほどまでとは打って変わって楽し気な師匠は、俺と固い握手を交わすとヨシノリの方へと向かっていった。

 よぉし!

 

『これでエイが村に戻る口実が出来ましたね^^ 村での異常な扱いを人間達に見せつけて曇らせましょう!』

『ああっ(絶望)』

 

 俺も結局はコンテンツの一部だった……!

 

 

 

 

 

 

 数分待っていると、やがてネネはヨシノリの元へと戻ってきた。

 その目は何故かキラキラと輝いており、木陰では相変わらずエイがこちらを覗いていた。

 

「ヨシノリ」

「あ、ああ」

「付き合おう」

「えっ、いいのか!?」

「ああ!」

 

 ヤマモトヨシノリ高校二年生。

 終わる兆しが見えない夏の日に、彼は彼女が出来た。

 なお――。

 

(これでループが終わる……!)

(空澱大人の分離体などいれば手合わせできないだろうか)

(人の恋路を見るの楽しいなぁ!)

(人を掌の上で遊ばせるの楽しいですねぇ)

 

 誰一人として、好きという感情を真正面から受け止めておらず、全員が明後日の方向を向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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