【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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第135話 ソラマネキ

 で、一体何が来るって言うんですか!?

 俺は言われた事をそのまま告げただけなので、何が来るのかを知らない。

 屋上で意味もねえ言葉をぶつぶつと呟いて御空様を召喚したように見せただけなのだ。

 だってこいつずっとそばにいるし。

 皆気が付いてくれ……俺のケーキを半分喰ったのはこいつだ!

 ちなみに屋上に皆が来た隙を突いて冷蔵庫のジュースも勝手に飲みやがったぞ!

 やってることが食いしん坊のガキとなんら変わりがねえ!

 

『で、何が来るの?』

『あの例のプロジェクトのメンバーで構成された特殊な部隊ですね。驟雨よりも手ごわいですよ!』

『を、呼んだの?』

『はい! メンバーの一人の意識をえいやっ! として報告の中にエイ達の動きを制限させるための申請を混ぜ込みました。隠し味ってやつですね』

『なんでそんな事を……なんで……俺達を困らせる事を優先して動いてない?』

『いえいえ、ちょっとお手伝いをね?』

 

 なんのお手伝いなんだよそれぇ。

 

「愚者の使い……一体なんだろう。シオはわかる?」

「私みたいな下っ端が知るわけないでしょ。ミナコこそ縁者なんだから何か知っているでしょ?」

「ぜーんぜん知らん! S階位のお二人はどうかな?」

 

 ほら、皆が混乱しちゃってるよ!

 本来来るはずの無いチームを身内が呼び寄せちゃったから、状況がぐっちゃぐちゃだ!

 

『ですが、こうでもしないと潮哭ノ巫女のコンテンツを楽しむことはできません。S階位二人とエイが居れば、大抵の事は事足りてしまいますからね。これは言わばコンテンツを見せてくれる彼女への誠意ですよ。当然の行いです』

 

 要するに自分達が動けない状況を自ら作るために動いたって事?

 うちの村の神様、頭がおかしいよぉ……。

 

『あのチームが到着すれば私達は動けません……! これでは潮哭ノ巫女が何をしても見ているしかない……! ^^』

『嬉しい?』

『嬉しいです!』

『それは良かったですね』

 

 でも痛い思いだけはしたくないなぁ。

 ふかふかベッドのあるお部屋に軟禁とかがいいなぁ。

 

「詳しくはわからないわ。でも話を聞くにどうも……」

「ああ、縁理庁だな」

「御空様はそこまで正確には仰っていませんでしたが、そうなのですか?」

『縁理庁ですよ^^』

 

 仰るな。

 

「封縁五家なら組織だった動きはしないだろう。使いなんぞ出さずに自ら表に出てくる。それに潮哭ノ巫女は最重要機密である異縁存在の一体だ。流石にソレを部外者に模倣されたとは考えたくはない」

 

 師匠が理路整然と縁理庁がこの事件を起こした犯人だと推理している。

 なんて申し訳ないマッチポンプなんだ。

 

「……同じ考えです。上層部は傲慢ですからね。過去にもエイを支配しようとくだらない策を弄していました。まだ何をしようとしているのかその全容は見えていませんが、恐らくは碌な事ではないです」

「うえぇ……私、上層部嫌いなんだよね。はっちゃん、やっぱ任せて帰ろうよ」

『お仕事を途中で投げ出しちゃ駄目だよ。とりあえず迎え入れる準備だけでもしないと』

 

 完全に余計な仕事を増やしてしまった俺と神様……もしかしてとても足を引っ張っているのでは?

 

『本来であればえちえち男の娘監禁がしたいのですが……まさか女の子の日だったとはタイミングが合わないですねぇ。エイ、しょうがないので潮哭ノ巫女モドキに共鳴してしまったとかその辺の理由を付けて苦しんでおきます?』

『おきませんねぇ』

『設問1.三半規管の一部をナイナイしたらどうなる?』

『回答.やめてください』

『補習ですねぇ!^^』

『嫌だー!』

 

 来るんじゃない縁理庁の悪そうなチーム。

 俺の三半規管がついでに空の向こうに持っていかれる!

 

 

 

 

 

 

 黒いワゴン車が列をなして山の細い道路を走る。

 僅かな乱れもなく街へと向かってくるその様はまるでムカデが這い廻っているようだ。

 

 いくつかの検問を越え、無人の街へとワゴン車は侵入する。

 何かの領域に踏み込んだという自覚があっても止まる事はない。

 転倒した車やその場に投げ捨てられた鞄、割れた窓ガラスなど全てを視界の端に捉えながらも捨て置いてワゴン車はやがて目的のマンションの前へと到達した。

 

 マンション入り口では白い箱を頭に被せた少女だけがその迎えであるかのように佇んでいる。

 先頭を走っていた一台が入り口の目の前に止まると、中から黒服の男が二人出てきた。

 胡散臭い笑みを浮かべる中肉中背の男と、目つきの鋭い瘦せぎすの枯れ木のような男だった。

 

「突然の訪問で申し訳ございません。と言っても、コモリバコの皆様方は既に感知していたでしょうが」

 

 笑みを浮かべていた方の黒服の男は軽い調子で語り始めるが、それを八子が受け入れる筈もない。

 首を掻き切るような動作を見せつけ、彼女は吐き捨てるように言った。

 

「回りくどいやり取りは嫌いだよ。私の事は八子と呼べ。そんでもって、さっさと用件を言いなよ。こっちは任務の最中なんだ」

 

 苛立ちを隠す様子の無い八子を前にしても黒服の男はひるむことなく、むしろ作り笑いを浮かべる余裕すらあった。

 その背後では次々と車が止まり、中から様々な装備を用意した黒服たちが出てくる。

 

「何か勘違いをされているようですが、我々は支援の為に送られた部隊です。味方ですよ」

「頼んだ覚えはないね」

「観測所からの要請です。どうやらあの海の異縁存在がより活性化したように見えると。封応値や縁波密度も異常値を示し続けている。速やかにあの異縁存在を処理しなければなりません。その為にもご協力願いたいですね」

 

 胡散臭い笑顔は常に八子の神経を逆なでる。

 その意思に共鳴するように、マンションの全ての窓から住人たちが黒服を見下ろしていた。

 到底歓迎などされているわけがない。

 が、黒服の男は慣れた様子でそのまま八子の傍を通り抜ける。

 

「では、お邪魔しますよ。……行くぞ」

「はい」

 

 今まで沈黙を貫いていた瘦せぎすの男は、数秒の間空を見つめた後にマンションへと続く。

 

「……住人たちに食われないように注意することだね」

「ははは、それは困りますねぇ」

 

 子供の戯言だとでも告げているようだった。

 黒服の男達に続いて八子もまたマンションの中へと足を運ぶ。

 その間、駐車場にはいくつものテントが建てられ、多くの機材が設置され始めていた。

 

「駐車場を一時的に我々の前線観測所にさせて貰いますよ。事後承諾で申し訳ございません」

「わかったから必要な言葉以外喋るな」

「おや、何か嫌われるような事をしましたかね」

「ここに餌以外の生き物が入る事が気に食わない。それも大量に」

「申し訳ございません。けれど潮哭ノ巫女や彼女に対応するのであれば、これだけの装備と人員が必要でしてね」

「彼女?」

「空澱大人の疑似媒介体ですよ」

 

 階段を昇る音が反響する中でも、その言葉だけははっきりと聞こえた。

 わざとらしくはっきりと言葉を強調したのだ。

 

「どうやら手違いでこの一件に参加してしまったようです。元々は東園縁者だけの予定だったので」

「あの子をどうするつもりかな」

「海を相手に下手に干渉されても困るので、少しの間隔離をしようと思いましてね。……この依頼をスムーズに済ませる為です。ご理解ください」

 

 声色には寄り添う気など一切感じず、都合を押し通すつもりであることが透けて見えた。

 いや、敢えてそうしているのだろう。

 彼は沈黙を貫くもう一人とは違い、饒舌に語り続けていた。

 まるで八子に手を出されることを望んでいるようにも見える。

 

(私が暴れれば、それを理由にこっちまで管理するつもりか。この野郎……!)

 

 範囲内に入った全ての黒服を今すぐに殺す事など容易い。

 仮に八方塞が命じれば八子は喜び勇んで全ての内臓をねじ切るだろう。

 

 が、彼女がそれを望んでいないのであれば、八子もまたどれだけ不服であろうとも従うのみだ。

 

「少しの間ですが、仲良くやりましょう。八子さん」

「……チッ」

 

 差し出された手を握る気など、ある筈もなかった。

 

 

 

 

 

 

『到着しましたよ、エイ。これからエイは囚われのお姫様です。今回は初回サービスとしてオソラ拘束具シリーズをあいつらに渡しておきました^^』

『ずっと利敵行為してない?』

 

 

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