【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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第15話 今日の日記「いろいろあった」

【縁理庁・同居観察記録】

 

記録番号:EN-COHAB-0001

提出者:A階位縁者 三鎌セナノ

対象:EN-XF-SORA-0815-ACT2 媒介体《エイ》との共同生活初日記録

報告日:令和██年8月■日(初日)

 

■ 開始時刻

 

15:30 ── 廻縁都市・着縁盤に到着

15:45 ── 感情帯電・構文通過検査を完了後、都市内観察区・南環居住棟『C棟05室』へ移動

16:10 ── 『エイ』対象との同居開始

 

■ 対象行動・観察概要

 

到着・環境適応状況

 対象は終始落ち着いた様子を保ち、環境への適応は極めてスムーズ。

 自室の構文結界や家具配置に関しても特に異を唱えず、「きれい」「すごい」と感嘆を繰り返す姿が見られた。

 窓から空を頻繁に見る癖があるが、現時点で測定機器に異常反応はなし。

 

身体的・心理的挙動

 表面的には穏やかかつ礼儀正しい反応を見せる一方、「セナノさんの部屋はどこですか?」「今夜は一緒に寝ましょうか?」など、親密性を過剰に求める発言が散見。

 対象が悪意で発言している兆候は確認されず、単に社会的距離感への理解が未発達である可能性が高い。

 

問題行動・注意点

 私物として持たせた「寝間着(ゆったりしたワンピース型の衣類)」を前後逆に着用し「おへそが出ていて不安」と訴える場面があった。

 その後、着替えを補助しようとしたところ、「セナノさんの手は温かいですね」と意味深な反応。

 ※当方、精神的消耗により風呂場で3分ほど放心。

 

■ 初日夕食(18:00)

 

白米(包装米飯)

 

ワカメと豆腐の味噌汁(インスタント)

 

鮭の塩焼き(コンビニ)

 

きんぴらごぼう(コンビニ)

 

市販プリン(プレーン)

 

 対象はすべて完食。特に味噌汁を「しょっぱいけど、落ち着きます」と好評価。

 プリンを初めて口にした際、「あまっ……ふにゃ……」と小さく呟いたのを記録。

 

■ 就寝前行動(21:30)

 

 対象は「今日一日とても楽しかったです」と述べた後、寝具に潜り込み約3分で入眠。

 就寝前の窓越し発言「今は御空様、月の中にいました」──現場機器に異常なし。

 当方はリビングソファにて仮眠を取る予定だったが、「寒くないですか?」と毛布を渡される。

 

 ※なお、就寝時身体的接触は発生していないことを強調する。

 

■ 特記事項

 

対象は終始穏やかで、攻撃性や情動の乱れは確認されず。

 

ただし、「感情の抑揚に応じて空との感応現象が強化される」可能性を強く示唆。

 

今後、食事・入浴・接触・睡眠等、生活行動すべてが媒介としての刺激となり得るため、慎重な生活介助が求められる。

 

■ 所感(※個人記述欄)

 

 対象の精神構造は年齢不詳かつ性別認識にズレあり(本人の主張は男性)だが、精神年齢的には12~14歳相当の少女の挙動が目立つ。

 こちらのペースに合わせる意識は感じられず、信頼と依存が混同された接し方をしてくる。

 また、御空様に関する発言は日常会話に自然に混じっており、自己の意識と他存在の境界が曖昧になっている兆候もある。

 現時点では大きな異変はないが、今後の接触の中で個人的な感情が媒介の機能を強化するリスクに留意すべき。

 

提出者署名

A階位縁者/実地対縁任務担当:三鎌セナノ

 

 

 

 

 

 

「――まあ、こんなところかしらね」

 

 セナノは出来上がった報告書を眺めながらそう呟く。

 時刻は既に深夜二時を回っていた。

 

「報告書も終わったし、もうひと眠りしようかしら」

 

 エイに下手に気を遣わせないため仮眠という形でともに眠ったセナノだったが、やる事は山積みであった。

 特にエイに関する報告は多数の機関や部署に送るため、絶対に欠かすことはできない。

 

 災主級との同棲など、研究者からすれば垂涎ものだろう。

 

「……結局、寝るまで普通の子だったわね」

 

 廻縁都市についてからの事を思い出してセナノは一人呟く。

 最初こそ警戒していたセナノだったが、夕飯の頃にはすっかりとエイに振り回され警戒を忘れていた。

 いや、警戒することに罪悪感を抱いてしまう程にエイが純粋だったのだ。

 

「……これからどうなるのかしら」

 

 寝室の扉を見つめながら、ふと考えた。

 が、セナノはすぐに止めた。

 

 この扉の向こうには災主級の疑似媒介体がスヤスヤと小さな寝息を立てて眠ってる。

 そんな事、一週間前の自分なら想像すらしなかった事だ。

 

 非現実的な厄介ごとに巻き込まれた時点で、想像するだけ無駄というものだろう。

 今のセナノに出来ることと言えば。

 

「報告書終わったら、少し体でも動かそうかしら」

 

 報告書の提出とトレーニングだけであった。

 

 

 

 

 

 

 興奮して寝れねえよぉ!

 

 既に時計は零時を過ぎているが、当然お目目はギンギンである。

 だって、こんなファンタジー都市に来て初日からぐっすり眠れるか?

 これから俺のなろう系人生が始まるんだぞ?

 

 田舎で自分の力に自覚もないまま育った男(巫女(♂))がヒロインと出会い、隠された都市に誘われる。

 これは第一話すぎるぞ。ソラの行動には時折理解できないところがあるし恐れているが、こればっかりはマジ感謝。流石御空様って感じ。

 

 おまけに、あてがわれた部屋もアホ程広い。

 高級マンションみてえな場所が今日から俺のハウスのようだ。

 

 やたらと分厚い窓ガラスや、えげつない程に防音性能が髙そうな壁など、色々と気になる点はあるがまあ良いだろう。

 総評としては、良いお部屋である。

 

『明日からが楽しみですね! どんなコンテンツが私達を待っているのでしょうか! あと、ご飯も楽しみです!』

『それは良かったっすね』

『はい。また、食事の時は舌を少しだけお借りします』

 

 キャラメルを食べたときもそうだったのだが、ソラはそうして俺の口から摂取した物の味を感じ取ることが出来るようだ。

 その時、俺の舌はじんわりと麻痺している感覚に陥り、俺自身はあんまり味は感じない。ちょっと損である。

 

 ソラとしてはやはり、きちんと自分の口で食べたいようだがその隙が見当たらなかった。

 

 まあ、それは別にどうだっていい。

 問題は、俺の舌の感覚をソラが勝手に奪えることである。

 

 これって、どう考えても体の主導権をいつでも奪えるってことだ。

 やばくない? 俺、もう逃げられなくない?

 

『エイ、どうしたのですかぼうっとして』

『……いや、明日からどうしようかと思って。セナノちゃん、いきなり男と住むことになって動揺してたし。ソラ監督の命令とは言え、結構ベタベタ絡みに行っちゃったしな』

 

 部屋についてから寝るまで、俺は無邪気距離感バグ少女♂を演じ続けていた。

 座右の銘に恥じない働きを出来たと思う。

 だからこそ、セナノちゃんが心配だった。

 

 こんな最悪の巻き込まれ事故に遭遇したセナノちゃんがいたたまれねえよ……!

 

『大丈夫ですよエイ』

『何が?』

『明日は女の子なので、大丈夫です』

『……ん?』

 

 ベッドで足をばたつかせながら、ソラは笑顔でそう告げた。

 何言ってんだこいつ。

 

『女の子なので大丈夫です』

『何が何で何?』

『もしかして私の決定に不満でも?』

『委細承知いたしました、御空様』

『うんうん、エイは良い子ですねぇ』

 

 俺は哀れなピエロである。

 ソラが女の子だと言ったら女の子になるしかないのだ。

 

『さあ、一度眠りましょう。目を覚ます頃には女の子になっていますよ』

『……あの、気持ちの問題とかでは無く生物学的に?』

『勿論』

『そっかぁ……』

 

 俺はベッドに倒れ込む。

 そして、天井を仰いだ。

 

『おやすみなさい、エイ! あ、ちなみに性別が変化することは日常のようにふるまってくださいね! その方が、私好みです!』

『そっかぁ……』

 

 もうどうしようもないので、俺は仕方なく目を瞑った。

 瞼の裏の暗闇だけが、今は俺の心に癒しをくれる。

 

 ……そっかぁ。俺、明日は女の子かぁ。

 適応しなきゃなぁ……。

 

  

 

 




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